941 名前:「約束」 1/2[sage] 投稿日:2012/10/18(木) 02:56:30.30 ID:mdPEKhcM0 >>900さんを見て、「過去の自分をまどかがどう思ってるか」ってSSを書いたはず。なのに…… 2レスで完結です。以下本文
まどかは、時間を超えて、その「願い」を叶えた。 それを見届けられていることは、喜ばしいとは思えなかった。 まどかに、それをさせてしまったのだから。 きっと、言葉にならないような事が、まどかには待っている。 時間も空間も超えて、人の考えも及ばないような、無理に言葉にすれば、おそらく壮絶なこと。 見ていることも出来なくて、目をそらす 「死ぬよりも、もっと酷い……」 自然と言葉がこぼれた。 「ううん、違う。これで良かったんだよ」 そんな私をなだめるように、まどかは私を優しく抱きしめてくれた。 「今のわたしはね、過去と未来のすべてが見えるの。ほむらちゃんがわたしのために頑張ってくれたこと、何もかも」 私も覚えている。 今でも体が砕けそうになる辛いこと。 それでも希望を求めたこと。 「それに、わたしがほむらちゃんに頑張らせちゃったことも、全部」 そう言ったまどかの声は、少し、震えていた。 「……まどか?」 思わず顔を向けると、まどかの表情も、重たく、苦しそうだった。 「ごめんね。最初にほむらちゃんを魔法少女に誘わなかったら、ほむらちゃんは普通に、きっと苦労なんてしないでいられた」 ――違う。 そんな想いを、口には出せなかった。 あの頃の私の心と記憶が体中からこみ上げてきて、自分が自分を押しつぶしていた。 ――鹿目さんと初めて会った時みたい。 きっと、私は変われなかったんだ。 だって、やっぱり何も言えないから。 「わたしが無理しなかったら、ずっと一緒にいられたかもしれない」 それは、私の責任なんだと思う。 「今だって、『こうすることが出来た』のなら『こうしないでもいられた』はずなの……」 それなら、私がいなかったら、鹿目さんはずっと「生きて」いられたかもしれない。 ――可能性が無限にあるのなら、あの日、私が鹿目さんに出会っていなかったら…… そう思った時、また違う感情がこみ上げてきた。 「……そんなこと、ないです」 あの時、私は鹿目さんに大切な物をもらった。 「……ほむらちゃん?」 今も、ずっと心にある、大切な物。 「きっと、何もなかったら、私は、ずっとあのまま、一人で……」 ――鹿目さんと一緒にいられた。 「きっと、友達がなんなのかわからないまま……」 ――そして、一緒にいられる。 「だから、鹿目さんと一緒にいたいんです」 ――そんな、かけがえのない時間。 「もう会えないなんて、このままさよならなんて、やっぱり嫌です」 あの時の私でも、今の私でも、それは変わらない。 「だから、今度こそ、友達になって、一緒にいたい」 ――私の望んだ、すがった、願った「希望」 口にしてから、ずっと言えなかったことが、やっと言えたことに気づいた。 「……もうわたしたちは友達だよ」 鹿目さんは、私の手を、その暖かい両手で握ってくれる。 「わたしが忘れてただけで、これまでもずっと」 さっきまでの憂いが嘘みたいに、笑顔を向けてくれた。 「私もやっと、わたしがほむらちゃんと過ごしてきたことを思い出せたんだよ」 一緒にいたこと。戦ったこと。 笑ったり、泣いたり、苦しんだりしたこと……。 そんなたくさんの、多分辛いことを思っているはずなのに、鹿目さんは笑顔だった。 「だから、わたしも、いつまでもほむらちゃんの友達でいたい」 鹿目さんは、髪を結わえていたリボンを、私の手に握らせてくれた。 「会えなくても、絶対、ずっとそばにいるから……」
942 名前:「約束」 2/2[sage] 投稿日:2012/10/18(木) 02:59:15.13 ID:mdPEKhcM0 なんて答えて良いか、わからなかった。 やっぱり、一緒にいたい。 沸き立つ想いを抑えるために下を向いた私の顔を覗き込む鹿目さん。 「一つ、お願いしても良いかな?」 鹿目さんが動くたび、世界が変わっていくのがわかる。 きっと、鹿目さんの「お願い」を聞いたら、本当に一緒にいられなくなってしまう。 そう思ったけれど、このままではいられないことも、だんだんわかってきたから、 「……何……ですか」 聞かなきゃ行けない気がした。 「やっぱり、名前で呼んでほしいなって」 互いのの時間が離れれば離れるほど、普通の友達として、名前を呼べなくなっていった。 名前で呼ぶことができても、いつも、守らなくちゃ、戦わなくちゃいけなかったから、ただ友達でいられるわけじゃ無かった。 「まどか」 ……けれど、普通に呼ぶことが出来た。 ――やっぱり私は、「今」の私。 過ごしてきた時間が、距離が縮まったら、まどかと友達でいられるんだと気づいた。 「ありがとう。本当に最後まで、ごめんね」 そう言ったまどかの柔らかい笑顔の向こうに、少しだけ寂しさが見えた。 ――でも、きっとそれは違う。 私は首を横に振った。 「……最後じゃ、無いです」 まどかの願いが、本当に叶ったのなら。 そして、こうして二人でいられたのなら。 「また会えます。私たちは、魔法少女だから」 私は手放さないように、リボンをぎゅっと握った。 「そうだね」 まどかが笑い直す。 「わたしたちは、夢と希望を叶えなくちゃ!」 また、世界が変わっていった。 少しずつ、まどかの姿も離れていく。 「はい!」 そんなまどかに見えるように、何度も首を縦に振った。 「それじゃあ、また会おうね!」 どんなに離れても届きそうな、まどかの声が聞こえる。 「絶対に!」 私も、世界の向こうにも届くように、思い切り約束した。
気がついたときには、まどかの姿はどこにも見えなかった。 でも、最後まで握っていたリボンをつけると、きっと見えないだけなんだと思えた。 今までの私たちがすべて、ここに詰まっている気がしたから。 「それで君は、今も戦ってるってわけなんだね」 使ったことのなかった弓も、自然と引けたし、射ることも出来た。 ――まるで、手を添えられているみたい。 「そうよ。いまだに覚えているのだから、やめる理由がないわ」 これまでの私は、今の世界でも変わらなかった。 積み重なった想いと記憶が、結局"いつ"とも違う私として、この世界で戦っている。 「まどかの『願い』を、私も守るだけ」 すべてが残った理由なんて、一つしか無い。 ――まどかと、また会うため。 「私たちは、夢と希望を守るのよ」 呪いは魔獣に形を変えるようになって、私たちは願いや想いを抱いたままで戦えるようになった。 私たちの嘆きは、まどかが受け止めてくれる。 それなら私は…… 「自分の夢も、希望も、この手で守ってみせる」 まどかと交わした一つ目の約束を守る。 二つ目の約束を、胸を張って守るために。
以上です。
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