75スレ/いともたやすく行われるえげつない行為の果て Ⅰ

Last-modified: 2014-06-03 (火) 02:04:42
277 名前:202[sage] 投稿日:2013/11/06(水) 00:37:37.59 ID:nh/j9cqA0
前編だけ書けた
http://ux.getuploader.com/homumado/download/344/%E3%81%84%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%9F%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%8F%E8%A1%8C%E3%82%8F%E3%82%8C%E3
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あのまま進んだ場合の最悪のケースってことで

http://hello.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1383572817/277

txtファイルはこちら

Dirty Deeds Done Dirt Cheap


ここはかつて見滝原と呼ばれた場所。


月が随分と遠い…美樹さやかはふと思った。
星々が闇へと飲まれていく、いや闇ではないあれは闇ですらない虚無。すべてがゼロになる世界。
(もう終わりかな…)
じくじくと押さえた胸から血潮があふれ出している、もう長くはない。
(でもさ…まだ確かめたいことがあるんだ…それまでは)

神と魔、いや光と闇の最終戦争
全宇宙のありとあらゆる生命・物質・概念・事象ともかくあらゆる存在が二つに分かれての争いは
宇宙の終焉という形で決着を迎えようとしていた。

あてもなく彷徨うさやかの周囲にはあらゆる死が散らばっている、魔獣・魔女・そして魔法少女
そんな中ようやく確かめたかった一つ目の存在を確認する。
「さやかちゃんもまだ残ってたんだね」
光の女神にして秩序の担い手 鹿目まどか
だがその汚れなき純白のドレスはすでに己と敵の血で真っ赤に染まっている。

「ほんとうにしぶといものね」
「ほむらちゃんも生きてたんだ」
まどかの声に続いたのは闇の魔王にして混沌の救済者 暁見ほむら
しかしその魔の象徴たる黒翼は根元から引きちぎられている。
そしてかつては女神の側近でありながら魔王の悲しみを知ったが故に天に叛きたる者 美樹さやか
彼女らがこの枯れ果てた宇宙に残る最後の存在だった。

「どうやら…直接殺しあわない限り決着は付かないみたいだね」
まどかの言葉に無言で頷くほむら。
もう何の感情もない、ただ2人の胸にあったのはようやくここまでたどり着いたという奇妙な感慨。
後悔など掃いて捨てる程だが、全て自業自得という街道を走りぬけた果てだ。
全ての為に友を捨てた少女から始まり、そしてその少女の為に全てに叛いた少女が続いた、それが発端。

「生き残った方がこの宇宙の理になる、それでいいよね」
「ええ、単純でいいわね」
顔を見合わせて2人は笑う、こんな風に笑えたのはいつ以来か?

決して望んだ形の決着ではなかった、だが互いの意地の果ての重なる因果の、宇宙法則の書き替えが全てを狂わせた。
彼女らの行っていたことは白い紙に鉛筆で消しては書いてを繰り返し続けるのに等しい。
こんなえげつない行為をいともたやすく行い続ければ、当然紙は痛むし破れてしまう。
そうなってしまえばもう取り返しは付かない。
今となっては己の貫いた信念とそれによって失われた全てのために責任を取る、ただそれだけだ。

「あの…さ、すごく痛いんだけど…先に死んでも…あーだめ?」
さやかとしてはあとは2人の問題なのでそろそろ楽になりたいのが正直な話だ、それに先に逝った杏子やマミが待ってる。

「さやかちゃん、もう少しだけ我慢してくれないかな」
「美樹さやか、貴方は見届け人よ、この戦いがいかに愚劣であったか」
「でも誰にも恥じることが無い正当な戦いだったって伝えて欲しいの」
無言で頷くさやか。
しかし全てが無に帰そうとするこの瞬間、いまさら誰に伝えるというのか?
そう思うと不思議と笑みが零れてくる。

「そういえばここは…私たちの始まりの場所…だね」
もはや死の存在しかない土地であってもやはり感じるものはあったらしい。
「じゃあ…あの時の姿で決着をつけましょう」
2人の姿がかつての魔法少女の姿へと変化する、だがこれは郷愁のみではない。
もうお互い本来の姿を維持することすら難しくなってきた、それだけの話、
残り僅かな存在の全てを燃やし尽くし目の前の相手を討つ、ただそれだけだ。

「この姿いつ以来だろうね」
懐かしそうにスカートをなびかせくるくると舞うまどか。
「でも…まどかにはその服が一番似合うわ」
溢れる黒髪を撫で上げ、かつて愛用した砂時計を懐かしそうに撫でるほむら。
「ほむらちゃんは、三つ編みの方が似合うと思うな」
「っ!そんな貴方だから私は!」
態度こそ鼻白んでいるが、まんざらでもないらしい。

確かにもう少しだけこの2人を見ているのも悪くないなとさやかは思い始めていた
(そんな長い時間でもないだろうし)
そう、2人の衣装からはじくじくと血が染み出して来ていた。

「じゃあ…」
弓を構えるまどか、盾に右手を突っ込むほむら…しかし。
その時不意に互いの目から涙が零れだす。
まだ涙を流せる自分がいたとは驚きだ、互いを想いかつてどれほどの涙を流し続けたことだろうか…遠い昔の話だ。
「てぇひひ、あれ…不思議だな…涙なんて」
「もう全部枯れたと思ってた」
「どうして…こんなことになっちゃったんだろうね」
「私が知りたいわよ!そんなの!」
そして涙が枯れた時、感情も…気持ちも捨てた筈なのに互いを目にしてしまうとそれが蘇る。
焦がれて焦がれ続け、待ち望んで待ち続けた相手が目の前にいるというのに!こんなに近くにいるのだから!
「ほむらちゃん…ハンカチ」
しゃっくりあげるほむらにまどかがハンカチを手渡そうとするが、すでにまどか自身の血を吸ってカビカビになっている。
慌てて引っ込めようとするが
「いいよ…まどかの物は全部愛しい」
ひったくるように奪うと、うっとりとハンカチにこびりついたまどかの血を舐め取るほむら。

このまま武器を捨て、心のままに抱き合えればどれほどよかったろう。
互いの胸の中で好きなだけ泣きじゃくることが出来ればどれほどよかったろう。

「けど…」
「それは…夢だね」
溢れる涙を拭おうともせず、ふたりはもう一度微笑む。
「…なら…ちゃん」
「さよ…まど…」


『愛してた』


声が震え…視界が歪む…呼吸が2つ。少し遅れて
「まどかは!」 「ほむらちゃんは!」

『私の敵よぉ!』

この最終戦争のフィナーレを飾る死闘がついに幕を開けた。
そして2人の瞳から溢れる涙は慟哭の血涙へと変わっていた。