なのはクロスSEED_番外編2

Last-modified: 2008-02-19 (火) 01:43:01

――翠屋。

 

「さて、今日はみんな何の日かわかるかな?」
「今日……ですか?」
いきなりの士郎の発言に頭上に?マークが浮かび上がるキラ。
カレンダーを見ると今日の日付は2月14日。
(……何かあったっけ?)
脳内に思いつく限りの知識を検索するが、キラの脳内にはヒットしなかった。
「はいはーい! 今日は、バレンタインデーでーすっ!!」
バイトの女の子が元気よく返事をする。
「……バレンタインデー?」
初めて聞く単語に思わず聞き返すキラ。
「キラ君、バレンタインデーを知らないのかい?」
「あ、はい……」
そして士郎からバレンタインデーを教わるキラ。
「女性が男性にチョコレートをプレゼントする日……ですか?」
一通りの説明を聞いた後に理解したキラ。
まぁ、この世界では自分がそんなものをもらえるわけなんかないんだけどね……。
「そう、そして女性は本命のチョコと一緒に自分の気持ちを相手に伝えると言われているんだ。なぁ、母さん」
「そうね、あなた……」
見つめ合う士郎と桃子、そしていつものように二人だけの空間が展開する。
「……さ、開店準備しないと、キラ君、店先の掃除お願いね~」
「あ、はい」

 

こうして翠屋はいつも通りの開店前だった。

 

――隣市のマンション。

 

「バレンタイン……かぁ……」
先程アスランと一緒に買い物から帰ってきたフェイトが一人呟く。
「んぁ? バレンタインって何?」
そして二人が買ってきたドッグフードを流し込むように食べるアルフが聞いてくる。
「……女の人が、男の人にチョコレートを渡す日だって」
「へぇ~そうなんだ~……フェイト、誰かにあげるの?」
いきなりの質問に驚くフェイトだったが、冷静に返事を返す。
「誰かって……あげる男の人なんて……」
ガチャ。と開くリビングのドア。
そこから入ってくる藍色の髪の青年、アスラン。
……いた。男の人が。
そう考えたフェイトは無意識にアスランを見ていた。
「……どうした? 俺の顔に何かついてるか?」
視線に気付いたアスランがフェイトに聞き返す。
「……あ、うん……なんでもないよ」
「? そうか、ならいいんだけど……」
そう言い冷蔵庫から先程購入した緑茶の入ったペットボトルを持ってリビングを後にするアスラン。
「……そういえば」
「ん?どうしたの?」
食べ続けていたアルフがいきなり声を出す。
「何かこのドッグフード……いつものより甘い」
「そうなの?」
確かそのドッグフードを選んだのはアスランだったはず。
ついさっきの事を思い出しながらフェイトはドッグフードの箱を見ると、右下に記載されていた。

 

『愛犬にもバレンタインを!特製チョコレート味!』

 

――夜・翠屋。

 

「ありがとうございました~」
ピークを過ぎたのか、ようやくお客様の数が減ってきていた。
もうすぐ閉店時間なんでいそいそと準備をし始める一同。
そんな中、カランカランと開く扉。
「いらっしゃいませ~」
「ただいま~」
条件反射で返事するキラだったが、扉から入ってきたのは塾帰りのなのはだった。
「あ、おかえりなのはちゃん。どうしたの?」
「あ、うん。えっとね……」
「?」
ゴソゴソと鞄の中を探るなのは。その動作に疑問を感じるキラ。
「はい、これ!」
そういって鞄から取り出した小さい箱をキラに差し出すなのは。
「……これ、って?」
「今日はバレンタインだから、キラ君に……」
「……もしかして、チョコレート?」
「そうだけど……もしかしてキラ君、チョコレート嫌い?」
「あ、いやそうじゃなくて……」
まさか誰かにもらえるとは思ってなかったので驚きを隠せないキラ。
「……ありがとう、なのはちゃん」
素直に感じた気持ちを言葉に出すキラ、そしてなのはのチョコを受け取る。
「お~い、なのは、キラ君、そろそろ帰るよ~」
「「あ、は~い!」」
士郎の言葉に返事するなのはとキラ。

 

……ちなみに……後でなのはからユーノに渡されたのはチロルチョコ……。

 

――夜・マンションの一室。

 

「「ごちそうさまでした」」
食卓にて夕食を済ませたフェイトとアスラン。
アルフに関しては早食いをしたおかげで今は部屋でぐっすり眠っている。
「しかし……今日は結構寒いな……」
時期的に季節は冬真っ只中なのだから気温が低いのは仕方ないのだが、今日は特に冷え込むとの事だった。
「そうだね……あ、そうだ」
「?」
そういって買い物してきたビニール袋から何かの袋を取り出す。
「ココア買ってきたんだけど……アスランも飲む?」
「そうだな……一杯頂こうか」
そういいながら席を立つアスラン。その方向からして行き先はわかるのであえて口にはしない。
そしてその間に牛乳を温め、市販のココアのパウダーと混ぜておく。
そして帰ってきたアスランと一緒に湯気の沸き立つココアをすする。
「……おいしい」
「……ああ…………ん?」
何か疑問を感じたアスランが顔を変える。
「どうしたの?」
「……いや、このココア少し甘くないか?」
「……そうなのかな、よくわからないんだけど……」
「そうか……」
思い過ごしかと思い、考えを霧散しココアを飲むアスラン。

 

……アスランのココアにだけ、一口サイズのチョコが混ぜてあるのは……フェイトだけの秘密である。