学振DC

Last-modified: 2021-06-03 (木) 19:58:49

学振DCとは博士課程学生の誰もが憧れる「勲章」のことである。

学振DCとは

学振DCとは、日本学術振興会特別研究員DCのことである。
博士課程の学生に対して月20万円の研究奨励金(要するに給与)と科研費をくれるという、博士課程学生の誰もが憧れる、文字通り「夢のような」制度である。
ただし、この申請と審査は厳しいものであり、ごくごく限られた学生しか学振DCを得ることはできない(分野によって採択率が異なるため一概には言えないが、、、)。

この他、博士卒業後のポスドク向けの「学振PD」や「海外学振」というものもある。これもまたポスドクにとっては「勲章」の一つとなり、後のアカデミックポストを目指すにあたって有利となる。
(当たり前だが、学振PDや海外学振のほうが研究奨励金は高い。ただし、普通に就職した場合と比較すると、、、!?)

学振DCもっと詳しく

学振DCに採用されると、月20万円の給料、いわゆる研究奨励金をもらえる。ただし、ここから税金や各種社会保険を支払うため、実際の手取りは16万前後となる。ここが落とし穴。
あと、ここから大学の学費を支払うので、実際の手取りはさらに減ることに(T_T) (ただし大学によっては学費免除制度あり)

また、採用された学生が自由に使える科研費、いわゆる特別研究員奨励費をもらえる。これは研究計画に基づいていくら欲しいか申請するものなので、金額は人と研究によっていろいろ。実験系なら年間100万円くらいが目安。当たり前だが、研究に関するものしか買えないし、買ったものは全て所属する研究機関、要するに大学の備品扱いとなる。

学振DCの種類

学振DCには、採用されるタイミングに応じてDC1とDC2がある。

  • DC1:M2のうちに申請・内定が行われ、D1からD3の3年間を学振DCとして過ごせる。
  • DC2:D1のうちに申請・内定が行われ、D2からD3の2年間を学振DCとして過ごせる。

その他、DC2はD2のうちに申請・内定が行われ、D3の1年間を学振DCとして過ごす、なんてこともできるらしい。この場合、もしD3で博士を卒業した場合、学振DC2は1年で辞退、もしくは、学振PDに切り替え、という形になる。学振PDに切り替えの場合は、同じ研究室で残り1年を同じテーマでPDとして研究し、お金と科研費をもらえる。ただし、PDに切り替わったからといって給料が上がるわけではない。博士卒業しても手取り16万はいろいろおわってる。

っということで、最高3度まで申請に挑戦できる。あのしんどい申請を3度もやるとなると、相当な根性が必要である。

学振DCの申請と審査

学振DCの審査は、申請書と面接の2つで行われる。申請書の完成度が高い優秀な学生は面接免除で内定する。
学振DC1であれば、M2の5月くらいが申請書の締め切り。10月に申請書の合否判定がされ、面接免除での内定or面接へ進むor不合格、の判定が下される。
面接は11月くらいに行われ、12月に面接合否が下される。
修論前に面接の準備をするのは正気の沙汰ではないので、面接免除で受かっておきたい。

申請書

学振DCに応募したいならまずは申請書を書く。これは学振DCのページに様式が掲載されており、この通りに書けば良い。
学振DCは普通の科研費と同じく、研究にお金を付ける、というスタンスとなっている。なので申請書には、学振DCに採用されたらどんな研究を行うか、その研究計画を書く。
研究計画を書く、という経験はおそらく全ての申請者が人生はじめての経験となるだろう。どうかけばよいかわからないだろう。
安心してほしい。「学振 申請書」などでググるといくらでも参考は出てくる。また、大上先生の「学振申請書の書き方とコツ」に書くべきこと、気を付けるべきことが全て書かれているので、1冊持っておくとよいだろう。
時間は5月まである。書いたものを何度もブラッシュアップし、「僕の考えた最強の申請書」で勝負をしかけるのだ!!

面接

私は面接免除だったのでよくわかりません。知ってる先輩は面接の用意してたけど、修論の予備審査と重なってめっちゃ大変そうやった。

当たり判定

結局どれくらいのレベルなら受かるんだよお!!というのが学振申請者の心からの叫びである。以下に私含めた観測範囲内の当たり判定を挙げる。

私(DC1面接免除)
研究計画の完成度は普通、だと思う。ただし、申請時の業績において
  • 筆頭査読付き英語論文:1
  • 筆頭査読付き国際会議発表:5
  • 筆頭国内学会発表:3(うち1件は優秀発表賞)
    という業績パワーで殴り込んだ。そのおかげで面接免除になったと思ってる。
知人その1(DC1面接免除)
研究計画において、全く新規で独創的なことをやろうとしてた(ただし実際にやったかどうかは、、、)。
業績は査読付き国際会議発表が2、国内学会発表が4だった。
知人その2(DC2面接免除)
M2のときは学振DCという制度を知らなくて申請しなかったらしい。
研究計画に図が1つもなく、MS明朝10.5ptで延々と難しい文言を並べていた。
ただし、筆頭査読付き英語論文4本という圧倒的業績パワーをもってして面接免除で通っていた。かっこいい。
知人その3(DC2申請書落ち)
研究計画の完成度は良かったと思う。ただし、研究の後追い感が若干しなくもない。
業績は査読付き英語論文が1、査読付き国際会議発表が1、国内学会発表が2だった。
査読付き論文があるので面接に進んでもよいのでは、と思ったけど、申請書落ち。たぶんDC2は査読付き論文1本程度では決定打にはならん。

以上をまとめると、DC1においては申請時に筆頭査読付き英語論文をもっているかどうかが大きく影響する。
これは大学の学振DC説明会でも言われた。
DC1においては、実質的にM1の間にそれなりの成果を出すのは難しい。だからこそ、ここで査読付き論文の1本でも出しておくと圧倒的なのだ。研究計画の中身が多少アレでも、なんとかなる。
もっとも、査読付き論文がなくても、研究計画書の内容が良ければ面接免除になった例はあるので、査読付き論文が無いからといって悲観することはない。むしろ、実質的にM2の初めまでに論文を出してるやつなんて少ないので、多くの申請者は研究計画書の内容と国際会議発表の数で勝負すると言ってもいい。
逆にDC2にもなると、みんな学振DCとる前提で研究頑張ってる猛者が増えてくるので、査読付き論文1本程度では決定打にはならない。むしろ、1-2本は持っていて当たり前、と思ったほうが良い*1

ちなみに、私は学部の研究室配属の時点で博士に行くことを決めており、学振DCのことも知っていた。なので研究室配属時点で、M1のうちに論文1つ出したいです、と指導教官に伝えていた。
当時の指導教官は話がわかる方だったので、小粒でもコンスタントに結果が出るテーマをアサインしてくれ、M1の夏に、比較的難易度の低いレター論文に投稿して採択された。
DC1においては、論文があるかないか、が勝負どこなので、論文のインパクトファクターとかはあまり関係ないと思う。
もしあなたが学振取得を目指す修士ならば、筆頭査読付き英語論文論=面接免除、という意気込みでがんばってほしい。
あと、JASSO奨学金返還免除も筆頭査読付き英語論文論を持っているかどうかが大きな分かれ目となるので、インパクトファクターとか関係なくとりあえず1本出しておこう。

学振採択後

おめでとう!キミは学振DCに採択された。
その後のことは学振DCの生活を参照。

学振DCに類似した制度

残念ながら学振に落ちたキミ。まだ諦めてはいけない!
学振以外にも、博士課程でお金がもらえる制度はいくつかある。

大学ごとの支援制度
大学ごとに博士課程学生への支援制度がある。私の大学では、学振DC相当の給料と研究費(科研費)をくれる制度があった。しかも、これは給与所得ではないので、手取りは学振DCよりも高い。ずるい。
リーディング大学院
よくわからんけど、リーディング大学院って制度が最近はやってて、結構なお金がもらえるらしい。ただし、必修の授業や必修のインターン、必修の仕事、などなどがあり、金に見合った労力がかかるっぽい。知ってる先輩がこれに採択されてたが、とても大変そうだった。私なら応募しない。
理研 大学院生リサーチ・アソシエイト
理研で研究をするかわりに月16万くらいもらえる制度。理研で研究が前提なので、配属される研究室のテーマと一致する理研の研究グループを探し出し、しかもそこに通える、というだいぶレアなケースにしか使えない。でも、待遇は良さそうだし、理研という日本が誇る研究機関で研究できるのは魅力的。私は学振DC1におちたらこれに応募するつもりだった。
その他民間の奨学金
民間の奨学金でも、学振相当のお金をもらえる制度がいくつかある。

ちなみに、私の観測範囲内での博士課程学生は、全員が何かしらのお金をもらっていた。どれも学振DCとおなじくらいをもらっていた。
そもそも博士まで行くのだからそれなりに優秀でお金をもらいやすい、というのもあるし、理系国立ならばある程度の支援は期待しやすいと思う。

  • アクセスカウンタ合計 ?

*1 ちなみに、博士課程終了後のポスドク向けの学振PDや海外学振は、3-4本持っていて当たり前、というレベル