進化(チェンジ!)ポケットモンスター 第三話

Last-modified: 2009-02-01 (日) 18:09:08

進化(チェンジ!) ポケットモンスター
第三話

サトシの目の前に広がっていたのは、金属質な白色の天井だった。
動こうとし、右肩の傷に気がつく。
そこにはいつの間にか包帯が巻かれ、応急手当のあとがあった。
「ここは……」
呟き、直後に記憶がフラッシュバックする。
「そうだ!ジジイ!」
ベッドから跳ね起きると、その勢いのままに壁を蹴破り、廊下へ。
自分がなぜここにいるのかはわからないが、この事態にあのジジイが噛んでいることだけは確かだ。
だから、
「とりあえず一発殴る!」
ぎらついた目で廊下を見渡す。
同時、サイレンが響いた。
「脱走がばれたかっ!?」
きけんよちで サトシは みぶるいした!
何人もの職員が、交差する廊下を駆け抜けて行く。
「…俺じゃねえのか?」
疑問を抱きつつ、廊下を走る。向かう先に、大きな鋼鉄の扉が見えた。
開く。
目の前に広がるのは、標本室だった。いくつもの水槽に満たされて泡を立てるサイコソーダの中に、醜怪な軟体生物の切れ端が浮かんでいる。
それらは時折痙攣したように脈動すると、再び静かになる。
並木道のように整然と並べられた培養槽の向こう側から、老人が歩み出てくる。
「もう目覚めたか……やはり、並ではない!」
「てめえ!何者だ!俺をなんでこんなところに連れてきやがった!こいつらは何なんだ!」
サトシの叫びにも、老科学者は眉ひとつ動かさない。
「わしの名前はオーキド博士。こいつらは…ポケモンじゃ!」
しかし、周囲に浮かぶ軟体生物は、これまでサトシが見たことのあるどんなポケモンとも違っていた。
「これが…ポケモン?」
「そうじゃ…われわれの敵じゃ!」
「ちょっと待て!俺にわかるように説明しやがれ!」
サトシが吼えた直後、標本室の扉が音を立てて開いた。
銃を構えたエリートトレーナーが打撃され転がり込んでくる。
「ち…もう来たか!」
扉の向こうから覗く触手に対し、オーキドは扉を蹴飛ばしてはさむことで対応。
こうかは いまひとつの ようだ!
エリートトレーナーがふらつきながらも立ち上がり、触手に機銃掃射を加える。
100かい あたった!
てきの しょくしゅは ちぎれた!
「何だってんだよー!こいつらは!」
オーキドが、壁にかかっていたトランセルを掴みながら答える。
「敵だと言っただろう。それ以上は知る必要がない!」
トランセルの かたくなる こうげき!
そのようにして手の中に完成するのは、並の金属をはるかに超える硬度をもつ緑色の棍棒だ。
「上等!」
同様の操作を行うサトシ。
「ついて来い!」
博士の案内に従い、廊下に飛び出す二人。
上から降ってきた複数の軟体生物を打撃と銃撃で切り抜けると、研究所の奥へ。あたりに転がるりかけいのおとこの死体と、鼻をつく血の匂いに眉をひそめながらも、サトシはその足を緩めない。
闘争本能が知っているのだ。
今何をするべきなのかを。
「こっちじゃ!」
オーキドが、地下の扉を開く。
そこに広がっていたのは、格納庫だった。
その中心に、一匹のポケモンが天井から吊られた状態で存在していた。
ヒトカゲ とかげポケモン。
うまれたときから しっぽに ほのおが ともっている。ほのおが きえたとき その いのちは おわって しまう。
だが、そのサイズは、サトシが知るものとはまったく違っていた。
「ヒトカゲはたかさ:0,6mほどの小型のポケモンのはず…これは…」
「ふん。小説はもっと自由な発想で書かねば面白くないわ!これは、ゲッター……ゲッターポケモンじゃ!!」
「下駄ポケモン?」
怪訝そうな顔で聞き返したサトシを無視し、オーキドはサトシの背後を見据えた。
そこにいるのは、先ほどのエリートトレーナー。
彼はゆっくりと右手を上げると、そこにもっていた銃をサトシに向けた。
「ッ!?」
とっさに飛びのくサトシ。
エリートトレーナーの眼窩からは、紫色の粘液が滴り落ちていた。
「な、何だ…おい!目を覚ませ!」
聞こえていない。
ふたたび銃を構える男に、サトシは恐怖の視線を向ける。
そのとき。
ヒトカゲの かえんほうしゃ!
エリートトレーナーの体が炎に包まれる。
エリートトレーナーは やけどをおった!
「何をしやがる!ジジイ!」
「跡形もなく焼き尽くしてやる!サトシ!そいつの死に様をよく見ろ!われわれが戦う敵の恐ろしさを見ろ!」
炎に照らされ、オーキドの顔の陰影が不気味に揺れた。
「しかし、あいつはさっきまで……!」
「サトシ!やつはもうメタモンに感染している!今のような戦い方をしていれば、次に炎に包まれるのはお前じゃ!そして世界全体なんじゃ!」
「待ってくれ、俺には何がなんだかさっぱりわからねえ。俺が炎に包まれるとか、世界全体とか聞き捨てならねえせりふが飛び出すしよ」
問いに、オーキドは火力を強める。
エリートトレーナーは やけどの ダメージを うけている!
炎に包まれ、サトシに手を伸ばすエリートトレーナー。
その体から、紫色の粘体がベトベトンのように零れ落ちる。
エリートトレーナーは やけどの ダメージを うけている!
もはや消し炭のようになったトレーナー。
そこに、オーキドは手を突っ込む。
取り出すのは、つきのいしほどの大きさを持った紫色の物体だ。
「見ろ!これはやつらの…ポケルスの影響を受けたメタモンの脳みそだ。こんな体と比較してありえないほどの大きさだ!やつらは人間に、そしてポケモンに化ける!」
メタモンの脳みそはオーキドの手の中で小さく動き、そしてじばくした!
ドワオ!
こうかは いまひとつの ようだ。
「……信じられねえぜ…この目で見るまではなっ!」
叫び、サトシはトランセルを一直線に投擲した。
射線の先は、入り口にたおれていたりかけいのおとこ。
トランセルはその体を突き刺し、金属質な床に突き刺さって止まる。
突き刺されたりかけいのおとこの体から、紫色の液体があふれ出し、サトシとオーキドの前で二つの顔を作った。
オーキドが息を呑む。
「ウツギくん…ナナカマド先生…」
「おや、何かいっているねウツギ君」
「そ、そうだねナナカマド君。でも関係ないね。そろそろカントーは地方最後の日を迎えるのだからね!」
二つの顔面はそれだけ言うと滑るように排水溝を抜け外へ。
「いかん!しんかするぞ!」
オーキドの取り出したポケギアに、外の様子が映る。
紫色のメタモンは、ものの数秒で研究所を飲み込めるほど大きくなりつつあった。
「サトシ!ゲッターじゃ!ゲッターポケモンに乗るんじゃ!」
「俺があれに乗れば…どうにかなるってのかよ!」
博士は一切の疑念なく答えた。
「そりゃそうじゃ!」
…おもしれえ。そう思った。
サトシは はりきっている!
「怖気づいたか?」
「まさか!」
ヒトカゲの背中に登り、なぜか存在した操縦席に乗り込む。
「いいかサトシ、そのまま突っ込め!」
オーキドの言葉とともにヒトカゲの尾に炎がともされ、
ヒトカゲの ロケットずつき!
メタモンに突き刺さったヒトカゲはそのままそれをつきやぶり、トキワの森に突き刺さって停止。
背後で響く爆発を聞きながら、
サトシは めのまえが まっくらに なった!

おまけ
オープニングテーマ
風が唸る大地から さよならバイバイ
いつもいつでも うまく行くなんて 保証はどこにもないけど
きっと君が行かなけりゃ もしも俺がやらなけりゃ
マサラタウンに さよならバイバイ
(そりゃそうじゃ)