1スレ/780

Last-modified: 2014-11-24 (月) 18:46:57
780 : 名無しさん@お腹いっぱい。 : 2011/05/07(土) 14:18:33.48
 一矢。
「……ァ、…ぁ」
 使われることがなくなって久しいのだろう。私の姿を目にしたその子の喉笛は、もううまく声を紡ぎ出せなくなっていた。
 それだけの時間、彼女は一人で戦い続けたのだから。
 言葉に代え、想いが溢れ出す。その双眸から。
『――大丈夫。きっと大丈夫』
 交わした言葉はずっと遠く、忘れないよと誓った記憶は尚遠く…かつての想いが蘇る。
 すっかり綻び、元の自分のカタチを思い出せなくなってしまった、遠い約束。
 こんな有り様になって尚、人の心を失わずにいられた事に…
 …もし、それに理由があるのだとしたら。
 それはきっと、最後まで『私』を忘れないでいてくれた、この子のお陰に他ならない。
 全ての時間、全ての宇宙。希望を信じた少女達の魂に。
 おつかれさま、と。ありがとう、と。見届けたのだ。星の数ほど。
 いずれ辿り着くと信じた、その時が訪れるまで。
 それがきっと、最後に残った道しるべ。
 漸く辿り着けたのだ。
 ――それじゃあ探しに行こっか、夢のような世界。
 ね? ほむらちゃん。
 
   §
【△月□日 07:30 見滝原総合病院】
 prrrrrrr、prrrrrrr…
「……ん…むぅ」
 安眠を妨げる忌々しいそれ。手を伸ばして探る。カチリと微かな手応えとともに静寂を取り戻す。
「んー…っ、…うん!」
 軽く自己診断。調子は悪くない。
 復学を週明けに控え、「生活のリズムを取り戻さなければならない」といって態々用意してもらったのだ。素気なくすることは出来ない。
 続く

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