【ラインハット太后】

Last-modified: 2020-04-16 (木) 14:50:28

DQ5

【ラインハット王】の後妻。
主人公の幼年時代は【王妃】であり、青年時代には息子の【デール】が即位したことにより、【太后】となる。
初登場時である幼年期では上記の通り王妃だが、青年時代に入ってからの【ラインハット】では「太后」の時代であるため、本項目名は「ラインハット太后」とする。
英語版での名前はDowagerとほぼ直訳。
 
実の息子のデールを溺愛しており、先妻の息子にして次期国王の筆頭でもある【ヘンリー】を邪魔に感じており、デールを次期王の座に就かせるために裏で手を引く。
ヘンリー誘拐事件の首謀者であり、主人公にとっては自分の父【パパス】が殺され、ヘンリーと共に10年以上奴隷にされることになった元凶でもある。
結果的に、彼女の企てが、国民を苦しめ、【サンタローズ】が焼き討ちにされ、人間世界の平和を乱すラインハットの悪政のきっかけとなった。ついでに言えば、【カボチ】が飢えに苦しむ(間接的な)原因も作っている。
 
ヘンリーの排除とデールを王に就かせることには成功したが、その後、自分の偽者である【ニセたいこう】に城を乗っ取られ、自身は地下牢へ幽閉された。その後、偽物はラインハットの国政を牛耳り、悪政を行った。
偽太后と入れ替わった正確な時期は不明だが、ヘンリーを拉致した誘拐犯たちは「大后の姿をした何者か」に粛清されており(後述)、事件からそれほど時間が経たずにすり代わったのかもしれない。
 
本人の証言を整理する限り、太后自身は単に自分の子を王様にしたかっただけで、国政を牛耳ろうという野心までは無かったようで、太后就任後のすべての悪政は、偽太后の仕業であったと考えられる。
城内にいる女中たちの証言では、デールが王位に就いたのち、自身が愛していたはずの息子を疎んじる態度を見せるなど、明らかに人格が変わっていることが伺える。
 
なお、ラインハットの兵士たちが【サンタローズ】を襲撃した時期については、青年時代になってから突入することになる【ラインハット地下洞窟】に投獄されている1人の老人の証言がヒントになる。この老人は「ヘンリー王子を亡き者にしたのは大后」「自分もヘンリーのことを悲しむフリをし、【パパス】に全責任をなすり付けた」「あの性悪女には今に天罰が下る」と、重要な台詞を述べている。
 
だが、「デールを国王に就けたい」という一念しかなかった彼女にとって、サンタローズを焼き討ちにしたところで彼女には何の利益ももたらさないので、これは彼女の仕業ではないと考えるのが妥当であろう。
サンタローズを襲撃した名目は、前述の老人の証言どおり、「パパスのせいで王子が行方不明になったから」という、八つ当たりも甚だしい無茶苦茶なものであり、ラインハットの兵士たちも「何の罪もない村を滅ぼした」と認識しているようだ。
 
主人公たちが偽大后を滅ぼしたあとは、悪政を行っていた太后は魔物が化けた偽物だったことが国民にも周知され、さらに王兄ヘンリーが生きて戻り、これを撃退したという情報も重なったことで、国を上げての祝賀モードで一件落着、ということになった。
その後は、引き上げられていた税は正常化され、鎖国状態も解除、生活が苦しい国民には国庫の食料を施すなど、わかりやすい善政が敷かれている。
しかし、この変化は、ラインハット国内および規制が解除された【ビスタ港】のみに留まり、近隣のサンタローズやアルカパにまでは伝わっておらず、事件解決後も、しばらくはラインハットの悪評が解消されることはない。
主人公が結婚する頃になってから、ようやくラインハットの国政が正常化した、という情報がアルカパにも伝わるが、「太后が偽物だった」といった具体的な話までは伝わっておらず、不思議がる住民たちの様子が伺える。
また、アルカパにいる武器屋の主人は「ラインハットに行くのはごめんだね」と発言しており、不信感は完全には払拭できていない。偽大后を滅ぼす前に彼のもとを訪れ、夜になってから話しかけると「デール様が王になってからはいけねえや」と、ラインハットの国政が豹変した時期についてを教えてくれる。
 
なお、ラインハットに侵略されたサンタローズは、青年時代後半になってもまともに復興しておらず、エンディングまで復興はお預けとなる。
 
虚栄心からか、幼年時代に彼女に話しかけると尊大な態度を取るが(地下牢で会った時の態度も尊大さが少し残っているが)、事件解決後は過去の傲慢を反省しており、今後は出しゃばらないことを約束した。また、過去の暗殺未遂の罪を問われることはなかったようだ。
これについては、地下牢に長年幽閉されたことで、既にある程度の報いは受けたこと、被害者であるヘンリーが彼女を受け入れる意思を示したこと、また国王デールの実の母であるという事情も勘案されたせいかもしれない。
 
時期によって城内での彼女の居室はコロコロ変わっており、幼年時代では幼いデールとともに城の西側の部屋で暮らしていたが、青年時代初期は本来は王の部屋であるはずの最上階に偽物が居座り、本物は地下牢に幽閉。
ラインハットが平和になると、最上階はヘンリー夫婦に譲り、自身はかつてヘンリーが使っていた城の東側の部屋に移った(昔使っていた西側の部屋は、【デズモン】という学者に与えられている)。
このせいで、【きねんオルゴール】を入手するイベントの際には、モンスターをぞろぞろと引き連れた恩人に部屋内を往復されるハメになる。何とも落ち着かない。
 
青年時代後半にラインハットを訪れると、彼女の姿は見えなくなっている。しかも、彼女の存在について言及する者は誰もおらず、生死不明である。
王族暗殺(未遂)という、死刑に処されても文句は言えないほどの前科があるとはいえ、一度放免された身であるから、何らかの刑が課されたとは考えにくい。長年の幽閉生活が祟って病気で亡くなったのかも知れないが、何しろ誰も教えてくれないので、想像の域を出ない。
彼女が使っていた部屋は、義理の孫である【コリンズ】に受け渡されている。
 
彼女が溺愛したデールは、当初はどこか頼りなげだったであったが、偽太后の事件以後、兄ヘンリーの補佐もあってか、とても立派な王になったようだ(城の兵士にいる兵士が述べている)。彼女の執念も報われたであろうか。
デールが本物の母親と偽太后の区別がつかなくなった時も、本物はデールへの愛情が感じられる言葉を向けており、デールへの愛情だけは本物なのだろう。
一方で、デールはもともと国王にはなりたがっておらず(主人公が幼年時代のころにデールの元へ向かい、話しかけると「王様になんてなりたくないよ」と発言している)、太后の起こした出来事を受けて、後継者争いを未然に防ぐべく、結婚はしないと決めている(城内にいる兵士の1人の証言)。息子の人生に大きな影響を残してしまっている。
 
王族の誘拐・暗殺依頼という行為は【グランバニア大臣】も同じことをしでかしているが、相手が魔物であると分かったうえで直接依頼し、自国内に魔物を招き入れた大臣とは違い、彼女の場合は人間のゴロツキに依頼しただけである。
魔物に成り代わられる事態になったことに対しては、のちに彼女自身が「なぜそうなったのかはわからない」と述べている。
 
誘拐の実行犯3人のうちの1人が【オラクルベリー】の地下牢に捕まっているが、夜に彼の元を訪れて、牢屋の外から話しかけると「王妃さま それでは約束が…。あっ 親分! ぎゃー!」と寝言を言う。【古代の遺跡】に白骨死体が2体転がっていることから、ほかの2人はこの場所で「王妃の姿をした何者か」に始末されたのだろう。
なお、太后自身が腹心を使って始末したのか、このときすでに魔物と入れ替わっていたのか、までは分からない。
ラインハットの地下牢で幽閉されている彼女に会った際、彼女自身が
 
「たしかに10年前 ヘンリーをさらわせ 亡き者にさせたのは わらわじゃ」
 
と告白しているので、ヘンリーの誘拐をゴロツキに依頼したのは間違いなく彼女である。
しかし、ヘンリーをさらい、古代の遺跡で酒盛りをやっている賊の1人が、酔っぱらいながらも「王妃に王子を始末するよう頼まれたが、『殺せ』とは言われていない」と明言している。古代の遺跡に連れ去ったのも彼らの独断であって、彼女はこの事実を知らない。
また、太后に付き従って人里離れた遺跡にまで出向き、ゴロツキを始末するような腹心も作中には登場していない。

小説版

ペシュマレンドラという名前で、もとは踊り子であった。
地下牢へ閉じ込められた際に、ヘンリーの前で罪を負って自害しようとするが、ヘンリーその人によって止められる。小説版の彼女はまだ王族として国を乱した責任を取ろうとする意思はあったようだ。
ヘンリーはこの時、「あなたが死んだら自分は誰を母と呼べばいいのか」と説得している。
ヘンリーを抹殺しようとしたのは紛れもない本物の太后の方なのだが、その憎むべき相手であっても「母」と呼んだヘンリーの成長が感じられる隠れた名場面である。