進化(チェンジ!)ポケットモンスター 第五話

Last-modified: 2009-02-19 (木) 11:12:35

進化(チェンジ!) ポケットモンスター第五話

「シゲルのジム?」
「そうじゃ…つまり、本来倒すべき立場のトレーナーにジムをのっとられてしまったんで、そう呼ばれているというわけじゃ」
「・・・」
「どうじゃ、サトシ、ゲッターを動かすにふさわしい人間じゃと思わんか…ゲッターを!」
そして、サトシはクチバジムの前にいた。
脳裏にオーキドの言葉が響く。
「ふふふ…お前にシゲルを…わしの孫を連れてこられるかな…?」
上等だ、と思う。
ジムの窓という窓から、沢山のトレーナーがサトシを見つめている。
タチサレ…タチサレ…と言いたげな目だ。
「シゲルってのはどこだ?」
問いに、トレーナーは答えない。
「シゲルに会う前に、手下とやらなきゃいけねえってか…予定通り」
身構えたサトシを、一本の殺気が貫いた。
「!」
ゆらり、と空気が歪む。
トレーナーたちの背後から歩いてくるのは、一人の男だ。
その目は、ふかい きょうきに そまっている。
「だれだか知らんが、俺のジムを騒がしたらただでは済まんぞ」
ライバルの シゲルが しょうぶを しかけてきた!
シゲルの こうそくいどう!
サトシの にらみつける こうげき!
「俺はある男に頼まれてあんたを迎えにきたんだ」
「いやだと言ったら?」
その問いに、サトシは野獣のような笑みで答えた。
「こいつでてめえののびた体を引きずっていくまでよ!」
サトシの きあいだめ!
サトシは はりきっている!
「ひっ!ひっ!ひっ!ひっ!」
てきの シゲルの ひっかく こうげき!てきの シゲルの ひっかく こうげき!
てきの シゲルの ひっかく こうげき!てきの シゲルの ひっかく こうげき!
それをすべてかわしつつ、しかしサトシのパンチも空を切る。
「やるじゃねえか…!!」
「ひひひっ!」
シゲルと空中で交差して着地したサトシの頬から、赤い飛沫が散った。
「ひひ…」
それを見て、シゲルは狂気をさらに濃くする。
「こりゃあ、手加減はできそうにねえな…」
サトシがその拳を握りなおした時、背後からシゲルに勝るとも劣らない殺気の群れが来た。
殺気の源は、二人を遠巻きに見ていたトレーナーたち。
その顔色が、みるみる紫色に変わってゆく。
「メタモン!トレーナーの中に紛れてやがったか!」
あ、やせいの メタモンが とびだしてきた!
「シ…ゲル…さ…」
メタモンに乗っ取られたトレーナーが、そのポケモンとともに、体内からシゲルに向けて触手を伸ばす。
「ひいっ!」
シゲルの きりさく こうげき!
トレーナーの喉を正確に引き裂く、爪による斬撃だ。
攻撃はそれで止まらない。
シゲルの みだれづき!
トレーナーの懐から飛び出したライチュウめがけ、連続の貫手を放つ。
てきの ライチュウは たおれた!
「ひひ!ひ!ひひひっ!」
5かい あたった!
拍手するサトシ。
「さすが…自分の部下相手でも手加減しない戦いは見事。だがな…」
やせいの メタモンの じこさいせい!
目の前では、ゆっくりとメタモンたちが立ち上がりつつあった。
再生したメタモンがしんかをはじめる。
紫色の巨大生物だ。
「な!何なんだこいつらは!」
「敵だ!どうだ、面白ぇだろう?」
そう言って、サトシは腰からモンスターボールをとりはずす。
「ポケモン…ゲットマシン!」
投擲。空中でオープンゲットしたモンスターボールから、巨大なポケモンが現れる。
ヒトカゲ。
「これは…?」
シゲルが息を呑む。
「お前にはこれじゃ!」
いつの間にか背後に存在したオーキドが、シゲルに向かってモンスターボールを投げる。
中から出てくるのは、全長数メートルに成長したゼニガメだ。
「乗れ!シゲル!ようこそ ゆめと ぼうけんと ポケットモンスターの せかいへ!」
「俺はいやだ!」
「うるせえ!てめえも俺もオーキドのじじいに見込まれたんだ!つべこべ言わずに乗りやがれ!」
シゲルに がくしゅうそうちを もたせた!
「操縦はそのがくしゅうそうちが教えてくれる。しっかりハンドル握ってろ!」
抵抗するシゲルを無理矢理ゼニガメの背中に乗せると、
「ヒトカゲ、発進!」
「フシギダネ、発進じゃ!」
「ひいっ!」
ヒトカゲは そらたかくまいあがった!
ゼニガメは そらたかくまいあがった!
フシギダネは そらたかくまいあがった!
「チェエエエエンジ!ゲッターリザードン!」
叫びながらヒトカゲに指示を出すサトシ。
そして、空中で狂気が連結した。
ヒトカゲを先頭とし、ゼニガメとフシギダネがその下に直撃する。
骨が砕けるいやなおとが響き、てきの メタモンの ぼうぎょが がくっと さがった!
一連の動作の結果として完成するのは、通常ではありえないほどの質量を持った巨大なポケモンだ。顔面の部分には亀甲のような模様が走り、
「こいつがゲッターだ。驚いたか!」
真紅の破壊竜、ゲッターリザードンは、その瞳孔に螺旋状の光を走らせると、
「ゲッタァァァァ!」
その背からサトシを射出。
サトシは振りかぶると、
「ポケモン!ゲット!ゲット!ゲッタ-!」
モンスターボールを つかった!
斜線の先は空。
そこにいるのは、物見遊山気分でこの惨劇を眺めていたとりポケモンだ。
モンスターボールはポケモンにぶつかり、
ざんねん! ポケモンが ボールから 出てしまった!
「上等!」
必要だったのはわずかな隙。
逃げ遅れたとりの足を掴み、サトシを再びその背に収納すると、ゲッターは叫んだ。
「ゲッタームクホーク!」
やったー! ムクホークを つかまえたぞ!
眼下に広がるのは、メタモンによって崩壊しつつあるクチバシティだ。
そこに存在する敵に向かい、ムクホークを投擲する。
「ムクホーク!ブウゥゥメラン!」
ムクホークの つばさでうつ こうげき!
音速で投擲されたムクホークがメタモンに激突し、そのまま真っ二つに両断する。
ムクホークは たおれた!
「へっ!ゲッターにかかればこんなもんよ!」
「待て!何か来るぞ!」
シゲルが指差した先は海。
そこに、港に向けて高速で接近する大質量の移動体があった。
「あれは…!」
「サントアンヌ号!?」
クチバシティが誇る豪華客船。ふねのチケットが無いと乗り込むことすらかなわない究極の船だ。
分裂したメタモンの破片は桟橋に寄り、ふねのチケットを掲げる。
そして、サントアンヌ号がメタモンを迎え入れた。
汽笛があがり、船の機関部に火が入る。
向かう先は水平線の向こうだ。
やせいの メタモンは にげだした!

「出航させるな!なんとしてでも追いかけるんじゃ!」
オーキドが叫ぶ。
だが、ゲッターリザードンは水に弱い。
すでに、サントアンヌは水平線を越えつつあった。
「ゲッターカメックスにチェンジする! みんなも、オープン・ゲットじゃぞー!」
オーキドの声に応じて、ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネの三体がリザードンから分離する。
「うわぁぁぁっ!ひっ!」
ゼニガメを先頭に、肉のつぶれるような衝突。
そして、そこにポケモンが出現した。
巨大な砲塔を背負った、みずタイプのポケモンだ。
ゲッターカメックス。
シゲルは あたらしく ゲッターチェンジを おぼえた!
みなもは しずかに ゆれている。
波をけたてて進むサントアンヌに、なみのりで追いつくゲッター。
と、サントアンヌの上に二つの人影が見えた。
「あの速度で進むサントアンヌの上に、人間だと!?」
信じられない光景に、流石のサトシも目をしばたかせる。

「久しぶりだね、ゲッターのトレーナーの諸君」
「ひ、久しぶりだね!オーキドくん」
楽しむように告げた二つの声は、数日前マサラタウンに現れたものと同一のものだった。
「ウツギ!ナナカマド!生きてやがったかぁ!」
「貴様らは何者じゃ!目的は何じゃ!?」
その問いに、輪唱のように答えが来る。
「われらはゲッターとともに生きるもの」
「われらはゲッターとともにあるもの」
「われらははるか昔、高度な文明を持ち地上を支配していた」
理解できない、と言った顔で尋ねるサトシ。
「じゃあ、何で今は地上にいねえんだよ」
対する二人の表情は、笑みだった。
憎しみに満ちたゆがんだ笑み。
「あるとき、宇宙からスターミーとスピードスターとゲッター線が降り注いだんだったね、ウツギくん」
「そう、そしてボクたちはやぶれたせかいに逃げ込んだんだよね…ナナカマドくん!」
「そうだね、つまり、人類は、われらが地上を留守にしていた間に入り込んだ空き巣と同じだよね、ウツギくん」
「そ、そうだね。空き巣だねナナカマドくん」
そこまで言うと、ウツギとナナカマドはその表情を変えた。
喜から奇へ、そして鬼へ。
「「返してもらうぞ!地上を!」」
「させるもんか、こっちにはゲッターって強いみかたがついてるんだ!」
「そんなガラクタに何ができる!」
ナナカマドの叫びに呼応して、サントアンヌが変形を始めた。
「野郎…もう寄生されてやがったのか!」
おや…? サントアンヌごうの ようすが…?
おめでとう! サントアンヌごうは メタルビーストに しんかした!
「なんだ、あいつは!あいつもポケモンだってのか!?じいちゃん!」
「こ…このせかいには まだみぬ いろいろなポケモンが きみをまっておる!」
「進化! 進化! 進化!」
サントアンヌが、そのいかりをゲッターに向かって伸ばす。
サントアンヌの まきつく こうげき!
「シゲル!ドリルじゃ!」
「わかったぜじいちゃん!」
答えと同時、シゲルの腰からモンスターボールが取り外される。
ゆけっ! オニドリル!
空中に出現するのは、巨大な翼を持つ音速のとりポケモン。
オニドリルだ。
それを、ゲッターは鷲掴みにした。
やったー! オニドリルを つかまえたぞ!
振りかぶる。
投擲。
オニドリルの ドリルくちばし!
「ドリルロックを 受けてみろ!」
きゅうしょに あたった!
てきの メタルビーストは たおれた!
オニドリルは たおれた!
「見たか! ゲッターの必殺ぶきを!」
「わははは!やった!やったぞ!」
「ま、まさかゲッターにあのような秘密があったとはね、ナナカマドくん」
「おそろしやゲッター。にげようかね、ウツギくん」
サントアンヌごうは あなをほって ちちゅうに もぐった!
地中から悪夢の輪唱が響く。
「ゲッターを甘く見すぎたようだね、ウツギくん」
「そ、そのようだねナナカマドくん」
「今日は勝ちを譲ろうよ、ウツギくん」
「そ、そうだね、ナナカマドくん。しかし、貴様ら人類に明日はないんだよね」
言いたい放題言って遠ざかってゆくサントアンヌ。
「おい!奴らが逃げるぞ!」
「じいちゃん!あなをほるのわざマシンはないのか!?」
「心配するな、ゲッターは万能じゃ。しかしわざマシンはサトシのボックスにあずけてある。ポケモンセンターまで出直そう」