やがみけ_02話

Last-modified: 2008-04-07 (月) 17:55:38

「なんなんだ、あんた?」 突然現れた黒ずくめの少女。
「時空管理局嘱託魔導士、フェイト・テスタロッサ。
民間人への魔法攻撃……ただでは済まないぞ?」
フェイトと名乗った少女はシンに魔力刃を持つ鎌を向け、低い声音で続ける。
「抵抗しなければ、君にはまだ弁護の機会がある。
武装を解除して投降を……」
なのはを撃墜しておいて今更だが、戦いたくないのがシンの本音だった。
相手が自分と同じかそれ以上の年齢ならば案外平気で戦えたのかもしれない。
しかし、ここで捕まるわけにはいかないのも事実。シンが家に帰らなくても、戦闘で怪我をしても、どっちにしろはやては心配するだろう。
悲しむ姿も、徐々に弱っていくはやての姿も見たくない。
故に、シンの腹は初めから決まっていた。いや、決めていた。
相手が何であろうと戦うと。
「誰が投降なんかするかよ!」
この戦いを終えて、いつも通りの笑顔で夕飯を一緒に食べて、話をしてテレビを見る。
今日はリビングに布団を敷いて皆で雑魚寝するのもいいかもしれない。
シンはそんなことを考えながら、ビルの中から外へと飛び去った。

 

「ユーノはなのはをお願い。私はあの子を……」
「わかった」
一方、フェイトはなのはをユーノに任せ、シンのあとを追う。
場所は再び海鳴市上空へ。
対峙する二人の間に緊張が走り、限界まで張りつめた緊張の糸が切れたのは二人同時だった。
『アークセイバー』
『フラッシュエッジ』
フェイト、操るインテリジェントデバイス、バルディッシュから放たれる三日月の金色の刃が鋭い音をたて、シンへ。
対して、シンはエクスカリバーを投剣する。
実体部つきのため、重量感を帯た鈍い音を立てフェイトへ向かっていく。
「障壁!!」
『ソリドゥースフルゴール』
波状に広がる魔力の莫がシンを包み込み、アークセイバーを防御。魔力刃が衝突し、シンの展開する障壁を裂こうと執拗に噛みつく。
フェイトはフラッシュエッジをバルディッシュで受け、防ぐも、実体部の衝突で大きくのけぞる結果になってしまう。
絶好の攻撃の機会を前にして、しかしシンは動けなかった。
「バリアァアー!!」
「ッ!? もう一人?」
人型で女性の容姿ではあるが犬耳、尻尾がはえている。
フェイトの使い魔、アルフだ。
障壁を張ったままやりすごそうとしたシンだったが
「ブレイクッ!!」
特殊な魔法だったのかシンの障壁が砕けた。

 

「このッ!!」
手に持つエクスカリバーに力を込めて振り下ろし、アルフを障壁の上から叩き落とし
「ちぃっ!!」
アルフに気をとられている間に接近していたフェイトの斬撃をかわし、立て直したアルフの拘束魔法をかわす。
さすがは主とその使い魔で、息を合わせた巧みな連携でシンを追い詰めていく。
「(こいつらッ……)」
次第にシンは逃げの一手になってゆく。
一対ニで鍔競り合いはシンにとって敗けを意味する。それはシン本人も重々承知だった。
この敵は動きを止めれば確実にシンを捕えてしまうだろう。
カートリッジを使用して蹴散らしてもいいが、出来ることならこれ以上は使いたくない。
むやみにカートリッジを使用すればそのツケをあとで払うことになるからだ。
フェイトの執拗でいて早く、鋭い攻撃をかわし、アルフのバインドにも注意を払うシン。
だが、エクスカリバーの片割れをアルフのチェーンバインドが捕え、その一瞬の隙をつき、フェイトは鍔競り合いに持ち込む。
シンの動きが完全に止まった。
「アルフッ!!」
「あいよッ!!」
「しまった……」
アルフのバインドにより四肢の自由を奪われ、その場にシンは磔にされてしまう。
「終りだね」
バルディッシュの先端を悔しそうに歯噛みするシンに向けフェイトは言い放った。
「抵抗はやめて、名前と出身世界を聞かせて――」
シンの目尻がつり上がり、瞳孔が開いて行く。
「フェイト、何かヤバいよこいつ」
アルフが言うが早いか、バルディッシュがフェイトに警戒を促していた。
『ディフェンサー』
瞬間、フェイトの障壁が真っ青に染まった。
「フェイト!! ッ!?」
「うぉぉお」
横合いからの蹴りがフェイトを助けようとするアルフの行動を阻む。慌てて腕を組んで防御したものの蹴り飛ばされてしまった。
「アルフッ!!」
フェイトの視界を塞いでいた蒼い閃光がはれ、アルフの状況を確認しようと視線を走らすが、目的の姿はなく、代わりに見知らぬ少年の姿。
アスランのものだ。
『Sir!!』
バルディッシュの警告。
『ファトゥム01』
V字型の紫色の魔力刃がフェイトへと迫っていた。「ッ!!」
焦り、下方から接近するファトゥムを後退してかわす。フェイトの前方の視界を魔力刃が奪う。
そして、視界が開けたとき、そこには銃口があった。

 

ほぼゼロ距離で撃たれたとはいえ、あの一瞬間にバルディッシュが障壁を張り、フェイトは数十メートル後退するだけで事なきをえていた。
「キラ、アスラン……」
空中に磔にされたままシンが呟く。
「アスランから連絡を受けてね。シンが誰かと交戦してるって……。でも間に合って良かった。
結構危ないところだったね」
キラがアームドデバイス、フリーダムの銃口をシンへ向けると、シンを拘束しているリングバインドが砕けた。
「うるさい、一人でもやれたさ」
口を尖らせるシン。
「まぁ、お前ならそう言うと思ったけどな」
なかば、呆れたようにアスランが言う。
「さぁ、早く終わらせて帰ろう。はやてちゃんが待ってる」
「あぁ」
「おぅ」
キラはフェイトへ向き直り、アスランはアルフへ向き直る。
そして、シンは今しがたフェイトの側にやって来たユーノに目的を定めた。

 

「ユーノ、結界を破って全員ここから転送……いける?
私が前にでるから、その間に……」
前方、視界にキラを捕えながらフェイトはバルディッシュを構えた。
「アルフと協力できれば……あるいは」
フェイトと同じく、ユーノもまた、視界前方のシンへと注意を集中する。
「(アルフ……お願い)」
「(あぁ、やってみるよ)」 念話で要点を簡潔にアルフに伝え、フェイトはビルの屋上でこちらを見守るなのはを振り返る。
緑色の小さな結界に包まれているところをみると、恐らくはフェイトの援護に向かう際に、ユーノが張ったものだろう。
フェイトは一度大きく深呼吸し、再びキラを見据えた。
相手の武装を確認する。「(砲撃、射撃型……かな?)」
一見するとロングライフルを持っているように見えるキラ。フェイトはそう予想したが
「(一撃放って、様子を見る!)バルディッシュ!!」 いきなり懐に飛込むようなことはしない。
『フォトンランサー』
フェイトの周囲に音をたてて発生する光子の槍。
「フリーダム!」
『オールライト、ヴァリアブル・フェイズシフト』
キラの体を蒼い光が包む。
「ファイア!!」
掛け声とともに放たれるフォトンランサーを前にしてキラは微動だにしない。
「(直撃……)」
光弾はキラに当たり炸裂。爆煙をあげた。
その音を合図に、シンとユーノが、アルフとアスランが動き出す。

 

もうもうと沸き立つ煙が晴れる。
「無傷……」
予想していたかのようにフェイトはそう呟いた。
傷ひとつないバリアジャケットと形を乱すことなく健在している蒼い光の翼。
「フリーダム、カートリッジロード」
「ッ!?」
ロングライフルから二丁の銃へと変化した武装を見たフェイトは驚愕に目を見開く。
銃の片割れから勢いよく弾き出された薬莢が地へと回転しながら落ちて行くのが見えた。
「雷光一閃」
キラの口から冷たく囁かれた言葉。
刹那――
目の前に突然、キラが現れる。
右手にもつ銃の口から発生した魔力刃に紫電と青電を這わせ、上段から渾身の力で振り降ろす。
「ぐっ!!」
悔い縛った歯の隙間から漏れ出すフェイトのうめき声。
バルディッシュの張ったディフェンサーが明滅し、さらに柄にヒビが入る。
「(障壁が……ッ!?)」
障壁の上からでも叩き落とされそうな衝撃を受けている最中、フェイトの目はキラの次の動作を追っていた。
斬撃を放った手とは逆の手。つまり、魔力刃を握ったままの左手が動いた。
刃が描くであろう軌跡はバルディッシュの中核を狙っている。
それだけは避けねばならない。
今、バルディッシュが破壊され、自分が無力化されるということは、ユーノとアルフの敗けを意味する。
即断即決。
フェイトは持てる力を振り絞り、バルディッシュの中核をかばうため、刃交える力点をずらした。
次の瞬間、電光石火の斬撃が見舞われた。
バルディッシュの柄が8つに分断される。
しかし、フェイトは冷静にバルディッシュのリカバリーに必要な部分を手にとり、リカバリーをかけ、再びキラを見据えバルディッシュを構えた。
「強いね……、君」
「あなたこそ」
キラのセリフをそっくりそのままフェイトは返した。
「名前は?」
「時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ」
なのってからバルディッシュを見せ
「この子はバルディッシュ」
デバイスの名を告げる。
「ヴォルケンリッターの一人。自由を司る騎士、キラ。
それから、蒼天の剣、フリーダム」
蒼い魔力刃が一際大きくバチリッと哭いた。

 

緑色の光と緋色の光が幾度となくぶつかりあっては反発を繰り返していた。
「(転送の準備は出来たけど空間結界がやぶれない! アルフ)」
ユーノは左手にトランスポーター・ハイを準備しつつ、シンによる猛攻を防いでいた。

 

「(こっちもやってんだけど、無茶苦茶固いんだよ、この結界)」
アスランの蹴りを受けながし、魔力刃を障壁で防ぐアルフ。
その前方ではアルフの主人が戦っていた。
『フォトンランサー』
放たれた光子の槍を障壁で防ぎ、煙を突き破って出てきたキラが両手のフリーダムを連結。
大砲撃を放つ。
障壁でフェイトは防ごうとするも、完全に防ぐには至らず、吹き飛ばされ、ビルに突っ込んでいった。
「フェイトちゃん!!」
なのはが治療をうけている付近のビルに盛大に突っ込んだため、駆け寄ろうとするも、ユーノから結界から出ては駄目だと言われていたことを思い出し、踏みとどまった。
体に被った瓦礫を押し退け、ヒビの入ったバルディッシュを支えに立ち上がる。
「退いて……くれないかな?」
呼吸を乱し、恐らくはこれ以上戦っても結果が見えるほどにフェイトは傷付いていた。
「……何を……」
フェイトは歯を悔い縛り、二本足でしっかりと立つ。キラは右のフリーダムの銃口をフェイトへ向けた。
弾け飛ぶカートリッジ。 薬莢が近くのビルの外壁に当たり、渇いた甲高い音を立てた。
銃口へ収束していく光が濃くなり、その大きさを増していく。
『ブレイクインパルス』
「ッ!?」
キラの頭上より飛来する水色の魔力の塊。
「クロノ!!」
フェイトの視線の先には紺色のバリアジャケットに身を包んだ少年の姿。
「これ以上、好き勝手にさせるか!」
キラは後退し、紙一重でクロノによる攻撃を回避する。しかし……。
「スナイプショット!!」
通りすぎたはずの攻撃は急旋回し、螺旋を幾重にも描きながら再びキラへ。
「……ちっ!!」
「(キラ、そのまま動かないでください)」
「(その声……レイ。どうして)」
「(詳しい話はあとです)」

 

動きを止めたキラの周囲を囲む灰色の光弾4つ。
その四点から伸びる複数のラインが結び合い、障壁が形成された。
攻撃が阻まれたことに驚きつつも、周囲の気配を探るクロノ。
レイはドラグーンをコントロールしつつ、ポケットから携帯を取り出すと、電話を繋いだ。
『もしもし、レイ? どうしたん?』
「はい、私です。いつも使ってるオリーブオイルが行き着けのスーパーで売り切れてるみたいなので別の店にいって探してみます」
『あぁ、それやったら別に何でもええんよ?』
「いえ、こっちはシンたちを拾うついでですので……」
『わかった。ほんならシチュー作って待っとるからな。
あんまり遅うなったらいかんで』
「わかりました」
携帯をきり、レイは誰に言うでもなく呟く。
「えぇ、なるべく早く。戻ります。主、はやての元へ」

 

「助け……なきゃ」
満身創痍、疲労困憊の体に鞭打ち、ユーノの貼った結界、ラウンドガーダーエクステンドから一歩、なのはは足を踏み出した。
突端に結界は解除され、なのはは魔法陣を展開する。
「(みんな、私が結界を破壊するからそのうちに転送を!)」
「(無茶だ、だいたい君の体は……)」
キラから放たれる砲火を避けながらクロノ。
「(なのは……)」
「(なのは……)」
「(大丈夫なのかい?)」
フェイト、ユーノ、アルフもなのはの体を心配してか、声をかける。
「レイジングハート」
『A…lright my ma…aster, Starlight Breaker.
Count start』
傷付いたレイジングハートの先端に収束していく桜色の光の粒子。
「収束砲か……。(アスラン)」
その様子を戦場からやや距離を置いた場所、とあるビルの陰に隠れて見ている者が一人。
「(何だ? レイか?)」
「(えぇ、俺です)」
「(ちょっと待ってろ)」
市街で攻防を繰り広げるアルフとアスラン。
幾度かのぶつかり合いを経て、アルフの拳がアスランの左腕、盾型デバイス、ジャスティスに突き刺さる。
「ジャスティス! カートリッジロード」
豪快な音を立てて弾き出された薬莢がアルフの目の前を飛んでいった。
『グリフォン・ウィンド・ブレイド』
「はぁぁああ!!」
上半身と下半身に捻りを加えて繰り出された蹴りから放たれる風の刃がアルフを障壁の上から吹き飛ばす。
「(もう、いいぞレイ)」
「(これから俺がそいつの相手をします。アスランは今から収束砲を放とうとしている娘のリンカーコアを奪ってください。
あなたのグラップルスティンガーなら多少距離があっても大丈夫でしょう?)」「(了解した)」
アルフが体勢を建て直したときにはすでにアスランはなのはの元へ向かっていた。
「なのは!!」
フェイトがアスランへと向かい、それを追おうとしたキラをクロノがブロックする。
「行かせないよ!! スティンガーブレイド」
青色の魔力の刃が雨のように降り注ぎ、キラの展開した障壁に突き刺さる。
「くそっ、何やってるんだキラのやつ!」
「ストラグルバインド!!」
緑色のバインドがシンを捕えようと迫り来る。
「捕縛魔法ばかり、ごちゃごちゃと……」
『フラッシュ・エッジ』
ユーノに向け、エクスカリバーを投剣。しかし……
「くそ、この距離じゃもう追いつけない!」
それでも一応、追い掛けようとするシンにレイから通信が入る。
「(慌てるな、シン)」

 

「間に合え!!」
『フォトンランサー』
遥か前方を行くアスランに向け光子の槍を四発、十字をかたどり放つ。
相手が大きく動かなければ当たるはずの軌道。弾速は直射型の分早い。
アスランが大きく横に動けばその間に距離を詰める算段だったが、当のアスランは背後に迫るフォトンランサーに気付きつつ、避けようとはしない。
「(直撃する)」
そう確信した刹那。フォトンランサー進行方向に、正確にはアスランを囲む障壁が発生し、阻まれる。
「ッ!?」
フォトンランサーは障壁によって防がれ、爆煙をあげるだけに終わる。
その爆煙の中から四散したのは四発の光弾。
直線的でいて不規則に進行方向を変えるそれはあっという間にフェイトを取り囲む。
光弾一つ一つ、めまぐるしく動きながら同色の光線を放つ。
「ぐっ!!」
頭上、左、背後、前。
瞬時に判断して避けるも、光弾の、恐らくは発射体のスピードの方がフェイトの回避速度を上回っているため、徐々に動きに迷いが出始める。
「フェイトちゃん!!」
その後方にクリスタルケージの様なものに閉じ込められたアルフを確認するなのは。
『3…2……2』
レイジングハートのカウントも終了まであと僅か。これを放つことができればユーノが全員を転送してくれるはずだ。
迫ってくるアスランを見据え、なのはは肺一杯に空気を吸い込んだ。
『ZERO』
「ス、スター」
アスランが動きを止め、反動をつけるためか腰を捻った。
「ライトォ!」
『グラップルスティンガー』
「ブレイッ!?」
つき出された左腕。デバイス、ジャスティスから放たれた魔力の鎖がなのはの胸を貫いていた。
つき抜けた先には、なのはの魔力の源、桜色のリンカーコア。
「収集……」
『収集』
いつのまにかアスランの手に握られている不気味な色をしたハードカバーの分厚い本。
そこに徐々に吸い込まれていく桜色の光。
「あれは……」
クロノは目を疑った。
「第一級捜索指定遺失物、闇の書……」
キラはクロノを見る目を鋭く細めた。
「カ……かはっ……」
苦しさを堪えて尚、なのはは諦めなかった。
「スターライトブレイカァァ!!!」
「アスラン!!」
レイの呼び声に瞬時に反応し、収束砲の射線軸から待避する。
天を貫かんと駆け昇って行く桜色の爆光は封鎖結界を突き破り、うねりをあげて雲をつきぬけ、夜空の彼方へとその姿を消した。

 

「(結界が破られた。皆、退くよ。
一度、四散してからいつもの場所で合流)」
キラからの指示が念話で伝えられる。
「(了解した)」
アスランは西へ
「(了解!)」
シンは東へ
「(了解しました)」
レイは南へ、そしてキラは北へと姿をくらました。
「襲撃といい、引き際も見事だな」
彼方へと姿を消したキラたちを見送り、敵ながらクロノは称賛の言葉を送った。

 

「つけられた痕跡はないな」
レイが三人の状態を調べながら安堵の声をもらす。 それから四人はそろって八神家へと帰宅した。
「「「「ただいま~~」」」」
「あは、皆おかえり~」
「はやて、腹減ったぁ~」
靴を脱ぎ散らかしてリビングへと向かっていくシンに文句一つ言わず、レイは散らかった靴を並べる。
「はいはい、今準備するからなぁ」
「今日はシチューか? うまそうだ」
「アスラン、うまそうじゃなくてうまいんだよ。はやての料理は」
「そうだったな。はやて、俺も何か手伝おう」
微笑ましい会話を玄関口で聞きつつ、家に上がろうとしたキラをレイは引き留めた。
「見せてください。キラ」
「こんなの、別に大した傷じゃ……」
「いいから、主が夕食の準備をしているうちに」
半、諦めたようキラは上着の腹の部分をまくりあげた。
見るも痛そうな青痣が脇腹に出来ていた。
「どうやら、手強い相手……だったようですね」
「まぁね」
「治療しましょう」
「いや、これぐらい大丈夫だから……。レイは今日僕たちが使用したカートリッジの補充をお願い」
「キラ~、レイ~、ご飯の準備できたで~」
居間からはやての呼び声。
「本当に僕は大丈夫だから……。それより、管理局が出てきたみたいだから、レイははやてちゃんのそばから出来るだけ離れないようにして……。
闇の書の主である以上、恐らく、管理局の手ははやてちゃんにも及ぶはずだ」
「わかりました。家にもセキュリティーをはって、主はやてとはなるだけはなれないようにしますね」
「頼んだよ、レイ」
「えぇ、キラもあまり無理はしないようにしてください。
志し半、誰が倒れても、主はやてを悲しませるだけです」
リビングへと続くドアからはやてがヒョッコリ顔をのぞかせるはやて。
「ご飯の準備できたけど、玄関で何してんの?」
「ううん、何でも。ちょっと、レイと話で盛り上がってね」
キラは靴を脱ぎ、フローリングに上がった。
「何の話で盛り上がってたんや?」
「近いうち、私達で料理を作ってみようと、そんな話をしてました」
「そらええなぁ、ほんならうちは楽しみにしとくわぁ」
先程まで戦っていたとは思えないほど自然にはやてを除いた四人はいつもと変わらず、賑やかに夕食にありついた。

 

次回 予告
第三章 一時の平穏に身を委ねて…

 

はやて「う~~ん……う~~ん……」
シン「どうしたんだ? はやて、はやてぇ!!!」
レイ「シン、落ち着け、お前がそれではかえって主はやてを不安にさせるだけだ」
アスラン「そうだぞ、シンこういうときは落ち着いていつも通り家の掃除をするんだ」
シン「あ、あぁそうだな」
レイ「シン、アスランは少し錯乱している。今のやつの言うことを聞いては駄目だ」

 

キラ「あの……、僕一人だけ収集活動なんですけど……」