Getter ALTERNATIVE 06

Last-modified: 2009-05-17 (日) 02:32:17

「これから、オリジナルハイヴ攻略作戦『桜花作戦』について説明を行うわ」
横浜基地、ブリーフィングルーム。現在、ここで夕呼から武たちへの作戦の連絡が行われている。
先の戦闘により、横浜基地は壊滅的な打撃を被った。
基地内の戦術機はそのほとんどは消耗しきり、動ける戦術機はごくわずかである。
中でも、ゲッターロボとそのパイロットの損失はかなりの痛手となった。
A-01部隊の損耗も激しく、幸い戦死者は出なかったものの、武、純夏、冥夜、千鶴、慧、壬姫、美琴、以上の7名以外は次の桜花作戦に参加できない状況である。
純夏は参加できるものの、今行われているブリーフィングには来ていない。
ODL劣化をこれ以上防ぐため、彼女は作戦開始ギリギリまで安静にしているからである。
「――というわけで、ウチの基地から桜花作戦に参加できるのはあんた達A-01部隊のみよ。何か質問は?」
千鶴が手をスッとあげる。
「桜花作戦に私たちだけが参加するのは分かりましたが、肝心の戦力はどうなるんですか?
使える戦術機はもう残ってないと思うんですが……」
「いい質問ね。それについては今から説明するわ。
榊の言う通り、現在横浜基地にろくな戦術機はないわ。あっても旧式の激震程度。
とてもじゃないけど、凄乃皇のハイヴ侵攻の護衛には力不足ね。
でも、最後の隠し玉が残されていたの。彼らが……、ゲッターチームが命をかけて守り抜いてくれた遺産がね……」
「……副司令、その遺産とは何なのでしょうか。私たちにはまだその存在は知らされていないのですが?」
冥夜が未だ説明されぬ『遺産』の正体を尋ねる。
ここにいるA-01の全員がまだ知らされていない事実。
竜馬たちがその命に代えても遺してくれたものを。
「実はまだこれは秘匿される予定だったのよ。少なくとも今の段階で使用するつもりはなかった。
なんせまだシュミレーションだけでテストもろくに済ませてないんだもの。
でも、これを今回使わないと、私たち人類に未来(あす)はない……」
「そ、そんなにすごいものなんですか?」
「ええ。素晴らしいものよ、珠瀬。なにしろ、人類初の量産型ゲッターロボですもの」
「「「「「「えええーーー!?」」」」」」
あまりの驚愕の事実に全員が驚きの声をあげる。
「驚くのは無理ないわね。だって極秘事項だったんだもの」
そんな中夕呼はケロリとした表情で続きえを話しだす。
「開発は、そうねぇ、神のゲッター線の戦術機への利用あたりくらいから始まったのかしら。
機体設計は神がものすごく早く仕上げてくれてね。そのついでに戦術機へのゲッター線加工も行われたの。
で、設計図は出来てシュミレーションも早い段階で終わったんだけど、肝心のゲッター炉心の量産が遅れてね。
一体はゲッター炉心を使わないタイプとして造ってたんだけど、もう一体に手間取ってね。
最近やっとゲッター炉心の量産に成功、ついでに凄乃皇にも流用して戦力アップ。
あとは組み立てるだけ、って所までこぎつけてたの。だからあとはゆっくり時間をかけて完璧に仕上げようと思ってたのよ。
でも今回の戦闘で戦術機はほとんどパア。桜花作戦の戦力として組み立てが急ピッチで行っているの。
でも完成させるためにパーツが少し足らなくてね。基地内の全ての物資をつぎ込むハメになってもまだたらなくて。
でも近衛衛士隊の月詠中尉の計らいでね、彼女たちの部隊の武御雷と、倉庫にあった武御雷から部品を提供してもらったの」
「月詠たちが……なんと」
意外な人物たちの名と、その行いを聞き、冥夜は思わず涙ぐむ。
「……それで、やっと完成したわ。人類の希望。彼らの残したおおいなる遺産。
ゲッターロボG、そしてネオゲッターロボが」
「…ゲッターロボG。ネオゲッターロボ……」
武が思わずつぶやく。
自分たちの新たなる力。そして人類の希望。
この2機のゲッターと凄乃皇でオリジナルハイヴを攻略する。
流石に不可能かと思ったが、もしかしたら、出来るかもしれない。
そんな期待に胸が膨らむのを確かに感じていた。
「この2体のゲッターの説明を簡単にするわ。
ゲッターGは量産も視野に入れたゲッター炉心式のその名の通り立派なゲッターロボよ。
彼らの使用していたゲッターロボと同程度か少し劣る程度と思ってちょうだい。
本当はゲッターを超えるつもりだったんだけど、時間がなくてね……。
次にネオゲッター。こっちはゲッター炉心を使わないタイプのゲッターロボよ。
プラズマ駆動にすることで新たな可能性を見出そうとした機体よ。
まあ詳しい話は格納庫で直接メカニックから聞いてちょうだい。
で、なんであなた達がこのゲッターのパイロットとして選ばれたかというと、答えは簡単。
この基地でゲッターと作戦行動を共にしたり、シュミレーターや同乗の経験があるのがあなたたちだけだからよ」
夕呼の説明に全員が納得する。なるほど、確かにゲッターに乗ったことがある人間はゲッターチームの3人を除けば自分たちしか居ない。
そして凄乃皇の護衛という任務にもA-01部隊は適応している。
これ以上の人選はありえない、と思える内容だったからだ。
「で、最後に各ゲットマシンのパイロットを任命するわ。言っとくけど、これはあなたたちのこれまでの戦績とシュミレーションのデータで決めたから。
異論は認められないわ。いいわね?」
全員が静かにうなづくのを見てから、さらに続ける。
「まず、ドラゴン号には白銀武、ライガー号には珠瀬壬姫、ポセイドン号には鎧衣美琴よ」
「「「了解!」」」
「よろしい。次に、ネオイーグルには榊千鶴、ネオジャガーには御剣冥夜、ネオベアーには彩峰慧」
「「「了解!」」」
「いい?桜花作戦の成否に人類の命運がかかってるわ。くれぐれもこのことを肝に銘じておきなさい。あと、白銀には凄乃皇の操縦サポートも行ってもらうから。
あとは格納庫で実機で確認してちょうだい。以上、解散!」
解散の声のあと、敬礼をし、格納庫へと向かうべく、武たちはブリーフィングルームをあとにしようとした。
そこを武だけ、夕呼が呼びとめる。
「なんですか? 先生」
「白銀、わかっていると思うけど、凄乃皇には鑑が乗っているわ。しかも今回は彼女とあなたを繋ぐために、社も同乗する。
守りながら攻める、辛い戦いになると思うけど、それでも覚悟は出来てるわね?」
「今更なにを言ってんですか先生。オレはこの世界に戻ってきた時に決めたんです。もう逃げないって。
それに、今までなんの関係もないのにオレに協力してくれた竜馬さんや隼人さん、弁慶さんに顔向けできるようにも、必ずこの作戦、成功させますよ!」
武の言葉に、夕呼は表情を和らげる。
「聞くまでもなかった、ってトコかしらね? じゃあ行きなさい。ただでさえ、あんたは他の連中より大変なんだから!」
「了解!」
ビシッと敬礼を決めると、足早に格納庫の方へと走り去る。そんな武の背中を夕呼は頼もしく感じた。
「ふふ。あいつらのおかげかしらね。あんなにたくましくなっちゃって」
そう一人呟くと、彼女は今、彼女がやるべきことを成すため、研究室へと向かう。
はたして、人類に未来(あす)はあるか?その答えを知る者はまだいない。

横浜基地ではゲッターGとネオゲッター、そして凄乃皇の打ち上げ準備が進められていた。
大気圏外からオリジナルハイヴへ接近するためだ。
ゲッターはなんとか完成し、今はゲットマシンの状態で三段式の発射台に載せられている。
「いよいよだな……」
すでにドラゴン号に搭乗している武が、感慨深そうに言った。
「そうね。この作戦が成功すれば、BETAと人類の戦いはひとつの区切りとなるでしょうね。
だからこそ、私たちはこの戦い、負けることは許されないわ」
「おいおい、委員長。重要な作戦なのは分かってるけど、そんなに気負うなよ。
あんまり緊張しすぎても、ダメだろう?」
「ふふ、そなたの言うとおりだなタケル。榊、少し肩の力を抜いてもいいのではないか?」
「分かってるわ、そんなこと。でも、どうしても緊張しちゃうのよ。自分でも分かってるんだけどね」
千鶴が告げるとそれに対して慧が言う。
「……隊長だからって気負いすぎ。大丈夫、私たちならきっと成功する」
「あら、彩峰、あなたから気遣われるなんて珍しいこともあるのね。でも大丈夫よ、そんなこと分かり切ったことだもの」
「……分かってるならいい」
「へへ、きっと慧さんも緊張してんだよ。僕だって緊張してるんだもん」
傍目にはまったくリラックスしてます、と言った様子で美琴が言う。
「そうですよ。壬姫も緊張しっぱなしです」
「はは、そうだよな。緊張するよな。かく言うオレもガッチガチに緊張してんだけどな!」
武の一言にみんなが「なんだぁ」「やっぱり」などと言い、笑う。
みな、この一戦がどれほど重要かは理解している。だからこそ、冗談を飛ばしたり、雑談することによってその緊張をほぐそうとしているのだ。
「白銀さん、凄乃皇の準備も出来ました。純夏さんもいつでも行けるって言ってます」
「分かった霞。委員長、いや隊長どの、部隊全員、用意できました!」
「もう、白銀ったら。まあいいわ。こちらA-01、準備完了しました。いつでも行けます」
武から連絡を受け、千鶴は管制に報告する。
その報告をうけ、発進カタパルトの角度も大きくなっていき、発進カウントダウンが始まる。
「――5、4、3、2、1……よし! ゲッターロボ、発進!!」
「「「「「「発進!!!」」」」」」
カウントがゼロになった瞬間、全機が一斉に飛び立つ。
それを基地にいるすべての者が見送り、そして彼らの帰還を信じ、空の彼方へと消えてゆく姿をみつめつづけたのだった。

大気圏外。今、ゲッターと凄乃皇たちは他の打ち上げられた部隊と合流し、オリジナルハイヴへと向かっていた。
「――となるから、戦況からしたハイヴへの侵入口はここになるから、各自確認を怠らないで。
それと、この作戦は凄乃皇の防衛が最優先事項になっているから、それを忘れないこと。
残念だけど、私たちのゲッターにはオリジナルハイヴのコアを破壊できるほどの高火力兵器は搭載されてないわ。
現状、オリジナルハイヴのコアを破壊できるのは凄乃皇のゲッター荷電粒子砲のみよ。
でもこれは、今の不安定な凄乃皇のML機関の都合で1発ないし2発のみしか撃てない。
発射の最終判断は白銀に任されてるけど、何にせよ凄乃皇への過剰な負担は与えられない。
だからこそ私たちがゲッターで守り抜くの。凄乃皇が人類最後の希望だということ、肝に銘じておいてね。
以上が、作戦前の最終ブリーフィングよ。いいわね?」
「「「了解」」」
千鶴によるブリーフィングも終了し、大気圏への再突入のタイミングも迫っていた。
そして再突入の時が来た。
武たちだけでなく、各国から集合した部隊もともに再突入を開始し、段々とオリジナルハイヴに近づいていた。
が、その時地平の彼方より無数の光が飛んできた。
光線級の攻撃である。
「なんてことだ! 奴らこんなとこまで攻撃を!」
「おちつけタケル! そんなことより、このままでは我らは全滅ぞ! 何か手はないのか!?」
武が愚痴るが、冥夜がそれをいさめ、事態の解決法を考えていた。
すでにいくつかの部隊がレーザーにより迎撃されかけている。
「仕方ないわ! みんな少し無茶だけど、大気圏を突入しながら合体よ!
凄乃皇の防衛は他の部隊が身を持って防いでくれるらしいから、私たちは合体して地上の光線級撃破をする!
フォーメーションはゲッターライガー、並びネオゲッター2!」
「「「「りょ、了解!」」」
千鶴の一声のあと、ゲットマシン各機が最大加速に移る。
超高速で、大気圏を突入しつつ、レーザーを回避しながらの合体と、非常に無茶ではあったが彼らはそれを躊躇うことなく実行へ移したのだった。
幾筋のも光を避けつつ、大気との摩擦により、ゲットマシンは赤くなる。
そのままスピードは落とさずにそれぞれが直列に並ぶ。
そしてライガーに乗る壬姫、ネオジャガーに乗る冥夜が右手のレバーを押しながら叫ぶ!
「チェーンジ! ゲッターーーァア、ライガーーーっ!!」
「チェンジ、ゲッター―ットゥーー!!」
そのかけ声のあと、各機がドッキングする!
あっという間に変形をしたかと思うと、先ほどよりもさらに高速で地上へと降り立っていく。
後続の部隊からみれば、それは一瞬にして姿を消したかのごときものだった。
2機のゲッターが見えなくなり、しばらくすると、光線級の攻撃が徐々に止んでいく。
こうして残った部隊は、無事に地上へとおりることが出来たのだった。
それを見ていた霞も驚きを隠せない。
「すごい。あれが白銀さんの、ゲッターロボの力。純夏さん、私たちもしかしたら出来るかも知れません」

地上に、オリジナルハイヴへと凄乃皇が降り立つころにはライガーとネオゲッター2は侵入路の確保を済ませていた。
どうやら待たせたようだ、と霞は思った。
「よし、それじゃあハイヴ内部への侵攻を開始するわ。いい? 凄乃皇の防衛は最優先よ。これがやられたら私たちに打つ手はないんだから」
「わかってるよ委員長。じゃ、行くとしようぜ!」
「よし、じゃあ全機、突入!」
千鶴が命令を発するとゲッター2機が先に、凄乃皇がそのあとにつづく形で横抗に侵入する。
案の定ハイヴ内部には無数のBETA、インベーダーが、その行く手を阻んでいた。
「わわ、タケルさん! すごい数です!」
「大丈夫だ、たま! ここはオレに任せろドラゴンで近接戦闘だ!」
「分かりました! オープーーン、ゲット!!」
「チェンジ! ゲッターードラゴン!」
ライガーが分離し、ドラゴンへと再合体を果たす。
「冥夜! ドラゴンとネオゲッター2で凄乃皇のために道を切り拓くぞ! ダブルゥ、トマホークッ!」
「うむ、我らならそれも可能ぞ! プラズマソード!」
ダブルトマホークをゲッタードラゴンが、プラズマソードをネオゲッター2がその手に構え、敵の群れへと突っ込んでゆく。
空戦タイプの2機だからこその3次元的な機動で、次々と敵を斬り倒してゆく。
「よし、このまま一気に、ってどわっ!」
一瞬動きを止めた武のドラゴンに突撃級と融合した巨大インベーダーがぶつかる。
「タケル! む!?」
それを見て、冥夜も隙をさらしてしまう。それを敵も見のがさず、突撃を仕掛けてくる。
「油断したぜ。どうやら今度は突撃級の攻撃みたいだな…」
吹き飛ばされた両機はいったん凄乃皇の近くまで撤退する。どうやら、奥から大量の突撃級が迫ってきているらしい。
「タケル! ここは僕に任せて! ああいうパワータイプ相手なら僕の出番だよ!」
「よし、わかった美琴。とりあえず任せるぞ!」
「……御剣、こっちもネオゲッター3で対抗しよう」
「うむ、その方が賢明だろうな。では彩峰、そなたの腕前とくと見せてもらおう」
「「オープンゲーット!!」」
「チェンジ、ゲッターポセイドン!」「ネオゲッタースリー!」
また、ゲッターがそのフォルムを大きくかえる。
ゲッターポセイドン、ネオゲッター3。両者とも水中戦を想定された機体だが、そのパワーは3形態の中で一番強い。
よって、この場合のような突撃級とのぶつかり合いではうってつけと言っていい形体であった。
そして2機はキャタピラモードで敵と真正面からぶつかってゆく。
先ほどはゲッタードラゴン、ネオゲッター2をふき飛ばした突撃級だったが、今度は逆にどんどん突き飛ばされていた。
その様子はまさに、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、といったものだった。
「慧さん! ちまちま相手してたら間に合わない! 一気にやっちゃおう!」
「……賛成。このままじゃラチがあかない」
再びゲッターが敵から距離をとる。
だが、今度はゲッターチェンジではないようだ。
「行くよ慧さん!」
「……いつでも!」
するとポセイドンの胸部装甲が上に跳ね上がり、中にあるタービンが回転を始める。
ネオゲッター3も同様だ。
「いけ! ゲッターサイクロン!」「ゲッタートルネード!」
二つの竜巻がゲッターから巻き起こる!その竜巻は1つになり、さらに巨大な渦となる。
閉鎖空間であるハイヴ内でこれを避けることは到底かなわない。なぜなら、渦は通路全体を覆い尽くすほど巨大だからだ!
通路にいたすべてのBETAが巻き上げられ、渦の中心へと集められていく。
「ストロングミサイル!」「プラズマブレイク!」
そしてその中心にストロングミサイルとプラズマブレイクが撃ち込まれる。
巨大な爆発が起き、そこにいたBETAたちのほとんどが爆散する。
「どうどう? タケル! すごいでしょ?」
「ああ、やるなあ美琴。それに彩峰も」
「……どうも」
「じゃ、この調子で先へ進むわよ。でもその前にネオゲッターは凄乃皇から補給を受けましょう。
大気圏突入から、さっきの先頭で大分エネルギーを使ったわ」
千鶴が全体に命令を出し、その通りにA-01は動いていく。
まだまだハイヴ攻略の序盤ではあるが、全員、ゲッターの力がどれほどのものか実感し、この先の激戦も、これならいけると確かに感じた。

こうして、A-01部隊は順調に攻略してゆき、あ号目標、オリジナルハイヴの反応炉まであとわずかまで近づいていた。
「霞、純夏の調子はどうだ?」
武は、ここまで順調ではあったが、何度か被弾している凄乃皇の負担がどれほど純夏にかかっているか気になり、凄乃皇のサブコントロールをしている霞に通信を送った。
「はい、純夏さんは大丈夫だ、って言ってます。シュミレーションの時より、白銀さんたちが頑張ってくれているおかげで負担も少ないそうです」
「そうか。ならよかった。でも、正直こっからが正念場だよな」
そういい、目の前のレーダーに目をやる。
そこにはこの先に無数のBETAの反応。先ほどまでとは比にならないほどの数だ。
「大丈夫ですよ武さん。私たちなら、竜馬さんたちがの遺してくれたこのゲッターなら、きっとやれますよ!」
壬姫が屈託のない笑顔で武を勇気づける。
「そうだよな。ここでおじけづいてちゃあの人たちに示しがつかないよな。
よし、みんな行こう! ここさえ切り抜ければあとはあ号目標のみだ!」
全員がうなずく。そして、この戦い最後の補給を済ませると、最大戦速で敵の真っ只中へと突っ込むのだった。
今此処に、最終決戦が始まろうとしていた。

「うおおおお! スピンカッター!」
「チェーンナックル! ショルダーミサイル!」
スピンカッターで次々と敵を斬り裂く。
そしてその後ろではネオゲッターのチェーンナックルにより敵が真っ二つになり、そこにミサイルが命中し、原形をとどめずに消滅する。
「委員長! チマチマやってたら間に合わない! あれを使おう!」
「ええ! 今、私もそう思っていたところよ! 御剣、彩峰! ネオイーグルにエネルギーを回してちょうだい!」
「「了解!」」
「じゃあいくぜ委員長!! ゲッタービーム!!」「プラズマァ、サンダーー!」
ゲッターの大技、ゲッタービームとプラズマサンダーが放たれる。
威力は絶大だが、エネルギー消費も激しいため、ここまで使用を控えてきたが、そうも言ってられない状況になっていた。
かなりの数のBETAが強大なエネルギーに飲まれ蒸発する。
だが、それでもなお、次々に新手が現れる。
「くそ! キリがない!」
武は増援の絶えない様に毒づく。物量がBETA最大の武器であるものの、この数は異常だ。
「タケルさん! 今度は壬姫に任せて!」
「榊! こちらもゲッターチェンジだ!」
「仕方いな。じゃあ任すぜ、オープンゲット!」「仕方ないわね。オープンゲーット!」
ドラゴンからライガーに、ネオゲッター1から2へと即座に分離合体する。
「ゲッターライガー!」「ネオゲッタートゥー!」
そして合体が終了すると、目にもとまらぬ速度でBETAの中へ突っ込んでいく。
「珠瀬! 私に合わせられるか!?」
「大丈夫! やれる!」
高速で移動しながらも、2機は的確に敵を仕留めていく。
縦横無尽に敵の間をすりぬけていくため、BETAは同士討ちは絶対しないという習性が仇となり、なかなか手が出せなくなっていた。
さらに、ゲッターはドリルを用いているため、あっというまに敵が片付いていく。
「流石だな……。」
武は壬姫を冥夜の手際の良さに思わず感心する。
「フフ、見なおしたか? タケル。だが、まだ足りんようだ」
見ると、レーダーにはBETAのさらなる増援が迫ってきていることが示されていた。
「このままじゃそのうちこっちがじり貧になってやられるわね……。
白銀! あなた達は凄乃皇とともに先に行ってなさい!」
「な、何言ってんだ委員長! まさか死ぬつもりじゃないだろうな!?」
まさかの千鶴の発言に武は即座に反論する。
ここで残る、ということはたった1機で迫りくるBETAを相手取るということだ。
それはいくらゲッターであってもたやすい任務ではない。
それくらい、彼女たちも分かっているはずだと武は思った。
「勘違いしないでちょうだい。私は、とりあえず先に行けと言っただけよ。
それに、あ号目標に接触するためにはそこのゲートをくぐらないといけない。
でもそのゲートは開閉に時間がかかるわ。全員がいっしょにくぐれば閉まりきってないゲートから敵がなだれ込むことになる。
だから私たちがゲートの閉まるギリギリまで防衛する必要があるの」
「それにだ、タケル。ゲートの閉まるギリギリの段階ならゲッター一体なんとか通れるくらいにはまだ隙間がある。
おまけにゲッターGは、そなたたちの機体は凄乃皇のコントロールも兼ねている。
殿をネオゲッターが務めるのはそういう都合もある」
「で、でもよ……」
あまりに理屈が通りすぎている答えに、武は口ごもる。
それに対して彩峰が強く言い放つ。
「……心配しないで。それに私たちは死ぬつもりなんてこれっぽっちもない」
「――分かった。凄乃皇とゲッターGは先行してあ号標的を叩く。
……絶対に死ぬなよ? 約束だかんな」
「ええ約束よ」「約束だ」「……約束」
3人の口から満足のいく答えを聞き終えると、武は壬姫にゲートをくぐるように頼む。
そしてそのゲッターGの後ろを凄乃皇がついてゆく。
「ふ、やっと言ったか」
ゲートをくぐり終え先に行ったのを確認すると冥夜がつぶやく。
「ああでも言わないときっとここで私たちと戦い続けるにきまってるもの」
「……本当、世話が焼けるね」
千鶴、彩峰も呟く。
「さて、では我らはここを死守せねばな!」
「ええ、私たちの力。ゲッターの恐ろしさを見せてやるわ!」
「……同感だね」

武たちは冥夜たちを置いて、先を進んでいた。
彼女たちの気持ちを無駄にせぬためにも、彼らは絶対にあ号標的を叩かねばならなかった。
敵の行く手を阻む時間稼ぎは、ネオゲッターの性質を考えると非常に厳しいものだと武たちは理解していた。
ネオゲッターはゲッターGなどと違い、ゲッター線ではなくプラズマ駆動で動いている。
それはつまり、機体内にためられたプラズマを使いきれば機能を停止することを示していた。
だが、それでもなお彼女たちはゲート防衛を買って出た。死なない、とは言ったが、その生存は絶望的であろう。
だが、武たちは彼女たちを置いてきた。しかしそれは人類を救うため。
オリジナルハイヴを潰し、人類に勝利をもたらすことこそが彼女たちの望み、ひいては人類すべての望みだったからだ。
「ねえタケル。御剣さんたち大丈夫かな?」
「たま、あいつらは死なないって約束したんだ。今はあ号標的をたたきつぶすことだけに集中するんだ」
不安そうな壬姫を武は任務に集中するように諭す。
自分も納得してはいないが、それより重要なことがある。
そう考えねばやりきれなかった。
「壬姫さん、タケルの言う通りだよ。今は千鶴さんたちを信じて、僕たちは僕たちが出来ることをするときだ。そうでしょ? タケル」
「ああ……。目標まであとわずかか、霞、純夏の様子は?」
「白銀さん? えっと純夏さんなら大丈夫です。凄乃皇の荷電粒子砲の準備も出来てます」
「そうか。ならいいんだ。……見えてきた。あ号標的だ……」
タケルたちの目の前には少し広い空間が見えてきていた。
そしてその空間の中心には反応炉、あ号標的が存在していた。
「よし、凄乃皇、荷電粒子砲スタンバイ。反応炉の大空間に入りしだい発射する」
これで終わる、そう信じゲッターGと凄乃皇は前進する。
武も凄乃皇の荷電粒子砲発射コントローラーに手をかけ、トリガーを引く準備をする。
だが、異変は反応炉の大広間に入った瞬間に起こった。
「よし、広間に侵入、発射す―――!?」
2機が広間にはいった瞬間、機体の動きがなんらかの働きにより停止する。
操縦レバーを動かそうと力を込めるが、微動だにしない。
「なんだ!? どういうことだ? たま、美琴! 機体の操縦がきかない! どういうことだ!?」
「た、タケルぅ、こっちも駄目だ。操縦機が全く動かない! これじゃあ分離も出来ないよ」
「こっちも駄目です……。びくともすしません」
「なんだって? じゃあ、霞! 凄乃皇の方は!?」
「こっちも駄目です。コントロール出来ません。センサーには何の反応も……いえ、あります! 前方、ハイヴコアに反応ありです!」
霞の報告を受け、武はハイヴのコアの方の様子をモニターに映す。どうやら、機体の身動きは出来なくとも、センサーの切り替え程度なら出来るようだった。
そしてモニターを見つめていると、通信機に登録されていない信号が入る。
『まったく、情けないよのう。まさかここまで来て、我の結界に引っ掛かるとは……』
「だ、誰だ!」
突然聞こえてきた声に武は驚く。
するとモニターの拡大映像でコアの様子を見ると、そこには驚くべきものが写っていた。
「ひ、ヒト……?」
壬姫が驚きの声を上げる。ありえない。だが、どう見てもヒトにしか見えぬものが、コアのあるべき場所に存在していた。
『ヒトとは……。そのような無力で愚かなものと一緒にされては困るな。
我の名は晴明。安倍晴明なるぞ!』
「あ、安倍晴明!?」
まさか、竜馬さんたちが言っていたのはこいつのことだったのか、武はそう結論づけ、晴明に向かって吠えた。
「お前が晴明か! 何故コアを乗っ取ったのに人類に敵対する! あんたもヒトじゃないのか!」
『何故? 何故だと? 簡単なことよ。人類に生きる価値など無いからだ』
「な、なんだと……」
晴明の答えに武はフツフツと怒りがこみ上げてくるのを感じた。
「なんでそんな酷いことが言えるんですか! 人間の生きる価値を決めるのはあなたじゃない!」
どうやら晴明に対し怒っているのは武だけではないようだ。壬姫も晴明の言い草に怒りを覚えていた。
『ふん。貴様ら人類が生きているとな、そのうち宇宙を食いつぶすこととなる。害虫は早く処分せねばなるまい?』
「害虫って、僕たちは害虫じゃない! それになんでそんなこと、言い切れるんだ!」
美琴も叫ぶ。」
『それが分からぬから愚かだというのだ。ゲッターをこの世界でも目覚めさせ、そしてそれを使う貴様らの愚かしさ……。
今の貴様らには実際に見せてやる方が早い……。見るがよい、貴様らがこのままのさばれば宇宙がどうなるかをな!』
晴明が叫び、その右手を天に掲げると、ゲッターと凄乃皇を囲んでいた魔方陣(どうやらこれがゲッターたちの動きを封じているらしい)が輝きだす。
「な、なんだ? 何をするつもりだ!?―――グッ!?」
輝きはどんどん強くなり、そして次の瞬間には強烈な頭痛が彼らを襲う。
「な、なんだ? ぐ、ガアアアアアア!?」
「きゃああああ!」
「うわあああ!」
「―――――ッ!!」
「うぅうぅううう…」
武、壬姫、美琴、純夏、霞は強烈な頭痛に悲鳴を上げる。
すると彼らの頭の中にあるビジョンが流れ込んでくる。

それは遙か遠い未来の、別の時空の、どこかの宇宙での戦争であった。
“ソレら”は武たちの見たこともない星を蹂躙していた。
その星からは自分たちの故郷を守るべく、数多の宇宙戦艦が飛び立ち、必死の抵抗を行っていた。
が、それは“彼ら”の圧倒的な力の前に次々と潰されていた。
突撃も、エネルギー攻撃も、“ソレ”の持つ障壁に阻まれ、一方的にやられていた。
『な、なんなんだこれは……。一体こいつらは!?』
武はこの一方的な大破壊に恐怖すら感じていた。“アレ”は自分たちの知っているものに似すぎている……、そう―――。
『ゲッターエンペラー、敵がサードムーンから出撃してきます……』
“彼ら”は―――。
『任せろ! 月ごと吹っ飛ばしてやる!!』
“ソレら”を束ねる巨大な戦艦から一筋の光が放たれ、敵をあっという間に消滅させる。
圧倒的な力、一方的な破壊。たった一発でその戦いの勝敗は完全に決した。
そして彼らは、武たちがよく知るモノ。そう、彼らはゲッターロボだった。

魔方陣の光が消え、頭痛も治まる。
『どうだ。なぜ貴様ら人類が、いやゲッターロボが生き残ってはならぬか理解できたであろう?
このまま貴様ら人類をのさばらせておけば、今度は貴様らがこのBETAと同じようにほかの宇宙を蹂躙するのだ。
いや、こ奴らBETAは資源の採掘のみであのような大破壊をせぬ分、幾らか貴様らよりはマシかもしれぬがな』
晴明がクククと笑いながら言う。
「ふざけんな……。じゃあオレたちはこのまま滅びを待てっていうのかよ……」
『クク、その通りだ。貴様ら宇宙の癌をここで始末せねば宇宙が滅びるからなあ』
さも当然と言った様子で、言い放つ。
『それに、だ。今の状態では貴様らが我に勝つのは到底無理な話よ』
そういうと、広間に映像が映される。
その映像は、ネオゲッターが必死にゲートを死守している今現在の様子だった。
だが、かなりの苦戦を強いられている。おそらくはプラズマが残り少ないのだろう。
動きは鈍り、攻撃の頻度も減り、次々と敵の攻撃を受けている。
チェーンナックルを放つが、強固な外殻をそなえたインベーダーに防がれ、逆に腕をもがれる。
そして今度は後ろから攻撃をうけ、地面にひれふす。
そこにさらに攻撃が加えられ、嬲り殺されようとしていた。
「冥夜! 委員長! 彩峰!」
「そんな! 嘘、榊さんたちが!」
「立って! 死なないで!」
武たちは目の前で繰り広げられる目を覆いたくなるような光景に絶望した。
『あちらも時間の問題よ』
映像が消される。どうやら晴明はこれを見せたいだけだったようだ。
『所詮はまがい物よ。我に勝てるはずがないのだ。ふはははははは!!』
晴明の笑い声がこだまする。
「だまれよ……」
『んん?』
その瞬間、武たちの雰囲気が、纏う空気が変わる。
「人類はここで滅びるべきだと? ふざけんな。たとえオレたちがこの先、宇宙の破壊者になるとしても、ハイそうですか、って簡単に死ねるワケないだろ……。
オレたちはいままで、生き残るために戦ってきたんだ。それをここで急にやめれるかよ。
それに、お前み言われて決めることでもない!」
先ほどまで、ぴくりとも動かなかったゲッターがじわじわ動き出す。
「そうよ。あなたなんかに、これまで戦ってきたみんなの、私たちの思いを否定されてたまるもんか!」
それと同時に魔方陣が消滅する。
「僕たちは戦う! 未来がどうなるかなんてわからないけど、僕たちは生き残るってみんなに約束したんだ!!」
武たちの思いに反応するかのように、ゲッターのエネルギーがどんどん上昇していく。
『ほう、紛い物とはいえ、ゲッターはゲッターか……』
だが、そんな様子を見ても晴明は余裕綽綽といった感じのままだった。
「だから、てめえを倒して、俺達人類は生き残る!! 純夏! 凄乃皇の荷電粒子砲を撃つぞ!!」
武が再度、荷電粒子砲の発射トリガーに指をかける。
『そうやすやすと思い道理にさせるわけなかろう!』
コアから無数の触手が信じられない速度で飛んでくる!
「く! だが!」
触手が接触するまえに発射してしまおうと、トリガーをひく。
だがしかし、まったく反応がなかった。
「!? なんでだ!? 魔方陣の効果は打ち消したはず……」
何度もトリガーを引くが、やはり反応がない。
「……し…ろ、がね……さん………」
「霞!? どうした!」
通信機から霞のよわよわしい声が聞こえる。
「……てきは…安倍晴明は……最初から、純夏さんが狙いだったんです……。
純夏さんのリーディング能力を逆手にとって、純夏さんを……純夏さんをその手中に収めたんです……」
ぽろぽろと涙を流しながら、純夏が晴明の手に落ちたことを霞は告げる。
「なんだっ……て」
「そんな……」
「嘘でしょ……」
そう言っているうちに、呆然と立ち尽くしたゲッターの各所に触手が突き刺さり、そのまま凄乃皇に磔にされる。
『くくく。まさかここまでうまくゆくとはのう。00ユニットには世話になりっぱなしぞ』
「てめえ……安倍晴明! てめええ!!」
純夏が晴明の手に落ちたことを知り、武は沸き立つ怒りを抑えられない。
『うるさいぞ小童』
だが、その叫びをかき消すかのように触手から電撃が加えられる。
「がああああああ!!」
電撃により、回路がショートしたのか、再びドラゴンは動きを停止する。
『勝敗はこれで決した。貴様らもここで終わりだ。ゲッターに囚われた貴様らの運命を呪うがいい』
新たに生成された触手の先が槍のように変化する。おそらくあれでトドメを刺すつもりなのだろう。
「ちくしょう……負けるか……。こんなところで……負けて……」
『命乞いはせぬか? まあいい。これで宇宙は救われる……。
死ねい!! ゲッターーアアロボォオオオ!!!』
晴明の叫びと共に槍状の触手が武たちめがけ飛んでくる。
「負けてたまるかよぉおおお!!!!」
触手がゲッターGを貫かんとした瞬間、なに者かの介入により、触手の先端が切り飛ばされる。
「……え?」
『な!? なんと!?』
武たちが驚いていると、触手を断ち切ったものが告げる。
「よーう武。元気だったかあ?」
「まったく、油断したなタケル」
その声は死んだはずの流竜馬と、先ほど映像でやられるのをみた冥夜の声だった。
そして触手を止めたのはゲッター1とネオゲッター2だった。
『な、なぜ貴様がここにいる!? 貴様らは死んだはずだ!』
「悪いな。俺達は往生際が悪くてな、しかもどこかのお節介焼きのゲッターに救われたんだ。
もっとも、そいつに俺達はこの世界に送り込まれたんだったがな」
晴明に対し、隼人が答える。
「竜馬さん、それに隼人さんも……」
まさかの生存に壬姫が泣きじゃくりながらもその名を呼ぶ。
「おーっと。オレも生きてるぜえ」
「あは、やっぱり弁慶も生きてたんだね」
美琴も半泣きになっていた。
「まったく。世話や焼かすなそなたたちは」
そういうと冥夜はドラゴンに絡みついた触手をプラズマソードで刈る。
「冥夜…、生きてたんだお前も」
「あら、私たちの心配はなしかしら、白銀?」
「……薄情者」
「委員長に、彩峰も……。よかった。本当に良かった……」
武も思わず涙を流す。仲間が誰も死んでいなった。これほどうれしいことはなかった。
「私たちも流たちに助けられてね。そしたら、実は俺達は別の世界からやってきたんだーっとか言いだして。
そして自分たちをこの世界に送り込んだのは超常的存在のゲッターで、あの自爆でも生きてたのはソイツのおかげだって言うのよ?
信じられなかったけど、流たちのゲッターはパワーアップしてるし、あっという間に私たちの窮地を救ってくれたしで、信じるしかないじゃない。
白銀は彼らが別世界の人間だって知ってたのに私たちには秘密にしてたなんて。ホント、水臭いじゃない」
「はは、ごめん委員長。委員長たちには話さない方がいいって先生、副司令に言われてたから。
それにすぐに信じてもらえるとも思わなかったし……」
「バカモノ!」
「えっ!?」
武が今までの言い訳をしていると、冥夜が突然怒声をあげた。
「だからそなたはバカなのだ。もう少し私たちを信用してくれてもよかろう。
いままで戦ってきたのは、そなただけでは無かろう。
きっとみなもそう思っておるぞ」
そうなのか、と思い、モニターに写るみんなの顔を見ると、冥夜に同感だ、といった感情が読み取れた。
自分は自分が思ってるより、みんなを信用していなかったかもしれないと反省し、しかしそれでもなお、自分を信用してくれる仲間たちのありがたさが身にしみた。
「すまないみんな。そしてありがとう……」
武がそう言うと、みな、やさしくその言葉を受け止めた。
「そうだ、竜馬さん、オレを助けてくれたことには礼を言います。でも、純夏が奴の手に……」
「へ、わかってらあ。おい隼人、アレの準備出来てるか?」
「ああ、いつでもいけるぞ」
武が言い終えるかいないかの内にゲッターが凄乃皇に触れる。すると凄乃皇の全身がゲッター線の輝きで満たされる。
「な、何をしてるんですか!?」
「まあ見てろって白銀。いま、鑑の奴を助けてんだからよ」
弁慶が動揺する武をたしなめる。
そしてゲッター線の輝きが弱まると、霞から通信がはいる。
「白銀さん! 信じられません! 純夏さんが、純夏さんが帰ってきました! 純夏さん、大丈夫だって言ってます。心配かけてごめんなさいって……」
「ゲッター線の力を利用したんだ。内側からエネルギーを鑑に与えてやることで、鑑の晴明への抵抗を後押ししてやった。
ゲッター線を使ったが、これは鑑自身が諦めずに抵抗し続けていたからこそできたことだ。
鑑もA-01の立派なメンバーだったということだな」
隼人が要点をかいつまんで説明する。
武は目の前で次々と起こる奇跡ともいえる出来事に驚きっぱなしで、そして純夏が諦めなかったことが妙に誇らしく思えた。
「さて、これであとやり残したことはひとつだけだ」
「そうですね。あとは奴を、安倍晴明ごと反応炉を叩くのみ!」
全員の視線が安倍晴明、オリジナルハイヴコアを貫く。
『く……まさかこのようなことになるとは思いもぜなんだぞ。だが! 貴様らに負けるわけにはいかん!
貴様ら人類は宇宙を食いつぶす! だからこそ生かすわけにはいかんのだ~~!!』
晴明の周囲から数えきれぬ数の触手が生えてくる。
どうやらこれが晴明の本気のようだった。
「へ! 誰が許してくれと頼んだ!! 行くぞお前ら! 力を出し切るんだ!!」
「「「「「応!!」」」」
竜馬の雄たけびのすぐあと、3機のゲッターはそれぞれ別の方向に散り、凄乃皇は敵の攻撃範囲より外に下がる。
『おのれおのれおのれーーーー!!』
晴明は三方向に散ったゲッターそれぞれに無茶苦茶に触手攻撃をけしかける。
だが狙いも何もあったものではない攻撃が彼らに当たろうはずもなかった。
「晴明! いよいよヤキが回ったか? 武! 榊! 雑草刈りだ!」
「了解!」「分かってるわ!」
「ゲッタートマホーク!」「ダブルトマホーク!」「チェーンナックル!」
『ぐおおおおおおお!?』
けしかけていた触手すべてを刈り取られ、その痛みに悲鳴を上げる晴明。
『ま、まだだ! まだまだぞ!!』
だが次の瞬間にはまた新たに触手を再生させる。
そして今度は触手数本が束となり、巨大なドリルとなった。
「竜馬、今度はオレの番だ!」「しゃあねえな」
「タケルさん、ここは壬姫にまかせて」「わかった、たま!」
「榊! ネオゲッター2へチェンジだ!」「了解。任せるわよ?」
「「「オープンゲット!」」」
3機のゲッターが9機のゲットマシンへ分離する。
分離したゲットマシンはそれぞれが広間中を縦横無尽に飛び回り、晴明をかく乱しつつ、それぞれにゲッターチェンジする。
「ゲッター2!」「ゲッターライガー!」「ネオゲッター2!」
『そこかああ!!!』
ゲッターチェンジが終了した瞬間を狙って、触手ドリルが彼らを穿とうと迫りくる。
だが、
「ドリルならこっちにもあるんだぜ? いくぞ2人とも」
「はい!」「応!」
「「「ゲッターァアア!! ドリルゥウ!!!」」」
ドリルとドリルが衝突し、激しい衝撃波と火花が周囲に拡散する。
「「「うううおおおおおおお!!!」」」
そしてそのドリル勝負はゲッターの勝利で終わり、ドリルで削りきった勢いそのまま触手の根本、晴明に迫る!
『くぅうぅうう!! やすやすとやられはせぬぞぉお!!』
だが、今度はその行く手をハンマー状の触手が阻む。
そのハンマーがゲッターに対し振られるが、間一髪のところで回避され、ハンマーは広間の壁に衝突し、壁をボロボロに打ち砕く。
ハイヴの構造強度から推測しても、あのハンマーは突撃級以上の硬度を誇るであろうことが容易に判断できる。
「ふん。今度は力自慢か? おい弁慶! お前に出番だぞ!」「いよっしゃ、待ってました!」
「こっちも鎧衣さんに任せます!」「OK、壬姫さん。任せてよ!」
「彩峰いけるか?」「……愚問」
「「「オープンゲット!」」」
再度ゲッターが分離する。今度は先ほどの細身だった形態とは打って変わって、重厚なフォルムの形態に変形してゆく。
「ゲッターぁ3ぃ!」「ゲッターポセイドン!」「ネオゲッター3!」
そして今度も合体が終了した所に攻撃が来た。だがしかし、ハイヴの壁面すら打ち砕く攻撃を彼らは受け止めていた!
「へへへ。ゲッター3のパワーをなめってもらっちゃ困るなあ。よし、鎧衣!」
弁慶の合図で美琴が操縦レバーを押しながら叫ぶ。
「フィンガーネット!!」
ポセイドンの指先から、巨大な網が出現する。
美琴はその網を巧みに使用し、全ての触手を絡め捕る。
「よし! ベンケイ、慧さん! 今だよ!」
「よっしゃあ! ゲッターミサイル!」「……プラズマブレイク!」
一か所に集められたところに、ゲッターミサイルとプラズマブレイクが炸裂し、晴明の作りだした触手は、三度破壊された。
『お、おおのおおれええ!?』
三連続で触手を生成し、流石の晴明も再生の速度が鈍る。
「畳みかけるぞ! ゲッター1にチェンジだ!」
「これで決めよう! ドラゴンで始末してやる!」
「私たちに力、思う存分味あわせてあげるんだから!」
「「「オープンゲット!」」」
このチャンスを逃さぬよう、最大の攻撃力を発揮する形態にゲッターがチェンジする。
「ゲッター1!」「ゲッタードラゴーン!」「ネオゲッター1!」
今度は合体した瞬間に攻撃は来ない。だが今度はこちらから攻める番なのだ!
「喰らえ! ゲッタービーーム!!」
「ゲッタァア、ビーームッ!」
「プラズマァ、サンダー!!」
武たちは、コアの上方から、ゲッターの最大火力を叩きこむ。
が、しかし、晴明もタダでやられるわけにはいかなかった。
『おのれぇ、おのれおのれおのれおのれおのれぇえええ!!』
晴明の眼前に魔方陣のようなものが現れ、ゲッタービームとプラズマサンダーを防ぐバリアとなる。
『どうだゲッタロボぉ!その程度の攻撃ならば我の陰陽の技にて防ぐことも可能なのだ!ふははははは!―――!?』
ここで晴明はある異変に気づく。だが、それに晴明が気づいたのは少し遅すぎた。
武が勝ち誇った顔で言う。
「安倍晴明、お前の負けだ! お前はゲッターに執着するあまり凄乃皇の存在を忘れていた!」
『ま、まさか!?』
晴明が見つめる先には、凄乃皇が荷電粒子砲の砲門を開いていた。
晴明とゲッターが戦っているさなか、後方にさがりこの機会が巡ってくるのをじっと待っていたのだ。
「そのまさかだ! 喰らえ安倍晴明! 俺たちを侮ったお前の負けだ!!
俺達を、人類をなめんじゃねええ!!」
武がトリガーを引くと同時に、凄乃皇から荷電粒子砲が放たれる。
それはゲッタービームとプラズマサンダーをも吸収し、晴明のバリアを容易に打ち破る。
『あああああ………!!』
バリアを撃ちやぶった光線は、晴明を原子以下まで分解し、文字通りこの世界から消し去った。
「はあ、はあ……終わったのか?」
「いや、まだだ」
コアである晴明も倒し、反応炉も破壊したが、彼らにはまだやるべきことが残されていた。
「あれは……」
武が先ほどまで晴明が居たあたりを見ると、そこにはわずかだが、時空の揺らぎのようなものが現れていた。
すると、その時空の切断面が中からこじ開けられようとしていた。
そこから這出ようとしているものは、インベーダーであった。
「奴ら…!こんなタイミングで……!!」
最悪のタイミングでのインベーダー出現に武は憤りを感じずにはいられない。
「あれは晴明が開いたワームホールだろう。奴はあそこからインベーダーを呼び出し、協力していたんだ」
隼人は冷静に、事の仔細を説明しだす。
「ならばあれをふさがぬかぎり、我らの勝利ではないのだな?」
冥夜もうすうす感づいてきていたようだ。敵は晴明だけではない。
インベーダーも始末せねばならないということを。
「でもどうやってふさぐのよ。凄乃皇の荷電粒子砲も撃てるかどうか分からないのよ?」
「その点については大丈夫だ、榊。俺達にはゲッタードラゴンの最後の隠し玉が残されている」
隼人の言葉に全員がハッとなる。確かに、このドラゴンがカタログどおりのスペックを持つなら、それが装備されているはずだ。しかし―――。
「あれは今のドラゴンの出力じゃ無理だよ。威力が設計通りでも肝心のエネルギーが足りない」
最大の障害、エネルギー不足という点を美琴がつく。
「おいおい、おめーら。何もドラゴン一機でってわけじゃないだろうが」
それを竜馬がさも簡単に解決できると言わんばかりの態度を取る。
「まさか……ゲッター炉心を……」
「……ゲッター炉を連結?」
壬姫と慧が竜馬の考えを言い当てる。
「なるほど。その方法で凄乃皇とゲッター、ゲッターGの炉心を使えばエネルギーの問題はないわね。
じゃあ、その方法で行きましょう。残念だけど、考えてる時間はないみたいだし」
千鶴がワームホールを指さす。ワームホールは先ほどから少しづつ成長していた。
このまま成長が続けば、そこからインベーダーたちの大軍がこちらの世界になだれ込むことになる。
それだけはなんとしても止めねばならない。
「皆さん、その方法なら純夏さんがもう計算してくれました。なんとかいけるそうです」
「霞、報告ありがとよ。よっし! 鑑も計算してくれたことだ! さっさと終わらせて、基地で一杯やろうぜ!」
「ベンケイの言う通りだよ、タケル、早く終わらせちゃおう!」
「……そうだな美琴。これで、本当の決着だ。竜馬さん! それにみんなも!
ゲッターGの最後の武器、シャインスパークを使う!」
「「「了解!!」」」
全員の返事のあと、それぞれが、シャインスパークを使用するための準備に取り掛かる。
ゲッター最後の武器、シャインスパーク。ありったけのゲッターエネルギーでその身を包み、そのエネルギー全てをぶつける必殺技。
はたしてその破壊力は?ワームホールを消し飛ばし、この戦いに終止符を打つことが出来るのだろうか!?