69990002001_war.atx

Last-modified: 2025-06-16 (月) 19:17:40

【連合歴6999年0月2日 フォリトス外縁部上空】

フォリトスを覆う分厚い暗雲を、内側から突き破るようにして無数の機影が現れる。それはArpeggio軍の主力艦隊と、それを護衛する無数の戦闘機や人型兵器だった。推定20万。鋼鉄の蝗(いなご)の大群が、街の光を飲み込み、絶望的な影を落としていく。

クロネッカー(無線)「全戦闘員へ通達、敵の規模は予測を遥かに上回る。ですが、決して恐れるな。ここには我々、Kroneckerがいる。そして……」

(司令室のモニター越しに、クロネッカーの視線が一点に集中する。戦場にたった一人、静かに浮かぶ少女の姿に)

クロネッカー「この時代を、この理不尽な世界を、根こそぎ覆す“破壊神”がいる」

アルデント「破壊神って……まだそんな実感はないけど、でも、もう戦うしかないんだよね」
(自分の置かれた状況と、手の中にあるナイフの確かな感触が、アルデントに覚悟を決めさせていた)

Quaour《起動準備完了。契約者アルデントとの接続を確立。空中浮遊モードへ移行します》
(脳内に直接響くような、冷たくも澄み切った声。次の瞬間、アルデントの身体が重力から解き放たれるように、ふわりと浮き上がる。虚空から次々と黒曜石のナイフが自動生成され、まるで惑星の軌道を描く衛星のように、彼女の周囲を規則正しく旋回し始めた)

アルデント「浮いてる……!? これが、Quaourの力……!」

ドゥンケル(通信)「おしゃべりはそこまでだ、嬢ちゃん! 来るぞ、第一波だ!」

(ドゥンケルの背負った立体機動装置が蒼い光を噴射し、彼の身体を砲弾のように加速させる。マッハの風を切り裂き、単身で敵陣の先鋒へと特攻する)

ドゥンケル「道を開けろォォッ!!」

(閃光と見紛う双剣が、敵の量産型人型兵器の装甲をバターのように切り裂く。回避、斬撃、回転、再加速。一瞬の舞いのうちに、十数機の敵が火花を散らし、沈黙した残骸となって空から墜ちていく)

リクティ「こっちも、派手にやらせてもらうわね」
(しなやかな動きでビルの屋上に着地すると、彼女の肩から流線形の長大なレールガンがせり上がり、チャージを開始する。指をパチン、と鳴らすのを合図に、空間が歪むほどの電磁パルスと共に、視認不可能な速度の貫通弾が放たれた。それは空気を灼きながら一直線に飛び、敵艦の一隻を貫通、さらにその後方にいた数機をまとめて串刺しにし、はるか彼方の建物の向こうまで一直線の破壊の軌跡を刻み込んだ)

リクティ「ふふ、どんな硬いものでも貫けるって、最高に気持ちいいわね」

B-IV「戦況確認。敵前衛の3.7%を撃破。しかし後続が厚い。戦術演算完了。最適解を提示、及び実行。投入兵装:全自動迎撃砲台(オートタレット)×6、アクティブ追尾型地上掃討ミサイル、広域EMPジャマー、そして──」

(B-IVの背部ユニットが複雑に変形し、巨大なリボルバー型のビームキャノンが展開される。シリンダーが回転し、チャージ音が甲高く響き渡る)

B-IV「主砲、エネルギー充填120%。安全装置解除。……開放」

(世界から音が消え、次に全てを塗りつぶす純白の光が辺り一帯を覆った。地平線を両断するほどの高出力ビームが、敵陣の中央部を薙ぎ払い、そこにいた数千の部隊を一瞬で蒸発させ、灼熱のクレーターだけを残した)

アルデント「みんな……すごい……。私だって、やらなきゃ!」
(仲間たちの圧倒的な戦闘力に気圧されながらも、アルデントは強くナイフを握りしめる。その意志に応えるように、彼女の周囲を旋回していたナイフが空中で数十、数百と自己増殖を始める。それはまるで、彼女の闘志が形を得たかのようだった)

アルデント「行けぇぇぇッ!!」

(アルデントが腕を振るうと、増殖したナイフ群がまるで意志を持つ鳥の群れのように、一斉に敵陣へ向かって射出される。ファンネルのように精密な軌道を描き、敵の装甲の隙間やコックピットを的確に狙い、あるいはダンスを踊るように華麗な動きで敵兵を切り裂いていく)

Arpeggio兵「な、なんだあれは…!? 武器が空を飛んで勝手に襲ってくるだと!? 制御不能! ぐあああッ!」
(悲鳴と共に、一人、また一人と地に伏し、あるいは操縦する機体ごと爆散していく)

クロネッカー(無線)「素晴らしいわ、アルデント! 神器とのシンクロ率、急上昇中! 現在80%を突破! QUAOURがあなたの力に、あなたの魂に応えている…!」

アルデント「もっと……! もっと、みんなを守れる力が……!」
(アルデントが心の底から叫んだ瞬間、QUAOURとの接続がさらに深まるのを感じた)

Quaour《シンクロ率95%…96%…99%……リミッター解除。契約者の潜在能力との完全同調を確認。進化シーケンスへ移行。……限界を突破します》

アルデント「なに、これ…!? 体の内側から、力が溢れて……!」
(彼女の背中から、純白と深紅の光が奔流のように溢れ出し、巨大な翼を形作る。だがそれは鳥のような翼ではない。それ自体が何十、何百という鋭いナイフの集合体であり、一枚一枚が恐ろしいほどの破壊の意思を宿して輝いていた)

Quaour《Neiphimtlt-Destroyerモード、起動。全機能、第二形態へ移行完了》

アルデント「──────これが、破壊神の力……!」
(意識がどこか遠のき、全能感にも似た感覚が全身を支配する。眼下に広がる敵軍が、まるでちっぽけな模型のように見えた。彼女が翼を一度、大きく羽ばたかせると、無数の光のナイフが天から降り注ぐ流星群となり、眼下の一面の敵を一瞬で消し飛ばした。都市が一つ崩壊したかのような衝撃音と振動が、遅れて戦場を揺るがす)

ドゥンケル「……っは、やばいな。冗談抜きで、あれを本気で怒らせるのは、正真正銘のバカだけだな」
(ドゥンケルは瓦礫の上で息を整えながら、その光景に呆然と呟いた)

リクティ「神の力…とはいえ、暴走せずにあれだけの規模の力を制御できてるのが、一番すごいわね」
(リクティもまた、驚きを隠せない様子で空を見上げる)

B-IV「現在の出力ならば、敵本隊の中枢、指揮官艦まで直接斬り込める。アルデント、命令を」

アルデント「了解……QUAOUR、最大出力で前方の敵、全てを殲滅」
(もはや彼女の声に、迷いはなかった)

Quaour《指令確認。最終兵装、発動──《オーバーレイ・ナイフ・フィールド》》

(アルデントが静かに手を掲げると、彼女を中心に空間そのものがガラスのように歪む。何千、何万というナイフの幻影が、まるで星空のように戦場全域に展開し、一つ一つが現実の質量を持つ。それは、空間という概念そのものを、無数の刃で埋め尽くす絶対的な支配領域だった。
そして、彼女が静かに手を振り下ろす)

──敵陣、完全消滅。

(音すら追いつかない。時間すら置き去りにする。星空のように展開されたナイフが一斉に、前方に向かって射出されたわけではない。空間そのものが、無数の刃となって敵軍を“通過”した。後に残ったのは、沈黙だけだった。20万いたはずの敵軍の大部分が、痕跡すら残さずに壊滅していた。静寂の中、風だけが瓦礫の間の都市を吹き抜ける)

クロネッカー(無線)「……破壊神、アルデント。帰還してください」
(クロネッカーの声は、震えていた。それは恐怖か、歓喜か、あるいはその両方か)

アルデント「ただいま……なんか、すごく……疲れた……」
(翼が光の粒子となって消え、アルデントの身体がゆっくりと地上に降り立つ。途端に、全身から力が抜け、立っているのがやっとだった)

Quaour《戦闘モード解除。契約者の生命活動を最優先で安定化します》

リクティ「よくやったわ、アルデント。本当に、お疲れ様」
(いつの間にか隣に来ていたリクティが、アルデントの肩を優しく支える)

ドゥンケル「初陣でこの戦果……理屈抜きだ。あんた、やっぱり本物だな」
(ドゥンケルも、ライフルの銃口を下げ、どこか安堵したような表情を見せた)

B-IV「敵残存勢力、全面撤退を確認。我々の防衛は、完了した」