ルナマリア◆yb4dHGjFao 01

Last-modified: 2024-03-09 (土) 02:15:17

ルナマリア爆走記_第1話
 
 
「納得出来ないわ!!」

ルナマリアの声が響くここはヤタガラス格納庫。整備班は休憩中である。

「MSの事かい?それならGファルコンを仕上げたらなんとかするからさ」

DXの修理に目処が付き、大規模な戦闘も起こっていない為、余裕がある。
鹵獲したMSをベースにした改造機を作る位ならなんとかなるだろう。

「そうじゃないわよ! なぜこのステキなお姉さんに恋人がいないのよ!」
(そんなことかよ!)
「あー、そういうのはトニヤと話してよ」
「今ブリッジに入れると思う?」

ブリッジは通信士席から放たれる幸せ桃色オーラが充満している。独り者には厳しいだろう。

「休憩時間に居住区で話せばいいじゃん」
「あんな甘酸っぱい青春空間で恋の相談をしろと?」

ガロードとティファが事ある毎に見詰め合っていて背中がむずかゆくなってくる。

「医務室のテクスに相談するとか?」
「あの18禁空間に入り込む勇気ある?」

シンとステラの(検閲削除)がいつ発生するかわからない。今のヤタガラスで一番危険な場所だ。

「と、とにかくねーちゃんは恋人が欲しいんだな? 知り合いに迫ってみるとか」
「例えば?」
「えーっと・・・ユウナ代表とか?」
「カガリさんのことを引きずってるから無理。そもそもあのワカメ頭が無理」
(ひでえ・・・)
「ウィッツとか」
「餌癖が移りそうで嫌」
『俺は餌じゃねぇぇぇぇぇぇぇ』
「ジャ、ジャミルとか」
「確かにかっこいいけどおっさんは無理」
『私はおっさんなのか・・・』『キャ、キャプテン! 私は年の差なんて・・・』
「シンゴとか・・・」
「誰?」
『ぅぅ・・・僕がヤタガラスを一番上手くあつかえるんだ・・・』
「ちなみにあんたも駄目ね」
「どーでもいいよ」

見た目かわいいし、整備班に差し入れをくれたり性格も悪くない。理想が高すぎるだけだろう。
キッドが見る限りヤタガラス艦内で条件を満たすのは・・・
(艦長だよなぁ)

「あーもう!納得できないわ!」
(最初に戻ってんじゃん・・・かんべんしてよ・・・)

結局、キッドの休憩時間はルナマリアの愚痴で潰された。キッドの苦悩は明日も続く・・・

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「天罰を下すべきだわ!」

今日も今日とてルナマリアの声が響くヤタガラス格納庫。キッドは溜息をついた。

「天罰って・・・誰にだよ?」
「艦長よ!我が妹のみならず、偽ラクスにまで手を出してたのよ!」
(なんだ・・・もてない女のひがみか・・・)
「なんか言った!?」
「い、いやなにも・・・」
(な、なんで考えてることがわかったんだ?このねーちゃんもニュータイプか!?)
「とにかく!あんたも協力するわよね?まさかしないとは言わないわよね?」

ここで断れる人間などいるのだろうか?

「ステラ、ちょっと手伝ってちょうだい」
「うぇ?」

「トニヤ、ちょっと欲しいものがあるんだけど・・・」
「なに?」

「キッド、アレは出来た?」
「・・・ほんとにやるのか?」

かくして、モテない女による理不尽な天罰の準備が整った・・・

「アスランさん・・・今日も・・・」
「メイリン!!」

『まったく毎日毎日・・・猿じゃあるまいし!』
『ルナねーちゃん、羨ましいからって・・・』
『なんか言った!?』
『なんでもないです・・・』
『とにかく!ステラ、作戦開始よ!』
『うえぃ!』

メイリンの最後の砦を攻略中、アスランは執務机の影にわずかな気配を感じた気がした。

「誰だ!?」
「え?なんですか?誰かいるんですか!?」
「様子を見てくる。メイリンはここにいてくれ」
「は、はい・・・」

護身用の拳銃を構えつつ机に近づくアスラン。その姿は歴戦の戦士としてのオーラに満ちていた。
・・・パンツ一丁でなければ・・・メイリン特製のセイバーパンツ姿でなければの話だが。

「何者だ!両手を挙げてゆっくり出て来い!」

人影はゆっくりと立ち上がる・・・その姿はウエディングドレスを着たカガリだった・・・

「!!!!!!!」
『アスラン・・・ひどい・・・』
「!!!○×△□●◇???」

ありえない事態がアスランの脳細胞、毛母細胞に多大な付加をかけ・・・意識を奪い取った。

『お、おい!倒れちゃったぞ!大丈夫なのか!?』
『テ、テクス先生を呼んできて!急いで!ステラ!戻りなさい!』
「う、うぇい!」

「つまりちょっと脅かしたかっただけで悪気は無かったと。そう言いたいのね?」

冷静なサラの声。しかし彼女と付き合いの長い者にはわかるだろう。かなり怒っている。

「とりあえず3人には1週間のトイレ掃除を命じます。全く・・・クルーとしての自覚が(ry」

キッドが作った隠し扉からウエディングドレス装備のステラを送り込む・・・
このくだらない作戦によってアスランの毛根へ深刻な被害が発生した。
ルナマリアの言う「天罰」は成し遂げられたハズなのだが・・・

「納得できないわ!」

ルナマリアの叫びがトイレに響く。

「なにがだよ?」

キッドの声には張りが無い。整備の仕事の上にトイレ掃除までやらされているのだから当然だが。

「1時間もの説教にトイレ掃除!私達は悪に天罰を下しただけじゃない!」

いつぞやのラクス・クラインの演説のような危険なことを言っている。

「んな事言ったって気絶させちまったのはやりすぎだろ?」
「あれから艦長は「一人で眠れない」とか言ってメイリンと寝てるのよ!?懲りてないじゃない!」
(それは懲りているとかいないとかのレベルじゃないんじゃないか?)
「こうなったらもう一度天罰を下すのよ!正義は我にアリ!!」

きっと自分はろくでもないない大人になる。そう思ったキッドであった