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神速一魂・Cafe Parade |
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神速一魂
紅井 朱雀
第1話 俺のヒーロー | |
---|---|
紅井 朱雀 | 迎えに来てくれてありがとな、プロデューサーさんよぉっ! |
…ん、なんか、向こうが騒がしくねぇか?ケンカだったら止めに入るか… | |
ってオイオイ、絡まれてんのうちの高校のヤツじゃねぇか! | |
絡んでるヤンキーどもにも見覚えあるぜ、前にオレがこらしめたヤツらだな!? | |
プロデューサーさんよぉ、待っててくれ!ちょっと助けに行ってくるぜ! | |
オラオラァッ!テメーら、オレの前で弱い者いじめするたぁ、いい度胸じゃねぇか! | |
ヤンキーA | げっ、紅井朱雀…!面倒なヤツが来やがった、行くぞ! |
ヤンキーB | 紅井朱雀が来たんじゃしょうがねえ、ずらかるか。 |
ヒーロー好きの学生 | た、助かったッス…ありがとう!ありがとう!!すごい、アンタは俺のヒーローだ! |
紅井 朱雀 | …おいおい、照れるじゃねぇか。オレはヤンキーどもにメンチ切っただけだぜ! |
(何事もなくてよかった…) | |
紅井 朱雀 | 安心してくれよ、プロデューサーさん。危ねぇことはしねぇようにすっからよ! |
第2話 オウケン1年の日常 | |
紅井 朱雀 | テメーら、朝っぱらからこええツラ並べて、ご挨拶じゃねえか…なんの用だ? |
モブ生徒A | なんの用…だァ?紅井、テメェ…よくもノコノコと学校に顔出せたじゃねぇか!? |
モブ生徒B | 見たぜ、昨日の番組!新譜買っちまったぞコラァ、いい曲じゃねぇかチクショウ!! |
紅井 朱雀 | いちいち凄むんじゃねーよテメーら!ヘヘッ、でもCD買ってくれてありがとな! |
ヒーロー好きの学生 | あの…朱雀さん!話してるところごめんなさい。ちょっといいッスか! |
紅井 朱雀 | おっ、おまえは昨日の!どうしたんだ? |
ヒーロー好きの学生 | 改めてお礼が言いたくて。昨日は本当に助かったッス! |
映画に出てくるヒーローみたいで!まさに弱き者を助け、悪を倒す正義の味方! | |
紅井 朱雀 | そんなに言われると照れるっての!でもおまえ、漫画とか読むんだな。 |
ヒーロー好きの学生 | うす!俺、悪人を倒すヒーローとかが出てくる漫画とかが大好きなんスよ! |
紅井 朱雀 | オレもそういう漫画たまに読むぜ。オススメがあったら教えてくれよ! |
第3話 男の中の男! | |
紅井 朱雀 | ははっ、ずいぶん話し込んじまったな!オススメ漫画、今度貸してくれよな! |
ヒーロー好きの学生 | …あの、朱雀さん。アンタを男の中の男と見込んで、頼みがあるッス! |
紅井 朱雀 | おっ、なんだ?オレとお前の仲だ、どんどん言ってくれよ! |
ヒーロー好きの学生 | 俺はヒーローみたいに強くないし、根性もないから絡まれやすいんス。 |
俺も朱雀さんみたいな立派な男になれるよう、特訓をつけてほしいんス! | |
こんなこと頼めるの朱雀さんしかいないんスよ!どうかお願いしまッス! | |
紅井 朱雀 | そこまで言われちゃ断れねぇな。いいぜ、やってやろうじゃねぇか! |
紅井 朱雀 | (玄武に相談したかったが、別の仕事のレッスン中か…どうすっかなぁ…) |
(なにか考え事?) | |
紅井 朱雀 | …っと、プロデューサーさん!助かったぜぇ!ちっと相談に乗ってくんねぇか? |
ダチに鍛えてほしいって頼まれたんだけどよ、手を貸してくれねぇか? | |
一緒に走り込むのに、効果の高い練習方法とか教えてほしくてな… | |
(もちろん!) | |
紅井 朱雀 | 本当か?さすがプロデューサーさんだぜ、ありがとなッ!! |
第4話 特訓開始! | |
紅井 朱雀 | 今日から俺も特訓開始だ!オレも一緒に走り込むからよろしくなッ!! |
強くなるためにはまず度胸をつけろ!自分は強いっていう自信を持て!! | |
ヒーロー好きの学生 | うす!がんばるッス!! |
紅井 朱雀 | おうっ!そんじゃ早速行くぜ。プロデューサーさんのチャリについてくぞ! |
プロデューサーさん、忙しいのに付き合ってくれてありがとな! | |
(頑張ろう) | |
ヒーロー好きの学生 | はぁ、はぁ…も、もうダメッス。 ヒイイ…ペースについていけない… |
紅井 朱雀 | おまえの力はそんなもんじゃねぇ!ヒーローのこと思い出してがんばれ! |
ほら、にゃこも応援してるぜ。根性出せよ、バ---ニンッ!! | |
にゃん喜威 | にゃんっ! |
ヒーロー好きの学生 | ははっ……猫にも応援されちゃったス。よーし、もう少しだけがんばるッス! |
紅井 朱雀 | その意気だぜ! よーし、オレも負けてられねぇな!ぶっ飛ばしていくぜ! |
ヒーロー好きの学生 | (…力が湧いてくる。まっすぐで熱い応援…これが、 紅井朱雀なのかよ…) |
黒野 玄武
第1話 卵翼之思 | |
---|---|
黒野 玄武 | 番長さん、ちょっといいかい。 |
実は、俺が昔いた施設で世話になってた元職員さんの1人が、 | |
結婚が決まったらしいって話を聞いたんだ。 | |
おめでとうと伝える | |
紅井 朱雀 | スゲーめでてぇよなぁッ!オレもどうにかして祝ってやりてーんだ。 |
どうにかって? | |
黒野 玄武 | 彼女が今勤めている施設で、祝いのパーティーが開かれるらしくてな。 |
そこに俺ら神速一魂として参加して、歌でも贈れねぇかと思ってな。 | |
紅井 朱雀 | 相棒が世話になった恩人といやぁ、オレの恩人も同然だからな! |
黒野玄武 | とはいえ神速一魂として行くならアイドルとして筋は通さなきゃならねぇ。 |
頼む、番長さん。許可しちゃくれねぇか。 | |
自分も同行するという条件付きで許可した。 | |
紅井 朱雀 | うおおお!ありがとな、プロデューサーさんよぉっ!よかったな相棒ッ! |
黒野 玄武 | フッ。ありがとよ、朱雀。そして、番長さん。 |
第2話 温厚篤実 | |
黒野 玄武 | ご無沙汰してます、先生。ご結婚おめでとうございます。 |
施設の職員 | ふふっ、ありがとう!それにしても玄武くん、大きくなったわね~! |
黒野 玄武 | はは、自分ではそんなに変わってねぇつもりだが…照れくさいもんだな。 |
それにしても、今はこっちの施設に勤めてるなんて知らなかったぜ。 | |
施設の職員 | 私こそ、玄武くんがアイドルになったなんてビックリしたわよ! |
ほらみんな、神速一魂の2人が来てくれたわよ。 | |
子どもたち | …… |
紅井 朱雀 | …なぁ玄武、オレたち怖がられてねぇか?やっぱこのナリじゃあよぉ… |
黒野 玄武 | 俺に任せな。こういう時は、目線を合わせて… |
こちらの先生にはよ、俺もガキの時に世話になったんだ。 | |
先生のめでたい門出を、俺たちも一緒に祝わせてほしい。頼む。 | |
紅井 朱雀 | おお…!みんな緊張が解けたみてぇだぜ!さすがだな、相棒! |
黒野 玄武 | 昔取った杵柄ってやつよ。お前もしゃがんで視線を合わせてやりな。 |
紅井 朱雀 | ハハ!おまえら、よろしくな! |
黒野 玄武 | ところでパーティーの準備がまだ終わってねぇようだが… |
朱雀、ちょいと手伝ってもいいか? | |
紅井 朱雀 | ったりめぇよ!みんなでバリバリ準備しようぜぇ!! |
第3話 率先躬行 | |
男の子 | 玄武にーちゃん、わっか、つけおわったよ! |
黒野 玄武 | ありがとよ。じゃあ次は朱雀の花作りを手伝ってやってくれ。 |
番長さんも手伝わせちまってすまねぇな。助かるぜ。 | |
アイドルになったおかげで、クリスマスやらなんやら、パーティー準備も慣れたもんだ。 | |
ライブも芝居もパーティーも、みんなで作り上げていくってのはいいもんだな。 | |
ん…? | |
坊主、こんなところでどうした。一緒に飾り付けやらねぇか? | |
やんちゃそうな男の子 | ……ふんっ。 |
施設の職員 | 玄武くん、ごめんなさい。ちょっと人付き合いの苦手な子なのよ。 |
ここ最近は特に不安定で、かんしゃくを起こすこともあって… | |
黒野 玄武 | なるほどな。わかった、ちょいと気にかけておくぜ。 |
(なんとなく、他人のような気がしねぇが…注意深く見ておくか) | |
第4話 一触即発 | |
女の子 | ここのお花はピンクがいい!だってかわいいもん! |
やんちゃそうな男の子 | 青だって言ってるだろ! |
女の子 | 今までずーっとサボってたくせにうるさいなぁ!あっち行って! |
やんちゃそうな男の子 | ……このっ! |
女の子 | うわーん!なんでぶつの~! |
紅井 朱雀 | お、オイオイ何やってんだ!ダメだろ、急に叩いたりしたらよぉ! |
やんちゃそうな男の子 | うっ、うるさいうるさい!!おまえには関係ないだろ!! |
紅井 朱雀 | 関係ないって、おまえなぁ…くそっ、どうしたもんかな… |
黒野 玄武 | 朱雀、泣いてる子を先生のところまで連れてってやってくれねぇか。 |
この場は俺に任せてくれ。頼む。 | |
紅井 朱雀 | …わかった、相棒がそう言うなら任せるぜ。 |
やんちゃそうな男の子 | な、なんだよ!説教なんてきかねーからな!あいつが悪いんだ。 |
黒野 玄武 | まだ何も言ってねぇだろ。ちょっと、外の空気でも吸いに行こうぜ。 |
第5話 誠心誠意 | |
黒野 玄武 | 外の空気に当たって、少しは落ち着いたみてぇだな。 |
さて、ここは男同士、腹を割って話そうぜ。なんで急に叩いたりしたんだ。 | |
やんちゃそうな男の子 | だって…先生は青が好きなのに、みんなピンクとかオレンジばっかり… |
オレが青がいいって言っても、誰も聞いてくれなくて… | |
黒野 玄武 | 青か…そういや、昔っから青い服を着てることが多かったかもしれねぇ。 |
お前、先生のことをよく見てるんだな。 | |
やんちゃそうな男の子 | ……うん。オレ、先生のこと大好きだから。 |
黒野 玄武 | なら、どうして先生のためのパーティーの手伝いに参加しなかったんだい? |
一緒に手伝ってりゃ、先生の好きな色をみんなに教えられただろう。 | |
やんちゃそうな男の子 | …オレ、パーティーなんてやりたくないもん。 |
だって、先生がいなくなっちゃうのに、みんな楽しそうに準備してて… | |
なのに、みんな先生が好きな青いお花ぜんぜん使わないでさ! | |
黒野 玄武 | (なるほど…不安定になってる原因はこれみてぇだな) |
俺はヤンキーだからよ、自分の考えを通すためにツッパる気持ちはわかるぜ。 | |
…だが、何かを変えたいって思うなら、力づくじゃあ駄目だ。 | |
第6話 温故知新 | |
黒野 玄武 | 暴力に訴えるだけじゃ、誰も耳を貸しちゃくれねぇ。 |
大事なのは知識だ。 | |
やんちゃそうな男の子 | ちしき? |
黒野 玄武 | 先生が好きな色を言うだけじゃなく、先生はどうして青が好きなのか、 |
どんな青い飾りならみんな可愛いと思えるのか、よく考えて伝えるんだ。 | |
それが1人で難しけりゃ、みんなで一緒に考えたっていい。 | |
やんちゃそうな男の子 | でも…うまく話せるかわかんないよ… |
黒野 玄武 | 『過ちて改めざる、これを過ちという』…孔子先生のお言葉だ。 |
何度失敗しても、それを認めて次はこうしようと考えればいいのさ。 | |
大好きな先生に喜んでほしいんだろう?…頑張りな。 | |
やんちゃそうな男の子 | …わかった!オレ、もう1回みんなに話してみる。 |
黒野 玄武 | そうだな。だが、その前にちゃんと通すべき筋があるだろう? |
やんちゃそうな男の子 | …あっ、オレ、あの子にぶってごめんねってちゃんとあやまらないと…! |
黒野 玄武 | フッ、わかってりゃいいんだ。気合い入れてけよ。 |
第7話 同袍同沢 | |
その日の夕方…スケジュールの都合で玄武たちは事務所に戻ってきていた。 | |
黒野 玄武 | すっかり遅くなっちまった。朱雀は先に現場に向かったみたいだな。 |
少しばかり気になる坊主がいたもんで、つい話し込んじまった。 | |
話は聞いたよ | |
黒野 玄武 | おっと、番長さんの耳にも入ってたか。 |
男の子の様子が落ち着いたのは玄武のおかげだろうと褒めた。 | |
黒野 玄武 | よしてくれ。ああいう子どもの扱いに慣れてるってだけさ。 |
施設じゃ気持ちが不安定になるヤツも多くて、ケンカも珍しくなかった。 | |
その度に、今回みてぇにフォローに回ることもよくあることだったんだ。 | |
あの坊主には偉そうに色々と説教しちまったが… | |
俺だって、ガキの頃には荒れてたこともあるくらいだからな。 | |
今はどうなのかと尋ねる | |
黒野 玄武 | そうだな…俺1人なら、今でも荒れちまうこともあったかもしれねぇ。 |
俺の境遇から何かと言いがかりをつけるような奴もいたからよ。 | |
だが、俺はそれ以上に最高の人たちに出会うことができた。 | |
朱雀や番長さん、今度結婚する先生もそのうちの1人だ。 | |
ひとりひとりに恩義を感じてんだ。俺はもう荒れるようなことはねぇ。 | |
まずは明日の門出のパーティー、必ず成功させてやるぜ! | |
第8話 天玄氷刃波! | |
黒野 玄武 | お前ら盛り上がってるか!ここからは俺たち神速一魂のライブだ!! |
紅井 朱雀 | 怪我しねぇ程度に飛んだり跳ねたり、声出してこうぜッ!バーニンッ!! |
黒野 玄武 | (フッ…青い花でいっぱいじゃねぇか。やったな、坊主) |
先生、ご結婚おめでとうございます。こうして俺らも祝えて嬉しいぜ。 | |
昔は困らせちまうこともあったと思うが、見守っててくれてありがとよ。 | |
これからは偕老同穴、末永く幸せな家庭を築いてくれ。 | |
輝かしい門出を祝って、俺たちから歌のプレゼントだ。受け取ってくれ! | |
紅井 朱雀 | テメェら最高だーッ!もっと熱くいこうぜッ!! |
黒野 玄武 | ははっ、最高のライブじゃねぇか! |
先生方、それからお前らがより良い未来を切り開いていけるように… | |
願いを込めた必殺技を披露するぜ。しかと胸に刻めよ! | |
喰らえ、天玄氷刃波!! | |
第9話 報本反始 | |
パーティーから数日後… | |
黒野 玄武 | 番長さん。改めて先日のパーティーへの参加、快諾してくれてありがとうよ。 |
幸せな門出を祝えたのは番長さんのおかげだぜ。 | |
ん…これは? | |
事務所に届いた一通の手紙を渡した。 | |
黒野 玄武 | 先生からの手紙か。写真も入ってるな…フッ、幸せそうな花嫁姿だ。 |
(『あの子を気遣ってくれてありがとう』…か) | |
(フッ、俺はあんたのしてくれたことを返したまでだ) | |
(『ヤンキーになったという話を聞いて、最初は心配もしていましたが』) | |
(『この機会に、アイドルとして成長した姿を見られて嬉しかったです』) | |
(『玄武くんなら必ず夢を叶えられるでしょう。応援しています』) | |
…… | |
先生には世話になってずっと感謝していたが… | |
俺が思っていた以上に、あの人は俺のことを案じてくれてたんだな。 | |
最終話 氷刃の玄武 | |
黒野 玄武 | 今回、門出となるパーティーに参加できたことで、 |
懐かしい人や思い出を振り返る機会が多くあった。 | |
自分が今ここに立っているのは当然のことじゃない。 | |
多くに人の応援や助けがあってのことだと再確認した。 | |
そのステージに相棒と立てたことにも大きな意味があるんだろうさ。 | |
番長さん。ちょいと大きな声を出させてもらうぜ…すぅー… | |
宣誓!氷刃の玄武こと、黒野玄武は! | |
相棒と番長さんと共に、神速一魂でアイドルの頂点を獲ると誓うぜ! | |
突然すまねぇな。これは儀式みてぇなもんだから、気にしないで… | |
神速一魂をトップに連れていくと誓う! | |
黒野 玄武 | …ははっ、こいつは驚いた。やっぱり、番長さんには適わねぇな。 |
番長さんからの宣誓、しかと受け取らせてもらったぜ。 | |
この先、たとえ何があろうと番長さんの背中についていく。 | |
共に頂点をつかみ取ろうぜ! |
Cafe Parade
神谷 幸広
第1話 冒険ショッピング | |
---|---|
神谷 幸広 | …石鹸と、洗剤と…ゴミ袋に、トイレットペーパー… |
…よし、これで全部だ。 | |
プロデューサーさん。仕事の後なのに、買い物につきあわせてすまないね。 | |
大変な冒険だった | |
神谷 幸広 | あ、あはは…予定より大幅に時間がかかってしまったね。 |
どうも、たまにしか買わないものはどこに売っているか忘れがちで… | |
プロデューサーさんが道案内してくれて、本当に助かったよ。ありがとう。 | |
Cafe Paradeに戻ったら、お礼にとっておきの紅茶を… | |
??? | …ひっく…ううう… |
神谷 幸広 | …おや、この声は…? |
第2話 宝物 | |
ベンチで泣いている子どもがいる | |
神谷 幸広 | ……うん、あの子だ。行こう。 |
神谷 幸広 | やあ、こんにちは。こんなところで… |
…ん? | |
君の持っている箱…素敵な鳥の羽でいっぱいだね。 | |
こっちはカラス、こっちはスズメかな?全部、君が集めたのかい? | |
男の子 | ……うん。 |
でも、家に置いてちゃダメだって言われて…… | |
神谷 幸広 | ……そうか。それで困っていたんだね。 |
……よければ俺に、もっと見せてもらってもいいかな? | |
わっ…鳥の羽って意外と大きいんだなぁ。これなんか、色も鮮やかで… | |
男の子 | ……! |
それ、ボクの1番のお気に入りだよ! | |
光に照らすと別の色に見えるんだ! | |
ほら、こうやって…… | |
神谷 幸広 | 本当だ…!凄いなぁ、まるで宝石みたいだ。 |
男の子 | ……! |
男の子は、キラキラした目で神谷を見ている。 | |
第3話 やさしい交流 | |
テレビ番組のAD | …失礼しましたー! |
テレビ番組のAD | …ねえねえ。神谷さんのアレ、気づきました? |
スタイリスト | みたみた! |
…結構目立つと思うけど…アレ、付けたまま家に帰るのかなぁ? | |
神谷 幸広 | プロデューサーさん、今日もお疲れ様。帰り支度はすんでるよ。 |
神谷の頭に、大きな羽飾りがついている。 | |
神谷 幸広 | ん? |
…ああ、これかい?この前の男の子がくれたんだ。 | |
俺の家で、彼の宝物を預かることになったから。そのお礼にってね。 | |
…コホン。ちなみにこれは、オナガという鳥の羽らしい。 | |
カラスの仲間で、大きさは大体35cm位で… | |
って、あの子に教えてもらったよ。 | |
すっかり仲良しだね | |
神谷 幸広 | はは、すっかりね……どうしてか、彼とは気が合うんだ。 |
第4話 君とおもてなしを | |
神谷に誘われ、プロデューサーと男の子はCafe Paradeに向かっていた。 | |
神谷 幸広 | ……ご両親が来る? |
男の子 | うん!2人がね、幸広おにいちゃんにゴアイサツしたい、って。 |
神谷 幸広 | そうか、それは楽しみだ!腕を奮っておもてなしするよ。 |
男の子 | ……?……オモテナシ? |
神谷 幸広 | ああ。かかった人みんなが笑顔になれる、素敵な魔法みたいなものさ。 |
…使い方を知りたいかい? | |
男の子 | 魔法… |
…うん!ボクにも教えて! | |
神谷 幸広 | 魔法を使うには、まず…2人の好きなものが、たくさん必要なんだ。 |
特に、好きな食べ物や飲み物。ハラペコだと、悲しい気持ちになるからね。 | |
それから、もっと大切なのは…2人のことが大好きだって気持ちだよ。 | |
……君にも使えそうかな? | |
男の子 | うんっ!それならボクにもできるよ! |
だってボク、2人の好きなもの、いーっぱい知ってるもん! | |
第5話 穏やかならぬ訪問者 | |
母親 | 今日はいきなり押しかけて、すみません。 |
神谷 幸広 | いいえ、こちらこそ。ご挨拶が遅くなりました。 |
Cafe Paradeのオーナー、神谷幸広です。 | |
今日はみなさまに、笑顔でいっぱいの時間をお届けいたします。 | |
母親 | は、はあ…… |
男の子 | えへへ…おにいちゃんのお話、すっごく楽しいんだよ! |
この前もね。ボクの宝物を、おにいちゃんと一緒に…… | |
母親 | ……宝物?それって……あの日、捨ててきたはずの? |
男の子 | あっ……! |
え、えっと…… | |
第6話 届かぬ声 | |
母親 | …ねえ。お母さん、何度も言ったでしょう。 |
変な趣味は止めなさいって。止めないと、大人になった時に…… | |
アスラン=BBⅡ世 | アーッハッハッハ!地獄の扉は開かれた!猛りし獣よ、炎獄に… |
むぐぐぐ… | |
東雲 荘一郎 | アスランさん、お静かに…! |
母親 | ……あの、今のは……? |
神谷 幸広 | ああ、当カフェ自慢のシェフ・アスランによる、気合いの一声ですよ。 |
父親 | ……神谷さんは、店長だけでなく、アイドルもなさっているのだとか。 |
貴方のような芸能人が、息子と仲良くして下さるのは嬉しいのですが… | |
…今後は息子との付き合いを、控えて頂きたいのです。 | |
息子が影響されて、そういった世界を目指し始めでもしたら、その… | |
神谷 幸広 | ………… |
第7話 一番に想う人 | |
神谷 幸広 | …アイドルが変わった職業であることを、否定するつもりはありません。 |
ですが、人には味方がいないと… | |
どんな人生を選んだって、幸せにはなれない。俺はそう思います。 | |
2人 | …… |
神谷 幸広 | そして、彼の味方にふさわしいのは…お2人の言う通り、俺じゃない。 |
彼の幸せを1番に願える人が、そうあるべきです。 | |
……なんて、すみません。若造からの、余計なお節介です。 | |
……そうだ。難しい話は休憩にして、食事にしませんか? | |
俺の仲間がみなさんをもてなそうと、さっきからワクワクしているんですよ。 | |
ほら。厨房から、いい匂いがしてきませんか? | |
第8話 温かなパレード | |
卯月 巻緒 | いらっしゃいませ!Cafe Paradeのフルコース、楽しんでいってくださいね! |
水嶋 咲 | お飲み物をどうぞ♪本日限定のブレンドティーです! |
アスラン=BBⅡ世 | 幸福の欠片を集めし子羊とその血族よ。我が精製せし糧を味わうがいい! |
東雲 荘一郎 | デザートはいかがですか?紅茶のおかわりもありますよ。 |
母親 | …美味しい。 |
それに、さっきから私たちの好物ばかり… | |
東雲 荘一郎 | ええ。すべて彼が教えてくれたんですよ。 |
卯月 巻緒 | お2人の好きな食べ物や、好きな飲み物。それに、苦手なものも! |
水嶋 咲 | それに、料理以外のことも! |
神谷 幸広 | お2人のことを嬉しそうに、たくさん話してくれましたよ。 |
第9話 これからも幸せを | |
男の子 | 今日も遊んでくれてありがとう、幸広おにいちゃん! |
神谷 幸広 | ははっ、こちらこそ! |
……そうだ。これを君に返さないと。 | |
男の子 | ……!でも、それは…えっと。 |
母親 | …ごめんね。 |
父親 | お父さんたち、もう怒ったりしないから。 |
男の子 | ……! |
神谷 幸広 | …本日はご来店、ありがとうございました。 |
そして…よければまた、俺たちに会いに来てください。 | |
Cafe Paradeはいつだって、みなさんに幸せと笑顔をお届けいたします。 | |
そのために… | |
扉は、いつでも開けていますから。 | |
最終話 夢の場所 | |
神谷 幸広 | ……いつでも笑顔をお届けします、か。 |
Cafe Paradeは、俺の夢がつまった場所なんだ。 | |
ここにくれば、どんな人でも幸せになれる。自分らしくいられる… | |
そんな夢の場所を、今回も、仲間のおかげで守れたみたいだよ。 | |
神谷は片付けで賑やかな厨房を見つめた。 | |
神谷 幸広 | 東雲にアスラン、巻緒に咲… |
そして、プロデューサーさん。 | |
…これからも、俺の夢に付き合ってくれるかな。 | |
もちろん! | |
神谷 幸広 | …ありがとう。その言葉があれば、明日からも頑張れそう… |
だが… | |
…今日はもう体力切れだ!久しぶりに緊張したみたいで、体がカチコチだよ。 | |
本当にお疲れさま | |
神谷 幸広 | あはは、ありがとう。まあ、美味しい紅茶でも飲めばすぐに回復するよ。 |
なんせCafe Paradeは、「世界中の幸せ」を目指しているんだからね。 | |
立ち止まってはいられない。最高に忙しくて…最高の人生だ。 |
東雲 荘一郎
第1話 新米パティシエ物語 | |
---|---|
東雲 荘一郎 | 新しいドラマの主役のオファー?私に、ですか。 |
ドラマの資料を渡した。 | |
東雲 荘一郎 | ありがとうございます。早速見せて頂きますね。 |
…おや、パティシエの役ですか。なるほど、だから私に声がかかったのですね。 | |
この物語の主人公は、上京したての新米パティシエ、甘原鉄郎。 | |
ひょんなことからウェディングケーキを作ることになって大騒ぎ… | |
面白い内容だとは思いますが。パティシエ役ですか…ふむ… | |
何か心配することがある? | |
東雲 荘一郎 | …いえ。少し緊張はしていますが… |
数ある候補の中から声をかけて頂いたんです。お引き受けいたします。 | |
第2話 私の性分 | |
甘原 鉄郎 | 『ああ、どうしよう。勢いでウェディングケーキ作りを引き受けてしまった!』 |
『断ったほうが…いやいや、依頼主は大企業の御曹司!』 | |
『事故に遭った師匠のためにも、成功させないと…緊張で気分が…』 | |
先輩パティシエ | 『そんな調子でどうする。受けた以上は責任を持て、それがプロだ!』 |
『逃げてばかりじゃ、いつまでも一人前になれない。わかったか、鉄郎!』 | |
東雲 荘一郎 | お疲れさまです。生クリームの絞り方、うまくなりましたね。さすがです。 |
俳優A | 東雲くんのおかげだよ。役を演じている時とはまるで別人だね。 |
俳優B | 菓子作りのアドバイス、僕たちもすごく助かってるよ。ありがとう! |
東雲 荘一郎 | いえ。どうせなら、みなさんで美味しく作れたほうが楽しいですからね。 |
東雲に、ちゃんと休憩できているかを尋ねた。 | |
東雲 荘一郎 | ええ、問題ありません。世話焼きは私の性分で、つい…おや。 |
携帯に着信が…電話、出てきますね。 | |
第3話 1本の電話 | |
東雲 荘一郎 | …ただいま戻りました。すみません、話の途中で出ていってしまい… |
東雲に、何かあったのかを尋ねた。 | |
東雲 荘一郎 | いえ…特に何も。おっと、撮影が始まるようですね。行ってきます。 |
ドラマの監督 | …東雲くん、どうした?さっきと違って演技がチグハグのようだが… |
少し顔色が悪いな…うーん、今日の撮影はここまでにしようか。 | |
今日はゆっくり休んでくれ。次の撮影は期待してるよ! | |
東雲 荘一郎 | …すみません。私のせいで、撮影を止める形になってしまいました。 |
「315プロダクションのアイドルは、1人1人が主役」… | |
フラメンコに挑戦した折に、プロデューサーさんから言われたことでしたが… | |
主役になろうという気持ちはあるものの、うまくいかないものですね。 | |
さっきの電話が原因? | |
東雲 荘一郎 | …恐らく、そうでしょう。先ほどの電話は、実家で修行中の弟からでした。 |
第4話 葛藤とためらい | |
東雲 荘一郎 | …プロデューサーさんに兄弟の話をするのは、初めてかもしれませんね。 |
私には弟がいまして。彼は今、実家の和菓子屋を継ぐ修行をしています。 | |
本来は長男として私が継ぐべきなのですが…私はあんこが克服できず… | |
家業のことはすべて、弟に任せることになってしまったのです。 | |
「和菓子屋は自分が継ぐから、実家には帰ってこないでくださいよ!」 | |
電話の向こうで、弟は冗談交じりにそう言っていましたが… | |
どうやら、かなり修行に行き詰っている様子でした。 | |
この役のオファーを受けた時、私が少し悩んでいたことを覚えていますか? | |
私と違い、弟は家業を継ぐことに対して前向きではありますが… | |
…正直、私の都合で弟の道を決定付けたことには負い目を感じています。 | |
なので、役とはいえパティシエとしての仕事ぶりを、テレビで披露することに… | |
実は少しだけ、ためらいを覚えていたのです。 | |
ならどうして、この役のオファーを受けたか…?もっともな疑問ですね。 | |
あまり褒められたことではないかもしれませんが、聞いてもらえますか? | |
第5話 伝えたかったこと | |
東雲 荘一郎 | 『主役の新人パティシエは、職人として次の一歩を踏み出せないでいる』… |
資料の中にある役の設定を読んだ時、弟のことが頭をよぎりました。 | |
このドラマの主役と重なる部分があるのではないか、と… | |
今の私には弟を励ます以上のことはできません。ですが… | |
弟と通じる役を演じることで、何か伝えられるのではと思ったんです。 | |
しかし…電話に出てから調子がよくありません。もしかすると… | |
無意識に、演技の上でも弟への負い目が出ているのかもしれませんね。 | |
彼に何を伝えたい? | |
東雲 荘一郎 | …諦めずに継続すれば、道はいつか開ける…そう伝えたいです。 |
これは私自身が、かつて通ってきた道ですから。 | |
私が本格的にパティシエとしての勉強を始めたのは高校卒業後… | |
それは、決して楽な道ではありませんでした。 | |
学生時代から、すでに洋菓子作りには没頭していましたが… | |
ただ好きなように作るだけでは、職人は務まりませんからね。 | |
第6話 夢を目指して | |
東雲 荘一郎 | 店に出しても恥ずかしくないような洋菓子を作れるようになるために… |
失敗を繰り返し、ひとつひとつ技術を積み重ねていきました。 | |
結果が出ずに焦る気持ちは、職人を志す者なら誰しもがぶつかる壁。 | |
兄として、分野は違えど職人の先達として… | |
壁にぶつかろうと、乗り越えた先には必ず道があると伝えたいのです。 | |
ですが…私はあんこを克服できず、家業から逃げた身。 | |
洋菓子作りの追求も、罪悪感を誤魔化すためという側面がありました。 | |
そんな私の言葉に、説得力があるのか。弟に響くのか…? | |
…そういった疑問が、私の中にあるのだと思います。 | |
東雲さんも夢のために頑張ってる | |
東雲 荘一郎 | 夢…私の夢は、世界一おいしい洋菓子を生み出すことです。 |
そのためにCafe Paradeの一員として尽力してきましたが… | |
…ああ、確かに。今の私は、家業から逃げ出した時の私とは違います。 | |
夢に向かって突き進み、成長してきた姿は、弟にも響くかもしれない。 | |
負い目を感じるのではなく、夢を追いかける仲間として役を演じる… | |
そうすれば、それがエールとなり、この想いも伝わるかもしれません。 | |
プロデューサーさんの言葉で、道が開けた気がします…おおきに。 | |
第7話 夢を追いかけて | |
東雲 荘一郎 | 撮影再開ですね…先日のような失態、二度とさらしません。 |
初心を振り返り、全力で演じてみせましょう。 | |
甘原 鉄郎 | 『ダメだ。理想のウェディングケーキにはほど遠い…時間がないってのに…!』 |
先輩パティシエ | 『なあ、鉄郎…こんな提案は、俺もしたくはなかったが…』 |
『今ならまだ間に合う。依頼人に謝って、他の職人を紹介するんだ』 | |
『これまでの努力は、全部無駄になっちまうがな…』 | |
甘原 鉄郎 | 『無駄……無駄なことなんてあらへん。やってきたこと全部が宝物や!』 |
『先輩、頼んます。もう少しだけ、挑戦させてください!!』 | |
先輩パティシエ | 『…お前の覚悟はわかった。ここまで来たら、最後まで力になろう!』 |
ドラマの監督 | お疲れさま、東雲くん。さっきの演技、とてもよかったよ! |
東雲 荘一郎 | (…「無駄」と言われた瞬間、自分の過去や、弟の現状が思い浮かんで…) |
すみません。セリフに感情が入りすぎてしまいました。リテイクをすべきかと。 | |
ドラマの監督 | いいや、むしろあれでよかった。君は、もっと自分の色を出すべきだよ! |
東雲 荘一郎 | 私の色…それなら…私のような若輩が言うのも、どうかと思いますが… |
監督さん。ラストシーンについて、1つ提案があります。少しお時間をください。 | |
第8話 積み重ねた想い | |
東雲 荘一郎 | 実は、結婚式に出されるウェディングケーキの種類を変えたいのです。 |
そして…できることなら、私自身の手で作りたいと思っています。 | |
演じているうちに、甘原鉄郎の作るケーキのビジョンが浮かんできたのです。 | |
ドラマの監督 | おお。面白い。もちろん、好きなようにやってくれ。期待しているぞ! |
東雲 荘一郎 | ありがとうございます…必ず、いいものにしてみせます。 |
先輩パティシエ | 『…新郎も新婦も、お前の作ったケーキに大喜びだったな』 |
『一時はどうなるかと思って肝が冷えたけどよ。そういえば…』 | |
『どうしてこのケーキにしようと決めたのか、聞いてなかったな?』 | |
甘原 鉄郎 | 『…僕はまだ半人前で、師匠や先輩の真似しかできていません』 |
『それでもいつか、僕にしか作れないようなスイーツを作りたい』 | |
『そのために、たくさんの努力を積み重ねてきました』 | |
『依頼人ご夫婦も、これから先、色々な困難があると思うけど…』 | |
『理想を諦めず、一歩ずつ進み続けてほしい』 | |
『そうすれば、いつか輝く未来にたどり着ける。そんな願いを込めて…』 | |
小さなシュークリームを積み重ねて作る、クロカンブッシュを選びました』 | |
先輩パティシエ | 『はは…なるほど。あれは、今のお前にしか作れないものってことだな』 |
『まったく…最高のウェディングケーキだったよ!』 | |
第9話 込められたメッセージ | |
ドラマの監督 | お疲れさま、東雲くん。最後のアドリブ、実によかったよ! |
俳優A | 僕も東雲くんの演技に乗せられてしまったよ。良いドラマになりそうだ! |
東雲 荘一郎 | こちらこそ、ウェディングケーキを作らせていただき、ありがとうございます。 |
飴をかけたシュークリームを積み上げていく、シンプルなようで繊細な作業… | |
真面目な鉄郎が作るなら、こういうケーキだろうなと考えていました。 | |
東雲 荘一郎 | お疲れさまです、プロデューサーさん。我ながら良い演技ができたと思います。 |
エールはきっと伝わるはず | |
東雲 荘一郎 | ふふ、バレていましたか…アドリブ部分には弟へのメッセージを含ませました。 |
1つ1つシュークリームを積み重ねて作り上げるクロカンブッシュという選択も… | |
諦めずに継続することで道はいつか開けることを伝えられれば、と。 | |
プロデューサーさんと話したおかげで、力を抜いて演じられました。 | |
先日は私の昔話にお付き合いくださり、ありがとうございました。 | |
今から、放送が楽しみです…それに、弟の反応も。さて… | |
撮影も終わりました。クロカンブッシュを取り分け、みなさんで食べましょう。 | |
最終話 甘い夢を抱いて | |
水嶋 咲 | あ、プロデューサー!じゃじゃーん、芋ようかん!プロデューサーの分もあるよ! |
神谷 幸広 | 東雲の弟さんが送ってきてくれたんだ。さ、俺の紅茶と一緒にどうぞ。 |
東雲 荘一郎 | ふふ。私に気を使って、あんこを使わない和菓子を作ってくれたようで… |
パティシエのドラマを見たと、同封されていた手紙に書いてありました。 | |
和菓子の修行も、もう少し頑張ってみると… | |
プロデューサーさん。心に残る、素敵なお仕事をありがとうございました。 | |
卯月 巻緒 | もぐもぐ…荘一郎さん、ドラマでは大活躍でしたね!見ててワクワクしました! |
アスラン=BBⅡ世 | うむ!妖菓子の魔術を究めんとする姿、実に見事であった! |
東雲 荘一郎 | よしてください…主役に立ったり、前に出ていくことはまだ慣れません。 |
ですが、これからも誰かを支えるだけでなく… | |
自分自身、胸を張って前へ出ようと思っています。 | |
応援しているよ | |
東雲 荘一郎 | ふふ、ありがとうございます。私もプロデューサーさんをサポートしますので… |
私のこと、これからもよろしくお願いいたします。 |
アスラン=BBⅡ世
第1話 新奇試練のアペチリフ | |
---|---|
とあるバラエティ番組で、アスランが料理を教える1コーナーの担当になったが… | |
アスラン=BBⅡ世 | …ここで…我のまじゅ…魔術で糧の精製を早め…ブツブツ… |
アスランは楽屋で何度も台本を読み返しているようだ。 | |
緊張していますか? | |
アスラン=BBⅡ世 | っ!主!断じて否、闇の一族である我が緊張などするはずが… |
…いや、此度はカメラ…否、幻影機を通して… | |
我が精製術を混沌世界へ広く伝える、そういった試練だ。 | |
供物の精製術は我が得意とするところ。しかし、此度の試練は我1人… | |
はたして同胞団なくして、この試練を完遂できるか…その不安は残る… | |
いつも通り自信をもってやれば大丈夫だと伝えた。 | |
アスラン=BBⅡ世 | いつも通り…か。うむ。我の深淵なる呼吸法を用いて… |
…よし。主、助言に感謝するぞ! | |
第2話 暗黒一族のメランコリー | |
卯月 巻緒 | おはようございます!…ってあれ?アスランさん、早いですね。 |
アスラン=BBⅡ世 | む…マキオとソーイチローか。 |
東雲 荘一郎 | どうかしたんですか?ずいぶん難しい顔をされたいたようですが。 |
アスラン=BBⅡ世 | 実は…ゲヘナに伝わりし言語を光の民へ伝える術を考えていたのだ。 |
卯月 巻緒 | ゲヘナの言葉をですか? |
アスラン=BBⅡ世 | うむ。先日の試練にて我が精製術を伝えたのだが… |
卯月 巻緒 | あの料理コーナー、俺たちのファン以外にもすごく好評みたいですよね! |
東雲 荘一郎 | …なるほど。アスランさんの言葉に馴染みがない人もその番組を見ている… |
そういうことでしょうか? | |
アスラン=BBⅡ世 | 然り!供物の精製術を授けるという試練である以上、 |
より多くの飢えた子羊に、我が精製術を伝授したいのだが… | |
卯月 巻緒 | そういうことだったんですね。何かできることを考えてみましょう! |
東雲 荘一郎 | はい。私たちで良ければ力になりますよ。 |
アスラン=BBⅡ世 | マキオ、ソーイチロー…!感謝する! |
第3話 叡智結実のファルシ | |
翌日、アスランはメンバーたちに相談を持ち掛けていた。 | |
水嶋 咲 | そうだな~…アスランの手先専用カメラを用意するのはどう? |
神谷 幸広 | なるほど…手順が分かれば一緒に料理が作れるか。 |
料理の工程をゆっくり見せて、初心者にわかりやすくしてもいいな。 | |
アスラン=BBⅡ世 | ふむふむ…幻影機に捉えられやすいよう…精製術をゆっくりと… |
ゲヘナ語の翻訳字幕も用意しました | |
水嶋 咲 | これだけ準備すれば完璧!あたしまで次の収録が楽しみになってきた! |
アスラン=BBⅡ世 | 数々の助言を授けてくれた我が同胞団たち、それに主よ…感謝する! |
次なる試練は完全なる精製術を披露してみせよう! | |
第4話 堕天使へのブラスフェミー | |
その後、アスランのお料理コーナーの評判は更に良くなっていったーー | |
アスラン=BBⅡ世 | 『真似したくなる料理だった』『親子で一緒に作った』… |
我が名を記せし密書に、此度の試練への称賛の言葉が増えてきた。 | |
他にも我が術を模倣して糧を精製した…闇の糧の虜になった、と… | |
今宵の試練もまた、多くの民を我が精製術で魅了してみせよう! | |
??? | おや、アスランさんじゃないですか。あの料理コーナー、見させてもらいましたよ。 |
アスラン=BBⅡ世 | む?汝は… |
最近メディアで話題になっている天才若手料理人であることを伝えた。 | |
天才若手料理人 | 暗黒シェフ、アスラン=ベルゼビュートⅡ世がどう料理するかと思えば…ガッカリだ。 |
その肩の…えっと、サタンでしたっけ?何かある度にそいつに話しかけて… | |
アスラン=BBⅡ世 | 然り。我は堕天使サtンの忠実なるシモベ。我が運命はサタンと共にあるのだ! |
天才若手料理人 | フッ…料理人は、厨房で孤独を貫いてこそ舌が研ぎ澄まされるものです。 |
1人で厨房に立てない脆弱な貴方の味なんて、たかが知れていますね。 | |
大体、そのサタンが何の役に立つんです?味見をしてくれるわけでもなし… | |
アスラン=BBⅡ世 | むぅ…我のことはともかく、サタンを愚弄するとは聞き捨てならんな。 |
番組ディレクター | そこの2人、面白そうな話してるね!なら、特番で対決企画なんてどう? |
天才若手料理人 | へぇ、面白そうじゃないですか。僕は構いませんよ。貴方はどうです? |
アスラン=BBⅡ世 | …よかろう。その勝負、受けて立つ! |
その後、双方の所属事務所の了解もあり、対決企画が正式に決定したー! | |
第5話 暗黒従者のソリチュード | |
数日後…特番に向けた打ち合わせのためにテレビ局に来ていた。 | |
番組スタッフ | それではこちらで、サタンさんお預かりします! |
アスラン=BBⅡ世 | う、うむ…サタンを模した舞台装置の設計のため…だったな。 |
……う、うう… | |
サタンなら大丈夫ですよ | |
アスラン=BBⅡ世 | は…う、うむ。スタッフさんのことは信頼しているのですが… |
で、でも…これでは、あの料理人のいう通りだ… | |
サタンがいなければ、何もできない。僕は、弱い人間です… | |
そんなことありません | |
アスラン=BBⅡ世 | …えっ? |
アスランさんにしか出せない強みがある、と力強く伝えた。 | |
アスラン=BBⅡ世 | プロデューサーさん…ありがとうございます。 |
いつも…ぼ、僕のことを、ちゃんと見てくれて…嬉しいです。 | |
番組スタッフ | お待たせしました!サタンさん、お返ししますね!ありがとうございました! |
アスラン=BBⅡ世 | お…おお…!!サタンよ!偉大なる堕天使よ!よくぞ帰還した! |
サタンの大いなる力で、素晴らしい舞台装置が創造されるであろう…! | |
…我が弱気でいれば、アタンの力も侮られることだろうな。 | |
子旅の決戦、堕天使の名にかけて必ずや勝利して見せよう!アーッハッハッハッハ! | |
第6話 狂乱馳走のコンフリクト | |
いよいよ料理対決特番の撮影が始まった。 | |
天才若手料理人 | 熟成させて旨味を凝縮した霜降り肉を、素早く筋取をして… |
アスラン=BBⅡ世 | 井でよ、大鍋!地獄の業火に焼かれるが良い! |
我の魔術をすり込んだ猛りし獣の肉を業火に焼かれし大鍋で踊らせ… | |
天才若手料理人 | へぇ~、アスランさんのメニューはビーフシチューですか。 |
アスラン=BBⅡ世 | 我が精製しているのは黒き糧。強力な魔術を秘めている。 |
天才若手料理人 | 魔術って…えっと、そのスパイスのことですか? |
アスラン=BBⅡ世 | 然り、これは我が魔術を込めて混沌の欠片を混ぜ合わせたものだ。 |
天才若手料理人 | …よくわかりませんけど、僕のステーキプレートには及びませんよ。 |
番組は終盤。2人の料理を食べ終えた審査員が各々票を投じ終えた。 | |
番組司会者 | この料理対決を制したのは…………アスラン=ベルゼビュートⅡ世さん!! |
アスラン=BBⅡ世 | …!! |
審査員 | どちらも甲乙つけがたい出来でした。しかし、このビーフシチューは… |
食材1つ1つに丁寧な下処理が施されており、食べる人に対して、 | |
『食』を楽しんでほしいという気持ちがより強く伝わって来ました。 | |
第7話 精製術者プライド | |
アスラン=BBⅡ世 | サタン、やったぞ!子旅の決戦、我らの力が認められたのだ! |
む、汝は… | |
天才若手料理人 | アスランさんが作ったビーフシチュー、いただきました。 |
…正直、自分の視野の狭さを思い知った気分です。完敗です。 | |
貴方は聞いていた噂通りの…いや、噂以上の天才だ。 | |
アスラン=BBⅡ世 | …我は決して天才などではない。それに、本来料理に勝ち負けなどない。 |
しかし…術はかける相手がいてこそ作用するものだと我は考えている。 | |
天才若手料理人 | 術…確かに、食べてくれる人がいないと、料理は成り立たないですね。 |
アスラン=BBⅡ世 | うむ。精製術は術者1人では成立しないのだ。 |
天才若手料理人 | そうですね…そうだ、サタンさんのことも。バカにしてすみませんでした。 |
アスラン=BBⅡ世 | 案ずるな。サタンの偉大さはあれしきのことで揺らぐことはない。 |
それより、我らは再び相まみえることもあるだろう。その時は… | |
天才若手料理人 | はい。次こそ負けませんよ!またよろしくお願いします。 |
アスラン=BBⅡ世 | うむ! |
第8話 安息追憶のアプランティ | |
料理対決特番の後、アスランの出演する料理コーナーは好評のうちに幕を閉じた。 | |
アスラン=BBⅡ世 | あの若き魔術師との決戦に勝利することができたのも、 |
ひとえにサタンの強大な力の一端であろう!さすがはサタンだ! | |
サタンは本当に大切な存在なんですね | |
アスラン=BBⅡ世 | 当然だ!サタンとはこれまで悠久の時を共に過ごしてきたのだからな。 |
サタンとの邂逅は今もよく覚えている…あれは、我が幼少の頃だった。 | |
一族が留守にしがちな棲家では、我自ら糧を買いに出ることも多かった。 | |
そんなある日、蟲惑的な香りに惹かれて入った場所が…『サバト』だった。 | |
そこで、サタンは多くの傀儡たちを従えるようにして鎮座していたのだ。 | |
幼き我は一目見て、サタンと我の間には浅からぬ縁があると感じ取った! | |
ここに来ればまたサタンに会える…師に言われるがまま、 | |
我はサバトへと通うようになったのだ。 | |
やがて師の勧めで精製術の鍛錬を始めた我はサタンを借り…仮契約を結び、 | |
それからはずっと、我の人生はサタンと共にあるのだ。 | |
第9話 運命共同のフォーリンエンジェル | |
サバト店主 | では、本日をもって…汝をサタンの真の契約者であると認めよう! |
若かりしアスラン=BBⅡ世 | お、おお…!師よ、本当に、本当に良いのですか!? |
サバト店主 | タロウよ、サタンのシモベとして恥じぬよう、異郷の地でも鍛錬に励むのだぞ。 |
若かりしアスラン=BBⅡ世 | はい…!必ずや、師の立つ高みへと近付けるよう術を極めてまいります!! |
サバト店主 | 汝に秘められし力はいずれ世界を震撼させる…その時を待っているぞ! |
アスラン=BBⅡ世 | はっ…今のは、夢…あれは師の勧めもあり異国の地へ旅立つ前の… |
(サバトから離れて異国の地での鍛錬に励み…成果はあれど理解者は現れず…) | |
(この地へ戻ってきた時には、サバトはもう…) | |
(あの時カミヤに招き入れられてなければ、今頃我はどうしていただろう) | |
フ…我ながら、なんとも数奇な運命よ。 | |
(苦難の道を歩む時、我の傍らにはいつもサタンがついていてくれた) | |
(それに今は、闇の同胞団たちに、主もいる…) | |
サタンよ、我の案を聞いてくれるか?実は… | |
最終話 夢想が如きアルカディア | |
卯月 巻緒 | この真っ黒な招待状…いったい何が始まるんでしょう。 |
神谷 幸広 | 差出人はアスランのようだが…プロデューサーさんも何も聞いてないんだよね。 |
水嶋 咲 | アスラン、何をする気なのかな?なんだかこういうの、パピワクしちゃうかも♪ |
東雲 荘一郎 | おや…厨房からいい香りが… |
アスラン=BBⅡ世 | アーッハッハッハ!主よ、そして我が闇の同胞団よ、よくぞ集まった! |
これより、堕天使サタンによる暗黒感謝祭を執り行う!! | |
此度は日頃世話になっている同胞たちに感謝を込めて… | |
我が腕を振るった至上の糧で返礼させてもらおう!! | |
神谷 幸広 | はは、そういうことか。突然の招待だったから驚いたよ。 |
水嶋 咲 | それに『日頃の感謝』なんてお互い様なのにね。 |
東雲 荘一郎 | ええ。でもアスラんさんが1人でおもてなししてくれるなんて珍しいですね。 |
卯月 巻緒 | そうですね。どんなおもてなしになるのか、今から楽しみです。 |
アスラン=BBⅡ世 | …汝らは闇の一族である我を恐れず、快く迎え入れてくれた。 |
我が強大な力を封印せずとも、同胞として接してくれて…ありがとう。 | |
ッゴホン!サタンより神託が…何、これ以上同胞たちを待たせるなと!? | |
では、今すぐにオードブル…闇の開闢を持ってこなくてはな! | |
我が渾身のフルコースで汝らを心酔させてみせよう!アーッハッハッハッハ!! |
卯月 巻緒
第1話 全てはケーキのために | |
---|---|
卯月 巻緒 | 俺にバラエティ番組出演のオファーですか?…あっ、その番組知ってます! |
デートコースを考えて、実際に女性タレントの方とお出かけをして、 | |
カッコいいデートができていたか、スタジオで評価してもらうってやつですよね。 | |
デートに行く場所やシチュエーションも、全部自分で決められる… | |
ってことは…!これって、ケーキの魅力をアピールするチャンスですよね!? | |
プロデューサーさん、その仕事、是非やらせてください! | |
ケーキの魅力を最大限に活かせるような、理想のデートにしてみせます! | |
手伝うことがあれば協力する | |
卯月 巻緒 | ありがとうございます、一緒に素敵なコースを考えましょう。 |
ケーキたちのためにも、全力で頑張りますっ! | |
第2話 プランはよく練り混ぜて | |
卯月 巻緒 | お疲れさまでした、プロデューサーさん。 |
俺の考えてきた理想のデートコースを実際に回ってみましたけど… | |
プロデューサーさん的にはどうでした?ご意見ご感想、よろしくお願いします! | |
卯月 巻緒 | …うーん、そうですか。確かに5店舗は多かったかもしれませんね。 |
これでもだいぶ絞ったつもりだったんですが、わかりました。 | |
立ち寄るお店の数を減らして、一緒に歩く時間を増やす…と。 | |
プロデューサーさん、何を驚いてるんですか?…俺のメモ帳?ああ! | |
どんなデートコースがいいか考えてたら、文字でビッシリになっちゃいました。 | |
番組を盛り上げたい、ケーキの魅力を知ってほしいというのも当然ですが… | |
せっかく2人で行くなら、相手に楽しんでほしいですからね。 | |
プロデューサーさんの意見を取り入れて、もっといいコースを考えてみせます! | |
第3話 丁寧なエスコート | |
数日後、VTRの撮影がスタートした。 | |
強気な女性アイドル | 卯月さん、今日はよろしくお願いします。 |
卯月 巻緒 | はい、こちらこそ。まずはウィンドウショッピングを楽しみましょう。 |
強気な女性アイドル | ウィンドウショッピング?なんだか普通ですね。 |
卯月 巻緒 | あはは。いろいろ考えたんですけど、普通が1番かなって思ったんです。 |
2人でのんびりと、いろんなお店の雰囲気を楽しみましょう。 | |
卯月 巻緒 | (…ちょっと歩き疲れてるみたいだ。そろそろかな) |
近くに、おすすめのお店があるんです。すぐそこです、行きましょう。 | |
卯月 巻緒 | このケーキ屋さんなんですけど…どうしました、スタッフさん。 |
撮影を止めて、一旦休憩するんですね。わかりました…あれ? | |
(…今、あの子の顔が険しくなったような気が…) | |
第4話 不穏な展開 | |
強気な女性アイドル | あのー…卯月さん。どうしてもこのお店に入らないとダメ? |
卯月 巻緒 | どうしてもってわけじゃないですけど。 |
ここのケーキ、すごくおいしいですよ。種類も豊富で、きっと気に入るはず… | |
強気な女性アイドル | 気に入るはずって、決めつけないでくれない? |
ショッピングの時からそう!ケーキ柄の小物が可愛いとか、ケーキケーキケーキ… | |
あんた、それしかないの!? | |
卯月 巻緒 | えっと、俺… |
強気な女性アイドル | そもそも!私はケーキなんて嫌いなの。ほんとサイアク! |
卯月 巻緒 | あっ、待って…! |
番組スタッフ | …彼女、ひさしぶりのテレビ出演で緊張してるのかな。巻緒くん、ごめんね。 |
卯月 巻緒 | あ…いえ、気にしないでください。俺は平気ですから。 |
第5話 揺らぐ自信 | |
卯月 巻緒 | あ…プロデューサーさん、心配かけてしまってすみません。 |
さっき言われた言葉が、頭から離れなくて…「それしかないの」か… | |
そのとおりかもしれません。ケーキは俺にとってのすべてだから。 | |
でも…ああ言われてしまうと、ちょっと思うところもあります。 | |
俺はアイドルとして、このままの俺でいいのかなって考えちゃって… | |
自分の軸をブレさせる必要はないと伝えた。 | |
卯月 巻緒 | プロデューサーさん…ありがとうございます。 |
俺としたことが、ケーキに対する自信が少し揺らいじゃってました。 | |
でも、ケーキが嫌いな相手に強要するのはいけませんよね。 | |
スタッフさんに頼んで、入るお店を変えてもらうべきでしょうか? | |
でも、撮影の許可が取れるお店が近くにあるとも限らないし、 | |
今からお店を変えるのは難しいんでしょうか…うーん… | |
第6話 記憶の連鎖 | |
それからしばらくして、女性アイドルが現場へ戻ってきた | |
強気な女性アイドル | 卯月さん…さっきはごめんなさい。つい、感情的になってしまって… |
卯月 巻緒 | いえ、気にしないでください。誰にだって苦手なものがありますから。 |
強気な女性アイドル | 無理というか…どうしても食べられないわけじゃないのよ。 |
私…デビューしたてのころ、一緒によくケーキを食べに行く友達がいたの。 | |
でも、些細なことで喧嘩別れしちゃって…ケーキを避けるようになった。 | |
ケーキを見るとそのことを思い出すから、ケーキそのものがきらいになったの… | |
でも、ちゃんと食べる…仕事を選んでちゃ、アイドルとして後がないから。 | |
卯月 巻緒 | …そんな気持ちでケーキを食べても、余計に辛くなるだけじゃないかな。 |
辛い想いをさせてまで、ケーキを食べさせるぐらいなら… | |
今からでもスタッフさんに頼んで、行く場所を変えた方がいいよ。 | |
そうじゃないと…あなたも、ケーキも、どちらも可哀想だ。 | |
第7話 氷解する心 | |
強気な女性アイドル | …あなたは、どうしてそんなにケーキが好きで…好きでい続けられるの? |
卯月 巻緒 | そうだな…俺がケーキを好きな理由はたくさんあるんだ。 |
食べると幸せになるし、見た目も綺麗で…他にも色々あるけど、 | |
俺の人生はケーキで変わったから…というのが大きな理由の1つかな。 | |
俺が最高のケーキと出会う時、そこには必ず最高の出会いがあった。 | |
俺がCafe Paradeというお店に出会ったのもケーキがきっかけだったんだ。 | |
店員として働くうちに俺は、ケーキを食べる以外にも幸せを見つけた。 | |
ケーキは自分1人で食べて幸せになるだけじゃなくって… | |
1つのケーキをたくさんの人と分け合えば、幸せもおすそ分けできる… | |
それに気づいてから、もっとケーキを好きになったんだよ。 | |
強気な女性アイドル | ふふ…本当にケーキのことが好きなのね。 |
そういえばあの子と出会ったきっかけも、ケーキだったっけ… | |
第8話 最初の一口 | |
卯月 巻緒 | …本当に大丈夫?無理しなくてもいいんだよ。 |
強気な女性アイドル | たぶん…大丈夫。卯月さんのケーキへの想いを聞かせてもらって… |
私ももう1度、ケーキと向き合いたくなったから… | |
…けど、私…大丈夫かな…本当に、食べられるかな… | |
卯月 巻緒 | わかった。それじゃあまずは、一口だけ試してみて…はい。 |
強気な女性アイドル | …一口、そうね。一口なら… |
卯月 巻緒 | …どうかな? |
強気な女性アイドル | 嫌いだって思ってたのに…やっぱりおいしいなあ… |
嫌いになんか、なれないよ…大切な思い出がつまってるんだもん… | |
あはは、泣きながらケーキ食べてて変だよね。ごめん… | |
卯月 巻緒 | 気にしないで大丈夫だよ。どんな気持ちも、ケーキは受け止めてくれるから。 |
はい、ハンカチ。よかったら使って。 | |
ふふ、まだケーキを好きになってくれて、俺も嬉しいよ。 | |
…あ、そろそろ休憩時間が終わるみたいだね。 | |
ここのケーキ、他のもすごくおいしいんだ。是非食べてみてほしいな! | |
その後、ケーキショップでの撮影は無事に終了するのだったーー | |
第9話 これでまた一歩 | |
卯月 巻緒 | あ、お疲れさまです!…あはは、機嫌がいいのわかっちゃいます? |
実は今日、デート企画で一緒になったアイドルの子とばったり会いまして。 | |
友達に連絡して、ケーキを食べる約束をしたと教えてもらったんです。 | |
まだ仲直りができるかはわからないそうですけど… | |
一緒にケーキを食べるならきっと、元の仲に戻れるはずです! | |
巻緒のケーキへの情熱が後押しをしたんだろうと伝えた。 | |
卯月 巻緒 | はは。俺は大したことはしてませんよ。ただ… |
彼女の力になれたのだとしたらそれはプロデューサーさんのおかげです。 | |
あの子にケーキしかないのかって言われて、迷った時… | |
プロデューサーさんの言葉のおかげで、自分を見失わずにいられたんですよ。 | |
最終話 夢のアシェット | |
卯月 巻緒 | いろいろあったけど、いいお仕事でしたよね。 |
またケーキの魅力を伝えることができてよかったです! | |
転校が多かった頃の俺は、1人でいることが多くて… | |
その時間にケーキを求めていろんなカフェを1人で巡り歩いてたんですけど、 | |
Cafe paradeの一員になったことで、気づいたことがありました。 | |
ケーキを分け合えば、幸せもおすそ分けすることができるってことです。 | |
みんなとアイドルになったことで、俺の世界はもっと広がっていきました。 | |
また見ぬ世界一おいしいケーキを見つけること… | |
そしてケーキの魅力を世界中に伝えること。 | |
この2つの夢を叶えるべく、これからもケーキアイドルとして励みます! | |
応援してるよ | |
卯月 巻緒 | ありがとうございます!はは、すごく心強いです! |
ケーキの道も一歩からといいますし。コツコツ頑張らなくちゃ、ですね。 | |
ということで、ケーキを食べに行きましょう。いいてすよね、プロデューサーさん! |
水嶋 咲
第1話 パピカワファッション・ピックアップ! | |
---|---|
テーマに沿ったファッションをコーディネートする番組に、咲が出演することになった。 | |
水嶋 咲 | えへへっ♪あたし、今日が来るのをず~~っと楽しみにしてたんだ! |
プロデューサー、素敵なお仕事を取ってきてくれて、ありがっとー! | |
実は今日の共演者の中に、あたしが大注目してるアイドルがいるんだよね。 | |
最近デビューしたばかりなんだけど、もう雑誌の表紙を飾ったりしてるの! | |
その子との共演も、お仕事の内容も、すっごく楽しみ!…なんだけど… | |
いざこうして現場に来たら、ちょっと緊張しちゃってて… | |
ほら、今日のお仕事って、共演するのが女の子ばっかりでしょ?だから… | |
う~、ドキドキしてきた!あたし、ちゃんとお仕事できるかな… | |
いつも通りやれば大丈夫! | |
水嶋 咲 | …そうだよね。いつも通り、あたしらしくいれば、きっと大丈夫だよね! |
せっかくの大好きなファッションのお仕事だもん。思いっきり楽しんでくるね! | |
第2話 斬新なコーデ | |
水嶋 咲 | ふむふむ、今日のテーマは「パステルカラーを主軸にしたかわいい系」… |
パピッと了解♪パピパピでキュートなパステルコーデ、選んじゃお! | |
番組司会者 | さて、お次は水嶋さん!…おお~、これはいい!小物の使い方も素敵です! |
水嶋 咲 | えへへ、ありがっとー!…いよいよあの子の番だ。どんなコーデなんだろ? |
番組司会者 | この調子でどんどん紹介していきましょう!お次は… |
こ…これは斬新なコーデですね!え、ええと…ポイントはどこでしょう…? | |
小柄な女性アイドル | ……こ、このコーディネートは…その…… |
水嶋 咲 | (パステルカラーを使ってるけど。色が主張しあって、バランスが崩れてる) |
(どうしよう、あの子も司会の人も困ってる…そうだ!) | |
…淡いピンクにネイビーブルーかぁ。この組み合わせ、新しくてカワイイかも! | |
新しいことへのチャレンジも、カワイイを楽しむ方法だよね♪ | |
番組司会者 | な、なるほど!そういうことだったんですね!それでは次の方、どうぞ! |
咲のフォローもあって、番組収録はその後もつつがなく進行していった… | |
第3話 偽りの自分 | |
番組収録後、女性アイドルが咲の元に現れた。 | |
小柄な女性アイドル | …あの、咲さん!先ほどはフォローをありがとうございました。 |
水嶋 咲 | えっ…!う、ううん、気にしないで。あたし、大したことしてない…あれ? |
私服…すごくシンプルなんだね。まるで別人みたい。 | |
小柄な女性アイドル | 普段はこんな服しか着ません。だからカワイイ服なんて、サッパリわからなくて。 |
水嶋 咲 | (そっか…だから司会の人に聞かれた時も、あんなに困ってたんだ) |
小柄な女性アイドル | 本当は、私…子供の頃から、カワイイよりも、カッコイイ服装が大好きなんです。 |
芸能界に入ったのも、王子様みたいなカッコイイ衣装を着て… | |
女の子からの歓声を浴びるのが夢だったからなんです。 | |
でも、私に用意されるのは、カワイイ系の衣装ばかりで… | |
小柄だから、こっちの方が似合うからって言葉を、私も断れなくて。 | |
水嶋 咲 | …そう、なんだ。 |
(この子…自分がやりたいことを、我慢してるんだ…) | |
第4話 好きを好きと言えないなんて | |
小柄な女性アイドル | …咲さんは今、その…女装アイドルとして活躍されていますよね。でも… |
本当にやりたい格好ができない、なんて、悩んだことはありますか? | |
水嶋 咲 | うん…もちろんだよ。それに、今だって… |
女装アイドルとしての活動、内緒にしてるの。家族にも、学校のみんなにも。 | |
小柄な女性アイドル | そうなんですね…なんだか、悔しいです。 |
もし私たちの性別が逆だったら、何も言われず、好きな服が着れたのに。 | |
水嶋 咲 | うーん…それはどうかな?男か女かって、そんなに重要じゃないと思う。 |
自分の気持ちを大切にしてあげることが、重要なんじゃないかな… | |
だから、周りのことなんて気にしないで。自分の好きな格好をしたら… | |
小柄な女性アイドル | …咲さんはとても強いですね。カワイイけど、カッコイイと思います。でも… |
誰もが…咲さんのように強くなれるわけじゃ、ありませんから… | |
水嶋 咲 | えっ… |
小柄な女性アイドル | あっ…す、すみません。これ、ただの愚痴ですね…それでは、失礼します! |
水嶋 咲 | …あたし、余計なこと言っちゃったかな… |
第5話 それがあたしの好きなこと | |
数日後、咲の誘いで街中へショッピングへと訪れていた。 | |
水嶋 咲 | プロデューサー、今日は2人で、思いっきり息抜きしちゃお♪ |
あたし、ショッピングは久しぶり!よーし、いっぱい買うぞ~っ。 | |
どこから行く? | |
水嶋 咲 | そうだなー、迷いどころだけど…じゃあ、まずはあのお店行こ! |
えへへっ、ここの新作ワンピース、気になってたんだ♪それから… | |
水嶋 咲 | みてみて、プロデューサー!このコスメ、すっごくカワイくない!? |
もう、見た瞬間ビビッときちゃったよ!どうしよう、買っちゃおうかな~? | |
咲に似合うと思う | |
水嶋 咲 | ホント?えへへ…プロデューサーがそう言うなら買っちゃおっと! |
それに…自分が好きって思ったものに、嘘はつけないもんね。 | |
第6話 その背中を押すために | |
水嶋 咲 | …こういうのが今の流行だよね。なら、キャップと組み合わせたりして… |
咲は、ボーイッシュ系のコーディネートを気にしているようだ。 | |
咲ならそういうのも着こなせそう | |
水嶋 咲 | えっ?あはは、ありがっとー!でも、これをあたしが着るわけじゃないよ。 |
実は、この前の収録のことを思い出しちゃって。 | |
…あの子は「王子様みたいなカッコイイアイドルになりたい」って言ってた。 | |
でも、それはできないって、諦めちゃってる… | |
…あたし、どうしてもあの子のことが、他人事だって思えないの。 | |
あの子が、胸を張ってカッコイイ服が着れるようになったらいいのに。 | |
そう考えてるんだけど…何をしてあげたらいいのか、思い浮かばなくて。 | |
だから今日、プロデューサーをショッピングに誘ったんだ。 | |
自分がカワイイ!って思うものを、たくさん見つけることで… | |
あたしの「大好き」って気持ちに、もう一度立ち返ってみようって。 | |
第7話 ほんのちょっとの勇気と… | |
咲はどうして自分らしくいられるの? | |
水嶋 咲 | それは…きっと、「ほんのちょっとの勇気」を出したからかな。 |
あたしが初めて女の子の格好をしたとき… | |
かみやに、Cafe Paradeで働きたいって伝えたとき… | |
全部ドキドキしたし、勇気が必要だった。でも、それだけじゃなくて… | |
そんなあたしを、Cafe Paradのみんなが受け止めてくれたんだ。 | |
プロデューサーも、「カワイイ」が好きなあたしを受け入れてくれた。 | |
だからあたしは…今こうして、アイドルの「水嶋咲」でいられるんだよ。 | |
自分の好きなものを貫く咲の姿は、輝いている! | |
水嶋 咲 | えへへ、ありがっとー!プロデューサーにそう言ってもらえて、すごく嬉しい! |
…やっぱり、自分を理解してくれる人の存在って、すごく心強いんだ。 | |
そんな存在が、あの子にもあったとしたら…そっか。それができれば… | |
うまくできるかちょっぴり緊張するけど… | |
あたし、あの子に連絡してみる。大切なのは…踏み出す勇気だから! | |
第8話 本当の自分 | |
小柄な女性アイドル | 咲さんに誘ってもらえるなんて思ってませんでした。 |
水嶋 咲 | えへへ、突然ごめんね。今日はショッピング、楽しんじゃおう! |
あっ、みてみて!あの服とか君にピッタリだと思うんだけど…どうかな? | |
小柄な女性アイドル | え…パンツスタイルですか…?私なんかに似合わないんじゃないでしょうか。 |
水嶋 咲 | 王子様に憧れてるって言ったのは嘘じゃないでしょ?とにかく着てみて! |
水嶋 咲 | 次はコスメ!クールに仕上げるから色合いは…こんな感じかな?つけてあげる! |
水嶋 咲 | 小物も大切だよね!今回はキャップを買ったから、それに合わせて… |
小柄な女性アイドル | …これが、わたし…?なんだか自分じゃないみたいです…! |
水嶋 咲 | うんうん、すっごくカッコイイよ!雰囲気がパピッと変わった! |
…他の誰がなんと言おうと、あたしは君に、大好きを大切にしてほしい。 | |
自分の大好きな「カッコイイ」を、諦めちゃダメだよ! | |
大丈夫、君は何にでもなれる!あたしが保証するよ! | |
小柄な女性アイドル | っ…!ありがとうございます…私、この姿で事務所の人に会ってみます。 |
そして、私の夢を…勇気を出して、みんなに話してみます! | |
水嶋 咲 | うん!あたしは君のこと、応援してるよ。いってらっしゃい! |
…君は何にでもなれる…か。きっとあの子は、王子様にだってなれるよ。 | |
…あたしがこうして、「さき」になることができたみたいに。 | |
第9話 「あたし」の居場所 | |
水嶋 咲 | あーーー!見てプロデューサー、この記事!あの子のグラビアだよ! |
女性人気が急上昇だって。王子様みたいなアイドルになれたんだ…! | |
あの子の「大好き」が叶って、よかった~! | |
咲の応援のおかげだよ | |
水嶋 咲 | えへ、だったらいいな…自分を認めてくれる人がいるって、幸せだよね。 |
なんだか、昔のことを思い出しちゃった。 | |
…これは、あたしがCafe Paradで働き始めた頃のことなんだけど。 | |
あたしが「あたしになる前」のこと、勇気を出して言わなきゃって思って。 | |
ドキドキしたよ。受け入れてもらえるかなって。最初は、ロールに伝えたんだ。 | |
そしたらロールは、どんな格好でもあたしはあたしだって言ってくれたの。 | |
かみやは、最初からなんとなく気づいてたんだって。すごいよね。 | |
そういちろうとアスランは全然気づいてなかったから、驚いてたけど… | |
今では当たり前のように接してくれる。その時からなんだ。 | |
Cafe Paradはあたしにとって、大好きな自分でいられる特別な場所。 | |
何にも代えられないような…大切な居場所になったんだ。 | |
最終話 「水嶋 咲」の夢のような毎日 | |
水嶋 咲 | Cafe Paradのみんなと、アイドルユニットとしてデビューして… |
カワイイ衣装をたくさん着れるようになった…ううん、それだけじゃない。 | |
憧れの巫女さんになったり、大人っぽい踊り子になったり。 | |
砂漠の国の神秘的なお姫様にも、童話のカワイイお姫様にもなれた。 | |
それに…まだ緊張はするけど、女の子とも話せるようになった。 | |
アイドルになってから、夢みたいに素敵なことばかり起こってる。 | |
もちろん、大変だなって思うこともあるけど… | |
そんな時は、ユニットの仲間が、315プロダクションの仲間が… | |
そしてプロデューサーが、あたしを支えてくれる。励ましてくれる。 | |
本当に…本当に感謝してるんだ。だから、ありがっとー! | |
あたしは、Cafe Paradのみんなが、315プロダクションのこが、 | |
プロデューサーのことが、アイドル活動が、全部大好き!胸を張ってそう言えるよ! | |
これからも大好きなみんなと一緒に、いろんな世界を見てみたい。 | |
そして、たくさんの女の子からカワイイって言ってもらえるような… | |
そんなトップアイドルを目指したいな! | |
必ずトップに立とう! | |
水嶋 咲 | うん!すっごく頼りにしてるよ。これからもよろしくね、プロデューサー! |