81スレ/一足早いクリスマスプレゼント

Last-modified: 2014-06-11 (水) 23:43:15
909 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/12/03(火) 01:13:48.64 ID:4qdHsEHr0
友達以上恋人未満な悪ほむまどの日常ssです

http://ux.getuploader.com/homumado/download/404/%E4%B8%80%E8%B6%B3%E6%97%A9%E3%81%84%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%88.txt

これからはいつでもまどまどできると油断している悪魔ほむらを、
ほむほむして主導権をにぎる小悪魔どっちとかもいいと思います

http://hello.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1385588913/909

txtファイルはこちら

「ほむらちゃん、次はあのお店に行こっ!」

「えぇ…あんまり急ぐと扱けるわよ、まどか」

「ティヒヒッ!大丈夫だよ~」

12月最初の日曜日、私とまどかは二人で出かけ街中を散策している
その目的は、巴マミの家で行われるクリスマスパーティーでのプレゼント交換に出すプレゼントの下見
最初は真面目に選んでいたのだけれど、何件か回るうちに自分の欲しいモノ探しに変わっていった

「この服、ほむらちゃんに似合いそう!」

「ちょっと派手じゃないかしら?」

「ほむらちゃん、黒系の服が多いからこういうのもいいと思うな~」

「ふふっ、ありがとう。今後の参考にするわ」

これが俗にいうウィンドウショッピングというものなのかしら
普通の女学生が、友達と他愛のない話をし時間を潰していく
これまで病院で多くを過ごし、魔女と戦いまどかを守るために時間を費やしてきた私にとって初めての経験だった

「ねぇほむらちゃん、あそこでクレープ食べようよ」

「構わないけど…まどかは大丈夫なの?」

「ウェヒッ?!…最近ちょっと丸くなってきたかな~って思うけど…」

「そうじゃなくて、お金の方よ」

「うっ…大丈夫、プレゼント買う分は残してるから!」

一瞬不安な表情を浮かべ、財布の残金を確認し安堵の表情に変わるまどか
喜怒哀楽がはっきりとしていて、見ているだけで飽きない
これはどの時間軸でも変わらない

そういえば、昔は…私が転校したての頃は、まどかに町の案内といって色々連れて行って貰ったわ
もう遥か遠い、前世の記憶に感じるけど…まぁ、今の私にとって前世といってもいいのかも
人間から魔法少女になり、魔女を経て今は悪魔なんですもの

「ねぇ、ほむらちゃんの一口ちょうだい!わたしのも食べていいから」

「いいわよ…はい」

「ありがと~、じゃあいただきます!…うん、こっちもおいしい」

「まどかのもおいしいわよ…あら、まどか…ほっぺにクリームが」

「ウェヒッ?!…ホントだ、ありがとう…なんか恥ずかしいな~」

「ふふっ、可愛いわよ」

「ん~…からかわないでよ~」

今度は顔を赤らめ恥ずかしがるまどか
昔は、私がまどかに同じこと指摘されて赤面してたわね
今は立場が逆転してるわね…
それだけじゃない、あの頃のまどかは魔法少女になっていて…
いつ死が訪れるか分からぬ日々を過ごしていた
だけど今は違う、普通の少女として幸せな日常を過ごしている
愛する家族、友人に囲まれて…

思えば、まどかとの思い出は繰り返した1ヶ月の間しかない
こうしてクリスマス等のイベントを迎えることができるなんて…
当たり前の日常が、こんなにも愛しく尊いモノだったとは思ってもみなかった

「ほむらちゃん…ねぇほむらちゃん!」

「…!な、何…かしら?」

「ん~、何かボーっとしてたから…色んなとこ連れてっちゃったから、疲れた?」

「えっ、あ…大丈夫よ、ただ…昔をね…」

「そうなんだ…あんま、無理しないでね」

心配そうな顔でこちらを見つめるまどか
やっぱり、あなたはいつどんなときも優しいのね
その優しさが、今は私だけに向けられている
このまま私だけのモノにしたい、独占したいって思ったりもするけど…
それではまどかの幸せにならない…それに私にはそんな資格はない

「あのね…最後に、あのお店に行ってもいい…かな?」

「えぇ、私はまどかの行くとこならどこでも付いて行くわよ」

「ティヒヒッ…やっぱりほむらちゃんは優しいね」

違う、あなたが優しいから私も優しくなれるというか…あなただから、こういう私になれるんだから
…何て言えるわけもなく、まどかに連れられて可愛らしく飾りつけられた小さなお店に入る

「うわぁ、凄い…可愛いモノがいっぱい」

「そうね…」

お店の中は、主にピンク色に染まりファンシーな小物類やぬいぐるみで満たされていた
ここにいるだけで、浄化されてしまいそう…

あまりここには長居できないと感じた私は、まどかには悪いけど先で出ることを伝えようとしたその時…

「あーっ、この子たちすっごくカワイイーっ!」

大声をあげたまどかが、あるぬいぐるみに向かっていった

「ねねっ、ほむらちゃんスゴイカワイイよ~」

まどかが2体のぬいぐるみを腕に抱え、私に見せる
1体はピンクの髪を赤いリボンで二つに結び、もう1体は黒い長髪で頭に赤いリボンを巻いている
そしてお揃いの白いワンピースを着て、肩を寄せ合いながらまどかに抱かれていた

「そうね…この子はまどかに似ているわね」

「こっちの子はほむらちゃんそっくりだね」

言われてみれば…こんなキャラクターがいるのかしら?それとも、オリジナル?

「ん~…お金があれば、お家に連れて帰りたいんだけど…しょうがないよね」

口惜しそうに腕に抱えた2体を元の棚に戻そうとするまどか

「待って、まどか」

私は、棚に向かうまどかの腕をつかんでいた

「ウェヒッ?!…ほむらちゃん、どうしたの?」

「その子達、私が買うわ…そして、あなたにプレゼントさせて」

咄嗟に出た一言だった

「えぇぇっ?!そんなの悪いよ~」

「私もその子達欲しくなったのよ」

「だったら、ほむらちゃんが…」

「私の家だとその子達には寂し過ぎるわ」

「でも…」

「それが、この子たちにとっても一番いいと思うの」

こうなったら勢いだけだった
何でこんなこと言ったのか、自分でも理解できなかった
だけどこの2体のぬいぐるみには、運命的というか…何か感じるモノがあったから

「いつも、ほむらちゃんにお世話になりっぱなしだし…悪いよ…」

「大丈夫よ、私がしたいって思ってるだけだから…気にしないで」

「でも…」

「あなたが気に病むことはないわ」

まどかが悩んでいる間に、腕から2体を抜き出しレジに向かった

「あっ、ほむらちゃん!」

腕から2体がいなくなったことにまどかが気付いた時には、もうお会計直前だった

「\○○○です」

「えぇ…あら?」

店員さんが言った金額を払おうと財布を確認するが…

「えっ…嘘…」

自分の中では、ぬいぐるみ分くらいのお金はあるイメージだった
…が今私の財布には、1体分ならかえるだけのお金しかなかった

今までぬいぐるみなど買うことのなかった私にとって、これが適正かわからなかった
でも今言えるのは、このままだと1体は置いて帰ることになることだ
まどかにプレゼントすると啖呵切っておきながら、1体しかできないなんて…私はどれだけ愚かなのだろう
もし未だソウルジェムだったら一瞬で濁っていただろう…
それはともかく、まどかに何て言おうかしら…後ろにいるから表情は分からないけど、凄い期待してるわよね

「あの…お客様?」

「ほむら…ちゃん?」

正面では店員さんが不安な表情でこちらを見、後ろからはまどかの不安そうな声が聞こえる
…ここでやることは一つ

「ごめんなさいまどか…1体しかプレゼントしかできないみたい」

「えっ…」

「だから…どちらを持って帰るか、選んで」

予想していなかった展開に、言葉を失い固まるまどか
当然よね、2体プレゼントしてもらえるはずが1体だけだなんて言われたんですもの
魔法少女の能力が使えたなら、時間を止めてお金を下ろすなんてこともできたのかもしれないけど…
生憎悪魔の私は、その能力を失っていた
それにしても、とんでもない失態だわ…これでまどかの私への評価は、地に堕ちるでしょうね

「やだ…嫌だよ…」

「えっ…?」

「どっちかなんて…選べないよぅ…」

まどかから返ってきた言葉は、予想外のものだった

「この子たちを、別々になんてできないよぉ…」

目にはうっすらと涙をうかべ、今にも泣きそうだった
こんなまどかの表情を見るのは、初めてだった

「でも、今は…」

「嫌だ…嫌だよぉ…」

「あの…お客様」

「あっ、ごめんなさい…ちょっと待ってください」

痺れを切らした店員さんに促され、私はとりあえずレジから2体を持って離れた
しかし、どうしたものか…ここまで、自分の意思をはっきり出すまどかは初めてだった

最適な方法が見つからない私は、とりあえず2体を抱えまどかの前に立つ
まどかは2体を見つめ、何か考えているのか無言のままだった

私としては、早くこの沈黙を抜けお店から出たかった
あぁ、こんなことなら格好つけなければよかった…数分前の行動を悔やんでいた

「よし、分かった!」

まどかの発言によって、長い沈黙が破られた
…時間としては、ほんの数分だったのだろうけど体感的には何時間にも過ぎたようだった

「もう一人は、わたしがほむらちゃんにプレゼントする!」

「えっ…」

まどかの出した答えは、予想外のものだった

「わたしは、ピンクの子をほむらちゃんにプレゼントする!だから、ほむらちゃんには…」

「まっ、待ってまどか…あなた、それじゃあクリスマスの…」

そう、確か今のまどかにはクリスマスプレゼント分しかお金がないはず…

「それは…何とかするよ!今は、この子たちを別々にできないし…わたしも、ほむらちゃんにプレゼントしたいなって…」

まどかの優しさに、目頭が熱くなった

「でも、私が貰ったら…結局、別々に…」

「それはピンクの子にはほむらちゃんが、黒髪の子にはわたしがいるから…寂しくないかな、なんて…」

そう言いながらまどかは、照れくさそうに下を向く
つまりそれは…

「ねっ、それでいいでしょ…はい、決定!じゃあ、わたしこの子のお金払うからね」

半ば強引に決まってしまった…でも、まどかがいいのならそれでいい

あぁ、またまどかの優しさに甘えてしまった…
悪魔になったといっても、やはりダメなままの私だ…

それぞれのお金を払い包装してもらった後、店員さんから拍手を受け退店した
他にお客さんがいなくてよかった…

その後は、それぞれが買ったぬいぐるみが入った包みを持ちながら帰路についた
道中に会話はなかった


そして――――――――――――

「ここで、お別れだね」

「えぇ、楽しかったわ」

「うん…あと…」

「分かっているわ…」

それぞれ手に持った包みを差し出し、交換する

「ねぇ、その子と一緒に…遊びに来てね」

「えぇ…私のとこにも、来てほしいわ」

「うん…行く、行くよ」

期せずして、まどかの家に遊びに行く口実ができたわ
まどかからのプレゼント…さびしくないようにしなくちゃいけないわね

「じゃあ、また明日ね」

「えぇ、また明日…気をつけてね」

「ティヒヒッ…ここまできたら大丈夫だよ~…ねぇほむらちゃん」

「何…んむっ!…」

「…プハッ…今日はありがと、ほむらちゃん!先にプレゼント交換したことは、みんなにはナイショだよっ!」

「え、えぇ…分かった…わ」

「バイバ~イ」

元気に手を振り、まどかは夕焼けに染まる方へ向って言った

私は、突然の唇へのキ…キスに、思考が停止していた…


――――――――――――――それから、たまたま通りかかった巴マミに声をかけられるまで
              壊れたロボットのように、片手を振り続けていたらしい