36スレ/策士-mdhmください

Last-modified: 2014-04-27 (日) 10:34:08
447 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/11/08(木) 22:47:10.73 ID:3pGMS0jM0
このmdhmは、ご覧のスレの皆様の提供でお送りします。
「あぅ」
冬の気配を孕んだ風が吹き抜けた直後、まどかが急に目を押さえて立ち止まった。
「目にゴミが入ったの?」
「ん、そうみたい。うー、いたた」
すぐにでもまどかを助けたいところだが、私は学習した。今は下校中で他の生徒の目がある。
ここでまどかの目をじっと覗き込めば、明日からまた周囲からの冷やかし半分の祝福の声がかけられ、
校内でまどかと平穏に過ごせる時間が経るのだ。まどかと私の未来の為に、ここはじっと我慢だ。
「擦らないようにね」
「うん…」
「……」
「いたたた…」
「……」
「中々取れないなぁ…」
「……」
「うー…」
「……」
「いたいよう…」
「…ちょっと見せて」
まどかは抑えていた手を離して、何故か妙に嬉しそうに私の目を覗きこんでくる。
よく見えないので、頬に手を当てて少し顔を上に向けてもらう。涙で潤んだまどかの瞳に、私の顔が映っている。
ああ、全方位からの視線を感じる。どうして、どうしてなの。何度やっても、まどかとの平穏な生活が守れない…ッ!
それにしても綺麗な眼。少し目尻の垂れた優しくて柔らかなライン。痛みのせいだろうか、震える長い睫毛。
頬に当てていた私の手に、そっとまどかの手が重ねられる。濡れた瞳がさらに妖しく輝きを増す。
吸い込まれそう、なんて陳腐な表現だと思っていたが、そうとしか言い表せない曇り一つ無い瞳。
――曇り一つ。
「……」
「……」
「……」
「…まどか?」
「ふぇッ!?」
「ゴミなんて見当たらないのだけど」
「あ、あー、うん、もう痛くないかな。取れちゃったみたい。帰ろっかほむらちゃん」
嵌められた。まどかは私の手を握ったまま、楽しそうに歩き始める。
注がれる生暖かい視線に追われるようにまどかについて歩き出す私の耳に、
「惜しかったなぁ、もう少しだったのに」という声が届いたのは、冷たい風の悪戯だったのだと思いたい。
mdhmください。

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