【トルネコの大冒険 不思議のダンジョン】

Last-modified: 2023-02-19 (日) 21:19:15

・不思議のダンジョンシリーズ
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キャラクター - 地名 - アイテム(武器//指輪/矢・飛び道具//巻物/草・種/パン/道具) - モンスター - 音楽

概要

「不思議のダンジョン」シリーズ第1弾。DQシリーズ内のみならず、日本の家庭用ゲーム全体の中での第1弾でもある。
またDQシリーズの世界観を用いた初の外伝作品ともなった。
発売日は1993年(平成5年)9月19日。対応機種はスーパーファミコン。開発と販売は【チュンソフト】
主人公は【ドラゴンクエストIV 導かれし者たち】に登場した【トルネコ】【不思議のダンジョン】の噂を耳にするところから冒険は始まる。
約50万本のセールスを記録し、1993年度日本ソフトウェア大賞を受賞した。
 
本作は1980年頃に作られたUNIX系OS上でプレイする"Rogue"のドラクエ風リメイクであり、"rogue-like"(ローグライク)と呼ばれるこの手の作品中では最も成功したと言えるだろう。
本家ローグも目的のアイテムを回収してダンジョンから生還することが目的である。
当時経営企画室にいた長畑成一郎(のちに同シリーズのディレクターとなる)がローグのプレイ経験があり、これが製作のきっかけとなっている。
 
開発は、1990年頃からDQ5と並行して進められていた。
しかしコンシューマゲームのプレイヤーにはそれまで、この手のタイプのゲームがほとんど知られていなかったため、RPGの要素も含まれているこの斬新なシステムに馴染んでもらうため、メジャーなRPGであるDQのキャラクターと世界観を利用してこの作品を作り出した(『ファミコン通信』1994年12月30日号)。
FC版DQ1がその後のほとんどのコンシューマRPGの原形になったように、本作はコンシューマにおけるローグライクRPGの原形になっており、「不思議のダンジョン」がその通称としても使われているほどである。
 
DQ5までのプログラムを担当したチュンソフトの開発ということもあり、メッセージフォントや家のグラフィックなどDQ5から流用した部分も見られる。なおナンバリング作品に先駆けてウィンドウが半透明化されている。
 
本作には『ドラゴンクエスト』のタイトルは付いておらず、発売元もエニックスではなくチュンソフトであることからDQシリーズとしては扱われない場合もあったが、後にトルネコの大冒険も『ドラゴンクエスト キャラクターズ』のタイトルを付与されてシリーズ化し、発売元もエニックス(スクウェア・エニックス)に変わった。
シリーズが進むごとに様々なアレンジが行われているものの、基本的なシステムは本作の時点で既に完成している。
 
本作のアーカイブ販売は1997年9月30日から2007年2月28日まで「ニンテンドウパワー」にて行われていたが、その後は版権事情もあるのか本作のアーカイブ販売は行われておらず、現状容易な入手手段は中古ソフトの購入に限られている。

ストーリー

【エンドール】に念願だった自分の店を構えたトルネコはある日、不思議のダンジョンの噂を耳にする。
曰く、すごい宝物が眠っているらしいが、誰も手に入れたことはないという。
矢も盾もたまらなくなったトルネコは、妻の【ネネ】と息子の【ポポロ】を連れ、再び旅に出た。そして数年かけて、ついに【不思議のダンジョンがある村】に辿り着いた。今作ではここに新しい店を作って大きくして行き、ダンジョンに眠る謎を解き明かしていくのだ。
 
エンドールにいた頃から村にたどり着くまでを描くプロローグ画面ではファミコンDQ4の雰囲気を再現した新規ドットグラフィックで描かれており、DQ4をプレイ済みのプレイヤーをにやりとさせてくれる。
 
なお、DQ4の「【ブランカへの洞窟】へ入り、新しい土地へ旅立った」という三章の終盤部分や五章部分は一切語られていないため、今作だけでは「DQ4のストーリーの後日談」か「ブランカへの洞窟へ入る前のIFストーリー」かどうかは不明である。
続編のトルネコ3の【プロローグ】にある「彼は かつて 天空にみちびかれし 勇者たちとともに 邪悪なる大魔王を うちたおしました。」(中略)「なん年かが 過ぎた ある日 ふとした出来事が トルネコを 不思議な洞くつへと みちびきますが……」というテロップによって、トルネコ1はDQ4の後日談であることが確定した。

システム

フィールド

村と自分の店を拠点としてダンジョンに挑むゲームであり、フィールド=ダンジョンといえる。
そしてローグライクゲームの最も基本的なシステムとして、ダンジョン探索とモンスターとの戦闘がリアルタイムで並行して行われる点があげられる。
ダンジョンの中にはアイテムが落ちていると同時にモンスターも歩いており、近づいて攻撃ボタンを押せばそのまま攻撃になる。逃げる場合はモンスターから歩いて離れる。

行動は全てがターン制であり、一歩歩く、目の前のモンスターに攻撃する、アイテムを置く、武器防具を装備する、と、あらゆる行動が同じく1ターンになる。
さらに本作では1ターン毎に自動的にセーブされるのでやり直しが効かない。
普通のRPGならば暫く無駄に歩いたところで【エンカウント】の回数が一回増えるか増えないかだが、不思議のダンジョンでは一歩無駄に歩くだけで1ターンを無駄に消費してしまうのだ。
満腹度の問題もあるので、いかに無駄な動きを減らすかが上達のカギになる。
 
そしてもう一つの基本システムに、ダンジョンが自動生成されるという点がある。
主に視界が広くて【アイテム】【階段】【ワナ】もある「部屋」と、それらを繋ぐ暗い「通路」の二つからなり、入る度に違う構造のダンジョンが迎えてくれる。
なので、ずっと同じダンジョンを挑むゲームだが、常に新鮮な感覚でプレイできる。
生成そのものには一定の規則性があるので、慣れてくると少し探索しただけでフロアの構造が読めるようになる。
 
なお、ダンジョンは目的を達成するまで下り階段のみで、途中で引き返すことはできない。
やられた場合は全てのアイテムと【ゴールド】の半分を失って地上に帰ることになる。
目的のアイテムを手に入れた場合は下り階段が上り階段に変わる。
また、目的のアイテムとは別に帰還できるアイテムもあり、その場合はアイテムもゴールドも無傷で残る。
 
本作では最初に【ちょっと不思議のダンジョン】という練習ダンジョンに挑むことになり、それをクリアすると不思議のダンジョンに挑戦できるようになる。
また、クリア後には【もっと不思議のダンジョン】という上級者向けダンジョンが追加される。

ステータス

トルネコのHPが0になるとリタイアなのは普通のRPGと同じだが、HPはターン経過で自然回復する。
なので【薬草】などの回復アイテムは緊急時に取っておいて、モンスターのいない場所で【足踏み】(AB同時押し。ターンを高速で経過させる)して回復させるのが基本。
ちなみにモンスターは自然回復しないので、手負いを逃がしても復活したりはしない。
また【力】はレベルアップで上がる攻撃力とは別に値が設定されており、HPのように現在値と最大値があって、【毒】を受けると現在値が減る。
【素早さ】はターン内に何回行動できるかを意味する。
ほとんどのモンスターは1ターンに1回しか行動できないが、一部のモンスターは1ターンに二歩歩けたり、二回攻撃できたりする。
【ボミオスの杖】を当てれば2ターンに一回しか行動できなくなるので、トルネコが一回攻撃→一歩下がる→遅くなったモンスターが一歩追いかける→攻撃……と、素早さに差があれば簡単にノーダメージで倒すことができる。
なお、数値で明確に確認できるステータスとして設定されているのは、HP、満腹度、力の値のみ。これらの他にトルネコの素の攻撃力を表す「基礎攻撃力」が設定されているがこちらは不可視である。また、本作においては【守備力】は完全に盾の強さ依存となっており、、素のステータスにおける【守備力】は存在していない。
  
不思議のダンジョンでは定番のステータスといえるのが【満腹度】
ターン経過でどんどん腹が減っていき、これが0%になるとHPも減り始め、遂には餓死してしまう。
ダンジョン内にも落ちている【パン】で満腹度を回復させることができる。
モンスターはターン経過で自然発生するので、稼ぐために同じフロアに留まることもできるが、満腹度のせいで無限に稼ぐことはできなくなっている。
どんなに強くても腹が減っては戦ができないので、常に食糧の確保を忘れてはいけないが、パンは満腹度回復にしか使えない、言ってしまえば邪魔なアイテムでもあるので、多すぎる場合はその場で食べてしまうというのも手である。
アイテムには満腹度の減少を抑えるものもあるが、それでも無限に稼げないように、同じフロアにずっといると【地震】で強制的に落とされる。
  
もう一つの定番に、「冒険の途中で倒れようが生還しようが、次の冒険では再びレベル1」がある。
普通のRPGしか知らないプレイヤーからすれば酷いと思うかもしれないが、ダンジョンの自動生成システムと併せることで、何度でも新鮮な気分で冒険できる。
プレイヤー自身の経験と知識の蓄積の方が重要であるため、冒険を繰り返す程にプレイヤー側が成長していく分、レベルが1に戻ろうとも自分の知恵と行動力によって道を切り開くことができ、まさに自分自身が冒険をしているという醍醐味を味わえるのが本作の魅力である。

これらのシステムを指して、不思議のダンジョンは1000回遊べるRPGと謳われている。

アイテム

装備品は【武器】、そして特殊能力を得られる【指輪】と、【飛び道具】【矢】の四種類。
他に、主に食べて使う【草】、読んで魔法を起こす【巻物】、振って魔法を飛ばす【杖】がある。
草も巻物も一度使えば無くなるし、杖も回数制なので消耗する。
ダンジョン内に落ちているアイテムはランダムなので、貴重なアイテムを温存する一方で、貴重でないアイテムはさっさと使って少しでも探索を有利にするのが正しい。
 
武器と盾には素の強さに加えてプラスマイナスの要素があり、たとえば「こんぼう+2」は素の強さ1と併せて3の強さを持つこんぼうになる。
冒険中に鍛えることも可能なので、ドラゴンシールドより強い皮の盾なんてものも作れる。
ただしこのプラス数値は装備するまで判別できず、また一定確率で呪われている(呪われていると-1)可能性もある。
 
そして重要なのが識別の概念。不思議のダンジョンでは杖と指輪が、もっと不思議のダンジョンでは草と巻物も、拾った段階では正体が判らない。
一度使った時の効果から正体を類推するか、【インパスの巻物】で識別するかのどちらかになる。
中にはマイナスアイテムもあるので、使う状況を考えないと痛い目に遭う。
特に指輪はマイナスアイテムが呪われていた時を考えると、インパスを待った方が良いだろう。
これらは一度識別したり、仮の名前を付けた場合は、同じ種類のアイテムも同様の状態になる。

モンスター

ドラクエシリーズに登場したモンスター達が、能力をアレンジされた上で採用されている。
それまでのモンスターは正面からの絵(歩行グラフィックを除く)だけであったが、本作で初めて背面などがある程度の大きさで描かれるようになった。
トルネコ1の場合はDQ4までから選ばれており、オリジナルモンスターはいない。
なお、【まどうし】【ラリホー】が鬼畜仕様だったり【ドラゴン】が最強だったり、【ギガンテス】【シルバーデビル】【アークデーモン】が近いところで登場したりと、DQ4の外伝のはずなのに古めのシリーズが優遇されているイメージがある。
 
モンスターはフロアを降りた時点で数体ランダム配置される他、一定ターンごとに自然発生する。
そして最初から起きて、トルネコを探して歩き回っている場合と、部屋の中で眠っている場合があり、眠っているモンスターはトルネコが同じ部屋に入る等、気配を感じると起きる可能性がある。
中には発生時に必ず眠っている種類もいて、このタイプは大体が厄介な能力持ちである。
また、低確率でモンスターが大量配置されている【モンスターハウス】がある場合があり、中にはワナも多めにあるし、入った瞬間にスリリングな音楽に変わる等、非常に心臓に悪い。
 
モンスターの行動パターンは非常に単純で、トルネコを見つけたら向かっていくだけである。
そして視界はトルネコとほぼ同様で、部屋にいるモンスターは部屋内しか見えない。
トルネコを見失い、かつ行き止まりやモンスターの渋滞等で進めない場合は、数ターン後には諦めて別の道を探すようになるので、狭い通路でモンスターの動きを止めてしまえば、後に続くモンスターは皆トルネコを見失ってどこかに行ってしまう。
なお、トルネコから必ず逃げる行動を取るタイプのモンスターもいて、この手のモンスターは追いかけて倒せば何かしらの良いことがある場合が多い。
かといって【はぐれメタル】を行き止まりに追い込むと酷い目に遭うので注意。
 
モンスターは特殊能力を持っているか持っていないかで分かれるが、DQ本編のように一体のモンスターが多様な能力を使い分けることはほとんど無い。
ほとんどのモンスターは通常攻撃と、一定確率で特殊能力を使うのみである。
また、先に挙げた「素早さ」や「トルネコから逃げる」も実は能力の一種で、【封印の杖】を振ることでほぼ無くなる他、混乱等の【状態異常】にかけると特殊能力を使わなくなる。

ワナ

ダンジョン内にはランダムでワナが設置されている。ちなみに部屋内にしか無い。
ワナは通常隠されていて見えず、踏んだ時点で可視化する。
ボタンやパネルなどを踏むことで作動するタイプが大半で、【地雷】などの効果が1発限りのものを除き、踏む度に被害にあう(運よく作動せずに済む場合があるが、その場合も踏み直せば作動する)。
当然トルネコに不利な効果ばかりだが、強力なモンスターに追われている時はあえて地雷の爆風に巻き込んだり、【落とし穴】に落ちて逃げる等の利用法もある。
ワナを暴く手段は幾つかあるが、最も簡単なのがモンスターのいない空間を攻撃(空振り)すること。
空振りした先にワナがあれば発見することができる。
モンスターハウスにはワナが多く配置されているので、空振りしながら進むのが安全。
また、ワナのある場所にはアイテムが落ちないので、アイテムを投げた先で不自然な落下をした場合はワナがあると見て良い。
その他、レミーラの巻物を使えばフロア内に存在するすべてのワナが一度に発見できる。これは大型モンスターハウスで特に有効な対策法である。

トルネコの店

店と言っても買い物ができるのではなく、主に訪れる客から冒険のヒントがもらえる。
また、ゴールドを持ち帰ることで段々【トルネコの店】が発展していき、中盤からは倉庫が使えるようになる。
倉庫には冒険から持ち帰ったアイテムを入れるだけでなく、少数ながら持ち出して冒険に挑むこともできる。
最終的に倉庫の容量は100、最大で4個まで持って冒険に挑戦できる。
ただし、もっと不思議のダンジョンでは一切の持込ができない。

音楽

DQ本編と同じく【すぎやまこういち】が全曲担当しているが、「同じダンジョンをずっと挑戦し続ける」というコンセプトを受けてか、【武器商人トルネコ】をメインテーマとして、ほぼ全ての曲がこれのアレンジになっている。
楽しい曲も悲しい曲も、熱い曲も冷たい曲も、全てトルネコのテーマから作られているのだ。
その技巧と統一感には感嘆する他ない。

サントラとして【組曲「トルネコの大冒険」~音楽の化学~】が発売されている。

詳細・楽曲一覧は音楽/トルネコ1を参照。

続編

【ドラゴンクエスト・キャラクターズ トルネコの大冒険2 不思議のダンジョン】が続編となっているが、その前にチュンソフトの次作である【不思議のダンジョン2 風来のシレン】が1995年12月1日に発売されている。
こちらは【中村光一】曰く「何か後ろめたいことをする場面もあり、DQの世界と相反するものがある」(『ファミコン通信』1994年12月30日号)という理由により、DQとは全く異なるオリジナル作品となった。
しかしながら同じ不思議のダンジョンの名を冠しており、システムが似通っている他、ここで初登場した新システムはトルネコ2にも持ち込まれている。
同様にシレン2以降で作られた要素が【ドラゴンクエスト・キャラクターズ トルネコの大冒険3 不思議のダンジョン】にも登場したり、逆にトルネコ2のシステムの一部がシレン2にも採用されていたりと、別シリーズでありながら不思議のダンジョンシリーズとして相互に影響し合っている。
 
また、今作の発売後に、今作の前日譚(トルネコ一家がエンドールを出発してから村に辿り着くまでの数年間に渡る冒険)を描いた【トルネコ一家の冒険記】という漫画が発売された。