阪神タイガース・植田海(うえだ・かい)の呼び方の変遷。阪神ファンの植田への愛情の移り変わりがよく分かる。
当初の期待
2014年ドラフトで5位指名を受け阪神に入団*1。新人時代から俊足ぶりと守備力に定評があり、阪神ファンからは期待の若手として密かに注目されていた。
二軍で順調に成長し、2018年はポスト大和(現DeNA)を期待され開幕一軍の座を掴む。開幕後しばらくは代走要員として起用されていたが、大山悠輔・鳥谷敬・北條史也らの不振、上本博紀の故障離脱という要素が重なりスタメンに定着。4月終了までにチームで僅か1個だった盗塁数を激増させる貴重な活躍を見せた*2。
この飛躍で植田は「海(かい)くん*3」と呼ばれるケースが増え、ファンと知名度を増やしていった。その韋駄天ぶりから「甲賀忍者*4」や「海速急行*5」のあだ名が付けられた。
不調と評価の転落
足が非常に速く、二塁から単打で悠々と生還したり、特に2018年は高い盗塁成功率*6を記録する。打撃でも選球眼が良く、小技にも優れるなど、ファンはさらなる期待を膨らませた。
しかし、試合出場を重ねているうちに元々難があった打撃成績は下降、さらに良いとされていた守備面でも打球反応の遅さ、守備範囲の狭さ、肩の弱さを露呈し外野守備にも挑戦したが一軍レベルではなかった。
そして阪神ファンをさらに悩ませたのは、得点圏での異常なまでの弱さ。
2018年8月末まで得点圏打率.028(36-1)しかも打点0の体たらく。
そして7月17日の読売ジャイアンツ戦(甲子園)で「連続無打点打席数の世界記録(204打席)」を更新してしまった*7*8。
これらの低迷により阪神ファンからの評価も段々と転落、呼び名もそれに伴い扱いが悪くなっていき最終的には「こいつ」呼ばわりされることとなった。
「プリウス植田」の誕生
元々攻守にミスが目立つ植田だが、2019年は走塁面でのボーンヘッドが特に目立った。
- 5月23日のヤクルト戦(甲子園)
あわやサヨナラ勝ちをフイにするボーンヘッドをやらかす。試合終了後、福留孝介に叱責される。 - 6月5日のロッテ戦(ZOZOマリン)
9回一死三塁、一打同点の場面で高山俊が放ったレフト前ライナーを清田育宏がダイビングキャッチ。この時植田は三塁を飛び出していてホーム付近にいたため、サードに送球されてアウト*9。変則ゲッツーで試合を終わらせたため、現地も含めた多方面から熱い罵声が浴びせられた*10。
なお、試合後矢野燿大監督は「ギャンブルスタートのサインをした」と釈明しているが、植田が打球の行方を追っている様子も分かっており、明らかに戻れると判断している者の方が多い。
これが植田のボーンヘッドにしろ矢野監督の指示にしろ、「その読み、的外れやのぉ~。」と言わざるを得ないプレーだった。
これまでのこともあり、またこの時期トヨタ・プリウスが度々暴走事故を起こしていたことに掛けプリウス植田という蔑称が誕生した。
2020年以降
2020年はついにショートとして起用されることがなくなり、セカンドと外野で起用されるようになった。また売りの走塁では2018年をピークに盗塁も減り成功率も下がり、2020年は13企図9成功で成功率は.692、赤星式盗塁1であった。さらに相変わらずの貧打のため首脳陣からの期待は年々低くなり、2021年も山本泰寛や中野拓夢が加入したためやはりショートとして起用されることはなかった。開幕は故障で出遅れたものの一軍復帰後は代走の切り札として起用され、11企図10成功で成功率は.909、赤星式盗塁8と走塁面では復調した。また、ジェリー・サンズ、メル・ロハスJr.、糸原健斗の守備固めとしても起用された。