Etherpunk/Chapter7

Last-modified: 2025-06-21 (土) 22:13:25

プロローグ: ナァシュギへの進撃

トルティヴの墓標に、ウルセナの穏やかな光が降り注ぐ。あの日から、635年の歳月が流れた。
ネクワは、変わらぬ姿で、静かに墓石に語りかけた。
「トルティヴ……長かったな。あまりにも、長すぎた。だが、ようやく約束を果たせる時が来たようだ」

彼女の声には、幾多の世代の興亡を見届けてきた者だけが持つ、深い静けさと、消えることのない悲しみが宿っていた。
この635年、反乱軍は壮絶な戦いを経て勢力を拡大し続けた。そして今、彼らの長く苦しい旅路の終着点、帝国の首都「ナァシュギ」を、ついにその射程に捉えたのだ。

「これで、最後の戦いが始まる。トルティヴ、お前の遺志を継ぎ、この手でナァシュギを解放し、帝国の偽りの支配を終わらせる」

遠くの司令部で、仲間たちが彼女の決意に呼応する。
「B-IVの未来予測シミュレーションに基づき、全ての新兵器は完成した。これで、1000年分の我々の答えを、帝国に叩きつけられる」
リクティの声は、もはやB-IVとの境界が曖昧なほどに、機械的な冷静さを帯びていた。
『リクティ、ナァシュギへの最終侵攻計画『ラグナロク』を始動する。全てのシステムは、君の意志と共にある』

「私たちの築き上げた経済圏が、この星系そのものが、我々の力の源泉よ」
マルトは、一つの巨大な経済連合の長として、絶対的な自信を覗かせる。
「1000年分の技術の進化……その全てを結集したんだ。今こそ、神を気取る皇帝を、その玉座から引きずり下ろす時だよ!」
カトルプの瞳は、天才技術者としての狂気的なまでの輝きに満ちていた。

第一章: 超大規模な発展

635年の歳月は、反乱軍の拠点を、もはや都市という概念を超えた超巨大文明圏へと変貌させていた。

ウルセナ: 反乱軍の首都として、芸術的なまでの発展を遂げた技術と文化の中心地。空にはナノマシンがオーロラのように舞い、人々の思考はサイバーネットワークで結ばれている。トルティヴの墓は聖地とされ、何世代にもわたる兵士たちが、ここで祈りを捧げてきた。

メルベロム: 経済と産業の中心地。惑星の周囲を巨大な交易ステーションリングが取り巻き、星系外の異種族との交易すら行う、一大商業連合となっていた。反乱軍の莫大な戦費は、全てこの街が生み出している。

フォーボシア: 軍事と防衛の中心地。都市の建造物全てが兵器として機能し、地下には歴戦の兵士たちが眠る広大なメモリアルホールが静かに広がっている。ここは、反乱軍の1000年の闘争の歴史そのものだった。

「これらの都市、いや、我々の築いたこの文明こそが、力の源泉。経済、技術、軍事力、その全てが揃った今、我々に敵はないわ」
マルトは、自らが統べる経済圏を見下ろし、静かに呟いた。

第二章: 大型兵器の開発

最終決戦のために、反乱軍は常識を超えた兵器群を開発した。

思考制御戦闘機『XF-88 “ノートゥング”』
パイロットの思考をダイレクトに機体制御へと反映させる「サイコ・フレーム」を搭載した究極の可変戦闘機。亜空間跳躍航行を可能とし、単機で帝国艦隊を壊滅させるほどの力を持つ。
「この『ノートゥング』があれば、ナァシュギの絶対防衛網すら、紙屑同然だ」
ネクワは、自らの専用機となる漆黒の機体を見上げ、静かに闘志を燃やした。

視線連動殲滅兵器『レーザーアイ Mk.II “神の眼”』
リクティの左目に宿るB-IVと、衛星軌道上に浮かぶ巨大な殲滅兵器が完全にリンク。リクティの視線が捉えた座標そのものに、因果律すら歪める超高密度フォトンビームを降らせる、まさに神の眼。
「こいつの前では、どんな要塞も意味をなさない。B-IV、これで帝国の防衛網を、宇宙の塵にしてやる」
『了解、リクティ。君の視る未来を、僕が現実にする』

これらの他にも、反乱軍の1000年の技術の粋を集めた兵器群が、出撃の時を今か今かと待ち構えていた。

第三章: 最終決戦への準備

ナァシュギ攻略計画『ラグナロク』。その準備には、実に300年の年月が費やされた。
「ナァシュギの防衛システム『絶対神域(アブソリュート・サンクチュアリ)』。それは、自己進化を続ける神託AIによって守られている。過去のあらゆる攻撃パターンを学習し、それに対抗する防御を瞬時に生み出す。これを破るには、未来そのものを予測し、その裏をかくしかなかった」
作戦会議で、リクティが説明する。
「そのために、B-IVの演算能力を限界以上に引き上げ、300年もの間、ノンストップで戦闘シミュレーションを繰り返してきた。そして、ついに勝利への唯一の解を導き出した」

その言葉は、最終決戦の苛酷さと、反乱軍の覚悟の深さを物語っていた。
「私の財閥の全資産を投入し、補給は万全よ。たとえ100年の籠城戦になろうとも、我々が尽きることはないわ」
マルトが断言する。
「全ての兵器の最終調整、完了!あとは、派手にぶっ放すだけだよ!」
カトルプが親指を立てた。

訓練も最終段階に入った。兵士たちは皆、ネクワたち伝説の英雄を神のように崇め、その一挙手一投足に熱い視線を送る。
「しっかりと訓練をこなせ。我々の勝利は、お前たち一人一人の双肩にかかっている」
ネクワの言葉に、兵士たちは力強く応えた。この1000年で、数えきれない世代の兵士たちが、この日のために命を繋いできたのだ。

第四章: 最終決戦の開始

全ての準備が整った。トルティヴの死から935年。反乱軍は、ついに帝国の首都ナァシュギへの、最後の進撃を開始する。
何百万という大艦隊が、ウルセナ、メルベロム、フォーボシアから、一斉にナァシュギを目指す。

旗艦のブリッジで、ネクワは全軍に向けて最後の演説を行った。
「聞け、反乱軍の全ての同胞たちよ!我々の背後には、1000年の歴史がある!この日のために散っていった、数えきれない仲間の魂がある!我々はもはや、単なる軍隊ではない!歴史そのものだ!」

彼女の声が、全ての艦に響き渡る。
「帝国の偽りの神話を、我々の真実で終わらせる時が来た!全軍、これが最後の戦いだ!帝都ナァシュギへ!進撃せよッ!」

その号令と共に、数百万の艦隊が一斉に空間を跳躍した。星々が光の線となって流れ去り、反乱軍の全歴史の思いを乗せた大艦隊は、帝国の心臓部へと向かう。

壮大な戦いの火蓋が、今、切って落とされた。彼らにとって最大の試練であり、1000年の長きにわたる物語の、終着点だった。