【復活の呪文作成プログラム】

Last-modified: 2023-10-09 (月) 16:43:16

概要

FC・MSX・MSX2版のDQ1やDQ2の【復活の呪文】を作成するプログラム(ツール)。
名前・経験値・ゴールド・アイテム・フラグなどを任意に設定した復活の呪文を出力することができる。
Windows用のフリーソフトとしてDQ1・DQ2ともにさまざまなツールが公開されているので、「復活の呪文 ツール」などの単語で検索してみよう。
以下にその主な2つの機能を紹介する。

チート的な復活の呪文を作成する機能

自分の好きな名前で経験値や装備を最高にして無敵気分を存分に満喫するも良し、逆に通常ならあり得ないハイパー縛りもよし、 【しのくびかざり】【ゴールドカード】といったレアアイテムを思いのままに手に入れるも良し、特定の状況を作り出して実際のゲーム上で検証・確認するも良しである。
 
DQ2のツールには、【ローレシアの王子】の名前を入力すると、【サマルトリアの王子】【ムーンブルクの王女】の名前を自動的に表示する機能を備えたものもあり、プレイ前に自分の好きな組み合わせの名前を見つけることもできる。
 
また、ストーリーを無視したフラグやアイテムの組み合わせや、本来は1つしか持てないアイテムを複数持つといったことも自由自在で、さらに通常のプレイでは有り得ない次のような状態を作り出すこともできる。

DQ1

エンディングでバグを発生させる

本来は竜王と戦うときには持っていないはずの【ぎんのたてごと】【にじのしずく】と同時に持つ復活の呪文を作成すれば、竜王討伐後のエンディングで王様が2人登場するバグを見ることができる。

おうじょのあいと交換するアイテムを制限する

【おうじょのあい】は入手時に持ち物が一杯だと、専用枠を持たないアイテムで最も安いものを1つ奪われてしまう。
今作では重要アイテムが少ないので通常プレイだと重要アイテムだけでアイテム欄を満たすことはできず、必ず量産可能なアイテムが奪われる。
しかし復活の呪文を捏造して同じ重要アイテムを複数所持していると、通常では見られないバグをいくつか見ることができる。

  • あまぐものつえを奪われる

王女の愛を持っておらず、【あまぐものつえ】を含む重要アイテム(【しのくびかざり】でも可)だけでアイテム欄を全部埋めた復活の呪文を作り出せば、ローラ姫を救出後に王女の愛との交換で何故か雨雲の杖を奪われてしまう。もちろん虹の雫を持っていなければ銀の竪琴が再入手できるので詰みにはならないのだが。
なお、なぜか雨雲の杖以外の重要アイテムと死の首飾りは奪われることが無い。

  • 呪われたアイテムが無くなるのに呪われたまま

【のろいのベルト】を1個だけ持ち、残りは絶対に奪われることの無いアイテムでアイテム欄を満たす。この状態でローラ姫を救出し、ラダトーム城の門兵よりも奥に侵入した後に呪いのベルトを使って呪われる。そうすると呪われているにもかかわらずローラ姫は呪いのベルトを無理矢理奪っていく。これにより、呪いのアイテムを持っていないのに呪われているというめずらしい状態になる。城下町で呪いを解いてもらうことはできるが、その際にアイテムが何も無くならないという珍現象が起きる。

  • ローラ姫を助けても王女の愛が入手できない

雨雲の杖以外の重要アイテム(死の首飾りを含む)だけでアイテム欄を満たした場合は、ローラ姫を連れ帰っても王女の愛が手に入らない。
台詞のうえでは通常と同じく贈り物をしたいという旨の台詞が流れるのだが、文字通り形の無い愛ということだろうか?
これにより「王女の愛を持っていないのにローラ姫が玉座に座っている」状態を作ることができる。
むろん復活の呪文を入力するたびにローラ姫が【沼地の洞窟】に戻されてしまうのだが。
 
これを応用すれば、常にローラ姫を抱きかかえたまま冒険を進める一助になるかもしれない。特に【ノーセーブでクリア】を意識せずとも、再開するたびにローラ姫を迎えに行けば毎回おたのしみし放題となる。まあどのみち復活の呪文を捏造するのであれば普通に持ち物から王女の愛を毎回削除すればよいだけの話なのであまり意味は無いかもしれないが、それでも最初の1回しか捏造ツールを使わないで冒険を進められるという利点はあるので、そのへんはお好みで。
死の首飾りであれば謎解きには関係が無く、かつ捨てることもできるので、アイテム欄をこれで埋めておけば序盤から物語を始めることもできる。もっとも以下のような制限により、物語を進める難易度は多少高い。

  • 常に特殊アイテムでアイテム欄を埋めるため、薬草と鍵以外の消費アイテムを一切持つことができない。
  • 復活の呪文を聞くたびにローラ姫が離れるので、聞いたばかりの復活の呪文をいちいち入力せねばならず、こまめなセーブには向かない。
  • ローラ姫を迎えに行くたびに毎回【かぎ】を消費する出費も地味に痛い。
  • 当然だが王女の愛が無いため、【ロトのしるし】の座標は自力で見付ける必要がある。
  • 前述のように雨雲の杖はローラ姫に奪われる対象であるため、銀の竪琴は虹の雫を得られる直前まで交換しないように気を付ける必要がある。
  • 虹の雫を入手するときアイテム欄に1つ空きができてしまうため、【ようせいのふえ】は虹の雫を入手した直後に拾う必要がある(フラグによっては死の首飾りも1度だけ再入手可能だが、かなりの手間になるためお勧めはできない)。

DQ2

装備の個数を増やす

そのキャラが装備可能な装備品であれば、同じ箇所にいくつでも装備した復活の呪文を作成できる。
例えば武器の二刀流や防具の重ね着なども可能で、もちろん、そのぶん攻撃力や守備力を増やすことができる。

没アイテムを所持する・本来装備できない武器や防具を装備する

【みみせん】【しのオルゴール】といった没アイテムを持っていたり、サマルトリアの王子やムーンブルクの王女が本来なら装備できない武器や防具を装備した状態の復活の呪文は不正とみなされ、通常は【じゅもんが ちがいます】と表示され使えないのだが、これを使えるようになる裏技も存在する。
これは、不正な復活の呪文も入力完了時にメモリにデータが記録されるためで、そのデータをできる限り上書きしない別の復活の呪文を使うことで、不正な復活の呪文のデータを残したまま再開できるという仕組みである。
その手順は以下の通り。

  1. ツールを使用して、装備不可の武器や防具に装備のチェックを入れた状態での復活の呪文Aを出力する。
    また、没アイテムを持たせる場合はローレシアの王子ではなく、仲間のどちらかに持たせる。
    (これはツール上でも「装備できないアイテムを装備しています」「不正なアイテムを持っています」などの警告文が表示されるが、復活の呪文は出力される)
  2. 復活の呪文Aを入力して「じゅもんが ちがいます」のメッセージを表示させる。
  3. そのままリセットせず、不正な装備をしているキャラが仲間になっていない正常な復活の呪文B(ローレシアの王子1人のみ等)を入力してスタートする。

すると復活の呪文Bのメンバーしかいないのだが、戦闘になると存在しないはずの復活の呪文Aのキャラが装備品もステータスもそのままに登場し、戦闘に参加する。
この状態で仲間にすると、ステータスや装備品が復活の呪文Aのものだということがわかる。

エンカウント0状態を発動する

ツールによっては、エンカウント0状態の復活の呪文の作成も可能。
ただし、イベント等で強制エンカウントする場面で【フリーズ】する。
この状態はゲーム内で復活の呪文を聞くことで解除できるため、この呪文を作成するときは【ふっかつのたま】を仲間の誰かに持たせておくとよい。

成文型復活の呪文を作成する機能(語呂合わせ機能)

ツールには、意味を持つ日本語の文章になっている復活の呪文の捏造をサポートする機能も搭載されていることが多い。
これは、途中まで完成している復活の呪文に、データの整合性がとれるよう穴埋め式に残りの数文字を検索してその候補を表示する機能で、その補った文字によっては文章のように読める復活の呪文が出力される場合がある。
こうして発見された語呂合わせの復活の呪文が「予言」などと呼ばれて世間を賑わすことがあるが、ほとんどの場合、この手のツールで捏造されている。
ただし、ゲームとして正常な復活の呪文かどうかのチェックが厳しいために完全に自由な文章というわけにはいかず、捏造には手間がかかる。
 
俳句形式のDQ1では最後の3文字で調整されることも多く、その部分が唐突だったり強引であることが少なくない。
実際には別の部分にチェックの厳しい部分があるので一筋縄では行かないのだが、逆を言えばその部分を通過できるフレーズさえ見付ければ、それをベースに文章を構成し、最後の3文字での調整に持っていける可能性が多少高まる。むろん別の場所で調整するのも自由である。
こうした事情からか、有名な成文型復活の呪文には、ちょっとした部分違いである多数のバリエーションが発見されることが多い。
 
ちなみに出鱈目な復活の呪文でも1/256くらいの確率で通ると言われているが、あくまでチェックコードが8ビット分あるというだけである。
それ以外にもいくつかの制限があるため、実際にはもっと確率が低い可能性がある。
例えばあぶない水着を持った復活の呪文がFC版DQ2では使えないように、未設定のデータが含まれても不正な復活の呪文と判断される。
DQ1の場合、アイテムは空欄を含めて15種類であり、これを4ビットで管理しているため、未設定アイテムが1つ存在する。
このためアイテム欄1つあたり1/16、8個では約40%の確率で未設定のデータを参照してしまう。
さらに、やくそう・かぎの所持数は0~6個しか有効でないのになぜか4ビットずつ用意されているため、それぞれ9/16の確率で不正になってしまう。
後からゲームバランスを調整できるように、最大15個まで所持できるように試行錯誤する可能性を想定した設計なのかもしれない。
しかし結果的にやくそう・かぎの部分だけでも約81%の確率で復活の呪文が不正となってしまう、チェックの厳しい仕様となった。
これはDQ1の復活の呪文の13~15文字目に相当するため、この3文字が特に通りにくいことを意識して語呂合わせする必要がある。
 
なぜ2つのデータが3文字にまたがっているかといえば、文字を数値に変換したときの文字間の差分量がデータに影響するからである。たとえば13-15文字目の部分を同じ文字の3連続(つまり差分ゼロずつ)にすると、それぞれ薬草15個・かぎ12個のデータに対応している。これは上限の6個を超えているので、そのような復活の呪文は必ず不正になる。同じように15-16文字間の差分は道具欄の6個目、19-20文字間の差分は2個目の持ち物に反映され、そこに同じ文字が2つ続いた場合は未設定アイテムに対応するので、やはり不正と見なされる。このため、最低でも13-16文字目と19-20文字目のどこかにおいて同じ文字が連続していたら通らないことはすぐに分かるので、語呂合わせの際は覚えておくと良いだろう。
見方を変えると、同じ文字ばかりを20文字連続入力などという子供の考えそうな簡単な手段では復活の呪文を捏造できないようになっていることが分かる。できるだけカーソルを動かさずに手早く入力できる復活の呪文を探したとしても、DQ1では最低でも4回はカーソルを動かすことになる。

復活の呪文の修復

また、語呂合わせ機能を利用することで、書き写しに失敗した復活の呪文を修復する一助になる場合がある。
間違いが含まれていそうな怪しいフレーズの部分を数文字ずつ一度に検索することができるので、手作業では確認しにくい「文字の入れ替わり」が発見しやすくなることが利点である。むろん同じ範囲であれば濁点の有無や、だ行とざ行の間違いなどもまとめて検索できることになる。
しかし主人公の名前などのステータスの一部を固定して検索する機能などは備わっていないため、多くの候補の中から目的の復活の呪文を発見するまでに相当の労力を費やす可能性がある。
結果的に、以前の復活の呪文からやりなおしたほうが手間が少ない場合も少なくは無い。
 
コツとしては、書き写しを間違えた場所によってどのステータス(名前、経験値、ゴールド、フラグ、装備、アイテム)が変わっているのかを探ることである。
この手のツールには、実際には使用できない復活の呪文であっても一応ステータスを表示できるものがある。
書き写しに失敗した復活の呪文が示すステータスを、本来のステータス(記憶が頼りだが、以前の復活の呪文も参考になる)と比べることにより、修正すべきステータスがどれであるかを探ることができる。
あとは先頭から1~2文字ずつ順番に文字を変更しながらステータスの変化を観察していけば、何文字目に間違いがありそうかが見えてくる。
特定のステータスが複数の文字にまたがって影響する場合もあるので、隣り合った2文字ずつを探っていくのも有効。
間違いがありそうな部分が何文字目と何文字目であるかが特定できたら、そこをワイルドカード指定して「使用可能な復活の呪文」の候補を表示させ、目的のステータスに合致するものを探せばよい。

歴史

この手のチートツールはDQ1の発売当初より存在しているが、メーカー側からすると、建前上は好ましい存在とは言えないだろう。
しかし、コンピュータプログラムに詳しい者にとっては復活の呪文の解析やツールの作成はそれほど難しくはなかったようで、 今となっては信じられない話ではあるが、市販のゲーム雑誌にこのプログラム(ソースリスト)が掲載されており、読者は各自でそれを手元のパソコンに打ち込んでいたのだ。
『ファミコン通信』(現・ファミ通)には、現在では【オホーツクに消ゆ】の音楽などで知られるゲヱセン上野がMSX BASICで作成したDQ1の復活の呪文作成プログラムが掲載されたことがある。
また、『マル勝ファミコン』1986年創刊11号にも、ファミリーベーシックで作成した同様のプログラムが掲載された。
 
その後、パソコンの性能向上やインターネットの普及などで復活の呪文の解析がさらに進み、各種パラメータを与えて呪文を作成する従来からの機能に加えて「語呂合わせ機能」も搭載したツールが多くなり、現在ではこの2つの機能を備えたツールが主流となっている。
各ツールによりさまざまな個性がみられるこの語呂合わせ機能はアルゴリズムの洗練などもあってより便利になり、また検索スピードも高速化したためか、今日では多くの語呂合わせ復活の呪文が生み出されるようになった。
 
先述したとおりメーカーにとっては決して好ましいツールではないものの、スクウェアとエニックスの合併後にはなんと公式でも復活の呪文が作成されたのだ。
ファイナルファンタジー12の「トロの剣」に記されている20文字の言葉。それはまさしくDQ1の復活の呪文である。

  • なお、この復活の呪文はDQ11でも使用可能で、入力するとデフォルトよりもやや強い装備を持った状態で最初からプレイ出来る。