第六話「瞬間。殺意かさねて」

Last-modified: 2008-11-09 (日) 19:56:56

520 :第六話/瞬間、殺意重ねて:2008/10/24(金) 00:07:39 ID:???
 南極/アメリカ第七艦隊分権南極監視艦隊
「くそッ! クソッ! クソったれッ!」
『戦艦レキシントン撃沈! サラトガ、左舷から来るぞ!』
『うぎゃあ! 叩き落せ~!』
 ミサイル駆逐艦が矢継ぎ早にミサイルを乱射し、戦艦は狂ったように各砲を乱打する。
 が、寄せ来る白い巨人達はそれを物ともしなかった。ミサイルは手刀ひとつで叩き落され巨砲はかすりもしない。
 次々と火の手が上がり、面白いように艦隊は火達磨となってゆく。……まさに虐殺だった。
 白塗りのゲッターロボ達は黒煙の空を舞い、赤く染まった海を我が物顔に突き進む。
 それは、まさに虐殺だった……

『見たかねこの力を。恐ろしい力ではないか…恐ろしい罪ではないか…やはり我らは贖罪せねばならぬのだよ』
 虐殺を映し出した老人は、整えられた白髪頭を哀しげに振る。
『その為に。ロンギヌスの槍は我々ゼーレが頂いてゆく』
「老人の妄想に付き合う暇は無い。切れ」
 酷いぞ碇。
『待たんかぁ!』
 碇の見もふたもない一言に対しキール議長が一喝。スイッチに伸びた私の手へ、無数の弾丸が弾け飛ぶ。
「……酷いではないですか」
『これが立体映像に過ぎないのが残念ですよ。冬月先生』
 立体映像のキール議長が笑う。
 だが立体映像相手と言えど、撃たれて気持ちの良い人間など…居るかもしれんが私は違う。

521 :第六話2:2008/10/24(金) 00:08:29 ID:???
「また随分と格好良くおなりになられましたな。議長」
 碇の言葉にニヤリとする議長。確かに、この方は以前から全身を機械化されていた…
 それは延命処置であり、またいずれ来る「神」との合一を図るものであったハズだ…だが現在の体は、更に機械化が進んだだけでなく、
 見れば黒衣のそこかしこから銃口が覗く、危険な姿となっていた。
『ふふふ…神隼人にゼーレが潰され早十三年。地上と地下を彷徨い歩くにはアレでは不便だったのでな』
「身体も、そして心も、ですか」
『よく解っているではないか碇。では問おう』
「切れ冬月。再び老人の走狗に成り下がるほど私は暇ではない」
『貴様!』
「議長。いやキール・ローレンツ。立ちはだかるならば貴様は今度こそ地獄を見ることになるぞ」
 碇は静かに、しかし断言する。
『地獄ならば見た。見続けておる。そしていずれは全ての人間が見ることになるのだよ……!』
 それを最後に通信が切れた。そう。遅かれ早かれ全ての人間は地獄を見ることになるだろう。
 ゼーレが勝とうと……碇が勝とうと、だ。

522 :第六話3:2008/10/24(金) 00:10:31 ID:???
 ロンギヌスの槍。
 何者かがアダム、そしてリリスと共に遺したとされるこの遺産は「我らの人類補完計画」には障害となる代物だ。
 ゼーレの指揮下に無く、またゼーレが著しく力を弱めている現在、この槍をわざわざ回収する必要性は薄いし、予算も無い。
 故に碇がアメリカに圧力をかけ「セカンドインパクト跡地」として監視させていた訳だが……。
 それが奪われた、か。
「米政府はなんとか黙らせた」
「うむ。だがこれで日本のゲッター再建計画はほぼ不可能となったな…」
 今回の件についは厳重な情報封鎖が行われるはずだ。しかし全ての者の目と耳を塞ぐことは不可能だろう。
 ゲッターロボは元々日本製のロボットだ。米国に、日本がひそかに軍備を増強しているのだと勘ぐられても仕方が無い。
「構う必要は無い。人類と使徒との生存競争に臆病者など不要だ」
 お前が言うか碇。まあ言いたいことは解るが
「碇。やはり老人達の望みは十五年前の再現か?」
「無論だ冬月。その為に奴らは生き延びた」
 随分ダイナミックな姿になっていた気もするがな…もしかして他の議員もそうなのだろうか。
「弐号機をドイツから確保するまで時間をかけすぎたのが痛いな。エヴァの製造技術は既に流出済みと見るべきだろう」
「そして奴らがゲッターロボを戦力として取り込みつつある以上、軍事力的に潰すのは難しい」
「神君にもう一度頑張ってもらうとしても難しかろうな」
 今回の件に収穫が無かったとは言わん。だがそもそも我々には予備戦力どころか予算すらないのだ。
 しかし老人達はどこから予算を得ているのだろう。
「ゲッターを盾に。そして槍とエヴァか。次に連中は何を狙ってくると思うね?」
 碇は少し考えるそぶりを見せたが、すぐに答えた。
「……老人達が自らの手で補完を行うか。それとも我々に行わせるか。それによって変わるでしょう」
 いずれにせよ使徒を倒さぬ限り、我々には当座の未来すらない。ならば戦う他あるまい…。

523 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/24(金) 00:11:00 ID:???
キールのこえが早乙女博士にしかならない支援

524 :第六話4:2008/10/24(金) 00:12:37 ID:???
「パターン青、使徒です」
 思い悩む暇も無く使徒が来襲した。
 まったく奴らの空気の読まなさには困ったものだと思う。
 沿岸部より襲来した使徒は久々の歩行型。すこし歪でどこか玩具のヤジロベエに似ているが、人型だった。
 ふむ。最近私は立ちっぱなしだから椅子が欲しい。
 そこで「イスラフェル」と呼称するコトにする。
 歩行型なので第三新東京市接近まではしばし間がある。作戦部は上陸地点での交戦を選択したそうだ。
 都市部に被害が及ばない戦いは大歓迎なので即時許可を出す。せっかくだからエヴァも3機まとめて突入させてはどうかね?
 何? 零号機は相変わらずフィードバックに難がある? 人類最初のエヴァだというのに実戦で役に立たないから困る。
 が、あのエヴァはかなり特殊な部類だ。やむを得まい。

525 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/24(金) 00:13:06 ID:???
いやん碇パパかっこいい

526 :第六話5:2008/10/24(金) 00:14:04 ID:???
 先陣を切った弐号機が試作型スマッシュ・ホーク。通称スマッシュヨサクで敵を真っ二つに寸断。すると敵は見事に二匹に増えた。
 成る程。攻撃を加えれば加えるほど増えるというタイプか。
 しかし二匹で増殖は打ち止めだった。期待させおって。
 二体に増えた使徒は互いを補完しあっているらしく、攻撃を加えても片方が無事なら瞬時に再生するようだ。
 リツコ君。興味深いのは判るがエヴァに実装できるかとか議論をしている場合ではないだろう。
 つまり二体のコアを同時に破壊しなければ撃破出来ない訳だが、エヴァ二体の息はあっていない。
 まあ弐号機側は装甲が一万二千枚ではなく、まだ八千三百枚しか施してないからバランスをあわせるのは元々難しいのだがね。
 そうこうしている内に、初号機はしっぺ、デコピン、ババチョップの三段攻撃で吹き飛ばされ、
 弐号機をバット代わりにして場外ホームランにされてしまった。
 もちろん弐号機はそのまま投げ捨てだ。

 先日の「新造ロボット騒ぎ」の一件でゼーレに騙された日本政府は、我々に貸しが付いている。
 二機を特殊作戦課のビィート隊に回収させた後、N2爆雷での足止めを依頼した、が。サービスのつもりか雨のように降らせおった。
 まったく税金の無駄遣いだと思う。おかげで地形まで変わってしまった。また地図を書き直さなければならんな。
 ともかく使徒の構成物質の56%を焼却したから足止めは成功だ。
 まあ使徒は修復機能があるから再侵攻は時間の問題だがね。

527 :第六話6:2008/10/24(金) 00:14:45 ID:???
 さて作戦会議だ。
 ネルフのメインコンピュータ『MAGI』によれば使徒の再侵攻は6日後、エヴァの修復も同じく6日後。
 また使徒に対しては二つの核に対する二点同時加重攻撃しかない。という事で結論が出た。
 現状で戦闘機動が可能な初号機・弐号機によるタイミングを合わせた同時攻撃。
 つまりパイロット二人の息を合わせる必要が……
 何だねアスカ君。
 何? つまりシンジをあたしの下僕として徹底的に調教してやればいい訳ですね。解りますだと? いやちょっと待ちたまえ。
 アスカ君は碇の息子の首根っこを捕まえたかと思うと、止める間もなくツインルームに飛び込み中から鍵をかけた
 勿論中には監視カメラが仕掛けてあるが既にカメラ動画は葛城君の(親父臭い)寝姿動画に切り替えられている。
 やるなセカンドチルドレン。
 とりあえず壁にコップをあてて音を聞いてみたが、いきなり『目だ耳だ鼻!』と言う叫びと共に碇の息子の絶叫が響いた
 次いで『す、好きでこんな事やってあげるんじゃないんだからね』とか『人類が生き抜く為には人類の弱い部分を刈り取るしか』とか
 可愛らしいのだが物騒なのだか解らない声、小さな声のやりとり、間、やがてギシギシアンアン……
 碇、これは何かの条例に引っかからないか?
「問題ない。赤飯を炊け」
 任せておけ。月まで届くくらい炊き上げてやろう

528 :第六話7(終):2008/10/24(金) 00:17:16 ID:???
 その他手は尽くしたが、葛城君の『まあ後はお若い二人で』の一言で放って置くのが一番と結論。
 何故かダブルトマホークを持ち出したレイをとりあえず硬化ペークライトで固めていた時、今まで黙っていた神君がぼそりと言った。
「奴が動きを止めてる内に、超長距離から陽電子砲二門で一気に焼き払う。というのはどうです」
「…確かにそれならエヴァは要らんな。だが何故最初からこの案を出さなかったのかね?」
「私はボインちゃんが好きでしてね」
「訳解らんぞ神君」
「そうだ神君。乳はボインだけではない。貧もまた素晴らしいものだ」
 黙れ碇。
 第一、乳房は巨も美も貧も含めすべからく素晴らしいものだ。ステータスだ。
 ともあれ作戦部に内職させた予算で更に技術開発部を四徹させ、陽電子砲二門を突貫作成。
 これは要は大砲なのでメイン・コンピュータであるMAGIでコントロールし、コンマ0.0(略)のタイミングで使徒を同時狙撃。
 使徒の撃破に成功した。
 動かぬ目標に対してならこれからもこれでイケるかもしれんな。
 と思ったら日本全国の電力を徴発したコトに対し、公民問わず山のように苦情が来た。
 既にネルフ相手に締め出しを始めている企業も多い。このままでは私の数少ない趣味である将棋に関しても出入り禁止が来るかもしれん。
 やはりこの手は禁じ手にしよう。
 
 全てが終わった後、ツインルームからツヤツヤした顔で現れたアスカ君をレイが強襲。
 よく神君がハーモニカを吹く川辺まで移動して殴りあい、夕焼け空の下クロスカウンターした辺りで何かが分かり合えたようだ。
 後日その写真を『瞬間、殺意重ねて。』と題して写真会に送ったら見事金賞が取れた。

本日これまで。深夜にご支援誠にありがとうございました…やはり冬月パートが性に合ってしょうがない件について