【SS】極道たちの挽歌

Last-modified: 2025-07-06 (日) 15:44:51

概要

バグ大リスペクトSS。ヤクザの日常や過去を書く。戦争編はダルいので無し。ごめんね。

登場人物

メイン

  • 山王会のメンツ
    関西・日本最大のヤクザ集団。元は言うまでもなくアウトレイジだけどアウトレイジの山王会は関東最大。天王寺組推しなので山王会の話が多くなると思う。
    • 似鳥隆三
      主人公枠。元ネタは天王寺組の若手の似鳥正男。外見もそのまんまでおK。田岡の家で部屋住みしてる若衆。若衆なのに普通に直参クラスと一緒にいるのは気にしてはいけない。
    • 田岡和雄
      山王会の三代目会長。端的に言うとクソ強い天羽組長。むぅぅ!は言わない。
    • 山本健一
      関西版工藤の兄貴。工藤の兄貴が好きなのでどうしても工藤枠が欲しかった。キックボクシングなのはモロッコの辰とボクサー属性が被ってしまうためです。天羽組シリーズ初期の田頭組に居た山本の兄貴(外道)とは違うからな!リアルのヤマケンもあそこまで悪辣じゃない。
    • 柳川次郎
      よく出るヤクザその1。リアルでも有名なやつ。回によってはナレーションを務める。
    • 夜桜朱
      よく出るヤクザその2。小林の兄貴枠なので動かしやすい。こば兄ィと神城の百田を足した様な戦闘力。
    • 小西音松
      コンセプトはクソ強くて人情ある天王寺組の錦野。グランドバレーは龍が如く7外伝のアレ。
    • 白神澪奈
      要は組長になった和泉錦之助。強さ的には和泉+冬馬のイメージ。和泉死んじゃった…
    • 中田太郎
      アウトレイジビヨンドのアイツ。元ネタは史実の中野太郎。喧嘩太郎も中野の異名。黙れドン太郎やないで。勿論、西野も登場するよ。
  • 稲原会のメンツ
    関東最大のヤクザ集団。完全に稲川会やけど実際の稲川会とは関係あらへんぞ!実録任侠映画なんてのもあるし問題無いの精神。イメージ的には関東最大になった神城組。実は神城組も推しな野田。
    • 外堀和夫
      稲原サイドの主人公枠。
    • 稲原聖城
      リアルだと男の総裁。風格は三國組長、強さは御堂の裏アサシン級の親分。松方弘樹が演じた修羅の群れの主人公の元ネタも稲川総裁。リア友が「実名はアカン!」と言うので(当たり前)修羅の群れ主人公の稲原龍二に改名。
    • 林喜一郎
      元横浜愚連隊四天王。思っくそ神城の名波なのはご愛嬌。

サブ

  • 地元のヤクザ勢力
    地元に根を張る何処かのヤクザ勢力。基本1話限り。
  • 御前一派
    バグ大の御前そのまんま。ちょい役でアサシンが出るかもしれない。
  • 龍門
    関東最大の武闘派マフィア。主に稲原会関係の話に登場。

山王会です

山王会の若衆…似鳥隆三。部屋住みの修行

俺の名前は似鳥隆三。
 
兄貴「似鳥、そろそろお前もシノギを覚える頃やな」
似鳥「はい」
 
山王会本家で部屋住みをする若衆や。


元は極道どころか裏社会との縁すら無さそうな家に産まれた。せやけど両親と兄貴がクソやった。
 
父「お前に食わす価値あんのかあ?」
母「ほんと、何で産まれて来たのか…」
兄「早くくたばらねえかなぁ、出来損ない」
似鳥「……」
 
親父はどっかの企業の御曹子、母も負けず劣らずのスペックを持ったやつや。せやけど両親は兄ばかり優遇して俺は邪魔者扱いやった。
 
父「よし!長期休暇入ったし旅行に連れてったる!」
兄「マジ!?やったぁぁぁ!」
母「貴方が好きな所選んでいいわよ?息子の願いを叶えるのも親の義務だからね」
父「あ、そうや。留守はお前がやってくれや。出来損ないでも家の留守くらい出来るやろ」
似鳥「うん…(何が親の義務や。俺は眼中にあらへん癖に)」
兄「お前可哀想だなぁwま、出来損ないに旅行なんざ身分違いだけどw」
 
んな訳で旅行や遊園地にも俺だけ連れてってくれなかったんや。学校も行かせてくれへんかったな。
 
似鳥「ちょっと待ってくれや母さん!帰ってくるまでご飯どうすんねん!」
母「1万あるからそれで適当に済ませば?」
父「本当はこんな奴に1円も渡したくないんやけどな」
兄「生きてる価値ねぇんだよ出来損ない!」
ドカッ!
似鳥「ぐぅ…!」
 
せやから親がおってもおらんくてもほぼ一人きりやった。だが旅行や遊園地に行ってる間は俺にとって好都合やった。その間に兄貴の教科書やノートを見て最低限の教養を身に着けられた訳やから。
 
似鳥「さんにがろく、さざんオールスターきゅう…ブッ!」
 
そんな生活を送っていた訳やが、いつも支えになってくれた人がおった。それが近所に住んでたヤクザのおっちゃんや。
 
男「また家で虐められたんか」
似鳥「うん」
男「じゃあ今日もおっちゃんが遊んでやろうかねぇ」
 
このおっちゃんは見た目は怖いが根は優しくて何時も俺と遊んだりヤクザの世界について教えてくれたんや。
 
男「惚れた男を親と敬いその下で男を磨く。それがワシらの生き様や」
似鳥「なんかかっこええな!」
 
勿論ガキに言えへん事は山とあった。だが俺はそんな極道に憧れを持つ様になった。そして俺が12歳になったある日…
 
似鳥「もう沢山や!お前らみたいなクズとおるとおかしくなってまうわ!!」
父「だったら出てってくれや。おどれみたいな出来損ない元から要らんかったしな」
母「おかしくなりそうだったのは私らの方だよ!お前みたいなやつ堕ろさなくて後悔してるわ!」
兄「早く出てけよ出来損ない」
似鳥「あぁそうかい!勝手にしろよ馬鹿野郎!!」
バタンッ!!
 
嫌気が差した俺は家出した訳や。せやけどガキ一人で生きて行けるほど世の中甘くない。家も学歴も無いせいで仕事はおろかバイトも出来ん、部屋も借りれん、待っとるのは死だけやった。
 
???「こんな寂れた所で若い子が何しとるん?行く宛無いんか?」
似鳥「え…あんた誰や?」
 
だがそこに現れたんがある組織のトップのカミさんや。後に発覚するが、カミさんの夫は日本最大級のヤクザ組織…山王会の会長の田岡という人やった。
 
似鳥「うぅ…こんなにウマい飯、初めてや…」
「そんな泣かへんでもええんよ、おかわりもあるから沢山食べぇや?」
 
何がともあれ俺はそのカミさんに拾われて以来、組で育てて貰った。親っさんとそのカミさんが親の愛を教えてくれたんや。学校にも行かせてくれたし、足りない所は宅見の兄貴が教えてくれた。
 
宅見「似鳥。ここはこの公式を使うんや。すると早く終わるど」
似鳥「お!出来たで!」
 
そうして組で育てられる内に自分もこの人らみたいなりたいと感じたんや。そして高校卒業後に親っさんへ極道になりたいと懇願した。
 
似鳥「俺もヤクザになりたいんです!雑用でも何でも致します!是非使ってやって下さい!」
姐さん「何もあんたがならへんでも…」
田岡「えぇか似鳥。その場のノリでなれるほどヤクザは甘くあらへん。ホンマに命を失うかもしれへんのやぞ?」
似鳥「命だって捨てる覚悟です!此処まで育ててくれた山王会に恩返しがしたいんです!」
宅見「恩返しって何や?どうやって恩を返すねん?表に進路は幾らでもある筈や。どうしてそんなヤクザになりたいん?」
似鳥「えっと……恩返し…やからでして…」
田岡「俺たちにとって息子みたいなもんや、お前は。それにヤクザになるっちゅうのは半ば人生を棒に振るようなものや。もうこの話は終わりにするで(その場のノリでヤクザになられたんや困る。時代も大きく変わってるっちゅうのに。ま、一週間もすれば考えも変わるやろ)」
 
最初は断固として拒否された。親心なんやろうけど俺の決意は変わらんかった。そして俺の覚悟が伝わったのか親っさんは入門を許可してくれた。
 
田岡「お前の決意はよお分かった。せやけどヤクザ社会においては特別扱いは出来ん。先ずは部屋住みからのスタートや。それでもええな?」
似鳥「はい!これからは実の親として…そして渡世での親としてもよろしくお願いします!!」
田岡「その心意気、忘れるんやないぞ!」
 
そして今、山王会5年目の若衆として本部でもある親っさんの邸宅で部屋住み修行をやらさて貰っとる訳や。


そこからは部屋住みとして様々な雑用をこなした。時には兄貴分の使い走りや世話もする。
 
兄貴A「似鳥、タバコ買って来てくれや」
似鳥「はい、喜んで!」
兄貴B「この棚…ゴミがあるのお」
似鳥「あ、あああああ!すんまへぇぇぇぇん!!」
ドゴッ!
兄貴B「手抜きする奴は踵落としで目を覚ますとええなあ!」
似鳥「ゴベェェェ!!」
 
そんな厳しくも学びになる兄貴たちと日々、男を磨く事に邁進しているんや。そして俺には何人か舎弟もおる。彼らも俺と同じく田岡邸住み込みの若衆なんや。
 
木村「お疲れ様です兄貴!この後、制覇シリーズでも見ませんか?」
似鳥「小沢さんのあれやね…アホ!明日も早いんやぞ!木村、もう寝るど」
木村「明日やて仕事終われば寝れるから大丈夫ですぜ!」
似鳥「意味分からへんわ!」
 
1人目は木村康二。元は大阪キッズと呼ばれる若者集団の一人やったんけどな、こいつはあろう事か跳ね返って、あるヤクザに喧嘩を売ってもうたんや。
 
極道「本職舐めてくれんなや兄ちゃん…取り敢えずウチに来いや」
木村「へ、へい…」
 
そのヤクザが山王会の最高戦力の一人…夜桜の姉貴やった。半ば強制的に組へ入れられた訳やが元から極道に憧れてた事もあって木村もヤクザを志願した訳や。
 
田岡「誰やそいつ」
夜桜「こいつウチに喧嘩売って来たんです。何か根性ありそうやったんで連れて来ましたー」
木村「木村です!まだまだ若造ですがヤクザとして男を磨きたいです!」
田岡「(昨今の若者にない気合があるな)よし、入門は許可したる。もし辛かったら遠慮なくやめて貰ってええからな」
 
親っさんも辞めたいなら辞めてしまえばええ的な態度やったが、兄貴分のシゴキにも一切根を上げず、それどころか進んで戦闘訓練を付けて貰うよう願い出る事もある。とにかく凄いガッツの持ち主で親っさんも認めうる気合や。
 
女「じゃーん!似鳥、この服なんぼやと思う?」
似鳥「何や水城、偉く良い服買うたやないけ。3万くらいか?」
水城「ちゃう、8000円や」
似鳥「安っ!」
 
もう一人は水城香。比較的少ない女ヤクザや。だが極道の世界では性別は些細な違いに過ぎひん。下手打てば死ぬだけやし、ミスをすればシゴかれる。手柄を上げれば褒められ、成功を積めば出世街道に乗る。むしろ表社会以上に裏社会は平等やで。
 
水城「頂き女子にパパ活…何や今時の女はこんな事までするんか。みっともあらへんなぁ」
似鳥「お前も若いやろがい」
水城「何抜かしとん、心はもう40行っとるわ」
 
今時の女やがヤクザとしての気概はヘタな男より入っとる。笑顔でキンタマ蹴り上げられる様な奴やねん。
他にも舎弟はまだまだおる。今度、吉岡という若衆と半グレ共を粛清する事になった。ウチらが世話になった婆ちゃんの店を燃やしくさったゲス野郎やったからな。
ま、いつか語るから待っといてくれな。

山王会 本部が爆発…犯人は誰だ

ワシの名前は柳川次郎。
 
柳川「山王会の象徴が…」
夜桜「悲劇的ビフォーアフターでんなぁ」
 
焼けてもうた田岡邸を見つめる山王会の極道や。


先日、山王会本部の田岡邸に変な爆弾が放り込まれた。
 
ドカァァァン!
 
夜桜「お嬢と舎弟を死なせるかァァァ!」
柳川「ぐぉおおおおお!」
 
近くにいたお嬢と舎弟の似鳥を守る為に体張ってモロに喰らってん。普通死ぬで。しかも田岡邸の半分近く吹っ飛ばすアホな威力や。
 
地道「考えられへん…怒り狂って血管ブチブチ馬渕さんやバクバクバク…」
柳川「怒りは伝わって来ます」
 
地道のカシラ、昨日からずっとキレとる。キレ過ぎてたこ焼き頬張りまくっとるわ。
 
柳川「せやけど山王会に不穏な影が迫っとる感じがしまんなぁ…」
 
今回の爆破を受けて執行部全員が集まって緊急会議や。
 
田岡「俺の邸宅が爆破されたの知っとるか?」
加茂田「見れば誰でも分かります」
夜桜「風通しはええがな!」
小西「クリーパーにリフォームされたんかいな(笑)」
山健「何てことしてくれはったんや」
宅見「困った困ったコマさん角さん」
武中「妖怪のせいではあらへんな。取り敢えず周囲のカタギに被害が出んで良かった」
 
不幸中の幸いやったのはカタギさんに被害が出えへんかった事や。それに部屋住みの若衆や、お嬢も無事やった。
 
田岡「この爆破は念入りな計画と緻密な計算で仕掛けられたもんと見とる。そこらの異能犯罪組織や半グレには出来へん筈…」
柳川「つまりは…」
田岡「山王会に裏切り者がおるかもしれへん。信じたくはないんやがな…」
地道「分かりました。警戒度を100の1京乗して真犯人を炙り出したります」
 
確かに田岡邸をあんなピンポイントで爆破出来るんは山王会内におると読んだ方がええなぁ。
 
山健「現状、手がかりはない。地道に情報集めていこか。あとなぁ、山王会を舐めたアホがどないなるか…それは全国に思い知らさんとな」
夜桜「はい。鳴海のボケと同じく生き地獄を味わわせたります」
柳川「その犯人が今まで関西で生き残れた理由はたった一つ…山王会の柳川次郎に粉かけへんかったからや。綺麗な死花、咲かして貰おか」
 
ワシらが怒ったら死んだも同然やねん。


早速、ワシはこの人と落ち合う。
 
柳川「お好み焼きや。米のサービスもあるで」
???「気が利くな柳川。お好み焼きは米と合う」
 
この人はベテラン情報屋の風谷はん
 
風谷「山王会本部爆破事件…裏社会じゃ既に有名になっとる」
柳川「ちょっとした事でもええから知っとる事ないんか?」
風谷「知っとる事と言えば…破壊工作員の火田っちゅうのがおると聞くど」
柳川「火田?」
風谷「そいつは経歴詐称して組織へ入り込んでは主要な幹部や資金源を破壊するんや」
柳川「スパイって訳か」
風谷「それもタダのスパイやない。一般人を巻き込む様に爆弾や毒を使って組織へ世間やサツの目が向かうように仕向けるんや」
柳川「仁義外れが…カシラが聞いたら大爆発してまうな」
 
火田か…炙り出して必ず殺したる。


ほんで数日後…
田岡邸の工事を手伝っとると似鳥が慌ただしい様子で駆け寄って来た。
 
似鳥「柳川の兄貴!大変です!」
夜桜「どうしたどうした道志真弓」
似鳥「武中の兄貴が孤児院からミカジメ要求しとるみたいです!」
 
そして意味不明なこと言いよった。
似鳥が言うにはこんな事らしい。
 
武中「ババァ、今月からミカジメ50万払ってやぁ」
園長「え!?でも山王会の夜桜はんはタダでえぇって…子供たち養えなくなりますよ!」
武中「今の時代、守って貰いたいんなら金が必要なんや。物価やて値上がりするやろ」
 
武中は夜桜が昔からタダでケツ持ちしとる孤児院に暴虐無人な振舞いをしてるそうや。
 
夜桜「武中とウチの仲間割れを狙うとるな?竹と桜は合いそうで合わないっちゅう意味かいな」
似鳥「そんなこと言うとる前に武中の兄貴を止めんと!」
夜桜「偽物に決まっとるやろがボケ!上下逆で生きるか?」
似鳥「うわぁぁぁ!すんまへぇぇん!(どんなパワーやぁ…)」
夜桜「耳をよーくかっぽじって聞けいガンタレ。恐らくそいつが火田や。根拠はウチ」
似鳥「それ根拠って言いますのん?」
 
夜桜も独自に火田の情報を得ていた。コイツ狂人の癖してベースが忍やねん。
んな訳で一応武中にも教えとく。
 
武中「人のフリしてそんな真似するとは人間やあらへんな…火田ってボケは絶対型にハメたるわ…」
夜桜「同感や。そんな奴に生きる価値なんかあらへん」
 
ほんで孤児院には夜桜と武中が謝りを入れていた。そして夜桜が武中と別れた時に奴は出た。
 
???「誰や、お前」
 
そこにおったんは真犯人の火田や。見事に武中に成り済ましとる。
 
夜桜「そっちこそ誰ですか」
火田「俺か?俺は泣く子も黙るあの山王会の武中正久や!おら、分かったら金なり何なり寄越さんかい!!」
夜桜「武中!?ひぃぃぃぃ!!私は一生懸命生きてるモブAなんですぅ!どうか堪忍してぇ!」
火田「ダメやなぁ!俺マイクラで村人虐殺するタイプやねん!俺と出会った以上、貢ぎ物は絶対や。逆らうんなら組のモンが黙っとらんで!」
夜桜「どうしても…ダメですか……?誰にも言いませんから…」
火田「へへっ。唆るなぁ…その顔。ちょっと俺といいことしようや…」
 
夜桜は芝居を打って火田を油断させる。工作員の癖にこんな大根演技も見抜けへん時点で工作員失格やねん。ほんで火田が夜桜の腕を掴んだ瞬間や。
 
夜桜「このガンタレが。工作員が無策で触れたらアカンやろ」
グギィッ!!
火田「ぐえぇぇぇぇ!腕がぁぁぁぁぁぁ!!!」
夜桜「サービスで全身の関節曲げといたるわ。代金は関節の壊れる音やねん」
ボキィッ!
火田「あがぁぁぁぁ!!痛ぇよぉぉぉ!!」
夜桜「はは、ハート様になってらぁ」
 
夜桜は瞬時に逆技で全身の関節を圧し折った。潜入と工作は得意やが戦闘はてんで駄目やったようや。
 
夜桜「ウチはホンマもんの山王会や。夜桜一家言うたら分かるやろ?」
火田「よ、夜桜一家!?で、で、目の前のお前は!?」
夜桜「総長の朱や。それになぁ、あの孤児院の園長はん。身寄りの無い子供たちの為に一生懸命頑張っとんねん。月50万取られて園長はん、どう子供たち育てて行くんじゃあ…ほなちょっと本部でお話ししよか…」
 
そうして夜桜は火田を捕まえた訳や。


ほんで火田はワシらの目の前で全裸で拘束されとる。
田岡の親分はじめ執行部のヤクザ全員に睨まれとるんや。生きた心地せえへんやろな。

火田「おいお前らぁ!こんな事してタダで済むと思っとんのか!?警察呼ぶぞ!」
柳川「何言うとん、スマホないのに警察呼べへんやろ。それともボケかいな」
夜桜「あーもしもし119番でっか?」
小西「それは警察やなくて救急ダイアルやねぇ。でも火田は頭の病院に行った方がええねぇ」
地道「ワシらの誰かが爆発する前に答えんかい。誰の差し金や」
 
火田は命惜しさに洗いざらい喋りはった。
 
火田「俺は山王会の真鍋組に雇われて今回の凶行をしてまったんです!!だから大元は真鍋なんですぅぅ!」
地道「ほんで?」
火田「ほんで…ほんでぇ……真鍋は貴方達が邪魔だから事故に見せかけて殺してくれ…て…」
地道「よう正直に答えたなぁ(目に濁りが無い。ウソはついてへんな)」
火田「そうです!!だから許して…」
地道「は?何言うとんねん。ワシら別に話したら許すなんて一言も言うとらんで」
小西「話したら許して貰える…それは物語だけの話や。ましてやヤクザに粉かけて許して貰うなんて虫のいい話ある訳ないやろ」
武中「他人に成り済ましてカタギさんに手ぇ出しとるんや。此処におる時点で命はないど」
火田「あ、あ、ああああああああああああ!!」
 
そんで火田は武中の手でホトケさんになった。
真鍋組か…ウチらの代紋で汚い真似しよって。絶縁や済まさへんど。
 
真鍋組では奴らが何も知らずバカ騒ぎしとった。真鍋の野郎はじめ白武や桑田と言った幹部もおった。
 
白武「真鍋のオヤジ、成功したみたいでっせ!」
真鍋「あの爆発で田岡のジジイはじめ執行部は殆ど全滅や。それに主要組織にサツのガサ入れが来るやろなあ」
桑田「仁義とか任侠とか古い事抜かしよって老害どもが。金が正義なんだよ。任侠が一円にでもなるのかクソ野郎」
白武「そんで火田の野郎を始末すれば…田岡たちを殺した犯人を討ち取った山王会の英雄真鍋組ー!なんて崇められまっせ!」
真鍋「よぉし!今日はドンと行くど!!山王会会長らの死に乾杯やぁ!!」
 
奴らはそれが最後の晩餐になると知らんかった。何せ真鍋のヤサの目の前にワシ、カシラ、夜桜、武中がおるんやからな。どんな奴でも100%死ぬ無理ゲーやで。
 
ドカァン!!
 
柳川「山王会の柳川じゃぁ!!おどれら今日でヤクザ廃業にせぇ!!」
地道「仁義外れ共が!!よう裏切ってくれたのう!!」
夜桜「どうも~通りすがりの一般死神でーす」
武中「その酒が最後の晩餐やな。おどれら」
真鍋「な!?何で奴らが!!」
白武「生きとるなんて聞いておらへんぞ!火田の野郎、失敗しよったな!!」
桑田「あの役立たずが!!おいお前らやってまえ!!」
 
桑田がそう言うなり組員がぞろぞろと出て来る。せやけど有象無象じゃ幾らおってもワシらには勝てん。
 
柳川「腐った腸切り出したるわぁ!」
ズバババババ!!
「「「ぐえぇぇぇぇ!!!」」」
地道「標準合わせるんが遅い。屁ぇこいて寝れるで」
バババァン!
「「「「カッ…」」」」
 
ワシら昭和の激動期に名を上げたホンマの武闘派やで。今時の若造が相手になるかい。
一方で夜桜武中も大暴れや。
 
夜桜「今日のウチにボケはないど」
バコォォン!
「ほげぇぇぇぇ!!」
 
夜桜が1人の組員を蹴り飛ばす。一撃で肋骨が全部砕けよった。
 
「か…かかか…」
「おいしっかりしろ!」
「何ちゅう威力や…」
バチチチチ…
「!!?」
 
それ罠やねん。夜桜は蹴りと同時に炸裂弾を忍ばせてたんや。不意打ちの精度がエグい。
 
ドッカァァン!!
「「グゴゲェェェェ!!!」」
夜桜「おー綺麗な桜が咲いたなあ」
 
武中は白武&桑田と向き合う。
 
武中「山王会の代紋で汚ぇ生き方して楽しいかい?」
白武「当たり前やろ!そもそもヤクザってのは良い女抱いて良い車乗って遊び歩く為にあるんやろうが!!」
桑田「そうや!金稼いで何が悪いんや!あんな孤児院をタダでケツ持ちするなんざ損益じゃねぇか!」
武中「おどれら…よぉく分かった」
 
その言葉を聞いた武中がブチギレる!!その表情は正しく修羅や!!
 
武中「おどれらみたいなカス!!山王会が日本で生かすと思うとんのかぁぁぁぁあああ!!!」
白武「うっ!!(やべぇ!)」
桑田「う、うわぁぁ!往生しろやぁ!」
バン!バン!バン!
 
桑田は錯乱してチャカを撃つ。せやけどそんなものが武中に当たる訳があらへん。
武中は瞬時に懐を制圧!そして
 
武中「遺言は地獄の閻魔に言うとけ」
ズバァァッ!!
白武桑田「「グゲァァァァァァ!!!」」
 
キレた武中は猛獣そのものや。怒らせた奴は全員地獄に送られる。白武と桑田のアホは全身輪切りになってもうた。
残るは真鍋1人や。真鍋はこの期に及んで命乞いや。
 
真鍋「ままま、待て!ワシら仲間やろ!?此処に金はある!せやから許してくれへんか!?」
夜桜「何で稼いだんや」
真鍋「え、そのぉ…お薬とか……綺麗所の女を泡に…?へへ…」
ザシュッ!!
真鍋「ゴゲッ!」
夜桜「もうええ。そのくっせぇ口、二度と開かんでくれや…」
柳川「そんな汚い金なんかいらへんわ。山王会の恥が」
 
真鍋は喉にナイフを刺されて死んだ。


こうして犯人と真鍋組の粛清は終わった。
ほんで修復中の田岡邸やったんやが…老朽化凄らしくて爆発が原因もあって完全に崩れてもうたんや…
 
田岡「ああああ!俺の邸宅がぁぁ!」
地道「火災保険と家財保険に入っとけば良かったですね…」
加茂田「邸宅崩壊、会長の精神崩壊や」
小西「アカン、今の時代のレートやと余裕で1000億越しますよそれ」
夜桜「でも空の下で会議するんも青空教室みたいでええですがな」
柳川「それ戦後の学校やんけ!」
武中「でもカタギさんに被害が出とらんし、ええんとちゃいます?」
似鳥「損害は邸宅だけですしね」
田岡「逆に考えよう!カタギさんに被害が出なくて良かった…と!!(そんでもこれはキツイて…)」
 
田岡の親分、取り敢えずアパート暮らしで我慢して下さいな。

山王会夜桜…東組の東と喧嘩。狂人同士の殺し合い

俺の名前は似鳥隆三。
 
???「おどれ山王会のもんか?何しとんねん」
夜桜「今、爆発しそうなくらいキレとるんや。とっとと消えんかい」
似鳥「(空気が歪んどる!)」
 
目の前で狂人同士が一触即発になっててヤバい事になりそうな山王会の若衆や。


俺は偶然、夜桜の姉貴とシマ回りをする事になった。
 
夜桜「似鳥~お前は暇になったんやぁ。着いてこーい」
似鳥「グゲゲぇ!(暇になったんやなくて無理矢理やないかぁ…)」
 
無理矢理やったけどな。
 
夜桜「シマ回りのついでに行くとこあるねん」
似鳥「行く所でっか?」
 
何でも姉貴が昔から懇意にしとる場所らしい。
そうして街を歩いとると暴力沙汰を起こしとる奴らがおった。
 
「外人は排除ー!崇高な大和の地を汚すなボケが!」
「グエっ!」
「このクソ夫婦が!とっとと国帰れ!」
「あう!」
 
ありゃ極右の人間か。極右っちゅうのは過激な国粋主義。あぁいう奴らは根底が狂っとるクソ共や。
 
夜桜「見てられへん。ちょっとド突いてくるわ」
似鳥「俺もやらせて下さい」
 
あのクソどもは更に殴ろうとする。無論、俺らがそんな事させへん。
 
男A「このクソ外人が!こうなったら…うっ!」
夜桜「何しとるんや。ボケにしたっておもろないで」
似鳥「ちょっとウチらと仲良くお話しましょか~」
男B「離せ!これは日本を外から守る為の抗議活動なんだよ!!」
男A「これは天の御意志だ!!邪魔すんなら…」
夜桜「訳分からへん。日本語話さんかい。目覚めのツッコミや」
 
ドゴォォッ!
 
「「いげぇぁぁぁぁ!!!」」
 
その男どもはピンポン玉みたいに吹っ飛びよった。手加減しとるんやろうけどパワーエグいわぁ…
 
夜桜「最近、通信で護身術習っとんねん。先生中国人やけど」
似鳥「それ中国拳法やないでっか。護身術なのに先制攻撃しとるし…」
夜桜「なんや一発どつかれて折れるんかい。自分が正しい思うとる割にエラい細いのぉ」
男B「ひぇぇ…」
夜桜「日本の為か何か知らへんけどな…それでカタギ傷つけるんなら山王会が許さへん。気ぃ変わって殺さん内にとっとと消えたらんかい」
男A「は、はいー!消えます!すみませんでしたぁ!」
男B「もうしません!二度とやりませんから!!」
夜桜「次この街来たら殺したるからな」


そんなこんなで姉貴に連れられたのは…ある児童養護施設だった。
 
夜桜「着いたで。此処や」
似鳥「孤児院でっか?」
夜桜「せやな。そういや此処は初めてやろ?」
似鳥「初めてです」
 
取り敢えず中に入ると子供たちが駆け寄って来た。
 
「夜桜のお姉さんだぁ!」
「遊んで遊んで~!」
夜桜「おうおう!いい子達やな!って、いてて…」
似鳥「姉貴!?」
 
姉貴は滅茶苦茶懐かれとった。姉貴の態度もまるで親みたいや。普段、狂人やのに偉い違いや…
 
???「こらこら君たち!あんまり迷惑かけたら駄目だよ!」
子供「あ、陽子姉ちゃん!」
夜桜「お、噂をすれば陽子やないか」
 
そこに居たのは一人の女性だった。姉貴と似たような桜模様の羽織を着ている彼女は綾辻陽子と言うらしい。
 
夜桜「ホンマ立派になったなあ陽子」
陽子「はい!夜桜さんのお陰で此処まで大きくなりました!」
夜桜「今でも思い出すなあ、あん時の出会いは」
 
陽子さんは望まれぬ子だったらしく、両親と一緒に旅行へ行った際に現地に捨てられたらしい。そして1人、裏路地で寝ていた所を姉貴が保護したんやって。
 
陽子「だれ…?」
夜桜「ウチは夜桜っちゅうんや。寒かったやろ?安全な所連れてったるからな」
 
ほんで彼女は姉貴がケツ持ちしとる孤児院で他の子供達と育ったんや。彼女は逆境を跳ね返す強い精神で努力を重ねた。
 
夜桜「英語に数学、理科…凄いなぁ陽子」
陽子「私お医者さんになるのが夢なの!おっきくなったらお姉さんの怪我も直してあげたい!」
夜桜「おう!もし怪我したらお世話になるかもなぁ」
 
そんな彼女の成長をずっと見て来たのが姉貴なんやって。ほんで彼女が着けとる羽織は昔に姉貴が着けてた羽織で、誕生日プレゼントで貰って以来ずっと愛用しとる大事な羽織らしい。
 
陽子「夜桜さん。明日、受験日なんです」
夜桜「え!?そういや受験シーズンやったなぁ」
陽子「医大なんです!合格すれば長年夢だった医者の道に踏み出せるんですよ!」
夜桜「ホンマか!そらもう頑張って欲しいねんな」
陽子「でも…明日の占いだと私の星座が最下位らしくて…」
 
陽子さんは明日が受験らしい。合格すれば医者への道の大きな一歩となる大一番なんや。でも星座占いやと陽子さんは最下位らしいねん…
 
夜桜「ま、待て陽子!最下位っちゅうのは一番下…つまり下がる事はない…落ちないんや!そう!落ちない!」
似鳥「上手い事言いますね姉貴!確かに最下位なら落ちないですよ!」
陽子「ふふ、お世辞でもありがたいです!あとこの羽織、お守り代わりに持って行きたいと思ってます!」
夜桜「おう!人生の大一番、胸張って行って来いや!!」
陽子「はい!」
 
しかしそれが悲劇となってしまう…


受験が終わった翌日、似鳥のスマホに電話が掛かって来た。
 
似鳥「はいもしもし!山王会の似鳥隆三です」
???「似鳥くん?ちょっと話が…」
 
着信元は孤児院の園長からだった。
 
園長「陽子ちゃんが…自分から死のうとして病院へ搬送されたんや!」
似鳥「は!?へ!?てか夜桜の姉貴には伝えたんでっか!?」
園長「えぇ…夜桜さんも驚いてはった」
 
全身に電流が走るような衝撃やった。園長が言うには陽子ちゃんが自殺未遂を起こしたのは受験日の翌日。受験が終わっても帰って来ない事を心配した園長は電話を掛けたが…
 
園長「陽子ちゃん、何してはるの?受験はどうやった?」
陽子「……別に大丈夫だけど…」
園長「(元気がない…どうしたんや…)」
 
そして翌日に病院から電話が掛かって来たが…
 
園長「もしもし?〇〇孤児院です」
病院「あ、〇〇孤児院ですね?陽子様の件なのですが…」
 
そこで初めて陽子さんが自殺未遂をした事を知らされたと。
 
園長「一命は取り留めたけど意識が戻っとらへん…しかも受験日に失踪したって…」
似鳥「そう…ですか…」
 
あの子には夢があったんや。行かなかい事は考えられへん。この失踪…完全にクサイな。
とは言え自分では何も分からん。せやから俺は情報屋にコンタクトを取った。初めて情報屋を使うがどんな人やろうか。
 
似鳥「ホンマに此処でええんか?誰もおらへんなあ…」
???「男は風の様に現れる…風来坊の風谷がやって来たで」
似鳥「うぉぅ!あんたが風谷はんか?」
風谷「初めまして山王会本家の部屋住み若衆はん」
似鳥「(何でそれ知っとるんや!?)」
 
そいつはいきなり現れよった!しかも初対面やのに素性がバレとる!関西で有名な情報屋は伊達やないな…
 
似鳥「すんまへん風谷さん。聞きたい事が…」
風谷「新大阪駅、受験日翌日に自殺未遂…それだけ情報がありゃあ分かる」
似鳥「ホンマですかい!?」
風谷「奴等は巣苦腐って半グレ組織やね」
風谷「構成員は退学処分を食らった不良や受験に落ちた浪人生で構成されとる。奴等はそれらに八つ当たりする様に受験生を狙う…そして集団で性的暴行、ビデオまで撮って裏へ流す外道中の外道や」
似鳥「なんちゅうけったくそ悪い話や…」
風谷「せやから受験生は受験を受けられず…性的暴行のせいで被害も訴えにくい…」
 
奴らのシノギは受験生の女性を狙った性的暴行、ビデオの裏流し。それは奴らが受験に落ちたり退学処分になった事の八つ当たりでもあるという…
 
「受験生を地獄へご案内~俺らパーリーナイ~♪」
「俺らと同じくどいつもこいつも受験に落ちてまえばええんや!」
 
組織のトップは持倉という男。奴はそのイカれた脳みそで犯罪を繰り返してやがった。
 
持倉「人生を掛けた日が台無しになる…興奮してボルケーノしてまうでぇ…」
 
似鳥「で、そいつらは何処におるんですか?」
風谷「西成地区の廃工場にヤサを構えとる。あとアンタは初回やから謝礼はタダでええで。お試しって奴やな」
似鳥「おおきに風谷はん!」

今回の件は俺も関わっている。責任持って粛清しなないかん。そのためヤマケンの兄貴に直談判する。
 
山健「構わへん。お前もその孤児院と関わっとる。きっちり巣苦腐のカス共を型にハメたれ」
似鳥「ありがとうございます!姉貴と共に型にハメて来ます!」


一方で姉貴側も動きがあった。どうやら陽子さんは意識を取り戻していたらしい。
 
夜桜「陽子…目ぇ覚めとったんか」
陽子「あ、夜桜さん…」

そう言うなり姉貴が陽子に抱き着く。姉貴は…泣いていたんや。

夜桜「うああああああ!!!このバカ野郎がぁ…!何で死のうとしたんやぁ!」
陽子「だって…!知らない男に襲われて…受験までの努力が全て台無しになって……夜桜さんに申し訳なくて…うぅ…ひぐっ…」
 
陽子さんが胸中を姉貴に吐き出す。姉貴は背中を擦りながら彼女を慰める。
 
夜桜「悔しかったろ…人生の大一番を壊されて…ほんで尊厳まで踏みにじられて…」
陽子「はい…うぅ…う…」
 
その時、姉貴の顔に鬼が宿った!それは過去一のオーラを放っている。
 
夜桜「陽子…安心せぇな。その動画も外道共も…この世から消え失せる。1日だけウチにくれ」


そして翌日、俺と姉貴でカチコミに向かう。奴らのヤサがある西成の廃工場を進んどる。
 
夜桜「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…こう言っとらんと理性が無くなりそうや…」
似鳥「もう無くなっとりますがな…(これは相当キレとる…触ったら刺されそうや)」
 
その時、後ろから誰か来たんや。
 
???「おどれら何しとるん?ウチの系列やないなぁ」
夜桜「あ“ぁっ?」
 
そこに居たんはスイカみたいな頭をしとる男。この男…東組の東清志か!
東組…独立独歩を貫き、長年に渡って山王会と渡り合った西成地区の超武闘派組織。かの山健組や菅谷組と言ったウチの執行部の直下組織と抗争を起こしたとも聞いとる…
 
東「山王会のヤマケン…おどれの器はなんぼのもんや!」
山健「俺の器は大海並!お前の器は盥並!」
 
組長の東自身も孤高の東、喧嘩の東と異名を取る怪物…
 
東「お前の頭使うて、お好みひっくり返す練習するわ」
 
しかもツッコミ代わりに人殺せるイカれ野郎や。その恐ろしさを関西裏社会で知らぬもんは居ない。
 
似鳥「ちょ、流石に相手が…」
夜桜「東組が何の用や。殺すぞ」
東「西成はワシのシマど。巣苦腐はワシが潰す」
夜桜「はい分かりました。…言うて消えると思うとるか?それに西の癖に東ってのも腹立つなぁ…」
 
ただでさえキレとる姉貴の火に油を注ぐ様な相手…完全に殺し合い寸前や!空気がヤバ過ぎて入れそうにない!
 
東「ほんならじゃんけんで決めようや。じゃ~んけん…」
 
ドッ!!
 
東が舐めた事を抜かした次の瞬間!なんと東が姉貴の目前におったんや!そして姉貴に向かって凄まじい突きを放つ!
 
似鳥「(早い!いつ動いたんや!?)」
東「ぽぉぉん!」
夜桜「シュッ…これは、あいこやなぁぁ!」
 
姉貴は山王会トップクラスの動体視力の持ち主やが、それでも頬を掠めた!次に姉貴が凄まじいバックステップで距離を取り、何かを投げ付ける!
 
夜桜「つまらんものですがどうぞ」
ビシュシュッ!!
東「おっと手裏剣か!えらい古風やな!せやけどつまらな過ぎて頂けまへんわ」
夜桜「基本はそう動くよなぁ」
 
それは手裏剣3枚の同時投擲!しかも刃が分厚くデカい!東が躱したそれは後ろの廃材を綺麗に切断した!しかし行動を読んでおった姉貴がチャカの早撃ち!
 
パパァン!
 
東「それもギリギリで躱すぅ!ギリギリス!」
 
だが東という男はそれすらも躱して見せた!こいつの実力、全く底が読めへん!
 
夜桜「へぇ…(今の外すかい。流石ボンノやヤマケンと互角なだけあるわ)」
東「ワシは全ての攻撃がスローに見えんねん。ほな、遠距離戦はおもろないし…近接戦で行こかぁ!」
 
そう言うとまた神速の踏み込み!またしても姉貴に接近し、そのまま壮絶な切り合いに雪崩こむ!
 
ズバババババババ!!カン!キン!
夜桜「どんどん肉が削られるなぁ!ウチはシュラスコかい!」
東「なら次の屋台に人間シュラスコ屋出したるど」
夜桜「そんなんカタギ近寄らへんやろ(正面はちとめんどいかぁ…距離とらへんと)」
 
互いのナイフと忍者刀が竜巻の如く飛び交う。そして切り合いの最中に姉貴が何かを落とした。それは炸裂弾!サラリと巧妙に落とす高等技術や!
 
夜桜「あ。落とし物…」
東「はっ?…!(導火線が短い!返せへん!ガードするしかないか!)」
 
バチチチチ…ドン!
 
東が気付いたのも束の間、爆発が起きた!姉貴はバックステップで瞬時に距離を取ったお陰で無傷!東は炸裂弾の爆発にモロに巻き込まれた!煙が晴れると服がボロボロの東が立っていた。
 
東「少し油断したわぁ。もうやめや、やめ。一応は勝負な訳やし?今回はワシの負けや」
 
東は素直に負けを認めよった。まだまだ余裕そうやのに何やコイツ。
 
似鳥「は?」
夜桜「で、どうするん?」
東「一緒にカチコミさせて貰えへんか?あのクソ共を粛清したいんはワシもアンタも同じやろ」
似鳥「この期に及んで舐めたこと…グハッ!」
夜桜「上が話しとんのに出しゃばんなボケが!別にえぇよ。互いに理屈はある。敵の敵は味方っても言うしのぉ」
 
てな訳で姉貴、俺、そして東組長の3人でカチコミや。俺と東が扉を蹴り飛ばす。
 
ドカァン!!
 
似鳥「山王会やぁ!!」
夜桜「ゴミ掃除業者の出入りや!社会のゴミ共、駆除しに参ったでぇ!」
東「ゲストの東組でーす」
構成員A「何じゃあ!?」
構成員B「何で東組と山王会がいるんだ!?」
 
やはり東は凄まじい。
 
東「西成の害虫が…今日で閉店ガラガラや」
構成員A「ミセジマイィィィィ!!!」
似鳥「地獄へのデリバリーサービスですぅ…」
構成員B「ガァァァァァァ!」
夜桜「おどれら簡単に死ねる思うんちゃうぞ」
 
だがこの日の姉貴はヤバいなんてものじゃなかった。遊びもなくチャカをぶっ放す。
 
夜桜「先ずは土下座せぇやぁ!!」 
バババァン!
構成員「「「ごがぁぁ!」」」「「ぐぇぇぇぇ!!」」
 
姉貴は寸分の狂いもなく膝の皿を撃ち抜いて行動不能にしてしまったんや。
そして残るはボスの持倉だけや。何やら抵抗しようとしとる。
 
持倉「バ、化物が!俺らが何したって言うんや!」
 
バァン!
 
夜桜「自分が何したかも分からんのかいボケが」
持倉「ぐぁぁぁぁぁ!!!」
 
無論、こんな三下が抵抗するより先にチャカを抜いたのは姉貴だ。
 
夜桜「おどれらがやった事は最早人間やあらへん…」
持倉「ひぃ…」
夜桜「そんな真似をしたゴミは見せしめで地獄を見て貰う。抑止や。その為にヤクザがおるんど。自分が受けた理不尽を他人に八つ当たりしてんとちゃうぞガキ共。そんなゴミはなぁ…」
持倉「な、何する気や!」
 
そう言うと姉貴が頭を引っ張って何処かに連れて行く。持倉の顔面は真っ青だ。そして奴の眼前にあったんは…粉砕機やった。
 
夜桜「東ぁ!あの機械は動くかぁ?」
東「動くでぇ。いつでも行けるど」
持倉「や、やめろぉぉ!やめてくれぇぇぇ!!嫌だああああああああああ!!!」
夜桜「ゴミ粉砕機!半グレスパイザーじゃあ!!」
 
持倉「ぎ、ぎぃええええええええええ!!!????あがべべべべぇぇぇぇ!!!!」
 
夜桜「うむ…生きとる奴が入ったらあぁなるんか!うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
似鳥「(流石姉貴…狂っておられる…)」
 
肉も骨もグチャグチャに潰され、機械の合間から鮮血が吹き出る。まさしく生き地獄や。持倉が上げる声は今までにない不気味さやった。他の奴らも順次、粉砕機に放り込まれた。
 
東「お二人さん、動画は東組が責任もって消しとくわ!次合うた時は敵でんな」
 
東清志…狂人やが憎めへんやっちゃな。


巣苦腐のクソ共は全員地獄に落ちた。
ビデオについては宅見本部長も上手い事やってくれた。
 
宅見「削除完了や。これで完全に消えたど」
似鳥「流石でんなあ」
 
陽子さんは今回の件もあって試験を受けさせて貰えた。そして…
 
陽子「私の番号あった!やったぁ!」
似鳥「(ホンマ努力が報われて良かったでぇ…!)」
夜桜「何でお前が泣いとんねん!せやけどおめでとうや陽子!(陽子もいつか巣立ってくんやろうな…寂しいが親として祝ってやるべきやんな)」
 
結果は合格。長年の努力が報われた瞬間やった。ヤクザもんがそんな事を言うんはお門違いかもしれへんが、それでも長年心身なって面倒を見て来た姉貴にはその資格があると思うとる。

修羅の群れ

稲原の大親分の過去…横山の兄貴の教え(前編)

私の名前は稲原聖城。
 
店主「おう角ちゃん、また来たのかい?」
稲川「最近、ヒマなんだよ」
 
行き付けの酒屋に入り浸る稲原会の総裁だ。


思えば私の産まれた環境は地獄だった。
父は何処かも分からん華族の出身で、ろくに仕事もせず、その遺産を博打と酒に食い潰すクソ野郎だった。
 
父「あ~~~ああっ!クソ!また負けちまった!おい角二!こっち来い!!」
稲原「ま、また…?」
 
賭場で大負けすると決まって父は私を殴る。
女だった私に龍二って名前を付けるんだから愛なんて無かった。
 
ドカッ!バギッ!!
 
父「テメェがいなけりゃちょっとはマシな生活になってんだよ!この金食い虫が!!」
稲原「痛い!痛い!あやまるから許して!うぅ…あ…」
 
そして母とは決まってケンカだ。
 
母「もういい加減にしてよ!少しは働く気にならないわけ!?」
父「うるせぇなぁぁ!!この家じゃ俺がトップなんだ!黙って従え飯炊き女が!!」
 
この時代の女にしては母は気が強く腕っぷしもあったので父と喧嘩出来た。でも母は母で私の存在は好ましくないのか、喧嘩と仕事のストレスを私にぶつけて来る。
 
母「起きろ龍二!その寝顔見てるとイライラするんだよ!!」
稲原「がっ、ハァっ!痛っ…ゴボッ、ぶはっ!ハァ…ハァ…もう、やめて…何もしませんから…」
 
母の暴力は陰湿そのものだ。私の顔を水に浸した盥に沈めて殴るんだ。痛みに加えて呼吸困難…しかもいつ、どのタイミングで起こされるか分からないのが恐怖だった。
 
そうして私が7歳の時…とうとう父は家の財産を完全に食い潰した。その後も博徒から懲りもなく金を借りては博徒を続けていたらしく、巡り巡って父は蒸発した。恐らく博徒に殺されたんだろう。そして母は…
 
母「龍二!私ね、凄く大きい所で働く事になったの!少し遠い場所だけど帰って来たらご飯いっぱい食べさせてあげる!」
稲原「ほんと!?やったぁ!頑張って来てね、母さん!」
 
この言葉を期に家へ帰って来る事は無かった。今の時代と違って孤児を助ける様な法律なんかない時代、私は完全に1人になった。
 
稲原「お腹すいた…誰かご飯を恵んでください…」
男「へっ、見ろよw身なし子だぜコイツw」
女「ほんと惨めなガキねwよっぽど貧乏な家に産まれたのねぇww」

周りの大人どもはクソだった。
だが、そんな私にも同年代の仲間が出来た。そいつらは金持ちのボンボンだった。
 
悪ガキA「なぁ、お前いつも此処にいんの?」
稲原「そうだけど…」
悪ガキB「じゃあ友達になんね?俺らとウマが合いそうだよ!」
稲原「え!友達!?本当になってくれるの!?」
悪ガキA「あぁ本当だよ!俺ら仲間だな!」
 
今と違って純真無垢な私は見事に騙されたよ。そして奴らは本性を剥き出しにしやがった。ある時、悪戯で人の農園で盗みを働いた。その際にアイツらは私の事をチクって突き出しやがったんだ。
 
ババア「このクソガキが!あたしの農園を荒らしてたのはアンタだったのかい!」
ジジイ「これだから身なし子のガキは好かねぇんだ!これでもか!このっ!」
稲原「え、違っ…ぐっ!盗んだのは私だけど今日1回だけなんです!ごめんなさい!許して下さい!もう二度とやらないから!」
ババア「言い訳するな!アンタなんだろ!?それとも人のせいにするってのかい!?」
悪ガキA「www」
悪ガキB「www」
 
あのガキ共は笑ってやがった。それを問い詰めるとガキ共は開き直って私に暴力を振るった。
 
悪ガキA「けっ!お前みたいな貧乏娘と誰が友達になるかよ!俺らは金持ちだぜ?」
悪ガキB「こんな貧乏女が一匹消えても世間から見りゃ葉っぱの一枚が枯れただけだもんな!でも俺らは産まれた時から価値があるからお前とは違うんでーす!ヒャヒャヒャヒャww」
 
そうして私はまた一人になった。腹も体力も限界の私はとうとう倒れてしまった。
 
稲原「母さん…どこ行ったの…お腹減ったよ……もう動け…」


次に目覚めた時、私は布団の中だった。
 
稲原「?どこなの、ここ?」
???「よう女、やっと目覚めたな。良かった良かった」
稲原「おじさん誰?」
???「俺は吉岡日露史だ。此処で道場の師範をやってるもんだ。よろしくな」
 
その男は吉岡日露史と名乗った。実戦形式で古流の柔術を教えているようで、門弟が何人か居た。
 
日露史「そういやお前、行くとこあんのか?」
稲原「え、ない…父さんはどっか行っちゃったし、母も遠い所に働くって言ってそれっきり…」
日露史「…言いにくいんだが、お前は捨てられたんだ」
稲原「!!!」
 
多分、パニックにでもなったんだろう。ここら辺りは覚えてない。そして何回か会話を重ねた後に日露史から提案がなされた。
 
日露史「お前、ウチの門弟になれ」
稲原「へ?」
日露史「そのまんまに決まってんだろ?生活の面倒は俺が見てやる。代わりにお前は俺の門弟になる。悪くない話だろ?」
稲原「確かに…行く宛もないし…」
日露史「それにお前は何かデカい才能がある気がしてならねぇんだ。それこそヤクザに……あぁ、今のは何でもねぇ。とにかく強くなれるって事だ!」
稲原「強く…強くなりたい!これまで私を下に見てきた奴を叩きのめしてやりたい!」
日露史「ほぅ、いい言葉だな稲原!そうだ武術ってのは人をぶちのめす為にあるんだ!その偽善を語らねぇ心意気、益々俺の好みだ!」
 
そうして7歳で私は古流柔術道場の門下生になった。


そして門下生となって約1年後、私は道場で1・2を争う高弟となっていた。
 
稲原「でりゃぁっ!!」
門下生A「なんとぉぉ!」
門下生B「(あの稲原ってやつ化物か!?まだ1年近くしか経ってないんだぞ!?)」
門下生C「(天賦の才にしたってそりゃねぇぜ神様…)」
日露史「(むぅ…荒削りではあるが基礎の殆どは一通り出来てやがる。これは化けるな…)」
 
強くなりたい一心か、それとも過去に見下して来たクズ共を見返したい執念か、柔術の腕前は凄まじい速さで上達していった。勿論、学校にも行ってたから勉学にも励んだ。
 
稲原「何が上級生だイキがりやがって。よくも私の友達を殴ってくれたな…だったら私はお前の顔面に石をぶち込んでやるよ」
不良上級生「や、やめてくれぇ…ギャァァァァァァァァァ!!」
同級生A「素直に感謝するけど、流石にやり過ぎな気が…」
稲原「別にいいよ。こんなヤツは痛い目見ないと反省しないし」
不良B「(なんだよアイツ!イカれてやがる!)」
不良C「(あんなんと関わるのはごめんだぜ…命が幾つあっても足りねぇよ!)」
同級生B「すっげー!いいぞ稲原!もっとやったれぇ!!」
同級生C「思い知ったかドグサレ共が!」
 
あとケンカにも。クソみたいな上級生なら思いっきり武術の腕が振るえるからな。それに仲間が不条理にイジメられるのが許せないタイプだった。この時からヤクザになる運命だったのかもしれない。


そんなこんなで吉岡の道場で修行を続ける傍らの学校生活。学校を卒業しても道場で師範代として門下生仲間と釜の飯を囲っていたが、18の時に転機が訪れる。
 
???「ほう、あの女…中々筋がありそうだな」
日露史「そうでしょう?なにせ8歳にして免許皆伝クラスですからな」
???「8歳で!?そいつは中々…」
 
吉岡の隣に居たのは、地元の博徒・堀井一家の親分の「加藤伝兵衛」だった。後に私の初めての親分筋となる人間だ。
 
加藤「吉岡、あの女を呼んでくれねぇか?」 
日露史「惚れましたか?」
加藤「うむ、欲しいなぁ…」
日露史「恋仇は居ますよ。警察の連中も奴に目をかけてます」
加藤「警察?」
日露史「こういうご時世ですからね。あちらさんも腕の立つ奴を集めとるんですよ」
加藤「名前は何て言うんだ?」
日露史「稲原龍二です」
 
此処での出会いが私の人生の分岐点となる。
 
稲原「私を?」
加藤「大方の事は吉岡先生から聞いた。お前なら修行すりゃ、きっといい若い衆になれると思うぞ」
日露史「お前ももう18だ。そろそろ先を考える潮時だろう。それとも、もう決めてしまったのか?警察の方の話」
稲原「私は読み書きが苦手ですから…」
日露史「加藤さんは横浜から川崎、平塚まで縄張りを持つ親分だぞ。お前にとっても決してそんな縁じゃねぇ。腹、括ってみねぇか?」
稲原「しかし、私は博奕は…」
加藤「…両親が蒸発したってな」
 
加藤の親分がそう言い出した。
 
稲川「!!」
加藤「この筋で名を上げて、これまでお前を無碍にして来た野郎を見返すってのも面白い話だろ?」
稲原「見返す…」
 
産まれが産まれ、そして時代の流れ。私は博徒になるという道が非常に魅力的に聴こえた。警察?冗談じゃない。罪のないカタギを苦しめるクソ共と一緒になるなんざ死んでもごめんだった。
 
稲原「でも…博奕の知識は全く…」
加藤「何も今日明日って訳じゃねぇ。学問と同じくゆっくり覚えてきゃええ。ま、頭の片隅にでも留めておいてくれ」
 
そう言うと軽く会釈した後、立ち去ろうとした。私は少し考えて即刻、加藤の親分に掛け合った。
 
稲原「親分!!」
加藤「どうした」
稲原「私の様な者でよければ、親分の下で使ってやって下さい!お願いします!!」
加藤「フッ、いいツラしてるじゃねぇか。話は決まりだ。来な」
 
こうして私は渡世の道を歩み始める事となった。

稲原の大親分の過去…横山の兄貴の教え(中編)

渡世入りした私は加藤親分の邸宅にて部屋住み修行をしていた。今の世にも残るヤクザの部屋住み修行。それは半端なものではない。
 
稲原「!」
 
先ず兄貴分より早く起きなくてはならない。私はこの時、最下級の三下博徒だったから誰よりも早く起きなければヤキ入れを喰らう。
 
稲原「兄貴、おはようございます!」
兄貴分「稲原か。朝から立派だな」
 
そして朝の8時くらいまでを掃除に費やす。この広い親分の邸宅を隅から隅まで掃除しなければならないのだ。特にキツイのが冬。
 
稲原「いってててて…また指が割れたな…これだから冬は嫌いなんだ」
 
今と違って床掃除は雑巾掛けだけ。それにお湯なんて言う都合の良いものも無いから冬でも冷えた水の入ったバケツに手を突っ込んで雑巾を絞らなければいけない。
 
稲原「兄貴!掃除、終わりました!!」
兄貴分「チッ…るせぇな…」
 
そして兄貴分に終わった事を報告する。堀井一家の兄貴衆の中で悪い意味で印象に残っているのが「半田民右衛門」という兄貴だ。堀井一家3年目で賭場では三下の中番という地位にある。
当時のヤクザ社会ではテキ屋と博徒で分かれていたんだ。博徒集団の場合では上から「貸元・代貸・本出方・助出方・三下」に分かれ、三下はさらに中番・梯子番・下足番・木戸番・客引・客送・見張となっている。細かい説明は省くが、中番とは三下じゃトップだが全体的には少し偉い程度でしかない。
半田という男は地位に溺れ下の者に厳しい典型的なクズ兄貴だった。下の者に厳しくするのはヤクザ社会では当然だが、そこに愛が籠もってなければならん。褒める時は褒める、叱る時は叱る、要は飴とムチって奴だな。だが半田という野郎は正当性も合理性も一切なく、ストレス発散の為だけに舎弟に無意味な暴力を働くゴミだったよ。
 
半田「…ブチッ。おい。何だこりゃ」
稲原「は、はい?(コイツ…!)」
 
何と半田の野郎、自分の着物の袖の中の縫い糸の一部を千切ってあたかもゴミが落ちてた様にしやがった。バレてないと思ってるだろうがバレバレなんだよ。
しかし基本的にヤクザ社会で上に逆らう事は御法度だ。どんな理不尽をされようと低頭平身して従うしかないのだ。
 
稲原「え、しっかり掃除した筈なんですが…」
半田「出来てねぇからゴミ落ちてんだろ。掃除も出来ねぇのかこの無能が。最初っからやり直せ」ドカッ
稲原「ぐっ!」
 
他にも飯時。配膳を終えて兄貴分達が全員食べ始めた後に自分も食べ始めるのだが、この時にも半田は…
 
稲原「いただきます!」
半田「おい稲川。代わり寄越せ」
稲原「は、はい(この野郎…)。…どうぞ」
半田「おう」
 
狙った様に飯をかっこんでお代わりの要求だ。そしてやっと飯を食えたかと思えば…
 
稲原「…」モグモグ
半田「あー…腹一杯になっちまったよ…」
稲原「…」モグモグ
半田「稲原!!兄貴分が箸止めたら飯は終わりだ!!」
稲原「す、すいません…(クソ野郎が!いつかぶち殺してやるからな!!)」
 
そんな訳だからろくに飯も食えん。今思い出してもアレは腹が立つ。同じ立場だったら速攻でぶちのめしてただろうな。何せ実力は私の方が上なんだから。
 
極めつけはこれ。
 
半田「しっかり満足させろよ。お前は体とツラだけはいいからな…」
稲原「…はい」
 
性の捌け口だった。ヤクザ社会でも此処まで酷い野郎は後にも先にもコイツだけだ。
半田の暴力は他の兄貴分と質が違った。この男のストレス発散でしかなかった。あいつの指示をこなしても全く成長出来なかった。
 
何時しかヤクザなんか辞めてやろうと思った時…ある兄貴分と出会う事となる。
 
犬「ワン!」
稲原「あはは、くすぐったい。でも私は三下ヤクザなんだ。お前なんか飼えないよ(もう辞めようかな…ただ辛いだけだし)」
???「よう稲原」
稲原「あ、お疲れ様です横山の兄貴」
 
横山進次郎こと横山の兄貴だった。この人は私が今でも尊敬し続ける最高のヤクザだ。私のヤクザ人生の全てはこの人から学んだんだ。
 
横山「逃げるんならさっさと逃げちまえ。今ならまだ間に合うぞ。それ、俺にも1本くれ」
稲原「あ、はい。どうぞ」
横山「親分がお前を見込んでるって噂は組中に伝わってる。そんでも尻尾巻くか?」
 
でもやっぱりヤクザを辞めようとは思えなかった。見込んでくれた加藤親分の顔に泥を塗りたくなかったから。
 
稲原「いえ。一度決めた事ですから」
横山「生半可じゃ務まらねぇぞ。バカでなれず…利口でなれず…中途半端じゃ尚なれず。それがこの世界だ」
横山「要はな?半田って野郎はお前に嫉妬してんだ。他の兄貴分も大なり小なり嫉妬してる。俺だってそうさ。でも大事なのは下の者の才能を認め引き出せるか、嫉妬して無碍にするかの違いだ」
稲原「嫉妬ですか?」
横山「稲原、今は我慢しろ!俺は、お前がデカいヤクザになると信じている!デカくなって見返してやれ!」
稲原「見返す…と」
横山「あの大木だって元からデカかった訳じゃねぇ。小さい芽がよ、雨風や夏の灼熱、冬の寒さに耐えに耐えに耐え続けた末にあれだけデカくなれたんだ。お前は才もあるし若い。忍耐に忍耐を重ねて少しずつ成長すればいい」
 
横山の兄貴と整備された夜の雑木林を散歩したのは鮮明に覚えている。その時の一言一句まで全てね。
 
横山「この世界で名を売ろうと思ったら金を惜しむんじゃねぇぞ。俺たち博奕打ちは真っ当な仕事をしてねぇんだ」
稲原「それは百も承知です」
横山「カタギの人間が三度食う所を俺たちも三度食っちゃ申し訳がねぇ。二度が当たり前だ。カタギが白米食っても俺たちは必ず麦を入れる。そういう稼業なんだ。よく覚えとけ」
稲原「兄貴…ありがとうございます!」
 
横山の兄貴の言葉は厳しくも全てが金言だった。本当に最高の兄貴分だった。
 
そしてある時の事…堀井一家と関根組が賭場でケンカになった。当時の関根組は関東最大クラスの武闘派極道組織…正しく天下の関根組だった。
ケンカの原因は“桜木のエイ坊”こと「中畑英吉」…中畑の兄貴が関根組の賭場で負けが込んだ事で借金をして関根組No.2の木津正雄と返済の約束をした事にある。そして開帳予定の堀井一家と横浜菊川町の博徒「家入鉄三郎」の合同賭場に来れば金を払うと約束した事にあった。
そして午後4時すぎ…関根組の奴らがやって来た。
 
木津「此処が合同賭場の新花家ねぇ…中畑は絶対此処にいる。お前ら分かってるな?」
組員「へい…必ず炙り出してやります」
若衆「まてお前ら!中畑の兄貴はおらん…おい!聞いてるのか!」
組員「どけ三下!」
若衆「ぐはっ!!」
 
彼の傍らに居たのは関根組の武闘派・コブマツこと古部松之助をはじめ関根組組員30人。何れも鍛え上げられている。
 
コブマツ「関根組じゃあ!やっぱりおったなエイ坊!!」
エイ坊「クソぉ…離せ!!」
コブマツ「離す訳ねぇだろ!おら、とっと…何だジジイ…」
バキッ!!
コブマツ「ゴベアァァァ!!な、何だいきなり殴りやがって!」
 
そこに横山の兄貴が割って入って殴り飛ばす。更に木津がやって来る。
 
横山「何の用だ」
木津「ワシは関根組の木津と申します」
組員(堀)「き、木津!?何で関根組の副組長が!?」
木津「そこのエイ坊にちょっとした貸しがありましてね…今日此方に取りに来る予定なんですわ」
 
そこに加藤親分が入って来る。
 
加藤「門を開けろ。無作法な所をお見せして申し訳ありません。今日の博奕は、これまでとさせて頂きます」
 
そうして客が帰る中に中畑の兄貴も紛れて帰ろうとしたんだが、それがいけなかったのか関根組組員がいきなり中畑に殴り掛かった訳だ。
木津もドスを抜いて威嚇する。
 
稲原「横山の兄貴、アイツは私が!」
横山「こうなっちまったらケンカあるのみだ!いっちょ暴れてやるぞ!!」
中畑「関根組へのケジメは必ずつけます!今はやるしかねぇ!この桜木のエイ坊を舐めるんじゃねぇぞ!!」
 
そうして賭場は乱闘騒ぎ。私は関根組の木津と向き合う。奴から感じるのは一流ヤクザのオーラ。腐っても副組長か。凄まじい圧をぶつけてくる。
 
木津「どけ三下が。それとも俺と相手しようってのかい」
稲原「お前が賭場で光り物抜いた以上はやるしかないんでね」
 
次の瞬間、木津が斬り掛かる!奴は簡単に懐を取った!
 
木津「死んでも恨みっこなしだぜ…」
ズアッ!
稲原「(早い!ふざけたスピードしてやがるな!)」
 
直後、閃光の様な刃が私を襲う!
 
木津「出会って早速終わりじゃあ!」
ズバァッ!
稲原「グゥゥゥゥ!(下から来たのか!?全くドスが見えん!)」
 
勘でなんとか躱せたが、胸を浅く斬られた!
木津は関根組の副組長にして武闘派極道だった。
 
木津「どうだい?天下の関根組副組長のドスは。まともに躱す事も出来ないだろ」
稲原「それがどうしたんだ。光り物にビビってヤクザ出来るかよ」
木津「いい気合だ。だが…余りに反応が遅い!」
ズバババババババババババババ!!!
稲原「ぐうううう…(ダメだ、正面からじゃ勝ち目がない!)」
 
そうしてただただ肉が削られ続ける。だから私は一つのチャンスに賭けた。
 
木津「これでさよならだ。あと5年もすれば化けてただろうにな。だが今はその5年前だ」
グサッ!!
稲原「がはっ!!(今がチャンスだ!)」
木津「?ドスが抜けん…まさか、貴様!」
 
そうだ。相討ち作戦だよ。掴んじまえば此方のモンだぁ…
そのまま木津の手を逆技で圧し折る!
 
ゴギィッ!
木津「くぅぅ!!」
稲原「今度はこれでも貰っとけよ…」
ドガッ!!
木津「ぐばぁぁぁぁぁぁっ!!」
 
木津に頭突き!これで奴さんの骨も砕けた!
だが確実に戦闘不能にする!私は奴を捕まえながら新花家の二階から…
 
稲原「そのまま落ちるといい!気合と根性の一本背負いだぁ!」
木津「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 
木津は二階から受け身も取れずマトモに叩き付けられた!
 
木津「がぁぁ…はぁっ…(相討ちとは想定してなんだ…)」
稲原「どうだ木津…これで暫く入院だな…」
横山「おお…(あの木津を土俵に持ち込んで倒すか…やはり奴は化けるな)」
コブマツ「おのれよくも木津の兄貴をぉぉ!!」
 
今度はコブマツが襲い掛かるがコイツは相手にならなかった。
 
ドカッドカッバキッドカッバキッバキッ!!
コブマツ「ごべっ!ごはぁっ!ぐえっ!」
 
そうして暫く殴り続けていると加藤の親分に止められた。
 
加藤「稲原!もういいやめろ。横山、関根組に連絡入れろ。引き取りに来いってなあ」


関根組…
 
「親分!申し訳ありませんでした!」
 
組長へ謝る子分たち。組長の名は関根賢。彼は重々しい顔で寝ている木津を見ている。隣に居るのは関根組大幹部の藤田卯一郎。後に私の傘下となる松葉会の初代会長だ。近くに居るのは関根組若頭の「山形正造」。
 
藤田「親分、どうされます?」
関根「山形、道具と兵隊揃えろ」
山形「へい…」
 
関根の指示を受けた山形はその夜の内に堀井一家の縄張りである片瀬に600人を越える組員を送る準備を整えやがった。当時の関根組の勢力は向島から下谷、四ツ木など下町の主要地域に及び、総勢1万余り。私ら堀井一家は助っ人を含めても1600人に満たない。本格的に戦争が始まれば潰されるのは火を見るより明らかだった。

色んなヤクザ

武闘派の半グレ…院怒羅。その末路

俺の名前は木原大夢。
 
ヤクザ「ぐげげ…げ…」
木原「けっ!ヤクザっつってもこんなもんかよ」
 
三下ヤクザを〆た武闘派の半グレだ。


日本裏社会には大きく分けて3つの勢力がある。一つは俺たち半グレ。そしてもう一つが最近調子付いとる異能者のガキ共で構成された組織。最後が古くから日本に存在する極道…即ちヤクザだ。
 
半グレ「極道とかカビが生えてんだよ!これからは俺らの時代だ!!」
異能者「ヤクザだろうが半グレだろうが俺等に逆らう奴は消しまーす!」
ヤクザ「調子こいてんじゃねぇクソガキども!」
 
このヤクザってのはどういう訳か厳しい掟だっで下を締め付けて組織を統制する。そのノリは一昔前の体育会系だ。
 
若頭「使えねえ奴を食わす金はねぇんだコノヤロー!!今度の幹部会できっちりシマ取り上げてやるから覚悟しとけ!!」
幹部「はい…」
 
シマと呼ばれる縄張りを持って利益を独占してやがる。コイツらは仁義だの任侠だの古臭ぇ言葉を並べ立ててるが、そんなもん時代遅れなんだよ。その癖コイツらが裏社会の実権を握ってやがる。
 
仲間「ボス、こんなんでよく仁義とか言えますね」
木原「へっ、任侠とか死んだら負け犬の遠吠えでしかねぇんだよ」
極道「このクソが…命に変えても好きに…させるかよ…」
木原「うっせぇな。いい加減死んどけや老害」
 
あんな奴らより未来ある若者の俺たちの方がシマを使ってやる方が有効的だろ?そして俺は関東の武闘派半グレ組織…院怒羅のボスって訳だ。
 
木原「おい見ろこの写真。分かるか?テメェらのケツ持ちは俺らが潰したんだ」
店主「う、ウソだろ…」
木原「ウソじゃねぇよ(笑)。だから今度からは俺らを贔屓にしてくれや…」
店主「わ、分かりました…」
 
男は殺す。女は犯す。ジジイババァからは金をふんだくる。それが俺らの生き方さ。
 
舎弟「ボス!見て下さいやこれ!」
木原「あん?こりゃクスリか。末端価格で二億はあるぞ?」
舎弟「バラ撒いたら売れますよ!」
木原「バラ撒くのは結構だが自分が使う事は許さねぇとだけ言っとけ。ヤク中なんざ駒にもならねぇからな」
舎弟「へい!」
 
最近では海外マフィアのお陰でクスリも容易く手に入る。そしてクスリに手を出す奴らも多い。まさしくオイシイ話って訳だ。
そして俺は新たな利権を得る為にキャバクラへ凸だ。
 
木原「この酒、温いじゃねぇか!馬のションベンじゃねぇんだコノヤロー!」
ホスト「すいません…」
木原「あー気分悪いわ!ちょっと店長呼べや」
 
取り敢えず店長を呼ぶように伝えてやる。だが店長は何故か俺に対してガン付けてやがった。この感じヤクザがおるな?
 
店長「お客さん、あんまり酷いと恐い人が黙ってませんよ!」
木原「恐い人だぁ?全然恐くねぇよ。俺らは天下の院怒羅だぜ?ヤクザでも何でも連れて来いよ!」
店長「!なぜそれを!」
木原「分かんだよ。夜の店ってのは大概がヤクザじゃねぇか。お前らのケツ持ちは何組だ?」
店長「森山組だ…分かったら大人しく…」
ドゴッ!
店長「ぶげぇぇぇぇ!!」
木原「くだらねぇ…森山組ぶっ潰してやるよ」
 
そしたら組へカチコミしてやる。奴らは三下ヤクザだった。
 
木原「院怒羅の木原でーす。お前らのシノギ下さーい」
組員A「あ!?カチコミか!」
組員B「ふざけんな!いきなり来てその言葉、死にてぇようだな!!」
 
だが俺はそこらの半グレと気合いが違ぇ。ヤクザだろうがぶち殺せんだよ。
 
木原「へっ弱ぇな。そんなんでケツ持ちとかヤクザ辞めちまえや」
組長「ひ、ひぃ!何だこの化物は!」
木原「院怒羅の木原だ。地獄で覚えとけ」
 
だがこれが後々に地獄を見る事になるとは。


横浜中華街…此処の居酒屋に二人のヤクザがいた。
 
???「あぁ分かった、俺の組から応援を出すと伝えてくれ。また家入一家か…これで30件目だ」
???「だから奴らに川崎の自治を任せるのは反対だったんだ!そもそも俺たち直系と看板が同格ってのも気に入らねえ!家入の奴らぶっ潰して俺のシマにしてやる」
???「言葉が過ぎるぞ慎め。あんな組でも一応は神奈川ヤクザという同士だ。しかしあのままの状況が続くなら…対応を考えねばなるまい」
 
二人が雑談していると舎弟らしき男が何やら急いでやって来た。
 
舎弟「大変です!林の親分!それに出口さん!」
???「何が大変なんだ」
???「チッ…今からビール飲むって時に何だよ」
 
異様なオーラを醸し出す2人の極道。林喜一郎と出口辰夫だ。
林喜一郎…神奈川裏社会で知らぬ者は居ない林一家の総長。かつて戦後の横浜で愚連隊として暴れ回り「横浜愚連隊四天王」と呼ばれ恐れられた男。今では関東最大のヤクザ組織・稲川会の生きる伝説だ。
 
林「ハマを汚すクソ虫共。この世から消えるといい」
ババァン!
「ゴゲッ!」
「ガッ!」
 
横浜の街全体を裏から取り仕切り、莫大な利益を上げていると聞く…
そして隣に居るのは出口辰夫。林と同じく横浜愚連隊四天王で六代目綱島一家の総長。関東裏社会ではモロッコの辰で知られる極道だ。
 
出口「遅ぇ」
「は、早!?」
出口「これで一生流動食だなぁ!!」
「ゴガァァァァァァ!!!」
 
出口は元ボクサー上がりの極道で、素手で高位の異能者すら殺せる怪物。そのフットワークと打撃はマイク・タイソンにも匹敵する世界チャンピオンクラスのものだ。
 
舎弟「院怒羅って半グレ共が川崎でヤクをバラ撒き、あまつにさえ森山組を潰したと!」
林「何?また家入一家のシマか…」
出口「おーおーそりゃツーアウトじゃねぇの。家入は何してやがるんだ?」
 
俺たちがやっていた事がとうとう稲川会の大幹部の耳にまで届いちまったんだ。
 
林「院怒羅か。最近神奈川で調子付いてるとは聞いてたが、そろそろお灸を据える必要がありそうだ」
出口「今から行くのか?」
林「当たり前だ。あんな害虫は消すのが世のためってものさ」
出口「待て林!」
林「何だモロッコ」
出口「ごま団子が出来たてなんだ!それだけ食ってからでも…」
林「駄目に決まってるだろ!車の中で食え!」


そして俺たちは今、あるヤクザ共とシマを巡ってトラブルを起こしている。良い車乗った組長は偉そうに車内から命令してきやがる。
 
組長「ここは俺たちの縄張りだ。ガキは出て行け。殺すぞ」
木原「はあ?何言ってんだジジイ。知らねぇよそんなもん」
部下「縄は何処に張ってんですかぁ?あるなら見せて下さいよw」
   
取り敢えず腹が立ったので車を破壊してやる。
 
木原「お前ら!あのヤクザども引き摺り出してやれや!」
部下A「へーい。このおっさんどもボコボコにして良い訳ね」
部下B「テメェらが出てけ!俺らが縄張ってやっからよぉ!」
 
そんで車の窓ガラスをぶち破り…引き摺り出してリンチだ。
 
木原「舐めてんじゃねぇよボケ!この腐れヤクザ共が偉そうによ!!」
ボゴッドゴッバキッドカッ!!
組員A「うがぁぁぁぁ!!」
組長「ぐえええええ!!」
組員B「!?何してやがるテメェら!!」
 
騒ぎを聞きつけたのか応援が来たが俺らは事前にそれを想定してある。
 
木原「おーい!出番だぜ」
部下D「轢き殺して道路の一部にしてやるよ!!」
ドゴォォォォ!!
組員B「ギャァァァァァァ!!」
部下D「どけや!ボーっとしてんじゃねぇよ!」
カタギ「ぎえええええ!」
 
何か関係ねぇ奴も轢いちまったが知ったこっちゃねぇ。巻き込まれる奴が悪いんだよ。
 
木原「お前ら。騒ぎがデカくなっちまった。サツが来る前にずらかるぞ」


一方、林と出口は連絡を受けて現場に直行したらしいが手遅れだ。俺らが暴れた後だったからな。
 
林「おい救急車を呼べ!!(院怒羅のクソ共が!此処までやるか!)」
男「い…てぇ…よ…」
女「助け…て」
出口「おい、何があったんだ!教えろ!」
組員B「それが…院怒羅の奴らが……」
 
組員から事の顛末を聞いた2人は大激怒していた。
 
林「ふざけおって!ウチらに粉掛けた代償は払って貰うぞ!!」
出口「はっはっは…怒りを通り越すと笑いが出るんだな!」


そして俺らがアジトに居た時だ。
 
木原「ヤクザの利権が此処まで金になるとはな!」
部下A「全くですわボス!今夜は綺麗な姉ちゃんでもテイクアウトしますか?」
木原「テイクアウトするも何も…暴力で従わせればいいんだよ。女は暴力チラつかせれば従順なメス犬になるからな」
部下B「んじゃ、適当にキャバから女連れて来ますわ!」
木原「久しぶりに熱いもんぶち込んでやるか…」
バン!
部下C「ボス!大変ですー!!」
木原「あ?」
部下C「謎の二人組がやって来ていきなり…」
パァン!
部下C「かっ!」
木原「!?おい、何が起きてるんだ!」
 
いきなり入って来た部下が報告を終える寸前で何者かに撃たれた。そして遅れて入って来たのは…
 
林「学の無い人生お疲れさん。今日で人生終了だ」
出口「すんませぇん。立ち退き業者で~す」
木原「な…何だテメェら!(汗が止まらねぇ!)」
部下A「うおおお!まさかモロッコの辰と林か!なんで稲川の奴が!」
 
奴らの姿を見た途端、全身から冷や汗が吹き出た!何だあの圧は!?あれがヤクザなのか!?身の危険を感じた俺は即座に指示を出す!
 
木原「お、おいテメェら!あの2人をとっとと殺せぇ!」
部下A「くそぉ!よくも仲間をやりやがったなぁ!」
部下B「たかが2人!数で押し切るだけだ!」
「「「「わぁぁぁぁぁ!」」」」
林「口だけは達者だ」
出口「弱い奴ほどよく吠えるってな」
 
次の瞬間、林がいきなり怒声を上げる!
 
林「気を付けええええええええい!!!」
「「「いいっ!!!」」」ビクゥッ!
バババン!
林「やはり未熟…半グレになるのも頷ける。それで武闘派とは片腹痛い…」
木原「あの数を一度にだと…!(撃つ瞬間が全く分からなかった!)」
 
ビビった所を瞬時に全員撃ち殺した!片や出口も仲間を血祭りに上げようとしている!
 
出口「お前らは地獄に移住しろぉ。現世から強制退去だあ」
部下A「ふざけんな!地獄へ行くのはテメェじゃ!」
出口「ならヤクザの流儀に従って力付くって事になるが文句は無いよな?」
部下B「ちぇ!モロッコだか味っ子だか知らねぇがカビが生えてんだよ!ぶっ殺してやる!!」
出口「それが遺言かい」
 
その言葉を皮切りに出口が砲弾の様に飛び出す!辺りに爆発したかの様な音が鳴り、地面がなんとひび割れていたのだ!!
 
出口「俺はバネが違ぇんだよ」
 
それは最早普通の突進とは訳が違う!そして繰り出されるのは強烈な唐竹割り!
 
出口「地獄への永住権だ。来世は生まれ変わるなよ」
ズバァン!!
部下B「げ!」
出口「今度はドカンと行ってみるかい?」
部下A「手榴弾!?テメェ、イカれとんのか!?」
出口「そら、120マイルの火の玉だぁ」
 
続けて出口は安全ピンを付けたままの手榴弾を投げ付けた!それは最早殺人兵器…
 
パコォン!!
部下A「ゴゲッ!!」
木原「な!(あれで人間を殺せるのか!?)」
 
一発で即死…頭が弾け飛んでいた。
仲間は全員殺され残るは俺1人だけになった。2人が俺に詰め寄って来る。
 
木原「わぁぁぁ!来るんじゃねぇぇ!ぶち殺すぞ!」
林「三下が殺すと言っても脅しにもならん」
出口「そんじゃ、楽しい楽しいケジメの時間だ」
木原「あ、あああああああああ!!!」
 
俺は何もする事も出来ずに壮絶な拷問を受けて死んだ。残った院怒羅の構成員も全員マトに掛けられて殺された。
 
組員A「鼻の穴に鉛筆ぶっ刺し!」
グチャッ゙!!
「ぐえええええええ!!」
組員B「焼き鏝刺青!お題はタダでぇす!」
ジュウウウウウ!
「ギァァァァァァ!!!」


結局、世の中には逆らっちゃいけねぇ奴らが居る。
 
林「死体の処理を頼む」
組員「へい」
出口「バレたらお前もアスファルトな?」
組員「分かってます。ミス=死ですから」
 
特にヤクザなんかの不興を買えば確実に消されてしまう。俺たち半グレ如きが勝てる相手じゃなかった。

異対課のガサ入れ。ヤクザでも容赦なし

俺の名前は竹内義明。
 
???「捜索差押令状が出ています!開けなさい!」
舎弟「兄貴!異対課や!!」
竹内「は!?冗談やないぞ!道具や帳簿は隠し倉庫にぶち込め!裏口から出ろ!」
 
かつてないピンチを迎えたヤクザ組織の幹部や。


事の始まりは一週間前の事や。
 
組員「おい誰のシマで調子乗っとるんや?死んでみるか?」
半グレ「チンピラぁ、それが遺言か?コラ」
 
ウチの組員が半グレと揉めてたんや。そこで頭に血が上ったアホが…
 
組員「地獄で後悔し・て・な!」
半グレ「なぁ!?おいバカやめろ!」
 
あろう事か街中でチャカを抜いてしもうた。街中で殺り合うんは昭和やったらまだしも今のご時世やとマズイんや。
 
組員「冷たい鉛玉を差し上げまーす!♪(CV.小林の兄貴)」
バンバンバン!
半グレ「ぐわぁぁぁぁっ!?」
 
このアホ組員は現行犯逮捕された。今までならそれで終わりやった。筈なんや。
 
組長「ワシら何もやっとりませんがな…(マル暴のガサ入れは3日後やと聞いとったんやが…あれ?)」
「じゃかましい!文句あるなら公務執行妨害でブタ箱に放り込むぞ!」
 
この日いきなり異対課という連中がガサ入れに来て上部団体の幹部を逮捕したんや。しかもその幹部は俺が所属する団体のオヤジやった。
 
竹内「オヤジがパクられた。どうするねん」
幹部A「熱りが冷めるまで大人しくするしかないなぁ…」
幹部B「7、80万でお上と手打ちは?」
幹部C「駄目やったよ。頭の硬いサツにぶち当たってな」
 
オヤジがパクられた結果、ウチの組は機能不全…組の運営どころやなくなってしもうた。
 
舎弟「異対課?何ですかいそれ」
竹内「そいつらにオヤジがパクられてなぁ…最近、妙にサツの目が鋭い」
舎弟「例の条例もありますからね」
竹内「困ったもんや。ヤクザおらんくなったら半グレと異能犯罪を誰が抑えるっつーねん」
 
この件は他人事やない。ヤクザ業界全体に飛び火しとる問題や。


以前、国会で俺らヤクザに対する議題が出とった。
 
議員A「今の時代、彼らを放っておくのは如何なものか!?」
議員B「かつて暴力団による抗争で市民が何人亡くなったと思ってるんですか!」
議員C「いい加減、彼らに相応の規制をするべきなのです!」
 
要はヤクザに対して社会的な制裁をしようって訳やな。ほんで案に出とるのが暴対法やねん。
 
竹内「暴対法か…これが施行されたら俺らは食い上げを殆ど無くしちまう…」
幹部A「保険に入れん、銀行口座も開けん…辞めても5年はヤクザ扱いでそれらが出来ひん…どうすりゃええんじゃ」
幹部B「戦後、国から頼って来た癖に必要無くなれば捨てるとは恩知らずにも程がある!」
幹部C「全くや!戦後の日本を三国人から守ったのは誰と思っとるんじゃい!」
 
しかし暴対法は施行されておらへん。今の所はな。何せ現在は異能犯罪っちゅうもんが幅を利かせとるからや。
 
異能者「無敵!素敵ぃ!」
警察「ぐァァァァァァ!」
市民「何だアイツは!?」
 
異能犯罪者っちゅうんは全てに牙を向くならず者や。漫画やアニメに出てくる様な能力を使える半グレと思って貰えばええ。国はそっちの対処を優先しとるんや。
 
大臣「ヤクザとの蜜月は昭和じゃ普通だったこと。むしろ優先すべきは異能犯罪者だろうな」
官僚A「ええ。ヤクザは話が通じるが、奴らは頭のイカれたパンピー共。誰にでも牙を剥きますからね」
官僚B「むしろヤクザは彼らに対して徹底的な攻撃をしています。暴対法の施行は何十年か後でも良いでしょう」
大臣「うむ、敵の敵は味方とも言う。それに私は昔ある組のヤクザに命を救われた事がある。無碍には出来んのだ」
 
勿論ウチらヤクザにも該当者はおるが、奴らと違って無意味な能力行使はせん。
 
組長「えぇか、例え異能を得ても調子に乗ってはいかんぞ!これからもカタギさんを守る為にその力を振るってくれや!」
「「「へい!」」」
 
一方で警察側にも動きがあった。あちらさんも異能対策課という機関を立ち上げてな、異能者の取り締まりをするようになった。
 
「狂人が。一生豚箱におれや」
「クソがぁ…」
 
奴らは選りすぐりのエリート。あの第一飛空艇以上の苛烈な訓練を得て初めて一人前とすら言われる軍人が異能を持つようなもんや。並の奴やと異能使うても相手にもならへん。
 
「ヌルい…宝の持ち腐れよ」
「なに!?ぐぇぇぇぇっ!」
「10時45分。現行犯で逮捕。署へ連行する」
 
そして異質なのはその自由さと職務範囲の広さ。他の職業と兼ねていたり中にはアイドルをしながらやっとるもんもおる。
 
「表はお茶の間のスター…でも裏の顔は…フフッ」
「ひぃぃ!!」
 
時には上層部に無断で動いたりもするらしいが、奴らの検挙率は99%にも及ぶ。現行犯で逃れられる者は0や。せやから上層部も強く出れへん。
 
「どうしたのかね?態々私の所へ」
「我々であれば1日あれば犯人を捕まえられます。是非とも出動許可を」
「いやいやいや、この件は四課の仕事だぞ?」
「はっきり申し上げますと四課の暴力団検挙率は少ない。彼らの捜索差押は有名ですが見つかった試しが殆ど無いのです。もしかすれば彼らが暴力団と裏で取引をしている可能性も考えられます。どうか許可を」
「あ、あぁ…分かった…(奴らとの蜜月がバレるやもしれん…マズイぞぉ…)」
 
最近なんかは俺らヤクザ者の捜査にも精を出しとるらしいんや。本来は四課ことマル暴の職務やが奴らが出る事が増えた。つまりヤラセ捜査が出来ないんや。


そして俺がケツ持ちのバーで飲んどった時や。
 
ママ「竹内さん、アンタら何かしたん?」
竹内「何が?」
 
ママがいきなり言い出した。
 
ママ「警察庁のある幹部が懲戒処分で辞めさせられて貴方の組と関係があるから明日にでも探りを入れるって」
竹内「なんやとぉっ!?」
ママ「これ、昨日飲みに来た風谷さんからの情報なんやけど」
竹内「おいおいおいおい!」
 
そう。オヤジと密接な関係にあった警察庁の幹部とウチの蜜月が発覚して懲戒処分で辞職させられたんや。
 
「お前を免職処分とする」
警幹「くっそぉぉぉぉぉ!!!(異対課のボケ共がァッ!!)」
 
暴いたのは誰でもない異対課そのもの。俺は即座にこの情報を組へと持ち帰った。
 
若頭「それは聞いとる。せやけど時期が悪いなぁ…帳簿も整理の途中やったろ」
竹内「は、はい…」
 
カシラは苦虫を噛み潰したような顔で物語った。期末という事もあって事務所にはヤバい資料とカネが集まっとった。
 
竹内「せやけどカシラや俺らまでパクられたらホンマに組はおしまいですよ」
若頭「…背に腹は代えられへんかぁ」
 
事前にカシラ達が少し隠蔽作業をしとったので俺らもきな臭いモノを隠すように指示が下った。
やがしかし悪い事は往々にして重なるもんや。
 
舎弟「兄貴!もうすぐそこまでサツの集団が!!」
竹内「なんやとぉっ!?」
 
此方の予想より早くガサ入れの一団が来てもうたんや!
よりによって見つかるとアウトな資料やケンカ道具を片付けている最中…
 
竹内「く、くそ!どうする!?」
幹部A「カーペットの下に隠し倉庫あるやろ!そこに隠すしかあらへん!」
幹部B「俺の異能はパワー主体や!任せとけい!」
幹部C「一応カモフラージュ能力持ってんねん、それで隠蔽や!」
 
ウチの幹部2人は異能者やねん。しかしその隠蔽工作が終わるまで間を待たせるしかない!
 
竹内「おい!この荷物はバッグに詰めてお前は裏口から逃げろ!」
舎弟「でもサツが!?」
竹内「俺らが時間を稼ぐ!急ぐんや!!」
 
間に合いそうにないもんは舎弟に持たせて逃げさせる!俺が入れ替わると直ぐにインターホンが鳴った。
 
竹内「はい。どちら様でしょうか?」
「異能対策課です。貴方の事務所に捜索令状が出ています」
 
やっぱり奴らやった。勿論「はいそうですか」と鍵を開ける訳にはいかん。
 
竹内「あー、直ぐに開けますので少しお待ち下さい」
舎弟「兄貴…」
竹内「はよ行け!」
 
隠蔽工作と舎弟脱出までなんとか時間稼ぐ為に少しだけ無視していたんや。だがそんな俺の考えを遮るかのように…
 
竹内「ばっ!」
舎弟「ああっ!!」
幹部A「マッスル!?(錯乱)」
「鍵を開けるまでに何分待たせるのですか…捜索せて頂きます。やはりクロでしたね」
 
奴らが鍵を解除して入って来よった!しかも隠蔽作業の途中…見事にバレた俺らはムショ行きになってもうた。
 
竹内「クソッタレぇ…こうまで強引とは…」
 
しかもウチの組と警視庁幹部の件が世間へ出回り…ウチらの組は潰れてもうた。
 
新聞『警察庁幹部とヤクザ組織の蜜月!?発覚した警察の闇!』
 
組が潰れた以上、帰る所が無い。今は出所後の事で頭がいっぱいや。

極道たちの挽歌その弐へ

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