深久デハ2形電車

Last-modified: 2023-01-25 (水) 13:28:11

深久デハ2形電車(しんくデハ2がたでんしゃ)は、かつて深久鉄道に在籍した電車。
1926年(昭和元年)に新製された深久初の半鋼製車両である。

本項では本形式及び、現在も配給電車として1両が在籍するモユニ2190形についても記載する。

深久モユニ2190形電車(元デハ2形18→モハ2105)
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目次

1 概要
2 車体
3 主要機器

基本情報

製造所   :大叶車輛工業板町工場
       (現 真久車両製造所)
製造年   :1925年 - 1926年

主要諸元

軌間    :1,067mm
電気方式  :直流1,500V
       (架空電車線方式)
最高運転速度:75 km/h

概要

1924年(大正13年)の深草線千住町 - 浅間堀(現 浅間)駅間電化完成に際してデハ1形が新製されたが、輸送量の増加に伴いそれらと編成する制御車(クハ)が必要となり、新製されたのが本系列である。
1925年(大正14年)4月にクハ1形1 - 9が、同年11月には浅間堀 - 中尾部間の電化完成による電動車(デハ)の所要数増加に伴ってデハ2形10 - 18が新製された。
デハ2形についてはデハ1形1 - 9から連続した車体番号が付与され、電動車・制御車といった各車両種別ごとの形式称号とは関係なく続番が付与されるという、戦前の深久における車番付与基準適用の先駆けとなった。
なお、製造はデハ1形系列とは違い、全車が大叶車輛工業が担当した。

外観ならびに性能はデハ1形と大きく変わることはないが、鋼体設計がデハ1形の鉄骨木造車体から主要部に鋼板を使用した半鋼製車体に変更されたことが最大の特徴である。
本系列の新製当時は鉄道車両の構体が木造車体から半鋼製・全鋼製車体へ切り替わる過渡期に相当し、前述したように深久においては本系列が初の半鋼製車体の採用例となった。

導入後はデハ1形と共に運用され、クハ1形の電動化ならびに戦後に実施された大改番に伴う改番を経て、1960年以降荷物電車へ改造される車両も発生した。旅客用車両として残存した車両については1975年(昭和50年)まで、荷電化改造を施工された車両は現在も運用されている。

車体

16m級の半鋼製構体であり、デハ2形・クハ1形とともに両側に運転台を備える両運転台構造である。
前面形状は切妻構造で、前面窓を5枚備える。5枚窓のうち左右両端には行先表示窓が設置されていのが特徴である。
乗務員扉は設置されていない。客用扉下部にはステップが設置されており、当該部分および客用扉引き込み部分の車体裾が一段下がった形状となっている。
車内乗務員スペースはHポールによって仕切られており、運転台は中央部に設置されている。

車内はデハ2形・クハ1形とともにロングシート仕様で、トイレは設置されていない。

主要機器

本系列が搭載する主要機器の仕様はいずれもデハ1形系と同一である。
連結器はデハ1形系と異なり、落成当初より自動連結器を採用した。

導入後の変遷

運用開始後はデハ1形系とともに形式ごとの区別なく混用された。
なお、デハ1形系は書類上全車とも電動車であったものの、うち3両が制御車代用として運用されていたことから、本系列竣工後における深久が保有する電車の内訳は、電動車15両・制御車12両となっていた。

クハ1形の電動車化

1926年(昭和元年)にクハ1 - 3が電動車化改造を施工され、制御車代用から正式に電装解除されたデハ1形7 - 9と車番の交換を行う形でデハ2形7 - 9と改番・改称された。

戦中から戦後にかけて

第二次世界大戦中の空襲によって、深久が保有する車両各形式にも被災車両が少なからず発生したが、本系列においては1945年(昭和19年)にデハ2形7・11が戦災で車体が焼失した。
同2両は1947年(昭和22年)に大叶車輛工業において焼損車体をそのまま修繕する、いわゆる「叩き直し」と称する修繕方法によって復旧工事が施工された。
復旧に際しては電装解除が実施されたほか、片運転台化、前面窓の3枚化、乗務員扉の新設とそれに伴う客用扉の移設等が施工され、原形とは大幅に異なる外観に変化した。

1947年(昭和22年)から1948年(昭和23年)にかけてデハ2形12・13・21の3両が地方私鉄に譲渡された。
これは国鉄63系割り当て車導入の見返りとして、保有車両の地方私鉄への供出を運輸省より指示されたことによるもので、3両の内訳は片毛鉄道に2両、越米電気鉄道に1両となっている。

大改番による形式再編以降

前述供出対象とならず深久に残存した15両は、1950年(昭和25年)に施工された大改番によって、モハ1100形・モハ2100形・クハ210形・クハ250形の各型式に区別された。

旧番改番後備考
デハ208・209モハ1105・1106
デハ210・214 - 216・218モハ2101 - 2105
クハ201-206クハ211-216
デハ207・211クハ251・252戦災復旧車

大改番以降の動向

入換車として使用されていたモハ2100形2105は1955年(昭和30年)10月に荷物電車に転用され、モユニ2190形2191と改称・改番された。
更に、戦災復旧車であるクハ250形についても1960年に電動車化・鋼体化改造を施工された上で荷物電車へ改造され、クモユニ2590・クモニ2590と改称・改番された。

クモユニ2590・クモニ2590(元クハ251・252)は1991年に除籍されたのち、片毛鉄道へ譲渡された。
譲渡後は北原駅の大叶車輛工業北原工場にて2両1編成での固定編成・旅客列車化改造を施され片毛鉄道モハ200形となり、現在も運行中である。

モユニ2191(元モハ2105)は、1997年に登場したモニ1630形に荷電としての役目を譲った後も配給車として車籍を残し、現在も不定期ながら本線内を走行する。