Chapter1 [200 OK]

Last-modified: 2025-06-16 (月) 20:45:07

第0章 始まり

風が乾いた土埃を巻き上げ、錆びた鉄の匂いを運んでくる。そびえ立つ壁は、かつてこの場所が帝国に打ち捨てられた廃墟であったことを雄弁に物語っていた。その壁の前に、一人の女が静かに佇んでいた。

「…………」

不意に、物々しい監視塔から鋭い声が飛ぶ。
「そこで何をしている!動くな!何者だ!要件を言え!」
銃口が寸分の狂いなくこちらを向いているのが分かった。女はゆっくりと両手を挙げ、顔を上げた。

「私はネクワ・エーテルム。帝国反乱軍への入隊を希望して、ここを訪れた」
凛とした声が、乾いた空気に響き渡る。その堂々とした態度に、兵士は一瞬たじろいだ。

「……入隊希望だと?物好きな女もいたものだ。……分かった。門を開ける。だが、妙な真似をすれば頭が吹き飛ぶと思え」
重い金属音を立てて開いた門の先で、兵士はぶっきらぼうに言った。
「……そうか。ならば歓迎しよう、帝国反乱軍へ。これから簡単な試験を行う。俺についてこい」

ネクワは兵士の後に続きながら、荒涼とした基地の内部を見渡した。
「想像していたよりも、ずいぶんと質素なのだな」
「ふん、元は帝国の忘れ去った廃墟だからな。おまけに、本部から物資が満足に届かなくてな。弾の一発、パンの一切れですら貴重品だ。贅沢を言える身分じゃない」
兵士は吐き捨てるように言った。

「なるほど。その『本部』というのは、一体どこにあるんだ?」
「お前さんが試験に合格したら、いずれ知ることになるさ。今は余計なことを詮索するな。楽しみにしとくんだな」
兵士はそれきり口を閉ざし、二人分の足音だけが薄暗い通路に響いた。

しばらく歩くと、少しだけマシな装飾の施された扉の前で兵士は立ち止まった。
「ここが試験会場だ」
「……ここが?」
「ああ。どうだ、意外と悪くないだろう?そこらのガラクタを寄せ集めて作ったにしては、なかなかの出来栄えだ」
兵士は少しだけ誇らしげに言った。

「まあな。そこら辺に点在する帝国の、無駄に豪華なだけの前線基地よりはよほど落ち着く」
ネクワの言葉に、兵士は口の端を上げた。
「そいつは何よりだ。……さて、感傷に浸るのはそこまでだ。これからお前の覚悟を試す試験が始まる。心の準備はいいか?」
「ああ、いつでも。…ただ、少しだけ水を飲ませてはくれないか?ここまで来るのに、ずいぶんと喉が渇いてしまった」
「……ちっ、仕方ねえな。ほらよ」
兵士が差し出した水筒の水は、鉄の味がした。いつも口にする湧き水とは比べ物にならないほど、不味い。だが、その不味さが妙に心地よかった。
(この味こそが、ここが戦場だという証拠だ……)
ネクワは静かに覚悟を決めた。

「……これでいい。準備はできた」
「よし。それじゃあ、この先のドアを開けて中に入れ。幸運を祈る」
ネクワが重いドアを押し開けると、その中には簡素な机を挟んで、一人の少女が座っていた。部屋の雰囲気にはそぐわない、あまりにも年若い少女だった。

「こんにちは。どうぞ、お掛けください」
穏やかな、しかし芯のある声だった。
「こんにちは。私はネクワ・エーテルム」
ネクワが名乗ると、少女はにこりと微笑んだ。
「私はトルティヴと申します。ネクワさん、本日はよろしくお願いします。入隊の動機や、あなたの持つ技能についてお聞かせいただきたいと……あれ?」
突然、トルティヴの言葉が途切れ、彼女の顔から表情が消えた。

「……どうかなさいましたか?」
ネクワが問いかけると、トルティヴは信じられないものを見るかのように目を見開き、椅子から身を乗り出していた。
「まさか……そんなはずは……」
その視線は、ネクワ自身に向けられている。
「?」
「その魂の輝き……その存在感……あなたは、もしや……」
トルティヴは震える声で、言葉を紡いだ。
「空間神エーティミア……ネクワさん、あなた、失われたはずの神、空間神エーティミアではありませんか…?」

「待ってくれ。何を言っている?空間神?人違いではないか?」
ネクワの困惑をよそに、トルティヴは素早く耳元の通信機に触れた。
『もしもし、司令部ですか?トルティヴです』
その声は先ほどまでの穏やかさとは打って変わって、切迫したものだった。
『どうした、トルティヴ。何か問題でもあったか?』
『はい。ただいま入隊希望者の面接を行っているのですが……その方が、少し、いえ、かなり異常で……過去の記録にある、空間神エーティミアと同様のエネルギー反応を検知しています』
一瞬の沈黙の後、通信機の向こうから驚愕の声が返ってきた。
『……本当か?測定器の異常ではないのか?』
『間違いありません。私のこの眼で確認しています。つきましては、最終確認のため、『例の神器』の使用許可を要請します』
『……分かった。許可する。すぐにそちらへ転送する。くれぐれも、扱いには注意しろ』
『感謝します。トルティヴ、アウト』

通信を終えたトルティヴは、ゴクリと息を飲んでネクワに向き直った。
「……………?」
ネクワが事情を飲み込めずにいると、トルティヴの前の空間が淡く光り、古風な装飾が施された短剣のようなものが現れた。
「ネクワさん。これを、手に取ってみていただけませんか?」
「……分かった」
促されるまま、ネクワがその冷たい柄に触れた、その瞬間だった。

ゴオオオオオッッ!!!

神器が眩い光を放ち、部屋中に凄まじい嵐のようなエネルギーが吹き荒れた。ネクワの脳内に、知らないはずの光景、聞こえるはずのない声が流れ込んでくる。

(どういうことなんだ?)
(なぜ僕の力が、こんなところに?)
(この感覚は……まさか……)

「………なんなんだ、これは……一体、どういうことなんだ…!?」
ネクワが呻くと、トルティヴはわなわなと震えながら、確信に満ちた目で彼女を見つめていた。
「……………!!!」
「……どうやら貴方は……いえ、これ以上は、まだ知らない方がいいでしょう。今のあなたには、まだ知るには早すぎる。それは、あまりにも重い真実ですから」
トルティヴは神器を慎重に回収すると、深く息を吸って言った。
「……ひとまず、試験はこれで終わりです。司令部に特別推薦を提出しました。ネクワ・エーテルム、あなたは本日をもって、帝国反乱軍への入隊を許可します。合格です」

「……そうか」
「ネクワさん。これから貴方には、我々の切り札……最高練度の精鋭部隊『ノヴァ』の一員として、その力を振るっていただきます」

第一章 戦場への道

トルティヴの執務室。壁一面の地図とモニターが、戦況の厳しさを物語っていた。彼女は反乱軍の若き指揮官の一人であり、その冷静かつ緻密な計画は、多くの勝利をもたらしてきた。

「さて、ネクワさん。早速ですが、あなたには前線での戦闘任務にあたっていただきます。準備はよろしいですか?」
彼女の言葉は、有無を言わせぬ響きを持っていた。ネクワは、反乱軍の一員としての最初の役割を前に、静かに頷いた。
「……例の神器、でしたか。あれに秘められた力、そして貴方自身の謎。その答えは、戦場にしかありません。上手くいくかは分かりませんが……我々はその可能性に賭けるしかないのです」
トルティヴの瞳には、期待と、そしてわずかな不安が入り混じっていた。

「……分かりました。その戦場へ、案内していただけませんか?」
ネクワの声には、不思議なほどの落ち着きがあった。戦場という死地を前にしても、その紅い瞳には一切の揺らぎが見えなかった。

第二章 輸送車の中で

武骨な装甲輸送車の内部は、汗とオイルと、そして兵士たちの放つ独特の熱気に満ちていた。激しく揺れる車内で、新入りのネクワの存在は、古参の兵士たちの格好の的だった。

「もちろんです。輸送車を用意してありますので、それに乗り込んでください。他の部隊員も乗っています」
トルティヴに案内され、ネクワは輸送車に乗り込んだ。
「……ふーん」
その短い呟きは、これから始まるであろう自身の運命を、静かに受け入れる覚悟の表れのようだった。

ガタン、と大きな音を立ててハッチが閉まると、向かいに座っていた屈強な兵士がニヤリと笑って話しかけてきた。
「よぉ、あんたが噂の新入りか?トルティヴ様直々の推薦だっていうじゃないか。俺はダリオだ」
「……ネクワだ。よろしく」
「まあ、なんだ。ここに来たってことは、俺たちと同じように、腐った帝国に一泡吹かせたいってことだろ?同じ志を持つ仲間さ。歓迎するぜ」
ダリオと名乗る兵士の言葉には、荒々しいながらも仲間意識が感じられた。

隣に座っていた、少し年若い兵士も微笑みかける。
「ようこそ、反乱軍へ。僕の名前はレオンです。正直、こんなご時世に自ら飛び込んできてくれるなんて、本当に嬉しいですよ。希望が見えた気がします」
「……それはどうも」
ネクワの簡素な返答にも、彼らは気にした様子はなかった。

ダリオが、試すような目でネクワを見る。
「ところでネクワ。あんた、このオンボロ輸送車がどこに向かっているか、聞いているか?」
「ウルセナという名の戦場だと。それ以上の具体的な場所は聞いていないが」
彼女は確かな情報を求めていた。確信を持って戦うために。

「ウルセナ、か。答えを言ってやる。そこは首都から5,400キロ離れた鉱山都市だ。帝国の兵器を作るための重要な金属資源が眠ってる」
ダリオの言葉に、レオンが顔を曇らせた。
「……ウルセナ……。あそこは帝国も絶対に手放さないはずです。相当激しい消耗戦になる……。多くの仲間が、あそこで……」
ウルセナという地名は、反乱軍の兵士たちにとって、希望であると同時に多くの犠牲を払ってきた因縁の場所だった。

「ウルセナ……?」
その名前を聞いた瞬間、ネクワの脳裏に、遠い昔の記憶の断片が閃いた。白く輝く美しい街並みと、人々の穏やかな笑顔。
「……いや、違う。ウルセナは、昔は別の名前で呼ばれていたような気がする……」
彼女の不意の言葉に、ダリオとレオンは顔を見合わせた。

「別の名前?……あんた、ウルセナについて何か知ってるのか?」
ネクワは首を振る。だが、その胸には確かな疼きがあった。忘れていたはずの過去が、この戦場で自分を待っている。そんな予感が、彼女の心を支配し始めていた。

第四章 戦闘の火蓋

ウルセナに到着した輸送車のハッチが開いた瞬間、ネクワたちの鼓膜を叩いたのは、地獄の交響曲だった。
絶え間なく続く爆音、空気を引き裂くエネルギー弾の飛翔音、そして人々の断末魔の叫び。空では帝国軍の黒い戦闘機がカラスの群れのように旋回し、地上では両軍の兵士が入り乱れて激しい銃撃戦を繰り広げていた。かつて美しい鉱山都市だったウルセナの面影はなく、今は鉄と硝煙の匂いが立ち込める巨大な墓標と化していた。

「クソッ、もう始まってやがる!ここがウルセナだ!モタモタするな、配置に着け!死にたくなければ撃ち続けろ!」
ダリオが怒鳴り、兵士たちは雄叫びを上げて塹壕へと飛び出していく。
「……了解した」
ネクワは短く応じると、戦場の空気を深く吸い込んだ。恐怖はない。ただ、肌を刺すような高揚感があった。彼女の瞳には、敵弾の軌道、味方の位置、そして戦場の流れそのものが、まるで色分けされた地図のように鮮やかに映し出されていた。

武器と戦略
帝国軍と反乱軍が使用する兵器は、皮肉にも同じ供給源から流れた技術を基にしていた。それらは次世代のテクノロジーを駆使したもので、圧倒的な火力を誇る。

* パルスライフル: 高速で連射可能なエネルギー兵器。青白い光弾が、着弾した瞬間に兵士の装甲を蒸発させる。
* プラズマキャノン: 灼熱のプラズマ塊を撃ち出す大口径兵器。着弾すれば、半径数メートルを焦土に変える。
* ナノブレード: 微細なナノマシンで構成された近接用の刃。あらゆる物質を分子レベルで滑らかに切断する。

ネクワはパルスライフルを構え、塹壕から塹壕へと、まるで流れるような動きで駆けていく。彼女の戦術は迅速かつ正確無比。敵の弾丸は彼女の体を掠めることさえできず、逆に彼女が放つ光弾は、次々と帝国兵の眉間を正確に撃ち抜いていった。

「ネクワ!左翼だ!敵の分隊が回り込んできてる!援護を頼む!」
レオンが叫ぶ。
「任せて。5秒で黙らせる」
ネクワは冷静に敵の動きを分析すると、壁を蹴って宙を舞った。空中で放たれた数条の光が、死角から迫っていた帝国兵を完璧に沈黙させる。その神業のような戦いぶりに、味方の兵士たちは息を飲んだ。

帝国軍の反撃:「レーザーアイ」の登場

だが、個人の技量で覆せるほど、この戦いは甘くなかった。反乱軍の猛攻に業を煮やした帝国軍は、ついにその切り札を投入する。
『全部隊に通達!これより、戦略級殲滅兵器『レーザーアイ』の掃射を開始する!味方は速やかに退避せよ!』
帝国軍司令官の冷徹な声が、戦場に響き渡った。
「レーザーアイだと!?まずい!」
ダリオの顔色が変わる。次の瞬間、ウルセナ上空に設置された巨大な衛星兵器が起動し、空に禍々しい紅の光が灯った。
「レーザーアイ、起動します!反乱軍のゴキブリどもを一掃せよ!」
巨大な装置が唸りを上げ、天から無数のレーザーが光の雨となって降り注いだ。それは、神の裁きか、悪魔の嘲笑か。光に触れたものは声も上げられず、一瞬で蒸発していく。塹壕も、遮蔽物も、何の意味もなさない。反乱軍の陣地が、次々と灼熱のクレーターに変わっていった。
「うわあああっ!」
「助けてくれ!熱い!熱い!」
「くそっ、こんなもの、どうしろって言うんだ!逃げ場なんてないぞ!」
兵士たちの勇気は、絶対的な力の前に恐怖へと変わる。
「……どうやら、ここが引き際か」
ネクワは冷静に、しかし唇を噛み締めながら判断を下した。これ以上の戦闘は無意味な死を増やすだけだ。
「全員、撤退!今は無理だ!生き延びて次を考えろ!」
彼女の叫びが、混乱の極みにあった兵士たちに届く。彼らは我に返り、レーザーの猛威から逃れるため、必死に後方へと走り出した。

第五章 一時撤退

反乱軍は、這う這うの体でウルセナから撤退した。
レーザーアイの圧倒的な火力の前に、彼らの武器も戦術も、全てが無力だった。
「くそったれが!あと少しで押し込めたってのによ!」
岩陰に隠れ、ダリオが悪態をつく。
「全員、無事か!?生きている奴は返事をしろ!」
彼の叫びに答える声は、ウルセナへ向かった時の半分にも満たなかった。ネクワの冷静な声が、絶望に沈む兵士たちを繋ぎとめる。
「……大丈夫。今は落ち着いて。呼吸を整えろ」
彼女の存在が、かろうじて彼らの心を砕け散る寸前で支えていた。しかし、彼女自身もまた、敗北の重みを噛み締めていた。
(あの力……ただの兵器ではない。まるで、意思を持っているかのような……)
一時的な安息地で、反乱軍は新たな戦略を立てる必要に迫られた。
『報告しろ!被害状況は!?』
通信機から、トルティヴの焦燥に満ちた声が聞こえる。
「司令官……我々は……敗北しました。レーザーアイには、なす術がありません」
レオンが悔しそうに報告する。
『……分かっています。ですが、あんなものに対抗するためには、我々も次世代の……いえ、規格外の兵器を投入するしかありません』
『ネクワさん。聞こえますか?』
「……ああ、聞こえている」
『あなたの力が必要です。そして、あなたの力に応える『鍵』が、ここにあります』

第六章 次なる戦いへ

ウルセナでの惨敗は、反乱軍に大きな傷跡を残した。だが、彼らは決して諦めなかった。失った仲間の顔、帝国の非道、そしてネクワという新たな希望。それらが、彼らを再び立ち上がらせる。
ネクワを中心に、反乱軍は次なる戦いに備え、決意を新たにする。彼らの前に立ちはだかる帝国軍と、悪魔の眼「レーザーアイ」。反乱軍は、この圧倒的な力に、いかなる答えを見つけ出すのか。
戦いはまだ終わらない。この敗北は、勝利への序章に過ぎなかった。

第七章 新たな作戦

ウルセナから撤退して数日後。反乱軍は後方の秘密基地で体制を立て直し、トルティヴを中心に作戦会議を開いていた。重苦しい雰囲気の中、トルティヴが電子マップを指し示す。
「我々はここで立ち止まるわけにはいきません。ウルセナを取り戻すために、そして帝国を討つために、新たな作戦を開始します」
彼女の言葉が、兵士たちの瞳に再び闘志の火を灯す。
「ですが、トルティヴ様。あのレーザーアイがある限り、我々は近づくことすら……」
兵士の一人が不安を口にする。
「ええ。だからこそ、発想を転換するのです。レーザーアイを正面から破壊するのではなく、その心臓部……エネルギー供給源を断つ。それを可能にする唯一の存在が、ここにいます」
全員の視線が、ネクワに集まった。
「ネクワさん。あなたには、単独で敵中枢に潜入し、エネルギー供給施設を破壊するという、最も重要な役割を担っていただきます。そのための『切り札』を用意しました」

第八章 エーティミア・リピーターの力

トルティヴに導かれ、ネクワが足を踏み入れたのは、基地の最深部にある薄暗い部屋だった。中央の台座に、一丁のライフルが安置されている。それはまるで、星空をそのまま封じ込めたかのような、神秘的な輝きを放っていた。
「これが……『エーティミア・リピーター』。かつて空間神が使ったとされ、我々が密かに回収・保管していた神器です」
ネクワが手を伸ばすと、ライフルが共鳴するように淡く光り、彼女の手に吸い付くように収まった。その瞬間、膨大な情報と力がネクワの全身を駆け巡る。
「これが……エーティミア・リピーター……」
それは、ネクワ以外には引き金を引くことさえ叶わない、魂で繋がった武器。彼女の失われた力を、最大限に引き出すための鍵だった。

空間の力
エーティミア・リピーターは、空間そのものを弾丸として撃ち出し、操る力を持っていた。空間を断裂させ、敵の防御ごと消滅させる。空間を歪め、テレポートする。この武器を手にしたネクワは、もはやただの兵士ではなかった。

「この力があれば……ウルセナを取り戻せる」
彼女の紅い瞳に、揺るぎない決意と覚悟が宿っていた。

第九章 ウルセナ奪還作戦

トルティヴの緻密な計画のもと、反乱軍は再びウルセナへと進軍した。今回は、前回とは違う。彼らの目的は陽動。帝国軍の注意を全て引きつけ、たった一つの隙を作り出すこと。
「全軍、突撃!ネクワのために道を開けろ!我らの命に代えても、彼女を中枢に送り込むんだ!」
ダリオの号令一下、反乱軍は帝国軍に猛攻を開始した。空には再び戦闘機が飛び交い、地上ではエネルギー兵器が激しく火花を散らす。
『こちらトルティヴ!ネクワさん、陽動は成功しています!今です!』
「了解した」
ネクワはエーティミア・リピーターを構え、戦場の喧騒から一人、影の中を疾走する。彼女の動きはもはや人間のそれではなかった。
帝国軍の厳重な防衛線を前に、ネクワはリピーターを構える。
「道を開けろ」
引き金を引くと、撃ち出されたのは光弾ではない。空間そのものの「歪み」。それは帝国軍の防壁に風穴を開け、兵士たちを次元の狭間へと吸い込んでいく。
彼女は空間を跳躍し、瞬く間に敵陣の奥深くへと到達した。
「これで、終わりだ…!」
レーザーアイの巨大なエネルギー供給施設。その中心部にある制御コアを見つけ出すと、ネクワはリピーターの出力を最大にした。
放たれた一撃がコアを直撃し、空間ごと破壊する。その瞬間、空で輝いていた悪魔の眼「レーザーアイ」は光を失い、巨大な鉄塊となって地上へと墜落していった。

第十章 ウルセナの制圧

切り札を失った帝国軍の士気は崩壊した。指揮系統は乱れ、兵士たちは次々と武器を捨てて降伏する。戦場を支配していた絶望的な轟音は止み、代わりに反乱軍の歓声が響き渡った。
ネクワのたった一人の活躍によって、反乱軍はウルセナを完全に制圧することに成功したのだ。
「やりました……!やりました、ネクワさん!ウルセナは、我々の手に戻りました!」
通信機越しに聞こえるトルティヴの涙声に、兵士たちはヘルメットを空に放り投げて叫んだ。
「うおおおおお!万歳!反乱軍の勝利だ!」
ウルセナ:新たな本拠地
戦略的にも資源的にも重要なこの都市は、反乱軍の新たな本拠地となった。ここから、帝国への反撃の狼煙が本格的に上がるのだ。
瓦礫の上に立ち、静かに夕日を眺めるネクワ。彼女の周りでは、仲間たちが勝利を分かち合っている。
「……これで、やっと一歩前に進めた。でも、本当の戦いは、まだこれからだ」
彼女の瞳は、帝国の心臓部、遥か彼方の首都を見据えていた。反乱軍の未来をその両肩に担い、ネクワはエーティミア・リピーターを強く握りしめた。