Getter ALTERNATIVE 04

Last-modified: 2009-05-17 (日) 22:35:25

帝国軍と国連軍の共同で佐渡島ハイヴ攻略を目的とする甲21号作戦が開始された。
17日に並列世界より帰還した武は並列世界に滅びをもたらそうとした自身が因果導体となった原因の究明。
この帰還した世界の救出。そして00ユニット、鑑純夏。
様々な問題に直面しつつも、自分の壊した世界、人、運命に立ち向かうことを武は決意していた。
そして武の帰還し、ゲッターが稼働可能状態になり特殊任務部隊A-01は大幅に戦力がアップしていた。
さらには00ユニットである純夏の操るXG-70b凄乃皇弐型もあり、世界最強の部隊といってもよい状態にあった。
そんなA-01部隊は今、佐渡島に向けてすすんでいた。

「おめえはよくやってんな」
「突然なんです?竜馬さん」
甲板で海を見つめ物思いにふける武の横で竜馬がつぶやく。
「軍曹の一件もあって、自分が因果導体なんていうワケのわかんねぇもんになっちまって。
おまけに幼馴染だった女が00ユニットだったなんてよう。
だが、それでも戦う覚悟を決めた手前はよくやったんじゃねえかって思ってな」
「はは。褒めすぎですよ竜馬さん。今までのオレが駄目だったんです。
オレはまだやっとスタートラインに立てたようなモンですよ」
「しかし、伊隅大尉や速瀬中尉、涼宮中尉、宗像中尉も、おまけに風間先任少尉もお前を一目おいてんぜ?」
「そんなこと言っても、竜馬さん達だってゲッターの一件でみんなから一目置かれてるじゃないですか」
「そうかあ?」
ここでいうゲッターの一件とは、武が帰還してすぐの部隊内の演習でのことである。
ゲッター単機対、A-01小隊のゲッター線カスタム機2小隊という特殊な演習であったが、
結果はゲッターの圧勝。戦術機より2倍強のサイズ比を考えさせない高機動戦闘。
合体変形をとりいれたトリッキーな戦法により、一対多という状況を跳ね除ける活躍をしたのだった。
これが機となり、この戦闘後戦術機へのゲッター線系技術の利用が大幅に進み、戦術機の戦闘力はかなり強化された。
「まさかゲッターがあんなに強いだなんて思いませんでした。これなら人類の勝利も近いかもしれないですね」
武は素直な感想をもらす。だが一方の竜馬は怪訝そうな表情をする。
「だといいんだがな。
だがここ最近の宇宙からのゲッター線照射量の増加、戦術機への本格的ゲッター線の利用。
一部の変種BETAの出現。それに凄乃皇・・・。なんか嫌な予感がしやがる。
まさかとは思うが・・・」
「思うが?なんです?」
「いや、なんでもねぇ」
「――白銀に流か?」
そこの伊隅みちる――A-01部隊の隊長である―がやってきた。
「大尉・・・」
「なにをやっているんだ、こんなところで?眠れないのか?」
「ええ、なんとなく。それで竜馬さんと少し話してました」
「そうか。貴様らはこの作戦が初陣のようなものだからな。
緊張しているんだ。無理もない」
みちるが納得したそぶりを見せる。
「そんな大尉はどうなんだ?ま、大尉なら緊張なんてしねえだろ」
「ふん。私を何だと思ってるんだ?緊張ぐらいするさ。こんな大きな作戦は私も初めてなんだからな」
「へえ。大尉も普通の人間だったか。オレはてっきり鉄の精神してんのかと思ってたぜ」
「りょ、竜馬さん、それはちょっと言い過ぎですよ」
「ほう?ならば白銀。貴様は私のことをどう思ってるんだ?」
矛先が自分に向いてしまったことにぎくりとしつつ武は答える。
「えっと大尉は鉄の女って感じですかね?なんか大尉は強い女性ですし・・・」
「ハァ。なんだ貴様も流と同じ様なものじゃないか。まあいい。
貴様らは早く休め。休息も兵士の務めだ」
「「了解」」
「そこは素直だな。だが、作戦が終わったらおぼえていろよ?」
「はは、了解です」「了解だ」
「それじゃあな」
そう言ってみちるは立ち去って行った。
「へへ、大尉に目ぇ付けられちまったな?タケル?」
「ほとんど竜馬さんのせいじゃないですか」
「でも大尉も強えな・・・。自分の妹もこの作戦に参加するってのに」
「え!?本当ですかそれ!?」
「おう。隼人からちょっとな。だがそういう弱さを見せねえなんて流石大尉だな」
「ええ。そうですね」
「な~に男二人で話してんの?」
そんなところに今度は柏木がやってきた。
「なんだ柏木、おまえも緊張でねむれないのかよ?」
武が晴子に尋ねる。
「ん~、ま、そんなとこ。ところでどう?実戦を明日に控えた天才衛士と新型兵器パイロットの心境は?」
「その言い方やめろって。まぁ緊張はしてるな。凄乃皇のテストもあるし・・・」
「ま、ゲッターとおめえらが居るんだ。きっと大丈夫だ」
晴子の問いに武と竜馬が答える。
「そっか。そうだよね。ゲッターなんてすごい兵器に天才衛士、どれに凄乃皇があるんだもんね。
明日の凄乃皇のテスト、上手くいくといいね」
「うまくいってもらわなきゃ困る。あれに人類の未来がかかってんだから」
「だな。ゲッターは今んとこ乗りこなせるのが俺ら3人だけだかんな。
凄乃皇みてえなヤツはいまの人類にゃあ必要だ」
「テストが成功して、凄乃皇が正式に配備されれば弟たちは戦わなくてすむかな・・・」
晴子がポツリと言った。
「身勝手でしょ。私って」
「そんなことねーんじゃねーか?」
晴子の言葉を竜馬は自然と否定した。
「そうだ。柏木は身勝手じゃないよ。家族のために戦ってるんだろ柏木は?」
「そうなのかな?よく分かんないや」
意外な返答に一瞬困惑する武。
「ん~、やっぱりそういうのって大事なんだよね?」
「どうだろ、オレの場合はいろんな人から教わったからなあ・・・」
武は自分の経験を語る。
「じゃあ白銀君はいいとして、流は何のために戦うの?」
「ん?オレか?オレは大した理由なんざねーよ。ただBETAの連中が気に食わねえ。
そんだけさ。誰かのため、なんてのは考えちゃいねぇ。
気に食わねえ奴はぶっつぶす。それがオレの流儀だ。」
「へー、流らしいねそういうの。私も自分が戦う理由っての考えてみるよ。
じゃあそろそろ寝ようかな。二人ももう寝ないとね。とくに白銀君は。
じゃないとまた誰かが起きてきてその話に付き合わされるよ?」
「ああ、みんな眠れないんだろうな。とくにB分隊の連中は」
「ふふふ、わかってないなぁ。ね?流?」
「はは、そうだな。まったく気づいてねえな」
「え?何が??」
「なーんでもない。じゃ、お休み鈍感クン」
そう言い残し、晴子は戻ったようだ。
「何がわかってないんだよ・・・。竜馬さんは分かってたみたいですね」
「さてな?そういうのは他人に言われて気づくもんじゃねーのさ。
そんじゃあオレらも戻るとしようや。明日は激戦になるだろうからよ。じゃあな」
釈然としない武を置いて、竜馬も戻っていく。
佐渡島ハイヴ攻略戦まで時間はあとわずかとなっている。
武もとりあえずは戻ることにするのだった。
「トマホーク!ブゥメランッ!!」
投げ放たれた巨大な斧がBETAを次々と葬りさる。
「竜馬さん!3時の方向のBETAの群れを蹴散らしてくれ!!弾切れ寸前なんだ!」
武が竜馬に支援要請をする。
「よっしゃ任せろ!ゲッタァァアア!ヴィィィィイイムッッ!!!」
ゲッターから放たれた光がBETAの大群を薙ぎ払う。
波の如く遅い来るその数が武器となっているBETAも、この攻撃により少しばかりその波がおさまる。
そこに伊隅の声がA-01全部隊に響く。
「よし!全機、今のうちに補給をすませておけ!またすぐにくるぞ!!」
「「了解!」」
手際よく消耗した兵装の補給を進める隊員たち。
ゲッターは周囲を警戒しつつ、トマホークを構えなおした。
「よくやったゲッターチーム。ゲッターのおかげで予定よりもかなり早くこの地域の確保ができた。この調子で頼むぞ。」
「へっ!任せてくれや隊長さんよ!」
伊隅からの通信に竜馬が応える。すると隼人から機内限定通信が入る。
「竜馬。あまり調子に乗りすぎてゲッタービームを乱射し過ぎるなよ。まだ起動可能になってから日が浅い。
炉心の調整もまだ不完全なのが現状だ。わかっているな?」
「ああ、わかってるよそんくらい。まだゲッターが完全じゃねえってのは乗ってるオレ自身がよく分かってる」
隼人の言うとおり、ゲッターはまだ完全とは言い難かった。
特に心臓部であるゲッター炉の出力の安定性に問題を残していた。
そして隼人からの通信が終えると、次は弁慶から通信がはいる。
「それよりも竜馬。全部独り占めする気じゃねえだろうな?オレにも出番よこせよ?」
「さあてな?おめぇの出番なんざ本当にあるのかぁ?」
「おい!てめっ!」
「二人ともふざけるのもほどほどにしておけ。そろそろ全機補給が終了する」
「よし、全機移動開始!」
隼人が2人に釘を刺し終えると、伊隅の移動命令が出される。
その瞬間、大地が大きく揺れる。
「な、なんだこの振動は!?」
あまりの揺れに武は驚きを隠せない。
『ヴァルキリーマムより各機。ハイヴより敵増援が地面を掘り進みそちらに移動中。注意せよ』
涼宮中尉から全機に敵増援の知らせが入る。
「敵の増援が地下を?センサーが測定限界ということは増援は4万以上ってことかよ!」
敵増援の知らせに愚痴る武。
その武の目の前の地面を裂いてBETAが出現する。
「タケルっ!」
それに反応しきれない武に冥夜が叫ぶ。
「しまっ―!?」
BETAのトゲ状の腕が武の不知火に迫る。
「オーープーーーンゲェェーートッ!!」
「チェンジゲッタァーースリィィ!!」
そのBETAの背後に一瞬で分離合体したゲッター3が降り立つ。
そして武に迫っていたBETAをつかみ上げる。
「ドぉオオォうりゃ!!」
そして空中へ投げ飛ばした!
「喰らえ!」
そこに柏木と速瀬が弾をぶち込む。
「死にたいか白銀!」
「ほらほら、ぼっとしてないで!」
「す、すみません。速瀬中尉、柏木、弁慶さん」
「ハジをさらすなよ白銀!」
弁慶が武を注意し終えると伊隅が全体に号令を出す。
「白銀は無事だな。よし、敵が多い。小隊単位で対処しろ!兵装自由!!」
「「了解!」」
伊隅の命令でA-01は3手に分かれた。
ゲッターは中央の武たちに合流しBETAを撃破してゆく。
「弁慶、竜馬、ゲッター2でかく乱しつつ対処する!いくぞ!!」
「よっしゃ、オープンゲェエット!」
「チェンジ、ゲッターツゥッ!」
一瞬にして分離合体しそのフォルムを大きく変化させるゲッター。
それを見て千鶴がつぶやく。
「まったく、とんでもない機体ね。ゲッターは。
初めてゲッターチェンジを見たときも驚いたけど、未だに信じられないわね」
「はは、そうだね千鶴さん」
「にゃはは、でも今は目の前の敵に集中しよ!!」
その意見に美琴と壬姫が同意し、すぐに自分たちの目標に向き直る。
「武!ゲッターの動きに合わせられるか!?」
「なんとか!!」
ゲッター2と武の不知火が複雑な軌跡を描きながらBETAの大群を相手どる。
「バックアップは任せるがよい!」
「・・・任せて!」
隼人と武の速すぎる動きに翻弄され隙をさらしたBETAには冥夜と慧が攻撃を仕掛けていく。
その様子を見て伊隅が隊全体に通信を送る。
「神と白銀の撃破率があがっているぞ!このままいくと全部あいつらに食われるぞ!
各機、気合い入れろ!!」
「「了解!!」」
その一言でA-01部隊全体の勢いがさらに増す。
「ゲッタードリルッ!!」
ゲッター2の左腕のドリルがBETAをまとめて串刺しにしてゆく。
「くっ!負けて・・・いられない!!」
それに対抗するように武は両腕に構えたライフルをBETAに向けて撃ち込む。
「武!後がガラ空きぞ!!」
武の後ろを狙って近づいていたBETAに刀を一閃し冥夜が両断した。
「すまん冥夜!だが、まだまだぁ!!」
冥夜に礼を言いつつ、ゲッターのあとを追うように武は推進ユニットを更に吹かす。
「こいつでラストだ!!」
ゲッタークローがBETAの頭部をわしづかみにし、そのまま握りつぶす。
BETAの体液が白いゲッター2を鮮やかに彩る。
「よし。あらかた片付いたな?全機無事か?」
伊隅が呼びかける。
「こちらゲッター。ぴんぴんしてるぜ。それに全員もだ。さてお次の敵はどこだ?」
全員を代表し、竜馬が返事をする。
「隼人さん、合わせろって言ったくせにこっちより数倍のスピードで動きまわるなんて酷くないですか?」
先ほどの戦闘のことで武が隼人に意見する。
「フン。あれぐらいお前ならついて来れると信じてな」
「へ?」
隼人の答えに一瞬戸惑う武。すると、
「ははは!タケル、お主は神からかなり信頼されておったようだな」
「神から信頼されるなんてすごいじゃない白銀」
「そうだよタケルぅ~。神が信じてくれてたんだよ?すごいじゃないかぁ」
「そうですよ。隼人さんが信じてたなんて言うの壬姫初めて聞きました」
「・・・だね」
そんな武の様子を冥夜たちが茶化す。
「ほう、あの神が信じてた・・・か」
さらに伊隅もそれに加わる。
「ちょ、みんななんだよ?じゃあ着いてけなかったオレが悪いのかよ~」
思わず武が反論する。
「あはは~、あんな速さにあそこまでついける白銀クンも十分すごいけどね」
「さすがは天才衛士ってやつ?やるわねぇ~」
柏木と速瀬までもがその輪にはいってゆく。
「フフフ。白銀は人気者だな」
「美冴さん、あんまり虐めるとかわいそうですよ?」
宗像と風間も入ってきたようだ。
「ははははは!!隼人に認められるなんざ滅多にねえぞタケル!」
「そうだ白銀、情けないことなんざもうないぞ?」
そんな武に竜馬と弁慶がフォロー(?)を入れる。
「みんなしてひどい!!」
武はついに半泣きになってしまった。
「はいはい、みんなもいい加減にして・・・涼宮中尉から通信です!」
最後に茜が締めたところで通信が入り、一気に全員の気が引き締まる。
『ヴァルキリーマムより各機。A-02の攻撃予定地点に向けて大量のBETAが移動中。
そちらに向かってきているで注意せよ』
「奴ら凄乃皇に感づいたのか?」
武が驚きの声を上げる。
「BETAの優先撃破順位は高度なコンピューターを搭載した飛翔体が上位だ。
凄乃皇を狙うのも無理はない」
それに隼人が答える。
『なお、それとは別に今まで確認されていない種のBETAがそちらに接近中との報もあり。
こちらにも注意をはらえ』
遙から追加の知らせが伝えられる。
「ケッ!大勢のお客さんに新顔たぁ、バケモンどもめ、なめてやがるぜ」
竜馬が毒づく。
「そうだな。だが凄乃皇の射撃ポイントはなんとしても死守せねばならない!
全機、作戦を伝えるから命令通りのポジションにつけ!」
「「了解!」」

凄乃皇の射撃予定ポイントへ向けて、BETAの大群が谷を突き進む。
進路の先の谷の中央にはゲッター3が待ち構えている。
その威風堂々とした姿は不動明王を彷彿とさせる。
BETAはそれに向け、さらに突き進む。
両者の距離がどんどん詰まっていく。だがゲッターは微動だにしない。
そしてBETAの群れの先頭がゲッターと接敵しようとした次の瞬間――!
「今だ!大雪山、おおぉぉろぉしぃぃいいい!!」
ゲッター3の両腕が一瞬にして伸び、先頭のBETAを空中に舞い上げる!
舞い上がったBETAはしばらく滞空した後、後続のBETAの上に降り積もり、壁となってゆく。
先頭に邪魔され後続のBETAの足取りが乱れたその瞬間、
「今だ!全機再起動!敵のケツにありったけぶちこんでやれ!!」
「うおおおおおおお!」
左右の崖に隠れ主機を停止させていた不知火が再起動し隙だらけのBETAを撃ちぬいてゆく。
「どりゃああ!」
ゲッター3の拳が突撃級を前面の装甲殻ごとぶち抜く。
伸縮自在のゲッター3の拳は勢いを衰えさせることなく、そのまま次々とBETAを貫通する。
ゲッター3の腕で、BETAが数珠つなぎとなっていく。
「必殺、BETA数珠つなぎ・・・」
弁慶が決め台詞をはなつ、が、そこに突撃級が突っ込み、機体に衝撃が走る。
「のわあああ!?」
「バカヤロウ!弁慶!!下らねえこと言う前に周りぐらいみやがれ!!」
竜馬が弁慶に怒号を浴びせる。
ゲッターに体当たりしたBETAはもう一撃くらわそうと、また突進してくる。
だがその背面に砲弾が撃ち込まれ、突撃級は爆散した。
「武蔵坊!突撃級をまとめて始末した手際は見事だったが、そのすぐ後にぼうっとするな!
まだ戦闘は継続中だぞ!!」
突撃級をしとめたのは水月だった。
「は、速瀬中尉!す、すまんです・・・。うぅ情けない・・・。」
自身の失態を弁慶は恥じる。
「弁慶!ちょっとてめえは反省してろ!今度はオレがやる!オープンゲット!!」
そんな弁慶の様子は無視し、竜馬が自分の番だと告げる。
分離したゲットマシンは敵の間を縫うように飛行し、敵の注意を引き付ける。
目標は前方の要塞級。
要塞級と、武、冥夜、慧、千鶴、柏木が交戦中である。
「流クンたち?ってなんてスピードなの!?」
「む、むちゃよ!あのスピードで合体できるわけ!?」
ゲットマシンのあまりの速度に驚愕する柏木と千鶴。
「柏木!委員長!あの人たちなら大丈夫だ!!心配するな!」
「そうだ!それよりもあの者たちに獲物をとられる心配をせねばならんほどだ!」
「・・・この大物は私が仕留める!」
「ヘ!じゃあオレたちでくらってやらあ、彩峰!」
慧の軽口に乗る竜馬。三機のゲットマシンは目標にせまるやいなや急上昇した。
あの3人だからこそできる急激な上昇だ。そして太陽のを背に合体する!
「いくぜ!チェーンジゲッタァアアア!ゥワン!!」
空から赤い巨人が降ってきた。その手には並の戦術機以上の大きさの斧が握られている。
「ゲッタアアア!トマホオォオク!!」
その斧がたやすく要塞級を両断した。
だが着地の瞬間を狙い、別の要塞級が触手を伸ばし、攻撃しようとしていた。
だが、
「やらせないよ!」
「私たちがいることも忘れないでよね!」
柏木、千鶴が長刀でその触手をたたっ切る。
触手を斬られ、ひるむ要塞級。
「とどめだ!」
「好きにはさせぬぞ!!」
「―これでおしまい」
ひるんだ隙を逃さず武たち3人が要塞級を長刀で切り刻む。
「わざわざ隙を見せるなんて余裕だな竜馬?」
「合体まえにてめえが言ったんだろ?隼人。ヤツらはゲッターを優先してねらうってよ」
「なんにせよ狙い通りだな!白銀たちもご苦労さん!」
「礼なら無用よ。武蔵坊。だいたいあなたたちのやろうとしてるコトが分かるようになってきたから」
「そうそう。榊の言う通り。ね?白銀クン?」
「なんでそこでオレに振るんだ柏木?」
竜馬は、冥夜機の長刀の傷み具合を見て通信を入れる。
「長刀が使えなくなったらゲッタートマホークを貸してやんぜ?冥夜」
「フフ、それも悪くないかもな。だが少しばかり大きすぎるな」
お互いに軽い雑談を交えていても彼らの動きはにぶらない。
横浜基地の戦術機,特にA-01部隊の機体は簡易式ゲッターと言えるほどの強化を受けている。
ゲッターに搭載されている炉心に比べれば出力が低いが小型のゲッター炉心もすでに積まれている。
しかも彼らはこの作戦前の数日間、ゲッターという規格外の怪物との演習も経験している。
そんな彼らにかかればほとんどのBETAは敵ではない状況であった。
そう、この時までは―――。

レーダーが飛行物体の接近を知らせる警告音を放つ。
「やっときやがったか。待ちくたびれたぜ!」
接近する飛行物体は凄乃皇だった。100mをゆうに超す巨躯。
その存在感は計り知れないものがあった。
悠然と谷に侵入する凄乃皇。だがそんな凄乃皇を生き残っていたレーザー種の光線が襲う!
光は凄乃皇に直撃し、周囲はビーム特有の閃光につつまれる。
「しまった――!?」
まだレーザーが生き残っていたことに武はしまったと思った。が――。
光が収まり、巻き上げられた粉塵の中から無傷の凄乃皇が姿を現す。
「これが――ラザフォードフィールドの力か。なるほど素晴らしい性能だ」
隼人が冷静に凄乃皇を評価する。
予定通り、凄乃皇は射撃ポイント到着し静止した。
そしてゆっくりと胸にあたる部分の装甲板がひらいてゆく。
「全機、これより凄乃皇が荷電粒子砲を発射する!巻き込まれるなよ!?」
「ここまで来て味方にやられるヘマをするワケないですよ大尉!」
「武の言う通りだ!そんじゃゲッターは予定通り上空に退避する!」
伊隅の命令のあと、全機が所定の退避場所へ移動する。退避が済むと、周囲は再び閃光に包まれる。
空間を引き裂くような轟音、眩いその光に触れたモノはことごとくが消滅してゆく!
その様子は竜馬たちは上空からそれを見、そして荷電粒子砲が自分たちの見慣れているものだと気づく。
「なんだこりゃ!?こりゃまるで―――」
「そう、ゲッタービームだ・・・。まさかあんな短期間で凄乃皇にゲッタービームを装備するとはな――」
「あたりのゲッター線濃度も上昇してるぜ!?間違いない!ゲッタービームだ!!」
そう。凄乃皇の荷電粒子砲は従来の荷電粒子に加え、ゲッター線も加えたものなのだ。
射撃が終了すると凄乃皇の射線上には何も残っていなかった。
非常に高い硬度を持つハイヴのモニュメントすら、すでに原型をとどめてはいない――。
「すげえ。これがありゃ人類は勝てるぞ!!」
その様子に武は自身の気持ちが高揚していくのを感じていた。
だが煙をあげ、崩れ去るモニュメントが武にあるイメージを沸きおこらせる。
戦術機の中で抱き合う自分と冥夜――。それは彼の知らないイメージだった。
そのイメージに疑問を抱き始めた次の瞬間、凄乃皇が地面に墜落していった。
「な、なんだ!?何が起きた!」
「凄乃皇が!凄乃皇が墜落しました!」
あまりの光景にその場にいた全員が唖然とする。
茜の報告に全員は自身の耳を疑うほどであった。
たった一度の攻撃でハイヴのモニュメントまでも消滅させた機体が、突如として墜落――。
垣間見えた希望が一瞬にして崩れ去る。
そこに涼宮中尉から通信が入る。
「全機に通達!先ほどの攻撃でその周囲のBETAは壊滅。ですが例の新型種が接近しています!
よって作戦の変更を告げる。ただちに凄乃皇内の00ユニットを白銀機に回収。
白銀機は00ユニット回収後、連絡される経路を通り母艦に帰還せよ。
その際、他の者は2小隊に分かれ、A小隊は脱出経路を先行し脱出路を確保。
B小隊は白銀機の直援に当たれ。なお、凄乃皇は自爆させる。以上――」
気丈にふるまってはいるがその声に動揺は隠せない。
「「了解――」」
全員もまだショックから立ち直ってはいないが既に次の行動に移るのだった。

突如として機能を停止した凄乃皇。近づく謎の新型BETA。
人類にはたして希望はあるのだろうか―?
武は一人、不安を抱えるのだった。

「ミチル!まだ凄乃皇の遠隔操作はできねえのかよ!?こいつら、斬っても再生しやがってる!」
凄乃皇に近づくBETAを次々と斬り払っていく赤い巨人、ゲッター1。
だが、やられているBETAの様子が先ほどとはかなり異なっていた。
今までの奴とは違い、今ゲッターが戦っている奴らはかなり人型に近かった。
2本の腕に、2本の脚。
人間との明確な違いはその大きさ、口元に生える凶悪な牙、鋭利な爪。黒い体表皮。
そして無数の目玉・・・。
頭にあたる部分をやられれば通常のBETAと同じく即死するが、こいつらは腕一本程度なら再生が可能だった。
また、スライム状になり、他の個体と合体し、より巨大な個体となることまでも出来るのだった。
「まだだ!ML機関とゲッター炉を無理やりリンクさせてるもんだから、少し手間取ってる」
「早くしろよミチル!
それにしてもこいつ等、ゲッター線で進化したなんてこたぁねぇよな!?」
手当たりしだい、斧で新種のBETAを斬り殺しながら竜馬が叫ぶ。
「わからん!だが可能性はある!!ここ最近のゲッター線照射量の増加と無関係とは思えん!」
「だがよ隼人!生き物がそんなに早く進化するもんなのか?」
「弁慶、こいつらBETAは宇宙から来た未知の生物だ。オレたちの常識が通用するとは思えん!」
「け!じゃあ目の前にいるこいつらはさしずめベータの進化したインベーダーってトコだな!」
ゲッターの拳がインベーダーの頭部を砕く。
今、凄乃皇は内部で伊隅が自爆装置の遠隔操作の不調を調査し、外ではゲッターが単機で凄乃皇を守っている。
武は00ユニット―鑑純夏―を回収し、他の者たちとともに母艦へ撤退していた。
インベーダー達が襲来したのは武たちが撤退してすぐだった。
竜馬たちはBETAのことは詳しくないので、こいつらのような種類もいるのだと認識したが、通信で報告すると新種だと判明したのだった。
インベーダーはBETAよりも強く、こいつらのせいで各隊の進軍が思うようにいかなくなってきてもいた。
だが、この佐渡島ハイヴでも遭遇率は低く、この周囲にいたインベーダーはゲッター、そして凄乃皇に集中していた。
「まるでこいつら、凄乃皇とゲッターを狙ってるようだな!」
竜馬があまりのインベーダーの執拗さに愚痴る。
「もしかしたらその通りかもしれん。他の隊からの奴らのスキャン情報によると、奴らから微量のゲッター線反応があったそうだ」
「じゃあまさか!?」
「神の言うことが本当なら、奴らはゲッター線を摂取している可能性があるか・・・」
弁慶と伊隅が驚きをしめす。
「ただでさえ、ゲッター炉のように強大なエネルギー源に利用できるゲッター線だ。
生物に与える影響も計り知れぬということか・・・」
凄乃皇の調整をしながらも、伊隅は仮定を述べる。
「かもしれんな。だが今はそんなことを言ってる暇はなさそうだ!」
ゲッター2にチェンジし、即座にインベーダーたちに隼人は風穴をあけていく。
ドリルの回転する甲高い音と、インベーダーどもの断末魔の叫びが気味の悪いハーモニーを奏でる。
と、ゲッター2の脚を触手がからみつく。
「何!?しまった!」
絡みついた触手は岩に擬態していたインベーダーのものだった。インベーダーは絡みついた触手を力まかせにふりまわす。
「ぐおおおお!?」
「があああ!?」
岩に何度も叩きつけられ、竜馬たちはたまらず声をあげる。
「流!神!武蔵坊!大丈夫か!?」
芳しくない状況に伊隅は不安を覚える。先ほどまで圧倒的有利だったゲッターでさえ、手こずる敵の出現に。
BETAの新種の噂は聞いていたが、まさかここまで強力なものだとは想像だにしていなかった。
と、触手インベーダーに弾丸が撃ち込まれ、爆散した。
「な、何が起こったんだ?」
ピンチから脱したが、先ほどの手助けが何処からされたのか隼人は確認する。
見ると、丘の上に戦術機が立っていた。
そしてその戦術機からゲッターに通信が入る。
「あっぶないトコロだったねー。大丈夫だった?」
「な!柏木ぃ!?てめえなんで戻ってきやがった!」
「ちょっと推進ユニットを損傷しちゃってね。
どうもこのままじゃ帰還はムリそうだったから流クンたちのゲッターにでも乗せてもらおっかなーって」
「ふ、何にしても助かったぞ柏木。正直危ないところだった」
半分地面に埋もれた機体を立て直す。窮地を脱したとはいえ依然敵の数は多い。
「まったく柏木が来てくれなきゃヤラレちまってたぜ。まったく情けない」
「あはは~。グッドタイミングだったわけね」
ピンチが去り、ふっと気を抜くゲッターチームと柏木。
「なぜ勝手に戻って来た!黙って戻ってくるヤツがあるか!」
「すいません。無線封鎖中でしたから・・・」
「まったく・・・。低出力通信は許可していたはずだがな」
「あ、はは。忘れてました」
柏木が無断で戻ってきたことを伊隅が咎める。
「だがおかげで助かった。何にせよ、あのままじゃ不味かったからな」
そんな柏木を隼人がフォローする。
そんな中で大物をやられたからか、インベーダーたちはまるで様子を見るかのようにじっとしている。
そのお蔭で、隼人はゲッターの損傷状況の確認をゆっくりとすることが出来た。
そうしていると、先ほど倒したはずのインベーダーが再びスライム状となり、あろうことか柏木機の背後で要塞級の姿となっていた!
地面を這うように進んでいたため、レーダー捉えきれなかったなかったソレに、柏木は反応が遅れる。
「しまった――!?」
すでに敵は触手を柏木に向かって振り始めていた――。
衝撃が柏木を襲う。が、要塞級の攻撃を喰らったにも関わらず自分の意識がはっきりしている。
死とはこんなものなのかなーと考えていると、隼人の声が聞こえてくる。
「これで貸しは返したからな」
見ると自分の機はゲッター2に助けられていた。
自分を襲ったインベーダーはゲッター2のドリルをモロに食らい、今度こそ絶命したようだ。
「あっちゃー、せっかく神クンに貸し作ったのにあっという間に返されちゃった」
軽口を叩いてみるが、どうやらさっきのインベーダーの攻撃はわずかにかすっていたようだ。
損傷を確認すると左腕が吹き飛んでいる。今の自分の怪我の軽さも運が良かったと言えよう。
「もうその機体はダメだ。早くこっちに乗り移れ」
「じゃあお言葉に甘えて」
ゲッターのハッチが開き、柏木は即座に乗り移る。
「せまいが我慢してくれ」
どうやらジャガー号での隼人との相乗りになるようだ。
「大丈夫か、柏木?」
伊隅が柏木の身を案じる。それに柏木は無事であることを伝える。
「ミチルさんよう、それよりそっちはどうなんだ?」
いつの間にか下の名を呼び捨てにしている竜馬を咎めようと思ったが、今はそれどころでないと割り切り、伊隅は答える。
「駄目だな。遠隔操縦は無理なようだ。手動操作での自爆しかない――。」
「な――」
凄乃皇の遠隔操縦装置はエラーにより、使用不能となっていた。
その場合、手動での自爆しか道は残されていない。
凄乃皇をこの場に残すことはオルタネイティブ4存続をも脅かすことになる。
伊隅はそれを知っており、苦渋の決断をするしかなかった。
「しかたあるまい。作戦の開始前から、こうなる可能性も考慮していた。
なぁに。大量のBETAをみちずれにするんだ。犬死じゃあない」
自分を納得させるかのように伊隅は語った。
「――いや。まだ手はある」
その考えを遮るかのように隼人がつぶやく。
「隼人!全員が助かる道があるってのか!流石隼人だ!」
その言葉に弁慶が喜ぶ。
「どういう手なんだ?てめえの思いついた手ってのはよ?」
「そうだ。手動操作以外に何か方法があるのか?」
竜馬と伊隅が隼人にその方法を尋ねる。
「ああ、だがその前に香月副司令に聞かねばならんことがある。柏木、通信を副司令に繋げてくれ」
「わ、わかった」
隼人の膝の上に乗る形で同乗している柏木のおかげで、一部の操作パネルは柏木が操作する方が簡単となっていた。
隼人の言うとおりに本部との通信を開く。
「なに?私に聞きたいことって?」
「凄乃皇に積んでいるゲッター炉心、あれはオレがあんたに教えた通りの構造か?」
「―ええ。あなたが提出してくれた資料通りに作ったものよ。一部のパーツは間に合わせで少し違うけど」
「だが機能や構造はオレの設計図通りというワケか――。なるほど流石はあんただ。
あれだけのものを短期間に作っちまって凄乃皇に搭載するとは」
「それ、誉めてるつもりかしら?でもあなたの言う通り、構造はあなたの設計と同じよ」
2人の間での会話を聞いていても、他の者にはこの状況を打破する方法が見えてこない。
「えっと、神?そろそろ私たちにその方法を説明してくれないか?」

しびれを切らした伊隅が隼人に説明を求めた。
「ああ、すまない。何、簡単なことだ。オレの設計したゲッター炉はまだ不完全でな。
サイズもだが―。まず出力をある一定以上にすると暴走してしまうんだ。
今回はその欠陥を利用させてもらう」
「ああ成程な」
「そっかーそれなら何とかなりそうだね」
伊隅と柏木はどうやら理解したようだ。が――。
「あ?どういうことだ!オレにも分かるように説明しろぉ!!」
「情けない。さっぱりだ・・・」
どうやらこの2人にはピンとこないらしい。
「ようは、だ。凄乃皇のML機関を再始動させる。この際ML機関の減速剤を投棄する作業を手動操作でせねばならんが
ML機関を暴走させ自爆させるためにはもう一つ手がある」
「だからそれがなんなんだよ!」
「ゲッター炉心だ。これを暴走させ、起爆剤がわりに使う。
その場合の威力はG弾を軽く超える計算になる。だがこの方法にはひとつ欠点がある」
「なんなんだその欠点てのはよう」
隼人は一拍おいて再び語りだす。
「ゲッター炉心を暴走させるためにゲッタービームで火をいれねばならんことだ。
一定出力で暴走する炉心だ。暴走しないために当然リミッターをもうけてある。
このリミッターを一瞬でも超えるために外部からエネルギーを与えなくてはならんのだ。
だからゲッターでビームを撃ちこんだあと、爆発から逃げきれるかどうかの賭けとなる」
隼人の言葉に伊隅と柏木が驚いている。
「な、危険だ!私一人で済むかもしれんことにお前たちを巻き込めるか!」
伊隅が即座に抗議する。
「だが、さっき本部から来た情報によると一部にBETAが本州に向かっているらしい。
やつらも巻き込むにはこの方法しかないのも事実だ」
「それは――。」
隼人の言い分に口ごもる伊隅。すると、
「へっ!ならその方法とやらをさっさとやろうじゃねーか!」
「流クン!いいの?巻き込まれちゃうかもしれないんだよ!?」
「柏木ぃ~大丈夫に決まってるじゃねえか」
柏木の反論に余裕たっぷりで弁慶が言う。そして竜馬がニヤリとしながら言い放つのだった。
「オレたちが死ぬわきゃねーだろ?」

「よし各部異常ないな?」
「うん、オールグリーンだよ! いつでもいける状態!」
「竜馬あ! 頼んだぜえ!」
「流、失敗は許されん。必ず成功させるぞ!」
隼人・柏木・弁慶・伊隅がそれぞれに機体のチェックを終える。
全軍の撤退はすでに完了しており、文字通り準備完了となっていた。
ここで伊隅は凄乃皇の主機の調整をしたあと、ベアー号に乗り込み不本意ながら弁慶と相乗りとなった。
ゲッタービームを放ち、そのまま離脱する以上、メインパイロットとなる竜馬の邪魔をしないためだ。
「へへ! 任せとけっての! どうやらこっちのゲッター炉心も心無しかさっきより出力上がってやがるぜ!」
竜馬の言うとおり5人乗りとなり、生き残るという一つの目的でまとまった影響なのか、ゲッター炉の出力は高い値を示していた。
そして凄乃皇のML機関、ゲッター炉心に惹かれ島中のBETAとインベーダーが集結しつつあった。
「さあて、そんじゃま、おっぱじめるとすっか!」
ゲッターに乗る全員の意識が集中する。すぅーと深呼吸を竜馬がする。そして次の瞬間勝利のために叫ぶ!
『ゲッタァアアアアア!!! ヴゥィイイイイイイイィム!!!!!!』
竜馬の叫びとともに放たれたゲッタービームは凄乃皇のゲッター線収集アンテナに命中し、その炉心の出力を一瞬ではあるが跳ね上げる。
それにより炉心は暴走状態となり、その影響で凄乃皇の全身が緑色に光輝く。
「よし! 反応が始まった!! 計器でもML機関の暴走を確認した。退避するぞ!」
「よっしゃあ! ゲッタァアア、ウゥウィンングッッッ!」
凄乃皇の自爆シークエンス開始を確認し終え、ゲッターの背から紅の翼がはえる。
「相変わらず、どういう構造してんのか謎ねえ」
ゲッターの無茶変形に慣れたとはいえあまりの無茶苦茶ぶりに柏木は呆れる。
「柏木、しゃべってると舌を噛むぞ」
隼人が言い終えるやいなや、グッとゲッターが屈伸したかと思うと足が伸びる反動を利用し、大きくジャンプする。
そして空中にある壁を蹴り飛ばすかのような動きをし、直角に曲がる!
「ぐっ!」
急激な動きに流石の伊隅もうめき声をあげる。
強化装備があってもこれ程の衝撃だ。生身であったなら体がバラバラになっていたかもしれない。
同乗し、後ろで自分を支えている弁慶はさぞ辛いだろうとなんとか振り向いてみると、
なんと弁慶は予想と違い、余裕綽々といって感じでこちらにむけて
「隊長ぉ、だいじょおぶか?」
と微笑を浮かべながら答える始末だ。これには、だいじょうぶだ、と小声で伝えたあと
こいつ等は一体どんな強化装備を施してるんだ?と疑問に思わずにはいられなかった。
それは柏木も同じで、伊隅と違い、隼人の心配をする余裕もなかった。
無論、隼人も心配される必要はなかったのだが。
こうして全速力で逃げるゲッターだったが凄乃皇の爆発の速度の方が早いのか、すでにゲッターに追いつきそうになっていた。
「ありゃ、ゲッタービームの出力が高すぎたか?」
先ほどのビーム照射に少し気合いを入れすぎたかと反省する間もなく、ゲッターが徐々に光に包まれる。
「やっべぇえ! こりゃやっちまったか!?」
「え、嘘!? 嘘でしょーーー!!」
「だから言ったんだ! 無茶だってーー!」
柏木と伊隅が叫び声をあげる。そしてゲッターは完全に光に飲まれたのだった――。

「げ、ゲッターロボの反応消失!」
「な、嘘でしょう!? そんなはずないでしょう!!」
母艦のレーダーでゲッターの反応消失を涼宮遙が告げる。
その事実をありえないと、武が叫ぶ。
その後ろでは伊隅たちの安否を心配していたA-01部隊の面々が揃っていた。
「まさかあんなに自身満々に啖呵切っておっ死ぬなんて許さないわよ・・・」
これには冷静な夕呼も動揺を隠せないでいた。
「竜馬・・・。そなたたちは死なぬのだろう・・・?」
冥夜が祈るように呟く。
全員が伊隅たちの生存を絶望視していた。
「――! いえ、反応ありました!! ゲッターです! ゲッターロボです!」
遙の言葉にその場がどよめく。見るとレーダーにゲッターの反応を示すマーカーが写っていた。
だが、消失寸前にいた位置とはずいぶん違う場所にその反応はあった。
「応答してください! 聞こえますか!? 伊隅隊長? 流少尉?」
遙がゲッターにコールする。そしてしばしの静寂の後――
「あー、こちらゲッターロボなんとか無事だ。だけどさっきの爆発の影響で動けなくなった。
だが全員無事だ。隊長も柏木も、もちろんオレら3人もピンピンとはいかねえが・・・。
出来れば迎えに来てもらいてぇんだが、その手配をよろしく頼む。以上」
竜馬の報告にA-01部隊の全員が安堵し、胸をなでおろす。
「了解。ご苦労様。すぐに回収部隊を向かわせるわ。みんなあなたたちの帰りを待ってるわ。
それと、生きててよかった」
「了解。どうも通信機の調子も悪いみたいだ。あとは任せた」
遙からの労いの言葉を聞き、通信を切る。
遙も竜馬たちが疲れているのを察して通信機を置くことにした。
「――――。隼人、弁慶。気絶してねえか?」
2人に意識を保っているかどうか問う。
「ああ、大丈夫だ。柏木は気絶してるようだがな」
「こっちも平気だ。爆発に一瞬巻き込まれたんだ。流石にオレも打撲しまくりだ。
隊長さんも出血してる。今手当し終わったところだが――」
3人の間に無言の静寂が流れる。あおの静寂を破るように竜馬が言葉を紡ぐ。
「見たか?あの爆発に巻き込まれた瞬間に」
竜馬の言葉にギクリとしつつ2人は答えた。
「ああ、見た。この目でしっかりとな」
「ありゃ一体何なんだ。オレには、まるで――」
「ゲッター・・・。だろ?」
3人は混乱していた。あの閃光の中で見たモノ・・・。その姿に。

時は少しばかり遡り、爆発に巻き込まれる瞬間。
「ちくしょう! ダメだったか!!」
機体を激しい衝撃が襲う。計器もショートし、コクピット内で小規模だが爆発が起きる。
ゲッターはすでに右腕と左腕が崩壊いており、このまま行けば全壊は免れなかった。
「情けない!! こんなところでオダブツとは!」
弁慶が無念、と言ったようすで念仏を唱える。
「くっ! まさか計算よりも爆発の規模が大きいものになっているとはッ!」
隼人が予想外の事態に愚痴る。あまりの衝撃に伊隅と柏木はすでに意識を手放していた。
「いいやまだだぁ!! まだこんなトコロで死んでたまるかよお!!
てめえら、力かしやがれええ!!!」
だがまだあきらめない竜馬はグリップを握る手に力を入れ、気合いを入れる。
「そうだ。ここまで来たんだ。まだ死ぬわけにはいかん!」
隼人も操縦管を握りしめる。
「けっ。こうなりゃヤケッパチだ! やってやろうじゃねえか!」
弁慶も2人にならい気合を入れる。
「「「うううおおおお! たかが爆発ごときに殺されてたまっかあああ!!」」」
そして3匹の獣の叫びが響きわたり、ゲッターの全身を緑の光が包み込む。
すると先ほどまでゲッターを襲っていた衝撃がやんだ。
まるで壁か何かがゲッターを守っているかのように。竜馬たちはその“壁”を見つめた。
見れば、それは光の巨人であった。いや、どこかで見覚えのあるモノだ。
『死なせる訳にはゆかぬ。この世界でのお前たちの役割はまだ残されている』
どうやらソレは爆発のエネルギーを防いでいるのではない。それどころか、吸収しているのだった。
「な、なんだてめえはぁああ!!」
未知の存在に竜馬たちは警戒した。
『知っているはずだ。リョウマ、ハヤト、ベンケイ・・・。思い出せ。思い出すのだ』
ソレは竜馬たちに向き直る。
その姿はまるで――。まるで―――。
「オレの知らないゲッターだとぉお!?」
そう、ゲッターロボだった―――。
『さあ、再びお前たちの場所へ戻りこの世界の人類を導くのだ。そして、その時は近い』
謎の光のゲッターは竜馬たちのゲッターをその手で握りしめ、爆発圏外まで放り投げた!
『忘れるな――。その時は近い・・・』
「うおおお!? てめえは一体ナニモンなんだぁあ!!?」
こうしてゲッターはレーダーの反応消失のポイントから離れた別のポイントへと移動していたのだった。

「一体アレは何だったんだ・・・。いつか、コレと同じことがあったような・・・。
いや、ありえねえ。ありえねえのになんだ? このぬぐいようのねえ既視感は」
「デジャビュ・・・か。だがそれにしては見覚えがありすぎる」
「オレは逆にアイツの視点からああいう事をしたような気が・・・」
あまりの突飛すぎる出来事に3人はこれ以上言葉が出ない。
見たことはない筈なのに、いつかどこかで見たおぼえがある。
これが武の言っていた因果導体というものなのであろうか?
だとすればアレは自分たちがこの世界に招き寄せたモノなのか?
それとも自分たちがあの存在のようなモノによってこの世界へ送り込まれたのだろうか?
あまりに大きな謎に頭悩ませていると、回収部隊がもう着いたのか、通信を送ってきていた。
「考えても分からねえもんは仕方ねえ。今はあいつ等に無事だってこと見せつけねえとな」
回収部隊に連絡をとるべく、竜馬は再び通信機のスイッチをいれる。
その時は近い―――。一体その時とは何なのか。そしてあのゲッター。
すべては未だ謎のままであるが、今はそれよりも優先することがある。
ひとまずこのことは置いておこう――そう竜馬は判断するのだった。