ヒロインといや、そういえば今までシンに最も関係のある相手であろう
マユをヒロインにした話ってないんじゃね?!
メサイヤ攻防戦から一年。
眼前の砂時計型のコロニー……プラントを映し出すモニターにゆっくりと手を伸ばすのは一人の少女。
冷たい画面を撫でるその手は、まだ十代にさしかかって間もないだろう年頃の少女らしい柔らかさや
華奢さとは無縁な、無骨な金属で作られた義手だった。
「やっと……会える……
……やっと………」
そぅっとモニターの表面を撫でていたその紛い物の手がぴたりと動きを止める。
「やっと、やっとだよ。わたしやっとここまで来れた」
ギ、と指先から生まれる鈍い音。
「お母さんとお父さんを殺した奴らを、わたし達家族を滅茶苦茶にした奴らを、
みぃんな殺せる力をやっと手に入れたんだよ?
オーブのお姫さまも、プラントの歌姫さまも、正義の騎士さまも、この世界の守り手さまも…………
お兄ちゃんを苦しめた奴らは一人残らず、マユが懲らしめてあげるから」
ギギ、ギ………
画面に映ったプラントを引き裂くように突き立てられた無機質な指が滑る。
「だから、待っててね、お兄ちゃん」
栗色の瞳を柔らかく細め、天使のような微笑みで少女は砂時計を見つめていた。
ついカッとなってやった。今は反省している。
お留守番スレなんて存在すら知らない。
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