学振DCの生活

Last-modified: 2021-06-03 (木) 19:59:04

学振DCにうかってからのことを考えてみよう。

学振の足枷

まずは悪い話をしよう。学振DCに採用されると

  • 副業禁止
  • TA・RA・インターンは指導教官の認可制

といった制限がつく。私が現役の頃は、TA・RA・インターンに時間制限が付き、さらに奨学金の併給も禁止されていた。その時代に比べるとまだマシにはなった。
TA・RAは研究室とも関連してくるため、やりすぎることもなく、いい感じの小遣い稼ぎにはなる。

問題はインターンだ。例えば情報系に多い、企業で数ヶ月働きこんでお金もそこそこもらえるインターン、というのは、指導教官がよほどの仏でないかぎり難しいだろう。その数ヶ月は学振DCの研究をほぼしないことになるので、学振DCの奨励金をもらうのはおかしいだろ!!というのが学振の主張。まあ当然といえば当然。
ただ、1weekや3daysや1dayインターンなどは??である。交通費しかもらえないインターンも??である。
もっとも、そんな重箱の角をつついても仕方がない。
ちなみに私は、1weekのインターンは申請を出して行った。1dayとかはいちいち出してない(交通費しかもらえないやつだったので許して)*1

実際の手取りは?

一般的な場合

学振がくれるのは「研究奨励金」であり、給与ではない、というのが学振の建前。つまり、給与ではないので労働契約はなく、社会保険等々は自分で払いなさい、ただし税制上は「研究奨励金」を給与として扱う、というのが学振の主張。まったくもって意味不明
つまり、所得税や住民税がかかる上に、年金や国民健康保険を自分で払わなくてはならない。また、ここから学費の支払いがある。
簡単に月の手取りを計算すると、下記のようになる。

収入+20万
所得税-1万
住民税-1万
国民年金-1万
国民健康保険-1万
合計16万

税と国民健康保険は前年の収入をもとに計算される。よって、年度によって大きくかわることに注意する。
また国民健康保険は住んでいる地域によって月数千円の違いがあることも注意する。

さらにここから学費が必要なわけだ(T_T)
ここで朗報がある。学振DCは独立生計とみなされるため、大学の学費免除は通りやすくなる。
国立大学だった私は
1年目:前期後期ともに全額免除
2年目:前期後期ともに全額免除
3年目:前期は半額免除、後期は1/3免除
だった。
なかには、学振DC採択者はもれなく全員全額免除、としている大学もあるらしい。うらやましい。

研究遂行経費

学振DCには「研究遂行経費」という制度がある。研究奨励金の3割を研究に必要な経費として認め、課税所得を残り7割にする、というものである。よって、税金・国民健康保険等々が若干安くなる。ほぼみんなが使ってると思う。
さて、「研究奨励金の3割を研究に必要な経費」となるので、年間70万近くを研究に必要なものの購入に当てなくてはならない。ただ、これはあくまでポケットマネーで払うものなので、科研費ほど固くはない。例えば、研究にも使う私的なパソコン、教科書、自宅の机や文具、などなどが当てはまる。学会会員費や科研費で出さなかった学会の旅費等も計上できるので、年間70万なんてすぐにいく。
年度末に遂行経費の報告書を出す。おおざっぱに旅費に〇〇万円、学術調査費に〇〇万円、といった感じで報告する。一応、領収書は5年保管しておくこと、という決まりがある。また、場合によっては全領収書の提出を要求されることもあるらしいが、私は修了した今となってもそんな要求はきていない。よくわからん。
当たり前だが、科研費で購入したものをこれには計上できない。

実際の家計

私の博士課程学生時代の月間家計を大公開しちゃう。

学振収入+16万
TA・RA収入+2万
家賃-5.1万
食費-3万
電気-0.2万
ガス-0.15万
水道-0.15万
ネット-0.4万
携帯-0.1万
差し引き8.9万

地方国立+学費免除だったので生活費含め支出はわりと抑えれた。地方国立なら十分に余裕のある暮らしができる、と思う。逆にTA・RA給料無しで、東京住み、学費満額、はだいぶ詰んでると思う。東京の大学で学振は生活がキツイ、という記事をよく見かけるが、まったくその通りである。

私の場合、TA・RAは時期によっていろいろだが、年を通して平均2万くらいはもらえてたと思う。いい感じの小遣い稼ぎだった。
電気と水道はできるだけ研究室で使う*2ようにして、携帯は格安SIMなので、支出はだいぶおさえれた。

確定申告♡

学振以外からも給料をもらっている、例えばTAやRAをした場合は確定申告を自分でしなくてはならない。
でもそんなに難しくない。まずは源泉徴収票、年金支払い明細、国民健康保険支払い明細、その他生命保険やふるさと納税など、控除に使える記録を用意する。そして国税庁の確定申告のページで申告書を作り、印刷して郵送して完了だ。
学振に受かるくらい頭が良ければすぐ終わるだろう。
普通なら、年金と国民健康保険の控除が効いてくるため、還付金が1万円くらいもらえるはず。
ちなみに、確定申告を忘れていた先輩は追徴課税くらってたww

なお、学振以外から給料をもらっていない場合は、年金と国民健康保険の支払い明細を学振に送れば、向こうで年末調整してくれる。

学振科研費

特別研究員奨励費、通称「学振科研費」とはその名の通り、学振DC採択者がもらえる科研費である。
学振DCは研究者の育成という観点から、学振科研費を通して研究費の使い方を身を以て教えてくれる。
計画的に研究費を使うことも、研究者に必要なスキルのひとつなのだ。

この学振科研費は内定後の科研費申請書にて申請する。研究計画に基づいて、年度ごとに何にいくら使うか、の予定を書き、まとめて申請する。
例えば、

備品旅費消耗品その他
1年目30万10万20万10万
2年目20万20万20万10万
3年目10万30万20万10万

みたいな感じ。1年目は実験系構築のため備品が多め、3年目は成果発表のため旅費多め、といった具合だ。
なので、備品や消耗品にお金がかかる実験系の研究のほうが高い科研費がつく。また、政府の予算状況次第でも変わるらしい。
なお、これは申請時に3年分の交付額が決定される。
また、申請時の品目通りに使わなくても特に文句を言われたりはしない*3。1年目に芳しい結果が得られず、旅費0の備品40万でもおk。
一応、余った分の年度繰越もできるらしいけど、学振科研費の余り金額なんてしれてるし、繰越申請が地味にめんどいから、きっちり使い切ったほうが良いと思う。

ちなみに実験系だった私は、1年目に100万、2年目に100万、3年目に100万もらえた。おかげで実験系の構築がはかどった。

当たり前だが、科研費で買ったものは全て所属する研究機関、すなわち大学の備品扱いとなる。例えばパソコンを買ったとして、それは大学の備品となり、おそらく資産管理されるだろう。卒業時には持ち出せない。
ただし、卒業と同時に大学や研究機関などのアカデミックポストに赴任する際は、備品の移管手続きを行い、赴任先に持っていける。博士卒業後もアカデミックの世界に残り続けるつもりなら、何がどんな備品として登録されているか、気に留めておくと良い。

  • アクセスカウンタ合計 ?

*1 一応学振ガイドには、金の支給額や期間にかかわらず、インターンは全て指導教官の認可制、とはなっている
*2 修論・博論前は真冬にも関わらず電気代が2000円だった。「お前家で生きてるか」って心配されたw
*3 基盤Sみたいな大きい科研費だと、ある程度研究計画に応じた品目通りの使用しか認められない