アルデント「そもそも、この世界は今どうなってるんだ?」
(アルデントの率直な問いに、クロネッカーは少し困ったように息を吐いた)
クロネッカー「……ちゃんと話したほうがいいですかね?」
ドゥンケル「リクティとB-IVの様子を見れば、疑問に思うのも当然だ。
変な誤解を招く前に、はっきり伝えたほうがいいだろう」
リクティ「まあ、どのみちアルデントもすぐに理解するだろうしね。私たちのことを見れば、特に」
クロネッカー「……分かりました。では、この世界の状況を説明しましょう。
ただ、私よりも網羅的かつ正確な知識を持つB-IVに話してもらうのがいいかと思います」
B-IV「了解。では、今に至るまでの経緯を説明しよう」
(B-IVはそう言うと、わずかに間を置き、アルデントに向き直った。仮面越しの視線が、まるでデータベースを検索するように動いた気がした)
B-IV「連合歴6975年5月、初代総統閣下である天宮は、“何か”を成し遂げるため、かつての連合国『ヴァスク連合』に宣戦布告した。
この戦いは後に『聖戦』と呼ばれている。聖戦終了後、天宮総統はこの惑星において自害したと記録されている。
天宮総統の約2000年にわたる統治は終わりを告げ、二代目総統が国をまとめたものの、旧体制への反発は強く、連合歴6988年に暗殺された。
そこから旧連合は事実上崩壊し、現在は主に4つの勢力に分かれて争っている**状態だ**。
我々が所属するここはKronecker。
Kroneckerの正式名称は『ヴァスク人口最適化機構』(VPOO: VASK Population Optimization Organization)で、その名の通り、惑星ヴァスクにおける人口の管理と最適化を目的としている。
敵対組織は以下の3つだ。
- Arpeggio(アルペジオ) = ヴァスク人口自由維持機構(VPFMO: VASK Population Freedom Maintenance Organization)
- Fleming(フレミング) = ヴァスク人類超越推進機構(VHESO: VASK Humanity Evolution and Surpassing Organization)
- ΛΛΛΣ(ラムダス) = ヴァスク調和回帰機構(VHRO: VASK Harmony Restoration Organization)
先ほど私たちが交戦したのはArpeggioで、最も反発が強く、武力衝突も頻繁な敵対勢力だ。
ちなみに、このKroneckerは天宮総統がクロネッカー本人――我々の組織名の由来となった人物――に設立を依頼し、完成までに相当な時間がかかったと聞いている」
(淡々と語られる情報の一つ一つが、アルデントの知らない世界の輪郭を形作っていく。二千年という途方もない時間、総統の死、国家の崩壊、そして現在の勢力図。その全てが重くのしかかるようだった)
B-IV「……まあ、ざっくりとした基礎知識はこんなところだろう」
アルデント「ここ、まるで終末世界みたいだな……」
(思わず漏れた言葉に、クロネッカーが静かに頷いた)
クロネッカー「その気持ちはよく分かります。我々も日々、それを実感していますから」
リクティ「でも、まだマシなほうだよ。将来的には『ヴェスナの残民』……**古き厄災の生き残りとも言える連中**と本格的に戦うことになるかもしれないし」
(リクティの言葉に、ドゥンケルが苦々しげに顔をしかめる)
ドゥンケル「神も気まぐれだ。おかげで俺たちは、こんな風に地下で息を潜めて暮らす羽目になってる」
アルデント「本当に……大変な状況なんだな……」
(改めて周囲を見渡し、アルデントは言葉を失った。平和な眠りから覚めた先が、これほど過酷な現実だとは思いもしなかったのだ)
