33スレ/わたしたちだけ

Last-modified: 2014-04-24 (木) 06:47:05
938 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/18(木) 02:49:23.97 ID:Rm49R+110
私たちは、「わたしたち」だけになってしまった。
数日後。
――美樹さんも、佐倉さんも、巴さんも・・・みんないなくなってしまった。・・・あれから数日後。
鹿目さんは学校に来なくなった。鹿目さんの親御さんは、大切な親友が突然死したことにショックを感じた、と踏んだのだろう
先生となにか話しているのを見かけたが、結局鹿目さんは学校に来ることはなかった。
キュゥべぇも、あの事件以来姿を見かけなくなった。・・・理由はわからないが、同時にこの数日間、魔女が現れた気配もなかった。
久しぶりの「たったひとりの登下校」に言いようの無い寂しさを感じながら、私は毎日鹿目さんの家に足を運んでいた。
メールにも、テレパシーの呼びかけにも答えない。彼女の部屋のカーテンはいつも閉め切られていた。
今日もまた、諦めて家路につこうと踵を返した。・・・刹那
♪カワシタヤークソクーワスレーナイヨーメーヲトジータシカメルー♪
ほむら「!・・・・・・鹿目さんっ・・・」
Frm:鹿目さん♪
sb:会いたい
――――――
今夜11時
公園で待ってる
PM10:00
――彼女を待たせるまいと1時間も早く着いたのに
鹿目さんは、ひとりでベンチに座っていた。
死人のような人形のような、美しく冷たい無表情。眼の周りは真っ赤で、何日も泣き腫らしたことを物語る。
あの愛らしいリボンはしておらず、俯く彼女のやや長めのセミロングヘアが、街灯から無機質に照らされる光から表情を隠していた。
ほむら「・・・鹿目さん」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん・・・・・・急に呼び出しちゃって」
ほむら「そんなこと・・・」
彼女はただ、顔を上げずに俯いたまま。
私は、彼女の次の言葉を待つほかなかった。本当は、励ましてあげたかった。抱きしめて安心させたかった。・・・なのに。
「あの日」のことを思い出して身がすくむ。・・・私にはなにもできなかった。彼女に、今隣に座る鹿目さんに、あんなことまでさせてしまった。
まどか「・・・・・・ほむらちゃんにね、お願いがあるの」
ほむら「・・・お願い・・・?」
まどか「わたし・・・家にいたくない。・・・わたしね、パパにも、ママにも・・・タツヤにも、なにもお話できなかったの」
まどか「なにもできないで、ずっと部屋にとじこもってたの。・・・パパもママも、わたしのことを心配してくれたけど・・・結局なにも話せなかった」
ほむら「・・・・・・鹿目さん・・・」
まどか「ねえ、ほむらちゃん」
ほむら「・・・なぁに?鹿目さん」
まどか「・・・・・・ほむらちゃんの家に、泊めてくれないかな」
ほむら「えっ・・・」
まどか「ママにはね、伝えてあるんだ。・・・直接言ったわけじゃないんだけど」
ほむら「・・・」
まどか「わたし、ひとりでいるのが怖い。・・・不安で、寒くて、冷たくて、寂しくて」
まどか「・・・・・・ひとりは・・・ぐずっ・・・・・・やなの」
私にすがりつく鹿目さんは、ひどく震えていた。泣いていた。怯えていた。
・・・私が取るべき行動はひとつしかなくなった。


939 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/18(木) 02:53:23.60 ID:Rm49R+110
ほむら「・・・ごめんね、狭い部屋で・・・」
まどか「ううん・・・」
ほむら「お風呂沸いてるけど、はいる?」
まどか「うん・・・・・・ありがと」
――鹿目さんがお風呂から上がってしばらくの後。
ようやく落ち着いたのか、普段のやわらかな微笑みを見せてくれるようになってきた。
風呂上りの上気した頬が、やや汗ばんだ美しい素肌が、まるで無防備な寝間着から覗く鎖骨が、胸元が。
官能的ともいえる彼女の姿を意識する自分に思わず赤面してしまうが、そんな私の心持ちを察したのか
まどか「もうほむらちゃん、どこ見てるの・・・///」
などとおどけて見せる。いつもの彼女に戻ってくれた・・・私は心から安堵した。
ほむら「鹿目さん、そろそろ休もう」
まどか「うん」
ベッドメイキングに、と立ち上がる私・・・否、立ち上がろうとする寸前に、鹿目さんは私の服の裾を掴み、呼んだ。
まどか「ほむらちゃん」
ほむら「なに、鹿目さ
・・・背筋が凍る、というのはこの瞬間のような事象を言うのだろうか。
振り返り見た鹿目さんの表情は、とても優しく。
・・・・・・そして、とても冷たい微笑みだった。
まどか「・・・いっしょに、ねてもいい?」
ほむら「っ・・・う、うん・・・」
まどか「えへへ・・・///」
気のせい、だったのだろうか?
いじらしく笑う彼女の表情はいつも通り、私の好きな笑顔そのままで、陰鬱さなど微塵も感じない。
・・・・・・では、さっきの悪寒は。
ほむら「鹿目さん、狭くない?」
まどか「ううん。・・・ほむらちゃんが傍にいてくれるから・・・あったかいよ」
ほむら「もう・・・///」
まどか「ほむらちゃん、その・・・・・・おねがいが、あるんだけどね」
ほむら「なに・・・?」
まどか「わたしね、・・・なにか抱きしめてないと・・・ぐっすり眠れないの・・・・・・・・・だから」
ほむら「そうなんだ・・・うふふっ、うん、いいよ・・・」
まどか「えへへ///ありがとう、ほむらちゃん・・・♪」
暖かい、柔らかい、感触。
鹿目さんに抱きしめられていることが、鹿目さんの体温が、心地よい息苦しさが。休息を、つかの間の幸せを実感させてくれる。
・・・鹿目さんも、そうなのだろうか。
まどか「ねえ、・・・・・・ほむらちゃん」
ほむら「なぁに、鹿目さん」
まどか「・・・約束、してほしいことがあるんだ」
ほむら「・・・うん」
より一層、強く抱きしめられる。
まどか「・・・離れないで。・・・わたしを、ひとりにしないで。・・・・・・ずっと、一緒にいて。」
ほむら「鹿目さん・・・・・・」
まどか「ほむらちゃんといるとね、とっても安心するの・・・・・・とってもあったかい気持ちになるの」
ほむら「・・・」
まどか「・・・・・・ほむらちゃん」
ほむら「・・・・・・うん、・・・約束、・・・鹿目さんと、いっしょにいるから」
まどか「・・・・・・・・・」
まどか「・・・ありがとう、ほむらちゃん。・・・えへへ」
――冷たい、微笑みだった。

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