第一章: ウルセナの繁栄
最後の侵攻から、125年の歳月が流れた。
かつて鉱山都市だったウルセナは、今や地上と地下にまたがる壮麗な巨大複合都市へと変貌を遂げていた。地上には緑豊かな公園と白亜の摩天楼がそびえ立ち、青空の下を飛行シャトルが静かに行き交う。そして地下深くには、太陽光を再現したドームが広がり、数百万の市民が自由を謳歌する巨大コロニーが発展していた。
このウルセナこそ、帝国反乱軍の揺るぎなき本拠地であり、帝国の支配が及ばぬ唯一の聖域だった。
コロニーを見下ろすタワーの最上階で、ネクワは静かに眼下の光の海を眺めていた。
「私たちの力が……私たちの街が、これほどまでに強くなるとは。125年前、あの瓦礫の中で戦っていた頃には、想像もできなかったな」
彼女の容姿は、あの頃と少しも変わらない。だがその瞳には、幾多の戦いと、数えきれない仲間との出会いと別れを経験した者だけが持つ、深い静けさと、消えることのない寂寥感が宿っていた。
同じく、不老不死の時を生きる指導者トルティヴと、天才技術者カトルプもまた、この125年でその能力を神域にまで高めていた。
「この地で人々が笑顔で暮らせるようになったのは、我々が流した血と涙の成果です。ですが、戦いはまだ終わっていません。次は、帝国そのものを打ち倒し、このウルセナの自由を宇宙(そら)の全てに広げる時です」
トルティヴの言葉には、絶対的な指導者としての威厳が満ちていた。
「そーそー!私の技術も進化し続けて、脳内の設計図がもう大変なことになってるんだから!次の戦いでは、帝国軍がひっくり返るような、とびっきりの花火を見せてあげちゃうよ!」
カトルプは自信満々に笑った。彼女が生み出す兵器は、もはや帝国の技術力を遥かに凌駕していた。
第二章: 新たな仲間、マルト=クオンテッド
そんなある日、ウルセナの宇宙港に一隻の豪華絢爛なクルーザーが降り立った。現れたのは、金の刺繍が施された純白のドレスをまとう一人の少女。彼女こそ、帝国経済の一部を裏で支配するとまで言われる、マルト財閥の令嬢、マルト=クオンテッドだった。
「あなたが、ネクワ・エーテルム。そしてトルティヴ司令官に、カトルプ技術長。お会いできて光栄です」
マルトは深々と頭を下げた。その姿は気品に満ちているが、瞳の奥には強い意志の光が宿っていた。
ネクワが問いかける。
「マルト財閥の令嬢が、我々に何の用だ?帝国に与する財閥が、反乱軍に接触するのは危険なはずだが」
「ええ、その通り。ですが私は、その腐敗した帝国と手を切るためにここへ来ました。私は、あなたたちの反乱に参加したいのです」
マルトの言葉に、トルティヴが興味深そうに目を細める。
マルトは続けた。
「私の財閥は、長きにわたり帝国に富を搾取され続けてきました。民衆だけでなく、我々のような者でさえ、帝国の圧政の前では無力だった。……私は、幼い頃に見たのです。たった一握りの兵士たちが、帝国の圧倒的な軍勢からこのウルセナを解放した、あの日の戦いを。あの時のあなたたちの勇姿が、ずっと私の胸から離れなかった。だから決めたのです。財閥の力、その全てを使って、あなたたちと共に戦うと」
その熱意に、トルティヴは静かに微笑んだ。
「ようこそ、マルト=クオンテッド。あなたのような意志ある人材を、我々は心から歓迎します。ぜひ反乱軍の仲間として、共に新しい時代を築きましょう」
第三章: マルトの力と目標
マルトが反乱軍にもたらしたものは、計り知れないほど大きかった。彼女は財閥が持つ広大な情報網と経済力を駆使し、帝国ですら入手困難な希少資源や最新鋭の兵器を、いともたやすく反乱軍にもたらした。
「私の財閥の力を使って、反乱軍の戦力をさらに強化します。資金も、資源も、人材も、必要なものは全て私が用意しましょう」
カトルプは、マルトが持ってきた物質リストを見て、狂喜乱舞した。
「うっそ、これ全部ホント!?このレアメタルがあれば、構想だけで100年はかかりそうだった『次元潜航艦』が作れるじゃない!マルトちゃん、君は女神かい!?」
「ふふん、頼もしいでしょう?私たちの技術とあなたの財力があれば、宇宙最強の軍隊が作れるわ」
だが、マルトが見据えるのは、単なる勝利ではなかった。
「私の最終目標は、帝国を打倒した後、『天空による新秩序』を構築することです」
彼女はネクワたちに、自らの壮大な夢を語った。それは、全ての民が身分や生まれに関係なく、法の下に平等に、そして自由に生きられる新しい世界の創造だった。
「……それは美しい理想だ。だが、実現は容易ではない」
ネクワが静かに言う。
「ええ。でも、だからこそ目指す価値があるのです。私は、帝国の支配を終わらせ、真の平和と秩序をこの宇宙に築くために戦いたい。ネクワ、あなたたちとなら、その夢が叶えられると信じています」
その真っ直ぐな瞳に、ネクワはかつての自分たちの姿を重ねていた。
「……分かった。その夢、私たちも共に背負おう」
第四章: 帝国軍の襲来と防衛戦
その数日後、まるで反乱軍の結束を試すかのように、地下コロニーにけたたましいサイレンが鳴り響いた。
『緊急事態!帝国中央軍、第一から第七までの艦隊がウルセナ宙域に集結!これは……過去最大規模の侵攻です!』
反乱軍司令部は騒然となるが、トルティヴは冷静だった。
「125年ぶりの大掃除の時間ですね。全員、配置について。進化した我々の力で、愚かな帝国軍を歓迎してあげましょう」
ウルセナの都市そのものが、巨大な要塞へと変形を開始する。摩天楼はミサイルサイロに、地下ドームは巨大なエネルギーシールド発生器へと姿を変えた。
ネクワ、カトルプ、そしてマルトも、それぞれの専用機へと乗り込む。
「カトルプ、マルト、行くぞ!1世紀以上待たせたんだ、派手にやろう!」
「了解!私の『ディメンション・ゲイザー』も、フルパワーで待機中だよ!」
「私もやってみせる!見なさい、これがマルト財閥の技術の粋を集めた、黄金の騎士『ゴルディアス』の力よ!」
マルトが駆る黄金の機体は、無数の遠隔操作兵器を放ち、帝国軍の先鋒を瞬く間に殲滅する。ネクワのエーティミア・リピーターは空間そのものを操り、敵艦隊を為す術なく亜空間へと放逐していく。そしてカトルプは、ウルセナの防衛システム全てを統括し、的確な指示で戦場を支配した。
反乱軍の力は、帝国の想像を遥かに超えていた。わずか数時間で、帝国の大艦隊は壊滅し、撤退を余儀なくされた。
「敵艦隊、撤退していきます!我々の、完全勝利です!」
オペレーターの歓喜の声に、コロニー中が沸き立った。
「これでウルセナは守られた。でも、いつまでも守ってばかりじゃいられないな」
ネクワはコックピットで呟いた。
「ええ。次の戦いに備えて、もっと準備を整えましょう。反撃の準備を」
マルトが力強く応えた。
第五章: 新たな時代へ
ウルセナを守り抜いた反乱軍は、この勝利を足掛かりに、次なる段階へと移行することを決意した。司令室に集ったネクワ、トルティヴ、リクティ、カトルプ、そしてマルト。
「諸君、時は満ちました。我々はこれより、守りから攻めに転じます。新しい時代を、我々の手で築くのです」
トルティヴが宣言する。
そこで、マルトが切り札となる情報をもたらした。
「私の情報網が、帝国の心臓部、『帝都』へと繋がる秘密の航路を突き止めました。警備は手薄。奇襲をかける絶好の機会です」
その言葉に、全員の顔に緊張と覚悟が走る。
「……面白い。私たちの戦いは、まだ終わっていなかったというわけか」
ネクワが不敵に笑う。
「ええ。ここからが、本当の始まりよ」
マルトもまた、未来を見据えて微笑んだ。
マルトの加入により、反乱軍は帝国の中枢を突くための、最後のピースを手に入れた。彼らは帝国軍を打倒し、新しい未来を築くため、決戦の地、帝都へと向かうことを誓った。
