【ハン帝国】

Last-modified: 2021-12-14 (火) 23:01:15

SF2

いわゆる年表に書かれた「古代帝国」。
都市国家ハンの名前で興った国が、王政であるハン王国を経て、帝政へと変わった姿。
ヴァイスラント遠征によって【クヴェル】を発掘して持ち帰ったことで本格的な発展を遂げる。グラン・タイユの開拓なども行ったが、大旱魃が発生した際に当時の皇帝が善政を敷いたことで【五賢帝時代】を迎えた。これが帝国の最盛期であり、のちの【南大陸】の発展もこれが大本である。
 
しかし五賢帝時代が幕を下ろすと、帝国は腐敗の一途を辿る。術の発達で貧富の差が広がった結果、ひどい場所では総督がいきなり10年分の税金の前払いを要求した挙句、次の総督まで9年分の前払いを重ねて要求するというものであった。また、剣奴を戦わせる競技場に象徴されるように、貴族たちの趣味も悪化の一途を辿った。
そして第2回のヴァイスラント遠征が行われたが、以前のそれとは異なりただの略奪で、これに業を煮やした住民がやがて反乱を起こすようになる。
当時、グラン・タイユ地方では、グラン・ヴァレの石橋建設に人々が強制労働として駆り出されており、ここで大規模な反乱が発生。同時に、競技場では剣奴ユヴェナリスをリーダーとした【ニカの反乱】も起こる。これ自体は鎮圧されたが、帝国はすでに傾いており、そんな中でも貴族たちは反乱鎮圧を暇つぶしの余興と捉えているなど、自浄作用は完全に失われていた。
この反乱で崩れかけた帝国を立て直す才能を持つものはおらず、住民たちが担ぎ上げた五賢帝の子孫は政治に明るい良君であったが争いを嫌って南大陸へ渡る。そのため人々の多くが彼を追って南大陸へと脱出したため、帝国は深刻な人材流出という問題にも直面する。
 
のちに反乱はいっそう激しいものとなり、やがて統治者が次々と離反していく。特にグラン・タイユが一斉蜂起した影響は大きく、一時期は帝都にまで軍勢を迫らせた。一度はメルシュマンの貴族によって鎮圧されたが、そのメルシュマンも離反したことでついに帝都は包囲され、最後はロードレスランドの離反によって完全に滅亡。465年のことであった。

帝国が残した各種影響

術を使う手段がクヴェルのみであったことから、クヴェルを用いた大規模な建造物による独自の文明を築いていたが、帝国への反乱のおりにこれらは破壊され、術も【ツール】を用いてアニマを引き出す技術が確立すると、これらの文明も失伝してしまった側面がある。また、帝国滅亡まで人々にたまった鬱積が、地位はクヴェルではなく術の才能によってもたらされるべきものという価値観を強力に定着させ、これが劇中で【ギュスターヴ13世】が術を扱えないゆえに追放された遠因にもなっていたりする。
 
東大陸のその後の統治は、帝国をつぶすことで一致団結していた各陣営だったが、共通の敵を失ったことで互いに争いあうようになる。その際、貴族の腐敗を一定ラインまで防ぐために支配者層側に誓約を課す倫理則を導入したが、支配者層たちが自分たちの地位を失わないよう今度は爵位に権威付けをするようになる側面もあった。また、改善されたのは内政のみであり、外交に関しては隣国との争いを解決する抜本的な対策はなにも取られていなかったことから、数百年後の劇中でもなおメルシュマンが群雄割拠状態になっている。
また、大規模な反乱を起こした地域の一つであるグラン・タイユでは、それまでと異なり知識層が入り、部族連帯の強い王国に変化。
別の見方をすれば、ハン帝国の領地は総じて相次ぐ反乱によって事実上多数の戦争が行われた地であり、おびただしい人々が死亡したことで、やがてその【アニマ】を求めたモンスターが発生するようになる。帝国当時は「中原」と呼ばれていた文字通りの世界の中心であったこの地方も、モンスターの発生によって多くは人が住める場所ではなくなり、領主(ロード)が去ったことから「ロードレスランド」の名前が付けられるに至った。帝国の遺構である【ハンの廃墟】の内情を見ればわかるとおり、呪われた地と化した。
一見するとのどかな漁村である【ヴェスティア】も、風景をよく観察すると帝国時代の大規模な城壁がほとんどなくなり、その城壁跡や石畳をベースにして小規模な住宅がいくつか建てられて結果的に町を形成するという、ある意味ポストアポカリプス後のような様相を見せていることも浮かび上がってくる。
 
南大陸では移住した五賢帝の子孫が建国した「新ハン帝国」が、のちの【ナ国】となっている。劇中前半では平和を絵に描いたような政治状況は大本がこの五賢帝の直系であったことに因ると言えるだろう。
 
一方で、クヴェルという道具に対して人間が初めてさまざまな価値を見出したのもまた帝国であった。だからこそ、劇中の時代に貴族たちが地位や財産としてクヴェルを求めるようになり、それが転じて【ディガー】という職業を生み出し、ゆえに【ナイツ家】がその才能を発揮する舞台が出来上がったという見方もできる。