なのはクロスSEED_第16話中編

Last-modified: 2009-01-01 (木) 07:43:56

「マズイ!! あのままじゃアスランが!!」

 

ゆっくりと駆動炉へと歩みゆくアスラン。
それをみて歯がゆく声を上げるクロノ。

 

「アスラン!! もうやめてくれ!! あんたまで消えちまったら……!!」

 

涙でぐしゃぐしゃになった顔で叫ぶアルフ。
だが、結界の向こうのアスランには声は届いていない。
そして同じ様にアスランを悲痛な表情で見つめるフェイトは無意識のうちに結界へと触れようとして――

 

バチィッ!!

 

「ッ!!」
「フェイト!!」「フェイトちゃん!!」

 

結界に触れて弾かれ、よろめくフェイトを支えるアルフと心配そうに見つめるなのは。
痛みが襲っているはずなのに、それでもまだフェイトの視線は結界の先のアスランへと注がれていた。

 

「……とめなきゃ……アスランを……」
「フェイト……」

 

アルフに支えられながらなんとか立ち上がるフェイト。
だが、連戦のダメージと精神的な疲労が重なりすぎているのか、立っているのもやっとの状態だ。
ましてや目の前の結界をどうにも出来ないこの状況。

 

「くそっ!! もうどうにもできないのかっ!!」

 

悔しそうに地面を殴りつけるユーノ。
先程から自分に出来る事はないかとずっと結界の構成式を解読しようと試みていたが、
その難解な構成と幾重にも張られた魔導術式はまさに大魔導師の成せる技、という事だろうか。
魔法に関しての知識は確かにあるものの、それはユーノの専門分野ではなく解読できない自分自身に苛立ちを隠せなかった。
だが、そんな中なのはは結界のある一点だけを見つめていた。

 

「…………キラ君」

 

結界の向こうにいるただ一人の人間、キラ・ヤマト。
しかし、唯一の希望であった彼は先程の砲撃の一撃で地に伏せてしまった。
顔面への直撃。非殺傷設定とはいえど、あれでは彼もひとたまりもないだろう。
だが、なのははずっと待っていた。
彼が、キラが、立ち上がってくれるのを。
彼は自分と約束してくれた。もう負けないと、必ず帰って来る、と。
彼は約束を破るような人じゃない。
短い期間ではあるが、なのははキラと一緒に行動していて理解できた部分の一つである。

 

だから――

 

「……諦めないで……」

 

彼女は、想いを言葉に乗せる――。

 

「……諦めないでっ!!! キラ君ッ!!!!」

 

心の底から張り裂けんばかりに上げた声。
突然の大声に驚く周囲の皆はなのはを見つめていた。

 

「キラ君ッ!! キラ君ッ!!!」

 

必死に叫び続けるなのは。
この結界が声を通さない事は知っているはずなのに、それでも彼女は声を出す。

 

「アスラン君を……!! 友達を助けてあげてっ!!!」

 

知らず知らずに涙を流していた。だが、そんな事は関係ない。
念話も届かない結界の向こうに横たわるあの人へと、

 

彼女は必死に想いを言葉にのせ、彼の名を呼ぶ。

 

「――――キラ君ッ!!!!」

 

その影は、まさしく自分と同じ姿をしていた。
だけど、不思議と驚く事は無かった。
キラ自身、心のどこかで感じていたのかもしれない。
自分じゃないけど、でも "同じ" 感覚。

 

――僕は、君の中の隠された力を引き出す為の存在――といったところかな。

 

(僕の、隠された力……)

 

――君の隠された力を発動させて、何度か君の危機を救ったというのは大げさだけど、
  この力をまだ君はコントロールできそうになかったからね。
  でも、今の君になら――託せる。

 

スッと影のキラが手を前に出す。
それに反射的に手を出して、その手を握り締め――握手を交わす。

 

(君と話せてよかった)

 

――こちらこそ。

 

(……それじゃ、そろそろ行くよ)

 

――うん。"あの子"が君の名前を呼んでる。

 

(……ありがとう、"僕")

 

――頑張れ、"僕"

 

そして、二人がいた闇の世界は完全に光に包まれた。

 

「……どうだ、イージス」
『The continuation of the aria is confirmed, and there is no problem.』
 (詠唱の持続を確認、問題ありません。)

 

あの時、背後からのキラの一撃によって何か損傷が出ていないかと心配したが、
何の問題はない。これで、"願い"を叶えることが出来る。

 

「よし……続けるぞ」

 

すっと駆動炉に手を当て、自身の魔力と駆動炉の魔力をリンクさせる。
キラによって強制的に切り離された魔力リンクのやり直し――これだけで済むのだから容易いものだ。
そしてアスランとジュエルシードのリンクが100%に達した、

 

――――――刹那。

 

アスランの背中に走る衝撃。
何かが自分の背中へと直撃した感触、そして徐々に伝わる熱源の痛み。
何が起こったのか、突然の事に困惑が走るアスラン。

 

こ、れは――――!!?

 

よろめきながらも、何とか踏ん張り体勢を立て直すアスラン。
そして、背後へと振り向く。

 

「――――なッ!!!?」

 

振り向いたと同時に視界に入った"モノ"を見て、驚愕の表情を浮かべる。
その視線の先には、瓦礫の山。
そこにうずもれているはずの"それ"が、何も出来ないはずの"それ"が、
瓦礫へと身をゆだねたまま、こちらへとライフルを向けていた。

 

「…………キ、ラ……!!」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

――何とか、間に合ったみたいだ。
意識が戻ってきた瞬間、アスランが駆動炉に触れていたからもう間に合わないと思ったけど、
とっさにライフルで撃ったのが功を期したのか、アスランの背中へとクリーンヒットした。
軋む身体に鞭打つように起こし、視線を結界の向こう側へと向ける。
その視線の先にいたのは、自分の名前を呼んでくれたあの子――なのはへ向けて。
結界の向こうで涙を流していた彼女へと、言葉を紡ぐ。

 

「……ありがとう、なのはちゃん」

 

え? といった表情を浮かべるなのは。
どうやら、こちらからの声は向こうへと聞こえるようだ。

 

「……なのはちゃんの声、ちゃんと聞こえたよ……」

 

――――諦めないで!!

 

心の底にいても、どんな深い闇にいても――声が、聞こえた。
僕の名前を呼ぶ、君の声が――。

 

「だから……もう、諦めない……」

 

握り締める拳、全身の魔力を循環させるように全身の神経を集中させる。
僕のやるべき事、成すべき事、護るべき約束がある、だから――。

 

「……僕は――戦う!!」

 

瞬間、脳裏で何かが弾ける感覚。
今まで何度かあったこの感覚を自分自身の意思で発動させたのはこれが始めてだ。
もう一人の自分に託されたこの力。なぜだろう、今までとは何かが違う感じがする。
発動と同時に身体の魔力が循環していくのがわかる。
ダメージはまだ回復してないけど、僕は――まだ戦える!!

 

タッ――――――!!!

 

軽く踏むように飛翔し、低空飛行のまま全速力でアスランへと飛ぶ。
それと同時に構えたサーベルを振り下ろす。

 

「ッ!!?」

 

それに反射的に左手のサーベルで受け止めるアスラン。
そのままキラの勢いに押されるように後方へと押されていく。

 

「ぐ…………!!」
「……アスラン」
「!!?」

 

押される勢いが止まると同時に発せられたキラの言葉。
どちらも手に込める力は退く事は無く、競り合いを続ける。

 

「……さっき言ったよね、僕が、アスランの立場だったら……僕はどうするって……」
「…………」

 

ギィンッ!! と無言のままサーベルを弾くアスラン。
距離を取ろうとバックステップし、ライフルを構える。
一方キラはアスランを追撃するでもなく、先程投げ捨てたもう片方のサーベルの元へと飛び、
地面に落ちているサーベルを拾い上げる。
それと同時にキラに襲い掛かる紅き魔力弾。
だが、キラはそれに動じる事もなく、両手に持っているサーベルで魔力弾を叩き落す。

 

「!!? くっ!!」

 

叩き落とされたことに驚愕の表情を浮かべ、苦々しく声を発するアスラン。
アスランの射撃は正確無比だ。
的確に急所を狙うその命中率はまさに神業といっても過言ではないだろう。
だが、神業"過ぎた"のだ。
何度も戦ったせいか、それとも長年の付き合いからか、
キラにはアスランがどこを狙ってくるのかが手に取るように解っていた。
後は、その場所にタイミングを合わせてサーベルを降るだけ――。
地を蹴り、宙を舞いつつ魔力弾を叩き落としながらアスランへと接近する。

 

「イージス!!」
『Right and Left sabre conection, Full power sabre "Halberd mode".』

 

ライフルによる射撃が無意味と早々に悟ったアスランは紅槍を手に携え、
近接するキラへと逆にこちらから接近する。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

二人の距離が縮まった瞬間、先に動いたのはアスランだった。
紅槍をキラの頭上へと振り下ろす。
それと同時両手を頭上に構え、二本のサーベルで紅槍の猛攻を防ぐ。
勢いで押し勝てると踏んだアスランだったが、キラもその分背面のブーストを全開にして進撃を防いでいた。

 

「…………僕も」

 

ギリギリと競り合いをしつつ、先程の言葉の続きを紡ぐキラ。
アスランがその言葉に耳を傾けているかどうかはわからない、それでもキラは言葉を紡ぐ。
それが、僕の答えだから。

 

「僕も……きっと君と同じ事をしていたと思う――」
「!!!?」

 

突然のキラの答え。それは先程の自分の発した問いに関しての返答なのだろう。
だが、その答えを予想していなかったのか、一瞬アスランの顔に映る驚きの色。
それと同時に力が緩み、徐々に押され始める。

 

「僕も君と同じ立場だったら、きっと君と同じ道を辿っていた」
「――だったら、なぜ俺の邪魔を」
「だから、僕も君に聞きたい」

 

アスランの言葉を遮るように言葉を紡ぎ続けるキラ。
そして、意を決したように開口する。

 

「君が、僕の立場だったら――君はどうする――?」

 

それは、先程アスランがキラにした問いとほぼ同一のもの。
ただ違うとすれば、それは問いかける相手と立場が逆転しているというコト――。
だが、この問いはアスランの心に大きく響いた。

 

「俺が……お前の立場だったら……?」

 

ポツリと呟いたアスランの言葉。
一瞬我を忘れて思想するアスランだったが、すぐに我に帰り手に力を込める。
力点をずらす様に前へと押し出したが、バックステップで回避される。
だがそれだけは終わらず、キラはバックステップの反動を利用し、
着地した足をバネにし、跳躍――そのまま前へと距離を詰める。
しかし、追撃しようとしていたアスランはすでに槍を右手に携え、右下からの斜一閃を繰り出そうとしていた。
だが、

 

ガキィン――!!

 

振り切る前に何か障害物にぶつかったように右手が前へと進まない。
見ると、紅き槍の前にあるのは蒼き刃。
左手のサーベルを逆手に持ち換え、アスランが振り切る前にサーベルを前に突き出し、
槍の斜線上へと妨害したのだ。
そして出来上がった一瞬の隙――キラは右手のサーベルを右上から振り下ろそうとする。

 

「くっ!!!」

 

間一髪反応したアスランは振り下ろされる右手首を左手で掴み、進行を食い止めた。
取り組む形になり、両者決定打を打ち込めずにまたもや競り合いの形となる。

 

「ストライク!!」
『Boost, Full Power.』

 

背面のスラスターの出力が加速し、競り合いのままアスランを押していく。
そして、そのまま壁へと激突する。

 

「ぐぅっ!!」

 

衝撃に顔をしかめるアスラン。その反動で互いの組手が外れる。
そしてそのまま距離を取り、地面へと着地する両者。

 

「……アスラン」

 

キラの呼びかけに顔を上げ、目を合わせるアスラン。
真っ直ぐに見据えるその瞳から何かを訴えているのを、アスランは感じ取っていた。
その内容も――。

 

「……」

 

俺がもし――キラの立場だったらどうするか。

 

キラが俺と同じ事をしていたら――

 

キラが今の俺と同じ様に、アリシアを生き返らせようとしていたら、

 

――――――俺は――――――

 

「……それが、お前の答えか……」
「……うん」

 

アスランの言葉、それはまさしく先程の問いに対しての答えだろう。
キラも、アスランはきっとこう答えるだろうと心のどこかで確信していたのか、あまり驚く様子は見せなかった。

 

「……そう、か」

 

自分から問いかけておいて、いざ質問されてわかる事だったなんて……な。
アスランは表情には出さなかったが、微かに心のどこかで笑みを浮かべていた。
キラの問い、その答えは考えるまでもなかった。
なぜなら、今キラ自身がその答えを提示してくれていたから。
目の前で友が自身を犠牲にしようとしている。
そんな行為を知ったとして、俺がどうするか。
そんなの、決まっている。迷うまでも無い。

 

きっと、"俺も今のキラと同じ事をしているのだろう――と"。

 

そして、キラ自身も――――。

 

「……なら、もう何も言う必要はない」
「…………」

 

言葉で理解しあい、争わずに済めばいい。キラは心の底でずっとそう願っていた。
だが、キラは知ってしまった。アスランの行動と理念を、納得してしまったのだ。
そして、それはアスランも同様だった。
互いの行動を理解し、納得してしまった今、もう二人の間に言葉は無くなってしまった。
ただ二人の間にある確かなもの、それは――

 

"互いに譲れないものがある、だから僕(俺)達は今向き合っているんだ"

 

互いを見据える両者。
二人の眼差しの先にあるのは、もう一人の自分。あったかもしれない、自分自身のもう一つの未来。
だが、それは所詮ifの出来事に過ぎない。
今二人の心にあるのは、目の前の友達を倒す事。自分自身の、譲れないものの為に――

 

「……だから!」
「俺は……!!」

 

二人はサーベルを持つ手に、踏み出す為の足に力を込め、そして――

 

「「君(お前)を討つ!!!!」」

 

言葉と同時に地を蹴り、空へと舞い上がる両者。
互いへと向かって一直線へと飛翔し、剣を振るう。
剣の交差と同時に弾け飛ぶ魔力の欠片と、刃のすれ違う交響の唸り。
それと同じく、すれ違う二人の視線。
離れる距離、ブレーキをかけ、また向きあう両者。
右手のサーベルをマウントし、ライフルへと持ち変えるキラ。
接近するアスラン目掛けて、ライフルのトリガーを弾く。
向かってくる蒼き魔力弾。だが、アスランは冷静に体勢を崩す事なくそれを回避する。
少ないモーションでの回避、迫るアスランへの次の対抗策を後方へと飛翔しつつ、脳内で弾き出すキラ。

 

「当たらないなら、当てるようにすれば!!」

 

肩のショルダーパッドが開き、そこから射出される数多もの魔力弾。
上下左右、飛行しているアスランの前方向全てへと向かっていく。

 

「数を撃てば当たるというものではない!!」

 

キラと同じ様に、アスランも片手にライフルを携え、前方へと構える。
トリガーを弾き、ライフルから発射された紅き魔力弾は蒼き魔力弾と衝突し、消滅。
だが、幾ら精密な射撃であったとしても、一つに対して数で対抗できるというものではない。

 

(以前のように、こちらに『スキュラ』を撃たせる算段か……だが!!)
「なめるなぁっ!!!」

 

身体を捻り、右手に携えた槍と左手に構えた銃を舞うように動かしていく。
最小限の動きで避け、最小限の動きで数を潰していくその様は人間離れしていたといっても過言ではないかもしれない。
そして全ての数をたった数秒の間で潰した瞬間、アスランは右手の槍をキラへと目掛けて投げつける。
高速でこちらへと向かう槍を避ける為にキラは背面のブーストに魔力を注ごうとした、

 

――――瞬間。

 

投げつけたと同時にアスランは左手のライフルを構えていた。
キラはそれを自分を回避させない為に向けられたものだと思ったが、
だが、それは間違いであるという事を、今この瞬間に知らされる。
ライフルのトリガーが弾かれ、一発の紅き魔力弾が発射される。
方向的にはキラの左側。それを踏まえてキラは右側へとステップを踏む事と、それに続く反撃を脳内で考えていた。
だが、キラは心の底で妙な"違和感"を感じていた。

 

――おかしい。

 

――なぜアスランはこっちが動く前にトリガーを弾いた?

 

――普通なら、こちらが動いてからその動いた方向へと向け、そして弾いた方がいいに決まっている。

 

――――だとしたら?

 

不図首を動かし、視線を魔力弾へと向けた。
そしてようやく気付いた――本当の意味に。
ライフルから発射された魔力弾は軌道を変えることなく斜線上に突き進んでいく。
そして、その斜線上にある"槍"と衝突し――

 

"槍"は爆散した。

 

「――――くぅっ!!!」

 

反射的に両手を交差させ爆発を防ごうとしたが、近接した爆発を防ぐのは容易ではない。
爆発の熱を帯びた熱が身体全体を包み込む。
ステップの反動にさらに勢いを増した身体は速度を増し、流されるままに宙を舞っていた身体は――

 

「ぐっ!!!?」

 

本人の意思とは関係なく――悲鳴と共に停止した。
突然の衝撃に顔をしかめるキラ。見ると脇腹に差し込まれたアスランの左足。
交差させていた右手を振り下ろしサーベルを縦に薙ぐが、目標も定まっていない攻撃など当たるわけもなく
アスランは蒼然とそれを回避すると同時に右手を突き出し、キラの胴体へと触れた瞬間。

 

『Crow Bind.』

 

紅の魔法陣がアスランの右手の前で展開すると同時に、その魔法陣の中心から現れる四本の爪。
出現と同時に一瞬にしてキラの胴体に喰らいつくように囲む。

 

「こ、これは――ッ!!!?」

 

身体が動かない――いや、手は動く、足も動く、動かないのは――"胴体"
喰らいつかれた胴体"だけ"動けない。まるで十字架に張り付けにされ、胴体だけが縛られているように――。

 

「くそっ!!!」

 

両手のサーベルを胴体の爪へと裂きたてる。サーベルの光は弾かれていくが、それでも少なくとも効果はあるようだ。
だが――

 

『Master!!』

 

それまで沈黙していたストライクが主人の事を呼ぶ。
反射的に顔を上げ、それまで爪へと注がれていた視線は前方へと向けられる。
その先には――両手を掲げたアスランの姿があった――。
その両手に広がる紅き魔法陣の前に集束していく紅き魔力。
それにより焦りが生まれ、無我夢中で絡みつく爪にサーベルを突き立てる。
まずい――あれをもう一度喰らったら、今度こそ――――!!!

 

「…………イージス、行けるか」
『Yes. Dual skyla, Full power charge.』

 

両の手を胴体の前で重ね、圧縮された二つの魔力が結合する。
二つの球体は、一つの巨大な紅い宝玉のように輝きを発し、その姿を現す。
目を瞑り、一息深呼吸をするアスラン。
息と共に何を吐き出したのか、開いた光無き目に映る決意。
両手を突き出し、そして――

 

「これで、終わらせる――――!!!」
『Dual skyla, Full power Burst!!!』

 

言葉と共に紅の球体から発射される魔力の奔流。
終わらせる、その言葉通り、アスランはこの一撃にほぼ全ての残存魔力を注いでいた。
バインドでの固定、それはスキュラのチャージと狙いを定めるだけの時間を稼いでくれた。
外す事はない、なぜならもう放たれた砲撃は――キラを包み込むように流れていったのだから。