780 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/05/07(土) 14:18:33.48 一矢。
「……ァ、…ぁ」
使われることがなくなって久しいのだろう。私の姿を目にしたその子の喉笛は、もううまく声を紡ぎ出せなくなっていた。 それだけの時間、彼女は一人で戦い続けたのだから。 言葉に代え、想いが溢れ出す。その双眸から。
『――大丈夫。きっと大丈夫』
交わした言葉はずっと遠く、忘れないよと誓った記憶は尚遠く…かつての想いが蘇る。 すっかり綻び、元の自分のカタチを思い出せなくなってしまった、遠い約束。 こんな有り様になって尚、人の心を失わずにいられた事に…
…もし、それに理由があるのだとしたら。
それはきっと、最後まで『私』を忘れないでいてくれた、この子のお陰に他ならない。
全ての時間、全ての宇宙。希望を信じた少女達の魂に。 おつかれさま、と。ありがとう、と。見届けたのだ。星の数ほど。 いずれ辿り着くと信じた、その時が訪れるまで。
それがきっと、最後に残った道しるべ。 漸く辿り着けたのだ。
――それじゃあ探しに行こっか、夢のような世界。 ね? ほむらちゃん。
§
【△月□日 07:30 見滝原総合病院】
prrrrrrr、prrrrrrr…
「……ん…むぅ」
安眠を妨げる忌々しいそれ。手を伸ばして探る。カチリと微かな手応えとともに静寂を取り戻す。
「んー…っ、…うん!」
軽く自己診断。調子は悪くない。 復学を週明けに控え、「生活のリズムを取り戻さなければならない」といって態々用意してもらったのだ。素気なくすることは出来ない。
続く
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