進化(チェンジ!)ポケットモンスター 第二話

Last-modified: 2009-02-01 (日) 18:07:56

進化(チェンジ) ポケットモンスター
第二話

マサラタウンの端に、そのアパートはあった。
雑多な国籍の人間が暮らす、貧民街のアパートだ。
「サトシさん!たまにはジム来い!」
「わりい。俺、金ねえから」
向かいの窓から顔を出した水の娘、カスミをかるく受け流すと、サトシはアパートの扉を開ける。
そこには、父親であるイチガンの仏壇があった。
前に座り、居住まいを正して目をつぶる。
「おやじ…やったぜ。みんなの前で恥をかかせてやったぜ」
だが、その顔は何故だか浮かない。
「思えばつらい修行だったぜ……でんせつのポケモンと戦わされたりな…我ながらよく生きてたもんだ」
親父、イチガンの眠る仏壇を睨み、
「くそ……っ!ポケモンしょうぶってのは強い相手がいてはじめて成り立つもんじゃねえか!今日だって俺一人で暴れてるみてえだったしよ……ポケモンしょうぶを立て直すって言ったって、これじゃ笑い話にもなりゃしねえ!!」
叫び、仏壇に対して正拳突き。
てきの ぶつだんは たおれた!
仏壇が音を立てて割れる。次の瞬間、
「!?」
その背後から届いた殺気に、サトシは息を呑んだ。
こんな生き方をしていれば、命を狙われたことぐらいある。
だが、今回のものは、かつて経験したそれをはるかに上回っていた。
来る。
仏壇が、背後からの割断によりオープンゲットする。
その影から、鋭利な刃による一撃が飛んだ。
あ、やせいの ストライクが とびだしてきた!
「ふふふ」
やせいの ストライクの きりさく こうげき!
だが、その刃は空を切った。
「なんなんだ!てめえら!」
叫ぶサトシを、天井から降下する影が捕らえる。
あ、やせいの スピアーが とびだしてきた!
やせいの スピアーの ミサイルばり!
「びょほほ! びょう! びょうっ!」
「ちっ!」
一かい あたった!
肩に当たったミサイルばりの穴から、ハイドロポンプのように血が流れ出す。
乱射されるミサイルばりを避けながら、窓ガラスを叩き割って道路に着地するサトシ。
そのサトシの足を、なにかが掴んでいた。
「ぐへ……ぐへへへ…」
あ、やせいの カイリキーが とびだしてきた!
やせいの カイリキーの はがいじめ!
「な…この野郎っ!どう見ても野生じゃねえだろこいつら!!」
サトシの からてチョップ!
一瞬の隙をついてカイリキーを蹴り飛ばし、三匹のポケモンを相手に身構える。
「来るならきやがれ! このサトシ!そう簡単にやられはしねえぞ!」
その殺気は、三匹を同時に下がらせるに十分なものだった。
じりじりとした緊迫感。夜のため周囲に人はいない。
すなあらしが ふきあれる。
サトシは、不思議と心が高鳴るのを感じていた。
「……びょうっ!」
動いたのはスピアーだ。
一撃が即、命の危険へとつながる猛毒の針が、サトシを一直線に狙って飛んだ。
やせいの スピアーの ダブルニードル!
対するサトシは、前方に向かって加速。反応の遅れたカイリキーの頭部を掴み、ダブルニードルの前に突き出す。
「ぐへぇっ!」
頭蓋をダブルニードルが貫通した鈍い音。
そのままカイリキーを蹴り飛ばし、スピアーの上に乗せて動きを封じる。
やせいの ストライクの つるぎのまい!
鍛え抜かれた剣技による、必殺の剣舞だ。
常人相手ならば、これで勝負は決まっていただろう。
だが、サトシの動体視力はそれをはるかに凌駕した。
「遅ぇっ!」
放たれた剣舞を紙一重で避け、その二本の鎌の根元をたたき折る。
「ぎゃあっ」
右の鎌をストライクの心臓に突き刺し、左の鎌でスピアーの脳天を突き刺すと、サトシは背後を振り返った。
そこにいるのは、一人の老人。
この町でポケモンの研究を行っている老科学者だ。
だが、血に飢えたサトシには獲物のひとつにすぎない。
出血多量で目がかすむが、たいした問題ではない。
「じじいだと!?じじい!喰らえっ!」
サトシの とびひざげり!
が。
その一撃は老人に届かなかった。
老人は一瞬でサトシの脇まで距離をつめると、その頭を下駄で強打。
サトシは めのまえが まっくらに なった!