超合成獣ネオガイガレード、人造機動獣キャオス、空間認識兵器エグザス 登場
大苦戦の末ガイガレードを下したウルトラマンインパルス。しかしスフィアによって復活したネオガイガレードが
呼び出した闇に呑みこまれてしまった。果て無き闇の中、シンは目を覚ます・・・
(・・・)
ゆっくりとまぶたを開ける。しかしそこに当たり前にあるはずの光は見えない。あるのはただどこまでも続く暗闇だけだ。
まるで自分がまだ目を瞑っているかと錯覚する。しかし意識がハッキリしていくうち、すぐに直前の記憶が戻ってきた。
(・・・!っ・・・・・・!?)
急ぎ体を起こそうとする。が、動かない。手足のある方を見ると、闇よりも暗く黒いものが絡み付いていた。それは徐々に胴体に伸びてくる。
(これが奴の闇・・・くっ!?力が吸い取られる・・・!)
そこで初めてシンは気付いた。常に光を湛えているはずのカラータイマーがあるはずの胸から光が消えていることに。
(そんな・・・う・・・うわあああーっ!!)
「グギアアアーン!!」
暗霧の中、勝利の雄たけびをあげるネオガイガレード。それを見下ろしながらルナ達は絶望的な気持ちを隠せなかった。
「ウルトラマンがやられるなんて・・・」
「くっなんてこった・・・」
通信装置が壊れたというシンを除き、会話にならない会話を続けるルナとハイネ。そんな中レイが静かな声で言った。
「・・・行くぞ。怪獣を攻撃する」
「「!!」」
驚く二人。レイは抑揚のない声で続ける。
「ウルトラマンが消えたからどうしたと言うんだ。俺達はここに何の目的で来た?戦いに来たはずだ・・・地球を救う為に」
『よく言ったぞレイ』
横から入ったタリアが同意する。
『我々が負ける時は地球が滅びる時だ!だからこそ気持ちでは負けるな!今こそミネルバ隊の真価を示せ!』
「・・・ラジャーッ!」
躊躇いを捨ててネオガイガレードに向かっていくルナ達。しかし後続のアスラン機は動かない。
「戦う気なのか・・・あんな化け物と・・・」
『お前は戦わないのか』
と聞いてきたのは追いついてきたイザークだ。
「あれは並の怪獣じゃない。おそらくプロヴィデンスにも劣らないほどの力を持っている・・・」
『アスラン・・・お前は一度闇に飲まれかけた男だ。コイツの恐ろしさは誰よりも分かるのかもしれない
だが、今俺達は何があっても前に進み続けなければいけないんだ。たとえ血を吐きながらでもな』
「イザーク・・・」
『それに・・・俺はまだ信じている。ウルトラマンは何があっても倒れはしない。それはお前も知っているはずだ』
再び、闇。
上下左右、方向すらもわからない暗闇の中で、シンは何故か落ち着いていた。
(なんだろう・・・一度大声を出したらどうしてか叫ぶ気もなくなった・・・そういえばこの闇、どこかで)
見たことがある。そう、それはあの運命の日。
(あの日、俺とマユ、母さんは怪獣から逃げる為に道を急いでいた。海に出ればオーブの艦隊が助けてくれる。
だけど道路は渋滞で、俺達は人気のない山道を走ることになったんだ・・・)
【まって!マユの携帯が!】
そう言ってマユは道を逸れた。急いで追いかけ、妹の腕を掴むシン。その二人の上空を過ぎる黒い影。そして光。
(ドーン、なんて音も聞こえない内に俺達は吹き飛ばされた。俺が最後に見たのは見慣れた空が暗く染められていく光景だった・・・)
ネオガイガレードに攻撃を加えるザフトイーグル。しかしどの武器も亜空間バリアーをに弾かれ怪獣には届かない。。
「なんなのよ!前はあんなのなかったのに!」
「やはりあれはスフィアの力によるものか・・・諦めるなルナ!ビームの周波数を変えてみろ!全兵器を惜しまず使え!」
テンパるルナマリアに指示を与えるレイ。しかしそれを邪魔するかのようにファントムペインが襲い来る。
『俺達を無視すんじゃねえっ!』
接近しクロウを振り回す。エグザスもガンバレルを展開した。
『無駄な努力ってのは嫌いじゃないが・・・あまり余計なことはしないでもらおうか!』
『それはこっちの台詞だ!』
その言葉と共にガンバレルが次々と爆発する。後続のイザーク達だ。
『グゥレイトオ!っと、ここは俺達に任せな!お前らはあのヤバそうなのを叩け!』
とディアッカ。
「ありがとうございます!行くぞルナマリア!」
言うが早いか即座にその場を離れるイーグル。現場急行時と逃げ足だけは速い設計だ。
『チィ!そういうのが無駄な努力だって言うんだがねえ!』
『何っ!?』
ネオの舌打ちに反応するように現れたスフィアがガンバレルの残骸と融合し、新たなガンバレルを形成していく。
『不意打ちとは粋なことをしてくれるが・・・そろそろ第二ラウンドといこうか!』
気がつくと、そこはオーブの戦艦の中だった。周りには同じように傷ついた子供達がいた。
(俺は一人で膝を抱えていた。母さんは死んだ。マユは頭を打ったらしく治療室へ運ばれた。もう何も見えなかった)
そんな時、誰かがウルトラマンが死んだと言った。それはあっという間に艦内に広がり人々は絶望に包まれた。
(だけど俺にはそんな事どうでもよかった。世界の終わりだとか破滅だとか騒いでる人も、何だか滑稽に思えた)
【これが運命なんだ・・・】
ポツリと聞こえたその言葉。もう誰が言ったのかも覚えてない。ただ、阿鼻叫喚が木霊する艦内でその声だけがやけに響いた。
(運命。運命だって?何の罪もない人が死ぬのも、俺の家族が傷つくのも、俺がこうして暗闇に一人でいるのも運命!?)
シンの中にわけのわからない思いが渦巻く。それはまだ幼い彼には大きすぎる感情だった。
(急に目の前がパッと明るくなった。顔を上げると、周りの子達が光になっていくのが見えた)
【ぼくがウルトラマンだ!】
【あたしがウルトラマンよ!】
そんな声が聞こえる。しかしシンはそれをじっと見ているしかできなかった。
(俺は・・・光になれなかった・・・そんな俺がどうして今光になっているんだ?)
どうして、戦っているのだろう。一体、何故光は自分を選んだのか?今まで放っておいた疑問が頭をパンクさせる。
(俺は・・・俺は・・・!)
闇が体を覆っていく。まぶたが再び閉じられる。意識が朦朧とし始める。耳は最初から何も聞いてはいない。なのに
【駄目っ!】
(!?)
聞こえないはずの声が聞こえる。女の人の声だ。
【勝ち目が無いなんて・・・わかりませんよ】
今度は男。腹のそこから絞り出すような悲痛な声。
(誰だ・・・一体誰なんだ!?)
【・・・ラッ!!】【――――――――!!】
(これは・・・)
【戦うしかないじゃないかっ!】【想いだけでも、力だけでも・・・!】
【みんなが・・・好きだから!】【それでもっ、守りたい世界があるんだぁーー!!】
(俺の頭の中に響いてくる!?これは、誰かの記憶なのか・・・?)
【ウルトラマンは光で、人なのね】
(ウルトラマンは光で・・・人・・・!?俺は光なのか・・・それとも・・・)
【私も運命なんて信じないことにしたわ。必ず勝って、人として】
(そうだ・・・俺は運命なんて信じない!運命なんてふざけたものに振り回されたくない!)
目を開ける。依然として辺りは黒一色だ。しかし下には地面の感触がある。自分はここにいる。
(俺は・・・光になるっ!今度こそ!)
─ミネルバ─
「きゃっ!?」
悲鳴を上げてモニターから目を背けるメイリン。どうしたと聞こうとしてタリアも両手で顔を覆った。それほど強烈な光だった。
「艦長、今のは・・・」
「フフ・・・アーサー!デュートリオンビームの照準急げ!チャージは完了しているはずだ!」
─ユニウスセブン─
「今の光は・・・」
目を細めて辺りを見回すルナマリア。その時イーグルのレーダーが真下に反応した。
「下!?一体・・・何っ!」
飛び出した何かを回避する。その何かは回転をしながら空中へ上っていき、やがて、その姿を光の元に晒した。それは・・・
「ウルトラマン!?・・・一体、あの闇の中をどうやって抜けたんだ!?」
信じられないと言いたげな顔で巨人を見つめるアスラン。ディアッカがそれに気付いた。
『そうか、あいつ、闇に呑まれる前に地面に潜ってまだ闇の薄い部分から抜け出したんだ!』
「そんな芸当が・・・いやそれすらできる力もないはずなのに・・・現にカラータイマーだって」
言い終わる前に、後方からの光線がウルトラマンに直撃する。それはカラータイマーに吸い込まれていき、巨人の体は青を取り戻していく。
(早い。前もって準備していたとしか・・・まさか、タリア艦長も信じていたのか?ウルトラマンが蘇ることを・・・9
「・・・デアーッ!!」
ズン!今度は大きな地響きと共にネオガイガレードの前に降り立つウルトラマンインパルス。その胸では青い光が輝いている。
「やった!ウルトラマンが!」
ガッツポーズをとるルナマリア。だがレイはしかめっ面を崩さない。
「いくらエネルギーが戻ったといっても正面対決で勝てる相手だろうか・・・」
そのとおりだった。対峙して早々、真正面から飛び掛ったウルトラマンだがあっけなくバリアーと衝突、弾き返されてしまった。
「デイッ!」
続いて自慢の高速移動で背後へ回り込んでの回し蹴り。しかしネオガイガレードの反応速度はそれすらも簡単に見抜き、捌ききる。
「クッ・・・デュアーッ!」
格闘戦では敵わないと悟ったのか、素早く距離を取ると腕を交差させヴァジュラ光線を放つ。
「グギアアーガアッ!!」
吼えるネオガイガレード。そして同じく口から光球を撃つ。それは空中でヴァジュラ光線とぶつかり合い、小さな爆発を起こす。
(互角!?オレの必殺光線とあいつのあのちっこい玉が!?そんなはずねエきっと無意識のうちにてかげ・・・!?)
言い訳をしているうちに煙の中で何かが光る。二撃目だ。
「ハァッ!」
横っ飛びに飛びながら手裏剣状の光弾を放つ。そのまま側転に繋ぎ逆立ち状態から空中へ飛ぶ。流れるような連続動作。だが敵もそれを目で追っている。
(駄目だ!反応されてる!)
このままでは補足されてしまう。その時、ガイガレードの鼻先に光が飛び込んだ。暗い大地を白い光が突き抜ける。
「グギアアアーン!」
目を覆って頭を振りまくるネオガイガレード。
「勝てっ!ウルトラマン!お前ならできる!」
アスランだった。ありったけの閃光弾を撃ちながらガイガレードを翻弄する。それを見たウルトラマンは静かに頷くとブラストインパルスにチェンジした。
「デャッ!」
出来る限りのスピードでネオガイガレードに接近するインパルス。右手に光の槍を形成しながら怪獣に肉薄。高速で槍を突き刺す!
「・・・!?」
が、亜空間バリアーを貫く力を持つはずのジャベリンでさえもネオガイガレードには届かない。穂先は確かに破っているがそれ以上は進まない。
「奴はこの遺跡と一体化している!吸い取る闇のエネルギーを使ってバリヤーを破られる先から新たに張っているんだ!」
ウルトラマンに伝えようと叫ぶアスラン。だがインパルスは一歩も引かない。
「ウルトラメタモルフォーゼッ!」
叫びながら左手に光を集束させる。それは槍の形となってウルトラマンの左手に握られた。
(うああああーーっ!)
「デヤアアアーーッ!」
超至近距離からの一撃。それはバリヤーを完全に貫通しネオガイガレードに届いた。
(まだだーっ!)
更に覆い被さるようにしてネオガイガレードを地面に押し倒す。そして槍を両手で持ち直すと地面ごとネオガイガレードを刺し貫いた!
「グギアアアアーーッ!!」
文字通り地面に釘付けにされるネオガイガレード。しかし絶命はせずじたばたともがく。串刺しにされたというのに大した生命力だ。
「ハッ!」
その隙に空へ浮かび上がるウルトラマン。そして彼はミネルバとイーグルにグッと握り拳を見せた。
「・・・今の、何!?」
戸惑うルナマリア。そこへタリアからの通信だ。
『バカモン!今がチャンスだということだ!ウルトラマンと一緒にトルネードサンダーを撃て!こちらもタンホイザーを使う!』
「艦長!?それじゃ」
『怪獣ごとユニウスセブンを破壊する!タンホイザーなら可能だ!』
タンホイザー。ローエングリンを更に強化したミネルバに搭載された中で最も破壊力の高い兵器である。
しかしその威力ゆえ今までに使われたことはない。
「ラジャ!」「ラジャッ!」「ラジャー!」
大声で返事をしエンジン出力を上げる。その間にウルトラマンは胸の前に二つの光球を作り出す。
インパルスの技の中で最も強力なケルベロス光球だ。
「チャージ終了!いつでも撃てます!」
『よし!こちらも準備完了した!いいかウルトラマンに合わせろ!』
「グギアアアアーーーンッ!!」
そう言った時、ネオガイガレードが自信に刺さる槍を引き抜いた。
その直後。
「デヤアアッ!!」
「今だっ!スーパートルネードサンダー、うてえー!」
『タンホイザー、ってえーー!!』
三方からの一斉発射。避ける暇などなかった。
「ギ?グギアアアッ!?ガアーーーー!・・・ーー・・・」
バリヤーを破壊され、攻撃を防ぐ術を失ったネオガイガレードは巨大な光の本流に飲まれて消えていく。
そしてその光はユニウスセブンを二つに割った。
「・・・・・・や、やったあ!勝ったのよレイ、シン!それにユニウスセブンも破砕できたわ!」
小躍りしそうな勢いで喜ぶルナマリア。一人スルーされたハイネは宇宙を見て黄昏た。しかしメイリンが例のごとく悪い知らせを持ってくる。
『だ、駄目です!片方の破片が大きすぎます!このままじゃ大気圏を突破しちゃうかも・・・』
『なんだって!?もう阻止限界点は超えてるんだぞ!』
と、アーサー。しかしタリアは落ち着いて言った。
『・・・これより本艦は大気圏に突入する!残った破片は大気圏内で全て破壊する!』
「了解しました。ではこちらも破砕作業に移行します」
『させるかよおっ!』
「!?」
返事をするレイ、その前に、緑の機体が突如飛び込んできた。スティングのキャオスだ。
『やめろスティング!状況は不利だ撤退しろ!』
ネオが必死に呼び止める。が、スティングは聞く耳を持たなかった。
『ははは、もらったぜテメェラァ!?』
カリドゥスでイーグルを狙う。しかしそこにアスランが横槍を入れた。
「やめろおーっ!」
そのビームは、カリドゥスに直撃し、キャオスは胸から火を噴き上げる。
『てめえ!きにいらねぇんだよお!』
機動兵装ポッドを一度に展開、アスランのスノーホワイトを狙う。小回りを生かして避けるがその目の前にキャオスが回りこんだ。
『落ちろっ!』
熱を帯びた爪が、アスラン機に振り下ろされた。寸前で方向転換をするが間に合わない。
「うあわああー!」
それはスノーホワイトのエンジン部を直撃した。回転しながら吹き飛ばされるスノーホワイト。そしてその先には地球があった。
「まずい!あのままじゃ大気圏に!」
言ってるそばから炎に包まれるアスラン機。白い雪と呼ばれる機体が赤く染まる。
「デアッ!」
ウルトラマンがその後を追った。しかしそれはキャオスも同じだ。大気圏へ突入する二体。
「クッ!」
熱さにダメージを受けたのか、カラータイマーが再び青から赤へ色を変える。
その背後でキャオスがビームクロウが振り上げた・・・
青の星を前に、アスランとウルトラマンは燃え尽きるのか?
そしてユニウスセブンの破片は破壊できるのか?
次回「混迷の大地」