イカゲームsecond本編💙❤️
注意:現在未完成
執筆開始 9/7
クラシック音楽が流れて目が覚めた。
フレッド「うう…ん…??」
目を擦るとそこは全く見たことのない場所だった。
たくさんのベッドがあり、見覚えのあるメンバーたちが眠っている
フレッド「なんだここ…!?」
焦って周囲を見渡す。そんな中自分の服に目を落とすと、深緑色のジャージを来ていることに気づいた。こんなふくきた覚えは無いが、他のみんなも同じ服を着せられている。そして胸元には005という番号が書かれていた
フレッド「なんの番号だ…?」
次第にみんなも目を覚まし、ここはどこ?やなんでこんな所に?と会場が騒がしくなってきた
フレッドもベッドから体を起こし、みんなの元へ行こうとしたその時。
ブーーっとブザーがなって正面の扉が開いた。そこから赤い繋ぎを着て黒いマスクを被った謎の集団が現れる。
「なんだあいつら!?」
「怖いんだけど…」
フレッド「何者…?」
ザワつく会場
四角「ようこそ皆さん 心から歓迎します」
みんな静かになる
四角「今この場にいる56人の皆さんには、これから6日間で合計6つのゲームに参加していただきます。」
「ゲーム…?」
「なにそれぇ」
ピーター「ちょっとまってください!」
みんなピーターの方に注目
ピーター「あなたたちは一体誰なんですか?!それとゲームってなんのことです?」
その発言にほかのみんなも「そうだそうだ!」「誰なんだアンタらー!」と声を上げた。
スカーレット「それに仮面も……あなた達だけ顔を隠しているなんて怪しすぎるわ。」
四角「スタッフのプライバシーを守るために仮面は外さないというルールがあります。ご理解ください」
ブラッド「じゃあ、あんたらは何者なんだ?」
四角「我々はみなさんのオーナーである方から、”ロボットたちをゲームに参加させてほしい’’との意向を受け、みなさんをここへお連れしました。」
その言葉に会場がザワつく。
ブラッド「オーナーって…白兎か」
シェルカー「また変なことに巻き込まれましたねぇ」
デール「ゲーム……PCゲーなら負ける気がしねぇ」
四角「そして、全てのゲームをクリアした方には、巨額の賞金が贈られます。」
カイ「賞金…?」
カレン「それって、どれくらいなのよ?」
四角「今回の賞金は総額56億円です」
みんな「56億!?!?!?」
聞いたことも無い額に会場がより一層騒がしくなった。
こんな額はフィクションでしか聞いたことがないし、56億なんて大金は想像するのも難しい。
そんな夢みたいなことが本当に有り得るのだろうか?
四角「こちらをご覧ください。」
四角マスクがそう言ってリモコンを操作をする。すると会場の照明が金色に変わり、天井からゆっくりとブタの貯金箱が降りてきた。
黄色い照明に照らされ、透明なブタの貯金箱はまるで金色に光っているかのように見える。
四角「これは皆さんに贈られる賞金を入れるブタの貯金箱です。皆さんがゲームに参加しゲームをクリアするたびにこの貯金箱に賞金が貯まります。」
カイ「その賞金って…1人だけが受け取れるんですか?」
四角「賞金の分配については最初のゲーム終了後にお伝えします。」
そんな中、ロビットが声を上げた。
ロビット「あの!スマホ返してくれませんか?」
そういえば、確かにスマホがないことにフレッドも気づく。ポケットを漁ってみても何も入っていなかった。
おそらく没収されてしまったのだろう。
四角「所持品はゲームが終わったら全てお返しします。」
ロビット「昨日あげた動画がどれだけ伸びたか見たいんです!!ちょっと確認するだけでいいのでお願いします!!」
四角「ゲームが終わるまでお待ちください。」
しかしロビットがなかなか食い下がらないため数分間言い合いが続いた。
ようやくロビットが食い下がり、四角が次の話を始める。
四角「それでは、契約書にサインをしてもらいます。」
みんな列に並んで順番にサインを書いていった。
同意書には、1項
と記されている。
四角「ゲームを辞めたい方は今すぐ申し出てください。我々は常にみなさんの意思を尊重しています」
ラビビ「僕…なんかここが怖いよ…。ねえポール、今ならまだ間に合うみたいだしやめとかない?」
ポール「うーん……でも危険なことはしないだろうしきっと大丈夫だよ!怖いならラビビはやめてもいいよ?」
ネネ「そ~だよ!怖いならやめとけば~?」
ラビビ「ええ~…!!ポールとネネだけなんてほっとけないよー!」
ポール「じゃあやろう!大丈夫危なそうだったら投票で中断もできるみたいだし。ね?」
ネネ「ねっ!」
ラビビ「うーん…わかったよ…」
フレッドも特に深くは考えずに、サインを書いた。
四角「それではこれから1つ目のゲームを開始します。スタッフたちの案内に従って移動をしてください。」
四角マスクがそういうと、丸のマスクたちが先頭に立ちみんなを案内し始めた。
丸マスクについていき会場から出ると、ピンクや黄色のパステルカラーが基調のカラフルな空間が現れた。階段や通路が至る所にあり、まるで迷路のようだ。
ブラッド「なんだこりゃ!?こんなとこがあるなんて……すげぇなおい…」
感心しながら辺りを見渡すブラッド。チェリーもこの不思議な空間を絵に描いてみたいと思った。
しばらく階段を上がると、写真撮影をする空間が現れた。
アナウンス「まもなく1番目のゲームが始まります。プレイヤーの皆さんは写真撮影をしたあと、スタッフの案内に従って速やかにグラウンドに移動してください。」
カレン「げっ、写真なんて撮るの…?髪セットしなきゃ…」
ブラッド「何のためにこんなことを?」
ピーター「うーん、プレイヤー登録とかそういった事のためじゃないでしょうか?」
ブラッド「あ~言われてみれば確かに。」
みんな次々に写真を撮っていった。
長い階段を上がりきり、ようやくゲーム会場に到着した。
リーマス「はーったく疲れた……もう足が限界……」
カレン「この程度で疲れてんじゃないわよ」
ウォーレン「そうだよリーマス君!日々の運動が足りてないんじゃないかな。ウォーキングをするといいよ。あそうだこれから毎日僕と一緒にウォーキングでも───」
リーマス「あ~~はいはい分かった分かったからもう黙ってくれ」
早速中に入っていくみんな。すると……
ピーター「ここは…」
会場の中には、広大な運動場のようなステージが広がっていた。壁には一瞬本物の景色と見間違えるような野原の風景が描かれており、壁はものすごく高く作られていて外の景色は一切見えない。しかし天井は開いており本物の青空が広がっていた。
ブラッド「うおっ!すげえ広いな……壁もめちゃくちゃ高いぞ……ん?おいアレックス!!あれ!」
アレックス「?」
ブラッドが指さした先───この会場の正面奥に、黄色いシャツにオレンジのスカートを履いた巨大な女の子の人形が立っていた。その後ろにはこれまた大きな木が1本そびえ立っている。
アレックス「何あれ」
何も無い会場に巨大な女の子の人形……その存在が異色を放ちすぎていて不気味に感じた。
ブラッドが腕や脚をよくみてみると、球体関節があることに気付いた。
ブラッド「…もしかしてロボット?動くのかな」
アレックス「あんな巨大ロボットが歩いてこっちに迫ってきたりしたら怖すぎるけど」
ブラッド「確かにwww」
フレッド「なんのゲームするんだろ…」
シャロ「フレッド!」
名前を呼ばれ振り向くと、そこにはシャーロックが居た。
フレッド「あ、シャーロック!」
シャーロックがフレッドの元に駆け寄ってくる。
シャロ「ねえ、あの人形、なんか怖くない…?」
そういいながらシャーロックは正面奥の人形を不安そうな目で見つめた。
フレッド「俺も思ったよ……」
すると突然、アナウンスが鳴り響く。
アナウンス「1番目のゲームにようこそ。お待ちしていました。今回のゲームは、”だるまさんがころんだ”です」
フレッド「え?」
その言葉が告げられた瞬間、ざわめきが広がった。
デール「だるまさんがころんだ!?」
あまりにも簡単で単純な子供遊びに、参加者たちは思わず顔を見合わせる。
緊張で張り詰めていた空気も、どこか緩んだように感じられた。
シャロ「だるまさんがころんだって……子供がやる遊び…だよね?」
フレッド「う、うん…そうだと思う」
ブラッド「なんだぁ!!だるまさんがころんだかよ!?簡単なやつでよかった~~」
アレックス「じゃ あの人形は鬼ってことか。迫ってきたりしないなら良かった」
ポール「ほらね!だるまさんがころんだだって!危ないゲームなんかじゃないでしょ?」
ラビビ「えぇ~~…!?簡単すぎて逆に怪しいよ…」
ネネ「もーラビビは心配しすぎなんだってば~」
アナウンス「鬼が前を向いている間だけ進むことができ、振り向いた時に動いていたら 脱落です。」
ルールも基本のだるまさんがころんだと変わらないようだ……
しかし、フレッドは信じられなかった。だってこんな簡単な遊びやるだけで56億ももらえるなんて、そんなことありえない。
こんな簡単なことであんな大金がもらえるのなら誰だって苦労していないし────
そう思ったのはフレッドだけではなかった。
ピーター「なんだろう……嫌な予感がする……」
ブラッド「ん?なんだよ嫌な予感って?」
もちろんなんとなく心に引っかかるだけで、確証なんかはない。ただ考えすぎなだけだろう。
ピーター「……」
しかしピーターは、ブラッドの問いかけに答えることが出来なかった。言葉に出してしまえば、本当になってしまうような気がして怖かったから。
それでも…もしこの考えが本当だったとしたら…?
もし、自分の予想通りだったとしたら、みんなの命が危ない。
ただみんなの不安を煽るだけになってしまうかもしれないし、結局何も起きなければ皆の笑いものになってしまうだろう。それでも、何もしないわけにはいかない。そんなことは自身の正義感が許さなかった。
何もしないよりは、マシだ。
拳を握りしめ、走り出すピーター。
ブラッド「ちょっ、おい!?どこ行くんだよ!?」
そしてみんなのいる前に出て、大きな声を上げた。
ブラッド「みなさーん!!!話があります!!こっちに注目してください!!」
突然のその声に、みんなピーターの方を見た。
ピーターは普段あまり皆の前で大声を出したり注目されるようなことをしないため、みんな驚いている。
パーシー「ピーターくん…??」
ローレン「いきなりどしたの?」
ブラッド「おいおい、あいつ何考えてんだ!?」
ピーター「あの鬼がこちらを向いている時には、皆さん絶対に動かないでください!!絶対にです!!!」
ヅキ「そりゃあ”だるまさんがころんだ”なんだからわざわざ動くわけないじゃないの!あ~た何言ってんの??」
レード「それに動いちゃったところで…別に死ぬわけじゃないだろ?」
ピーター「危険かもしれないんです!!!とにかく、絶対に動かないように気を付けてください!!!」
ブラッド「危険…?どういうことだ?」
虹「そんなこと言っちゃって!みんなの不安を煽って賞金を独り占めする気なんじゃないの~!?」
エル「なんだそれ!汚えぞー!」
プラッシュ「やーいピーターの卑怯者~!!」
ピーター「そんなつもりは…!!皆さん信じてください!!!」
ブラッド「アイツ……どーしちゃったんだよ。」
何人かは「ピーターが賞金を狙っている」と疑いの目を向け彼のことを非難した。
だが、彼の必死な呼びかけが逆にプレイヤーたちを緊張状態にさせていく。
先程までの笑い混じりだった空気は、じわじわと張りつめた空気に変わっていった。
ピーター「(これでいいんだ……1人でも多くの人が、慎重になってくれれば…!!)」
その時、奥の正面にある人形から動作音が聞こえだした。
そちらに注目すると、人形の体がゆっくり回転して始めていた。
ブラッド「あ!!動いた!!」
真後ろに体を回転させ、片方の手を木に添える。
それが「もうすぐゲームが始まる」という合図だった。
ピーター「…!!」
アナウンス「それでは、ゲームを開始します。」
ピーーーッという合図が鳴り響くのと共に、05:00という残り時間を示すタイマーが表示される。
フレッド「始まった…!」
ヨンヒ人形「だーるーまーさーんーがー」
スピーカーから幼い女の子の声が響きだす。
みんな一斉に、それでも先程のピーターの呼びかけがあったので慎重に進み出した。
ヨンヒ人形「こーろーんーだ!」
ピーター「ストップ!!!」
鬼が振り向くよりも先にピーターが声を上げ、みんなピタリと動きを止める。
そして、鬼の頭だけがぐるりとこちらに回転した。
チロ「……!」
パーシー「……ふぅー…」
ピーター「皆さん絶対に動かないで……!!」
会場内は呼吸さえ止めてしまうような緊張感に包まれていた。
もし動いてしまったら…どうなってしまうのかわからない。
ピーター自身も、少しでも体が動かないように全神経を集中させた。
長く感じられた間の末、鬼が再び前を向く。
ヨンヒ人形「だーるーまーさーんーがー」
もう一度、慎重に進んでいくプレイヤーたち。
先程ピーターに文句を言っていたレインやヅキたちでさえ、緊張からかゆっくりと進んでいた。
ヨンヒ「こーろーんーだ!」
ピーター「ストップ!!!」
また、鬼が振り向くよりも先にピーターが声を出し、全員動きを止める。
一方、金組は慎重に進んでいたためまだ後ろの方にいた。
リウム「フー……こんなに集中してやるだるまさんがころんだは初めてかも……」
ステラ「僕もだよ……うー身体が痛い…」
クラップ「にしても、あの野郎は一体なにを考えてんだ?」
前方にいたクラップがピーターの方を見ながら言う。真面目なやつだということは知っていたが、こんな遊びごときであれほど本気になるのは何故なのか疑問に思っていた。
リウム「さぁね……でも真面目な彼の言うことだしきっと何かを感じ取ったのかな…?」
ステラ「……」
ピーターをじっと見つめるステラ。実はステラもピーターと同じことを予感していた。
このゲームは、おそらくただのゲームではない。あんな賞金を、こんなに簡単な子供遊びをクリアするだけで貰えるなんて、そんな上手い話があるわけ無い。
きっとゲームに失敗すれば、それほどの対価を払うことになるのだろう……それはもしかしたら命かもしれない。
しかし、そんなことをリウムに伝えてしまえば逆に怖がらせてしまうと思い、言うことが出来なかったのだ。
なのでピーターが無闇にみんなを刺激せず、それでも慎重に進むように言ってくれたことにステラはとても感謝していた。
ステラ「(ありがとう、ピーター君)」
心の中でそう呟き、再びゲームに集中した。
ヨンヒ人形「だーるーまーさーんーがー」
ヨンヒ人形「ころんだ!」
ピーター「(いいぞ……みんな問題なく進めてる)」
ピーター「(このまま何も起きずみんなが無事にクリア出来るといいんだけど…)」
モール「うごかないよーにじーーっと…………ん?」
モールのそばを蝶々が悠々と飛んでいる
モール「あっ蝶々さんだ!!かわいい~待って~~!」
ピーター「……!?」
モールが動いてしまったのを見たピーター
ピーター「まずい…!」
ヨンヒ人形のセンサーがモールを捉える
その瞬間……
────バァン!!!
突然、空気を切り裂くような破裂音が響いた。
ピーター「っ!!」
フレッド「!?」
シャロ「今の音…なに…?」
視界の端で、モールが倒れ込むところが目に入る。2人は何が起きたのか分からなかった。
そんな中、ピーターの視界にはドサッと地面に倒れ込むモールの姿がはっきりと見えた。
背中から火花が飛び散っており、モールは二度と動くことはなかった。
ピーター「(…そんな……まさか…!)」
アナウンス「45番、脱落」
ピーター「皆さん絶対に動かないでください!!!動いちゃダメです!!!」
目の前でモールが撃たれる所を見た2人
リーナ「!?!」
カレン「え……?」
リーナ「う、うそ……今…撃たれ……!?」
恐怖で体が震えるリーナ
動いてはいけないとわかってるはずなのに、リーナの足は出口を目指して走り出した。
リーナ「い……いやああああ!!!」
バァン!!!
カレン「…っ!!!」
走ってきていたリーナが撃たれ、目の前でどさりと倒れ込む。
リーナの背中からは、銃撃による火花が飛び散っていた────。
カレン「!!!」
ミュー「っ!?う、う……!!うわああああああっ!!!」
撃たれたリーナを見て恐怖で動いてしまったミュー
ピーター「ダメだ!!動かないで!!!」
バァン!!!
スカーレット「…!!」
リサ「冗談でしょ……」
一方銃撃が起こった場所から離れた所にいたブラッドたち
ブラッド「…!?何が……起こったんだ…?」
チェリー「銃声に悲鳴……確実に何人か撃たれたわね」
ブラッド「撃たれたって…!?!」
チェリー「最初から怪しいと思っていたけど……このゲーム、脱落すると撃たれて殺されるんだわ。通りで賞金が高額なわけよ。」
アレックス「56億の代償は命ってことか」
ブラッド「嘘だろォ……」
今や会場内はパニックに包まれていた
撃たれたものを目撃した者たち、離れたところに居た者たち……たとえ目では見えなくても何が起こったのか察することが出来た。
ゲームで負けたら、殺されるんだと─────。
心が恐怖に支配される
デール「っ…!」
パーシー「大丈夫…!!僕がついてる……落ち着いて」
デール「!わ、わかった……」
アナウンス「ルールをもう一度説明します。鬼が前を向いている間は進むことができ、振り向いた時に動いていたら、脱落です。」
アナウンス「では、ゲームを再開します。」
ヨンヒ人形「だーるーまーさーんーがー」
誰も動けない
ヨンヒ人形「ころんだ!」
ピーター「みなさん…落ち着いて聞いてください…」
ピーター「恐らく……あの制限時間を超えても殺されます…!!」
制限時間は残り02:30になっていた。
ピーター「少しづつでもいいので…前に進みましょう…!!それしか生きる道はありません…!!」
ヨンヒ「だーるーまーさーんーがー」
ピーターのその言葉を聞き、みんな少しづつ進んで行った
ラビビ「ポール…!ゆっくりでいいから行こう!」
ポール「う、うん…」
虹「なんなのこのゲーム…!!こんなのにアタシらを参加させるとか……オーナーのやつ何考えてんの!?」
エマ「今は文句言っても仕方ないよ…!」
ヨンヒ人形「ころんだ!」
ヨンヒ人形をじーっと見つめるギルバード。彼は先程からゲーム会場の隅々を観察していた。
ギル「……ひょっとすると…あの人形…!」
カイ「…どうした?」
ギル「思ったんだけど、もしかしたらあの人形の目が、動作を感知する機能になってるのかもしれない。」
カイ「え?」
ギル「この会場を隅々観察してみたんだけど、壁にセンサーらしきものは他に見当たらないんだ。」
カイ「あの目が……?っ、それなら、前の人の背に隠れていれば…」
ギル「うん、きっと感知されないはずだよ。」
カイ「鬼には正面しか見えてないってことか…」
ギル「一か八か…やってみるよ!」
ギルバードは前の人の背中で隠れていた右腕を恐る恐る動かしてみた。手を握ったり開いたりしたが、失格判定にならない。
カイ「!」
ギル「やっぱりそうだ…!!」
ギル「…みなさん!!聞いてください!!」
みんな「!?」
ギル「あの人形の目が、恐らく動きを感知する装置になっています。なので前の人を盾に隠れて進めば、動いても問題ありません!!」
実際に前の人で隠れている右腕を動かして皆に見せた。
フレッド「本当だ…!!」
ブラッド「おいおい、天才かよあいつ!?」
ピーター「…!!」
ヨンヒ人形「だーるーまーさーんーがー」
皆言われた通り前の人の背中に隠れながら進んだ
フレッド「シャロ、俺の後ろに隠れろ!」
シャロ「う、うん!」
ブラッド「よし俺はエディの後ろに…」
ポール「ラビビとネネも僕の後ろに!!」
ピーター「(ありがとうございます…!ギルバードさん…!!)」
ギルバードの作戦とみんなの冷静な行動により、ようやくゴールが目前にやってきた。
ピーター「みなさん頑張ってください…!!あと少しでゴールです!!」
そしてついにヨンヒ人形が前を向いた。
ピーター「今ですっ!!!」
みんな一斉に走り出した。
フレッド「走れ!!」
ブラッド「うおおおおお!!!」
そしてついに、ゴールのラインを超える。
ブラッド「やったあああああーーッ!!!」
走ってきた勢いのまま地面に倒れ込むアレックスとブラッド。
アレックス「あーーーー疲れたぁーー…」
チェリー「ふう。何とかなったわね」
フレッド「よし…!!シャロ、大丈夫か!」
シャロ「うん…!助かった…」
ピーターもゴールラインに入った。
咄嗟に振り向き、まだゴールラインより外にいるみんなをこちら側に引き入れた。
ピーター「皆さん早く入って!!」
デール「おっしゃあああああッ!!!」
デールはクリアできたのが嬉しすぎて泣きながら地面に崩れ落ちた。
デール「俺生きてる~~!!!よかったあああマジで怖かったああああ~~!!!」
パーシー「うはーーーッ死ぬかと思った……」
ヨンヒ人形「ころんだ!」
ピーター「みなさんもう少しですよ!!落ち着いて、次のターンで来てください!!」
スカーレット「私達も次でクリアできそうね。」
ヘル「だな…!」
ローレン「最後まで気ぃ抜かずに行こう!」
スカーレット「ええ!」
ヨンヒ人形が前を向いた。
ヘル「行くぞみんな!!」
もう一度、全員が一斉に駆け出す。
スカーレット、ローレン、ヘル──次々とゴールに飛び込んでいく。
しかしその時────
ネネ「うわっ!?!」
足をくじき、視界がぐらつく。その瞬間、地面に身体が叩きつけられ、息が止まった。
ネネ「(やばい、置いていかれる!!)」
ネネ「待って!!!」
──その声とほぼ同時に、ポールとラビビはゴールに飛び込んでいた。
咄嗟にふたりがこちらに振り向く。
ポール「!?!」
ラビビ「ネネ大丈夫!?!」
瞬時に立ち上がり、震える足で必死に走り出した────その時。
ヨンヒ人形「ころんだ!」
ネネ「!?」
ポール「!!」
突然ヨンヒ人形がこちらを振り向く。ネネはブレーキをかけようとするも、走り出した勢いは殺しきれず、間に合わなかった。
止まれた時には既に遅く、人形とまっすぐに目が合う。
ポール「ネネ!!!」
───バァン!!!
ネネ「うっ!!」
ネネの身体がぐらりと揺れ、倒れ込んだ。
ポール「ネネ!!!そんな!!!」
ラビビ「…!!」
アナウンス「28番、脱落」
ヘル「嘘だろ…!?」
スカーレットはショックで声が出せず、その場に崩れ落ちた。
ピーターもその瞬間を見ていた。
ピーター「…!!」
誰もが絶望した、その時────
ネネ「助け……て……」
ポール「ネネ!?!」
意識がある。先程の銃撃が急所をかわし、一命を取り留めたのだ。
ピーター「生きてる…!!」
ネネ「助けて……!」
すぐさま助けに行こうとするポール。しかしラビビがそれを制した。
ラビビ「待って!!まだ危ないよ!!」
ポール「ネネは大事な仲間なんだ!!見殺しになんてできないよ!!」
ラビビ「でも…!!ポールまで死んじゃったらいやなんだ…!!!」
ピーターは残り時間を確認した。あと15秒残ってる。他の参加者はみんなクリアしており、ラインの外に残っているのはネネだけだ。
1人でも多くの命を救いたい……ネネはまだ生きている。助けられる。
ヨンヒ人形が再び前を向く。その瞬間を確認し、ピーターは瞬時に駆け出した。
ポール「!?」
ネネの元までたどり着きしゃがみ込む。その瞬間鬼がこちらを振り向いた。
ヨンヒ人形「ころんだ!」
ネネ「助けて…!!」
ピーター「大丈夫です、必ず助けます。次のターンで行きましょう!!」
ネネは微かに頷いた。
鬼が前を向く。
ヨンヒ「だーるーま───」
ピーターは力を振り絞りネネを抱き抱え、即座に駆け出した。
もう止まるつもりは無い。このターンで走り切る。必ずネネを助ける────ひたすらそう考えながら、全力で足を動かした。
そして、ついにゴールは目前。
ポールがゴール前までやってきて2人のことを引っ張りいれた。
やっとピーターの足が、再びゴールラインの内側に入る───それとほぼ同時に制限時間のタイマーがなった。
その瞬間、緊迫しながら見守っていたみんなも大きな声で歓声を上げ喜んだ。
「うおおおおおおーーッ!!!!」
ブラッド「すげえ!!すげえぞピーター!!!英雄だ!!!」
「ありがとうピーター!!!」
「ヒューヒューー!!」
「ナイス~~!!かっこいいぞ~!!!」
みんなぴょんぴょん飛び跳ね、近くの人とハイタッチをして喜んでいる。
その歓声からくる安心感で力が抜け、どっと倒れ込むピーター。よかった、助かった、1人でも多くの命を救えた。
ゆっくりネネを地面におろし、上半身を支える。
ピーター「もう大丈夫ですよ…!!」
すぐさま2人の元にポールが駆けつける。
ポール「ネネ…!!よかった……ピーター君、本当にありがとう…!!!」
ピーター「いえいえ…!」
ネネ「ピーターさん…、ありが────」
──バァン!!!
突然、銃声が鳴り響く。
空気を切り裂いたように、シーンと会場が静まり返った。
ピーターも、喜んでいたみんなも、何が起きたのか理解出来なかった。
ピーター「─────え?」
目の前には、頭を撃ち抜かれ、完全に機能停止したネネがいる。
僅かに見開かれた目は、何が起きたのかまるで理解できていないようだった。空いた額の穴から電線がバチバチと火花を散らしているのが見える。
ネネが動くことは、もう二度となかった。
ポール「あ……え……?」
アナウンス「28番、脱落」
先程までの高揚していた気持ちが、再び絶望のどん底に突き落とされる。
ブラッド「そんなのアリかよ…!?」
リサ「…可哀想に……」
レード「ひでぇ……助かってたのに……」
スカーレット「ど、どうして……」
スカーレットの目からは涙が溢れ出た。
ローレン「……!」
ポール「あ……ネネ……そんな……うわああああああ!!!ネネーーッ!!!」
ラビビ「う、ううっ……うう…!!」
ポールはネネを抱きかかえながら泣き叫んだ。自分の無力さ、後悔、そしてネネを殺した運営側への怒り───全ての感情が波のように押し寄せてくる。
ピーター「……!!」
ピーターも、どうすることも出来なかった。
やがて、1つ目のゲームが終了した。
会場に戻ってきたみんなの間では、重たい空気が流れている。
ベッドの布団に潜り込んでいるもの、階段の隅で震えているもの、俯いて座り込んでいるものーーー
みんな、これからどうなるのかわからない恐怖で怯えていた。
ラビビ「うう……ぐすっ…」
ゲームが終わってから、ネネを助けられなかった後悔でラビビはずっと泣いていた。
ラビビ「僕のせいだ……あの時僕がネネと手を繋いで走っていたら……ネネが転んだことにすぐ気づけたのに……!」
スカーレット「ラビビ……」
ポール「いや、ラビビは悪くない……僕のせいだよ。あの時…ゲームが始まる前、ラビビに言われた通りやめておけばよかったんだ…」
スカーレット「…誰のせいでもないわよ。そういう運命だったって…受け入れるしかない。現実を受け入れて、私たちは前に進まなきゃ。」