シロ ◆lxPQLMa/5c_外伝2

Last-modified: 2008-07-09 (水) 11:20:29

 「ふう、今日もなのはは休みかあ・・。」

 

ガッカリして呟くフェイト。

 

 「まあ仕方あらへん、何といっても宿周辺を吹き飛ばした、いや瓦礫に変えた、不毛の
大地へと変えた張本人や、下手人なんや、テロリストなんや!!ニュースなんかで捏造し
て放映されたとはいえ、こん程度で済んでる方が信じられへんくらいや。ああ信じられへ
ん!」

 

 最後辺りはヒートアップして握りこぶしプラス大声になっている。

 

 はやては知らなかったが、それはレジアスが「管理局全体のため・・」と頭痛をこらえ
ながら小娘どもの尻拭いに手をまわした結果だった。知っていたらはやてはきっと優しい
笑顔でこう言っただろう。「余計なことをー!」

 

 「・・・はやて・・なのはのこと嫌い・・?」フェイトが恐る恐る問いかけようとして
その剣幕に断念した。

 

 さすがに今回の事件は3人の美しい友情にリボルビングステークを打ち込んでしまった
ようだ。それも全弾持っていけをくらったくらい。はやての恨みは深かった・・。

 

 なのはは現在謹慎真っ最中である。今回の事件、管理局もさすがに慌てた。あの有名な
エースオブエースがこのスキャンダル!イメージがた落ち間違いなし。管理局の捏造した
情報がロストロギアやら次元犯罪者やら様々な憶測を呼び起こした。

 

 それはいい迷惑だった。どこのロストロギアが、どういうねらいをもった次元犯罪者が
のどかな温泉街を消し飛ばす必要があったのか? だがどう捏造しようと実際の真実はあ
れですよ?情報をかく乱し真実をくらましたわけだが、できる事なら上層部も嘘の方を信
じたかった。

 

 そしてそのしわ寄せは、当然のようにはやての肩を、青筋を浮かべながらにこやかに叩
いた。連日の事情聴取。まるで刑事ドラマのように取り調べられる毎日。
 白熱電球を向けられるのは地味に嫌やった。毎日カツ丼やった。「違うのも取らんか!!
飽きるやろ!!」 その横で刑事たちは寿司を食っていた。正直自分がどうやって耐えてい
たか記憶にない。これもまた想像を絶する仕打ち。

 

 自分が刑事側だったら立候補してでもやりたいが、逆だと思うと選択肢に殺人が追加さ
れるだろう。人災がおきる可能性が極めて高く、その予想される行動に背筋も凍る。
 だがその仕打ちに・・・(おそらく)耐えた!
驚嘆すべき精神力。さすがに若くして6課の長を勤め上げるだけの人物である。

 

 だがそんな人物であろうと、さすがにもうへろへろだった。「こんなの・・・自分の描いて
いた未来には、こんなのなかった。あとカリムの預言にもなかった。」 あってたまるか。

 

 そもそも楽しい旅行ではなかったのか。どこでボタンをかけ違えたのか・・ガッデム・・。

 

 ちなみにあの直後の状況を説明すると
なのはは話ができる状態ではなかった。通称「あうあう状態」であり、上層部もその状
態を見て頭を抱えた。その後呼び出されることもなく謹慎状態。

 

 あたり一面瓦礫の海・・・その爆発の中心であうあう言ってたなのはさん・・・。

 

 この光景・・・どう形容すればいい?難易度が高すぎる。

 

 だからはやてが尋問を受けるのは仕方のない事だった。しかし誰も代わってくれなかっ
た。家族のように思っているヴォルケンリッターでさえ・・。

 

 「戦闘以外役立たずか?!」ずっと考えないようにしてきた黒い思考が華麗に芽吹く。
正直シグナムの「私は不器用ですから」これが一番むかついた。やれよ!不器用でええか
ら。
 ヴィータはさすがにいい大人が子供相手(実年齢はともかく)に尋問するというのは、
絵面が悪すぎる。一部強硬に“隊長陣全員平等に尋問すべきだ”と主張する連中がいたが、
そいつらは誰もがヴィータの担当を希望していた。「死ね!」
 シャマルは旅館事件の被害者の探索やら、多数のけが人がでたやらで引っ張りだこだ。
そんな忙しい中わざわざ創作料理を作って用意してくれていた。とても素敵過ぎるその気
遣いに涙が流れないはずがなかった。
 全ヴォルケンリッター3人は全滅だった。

 

 3?・・・その数字重いよ。

 

 そのころヴィヴィオと心底楽しそうに遊ぶ犬が一匹。その存在が主の脳内から消去され
ていることに気付かず幸せに浸っていた。
  「わおーん。」 「わんわーん、こっちだよう。」
まるでドラマのワンシーンようなひと時。
 「知らない方がいいこともある。」その名言のモデルケースがここにあった、こんな近く
にあった。

 

 はやては自分の思考が危険思想に染まっているのが自覚できた。危険信号が各所で鳴り
続ける。「わかった。オーケー落ち着こう。あれは事故や、誰が悪いわけでもない・・・で
も・・ちょっぴり・・・ちょっとだけ“○○○ちゃん”が悪いかも・・・、あああああああ
あああああだーーーーーめーーーーーやーーーーーーーー!!」

 

 くう、こうなったらなのはちゃん凌辱の妄想でもして辱めてやろうか?!常軌を逸した
恐ろしい考えが浮かぶ!
 作者の背筋に悪寒が走る。なんてことを!私に書けと?なにそれ信じられないよ、君と
いう人は、あんたって人はーーー・・無理だよ・・なのはさんだもん・・・。

 

・・チラッ・でも・・安全が保障されるなら・・・。

 

 現在なのはちゃんはリミッターでがんじがらめ、魔力の使用は厳禁、いい笑顔でサムズ
アップサイン。
いけるかもしれない・・可能性が生まれてしまった。

 

 だがここで作者の良識が辛勝した。エッチなのはいけないと思います。

 

 はあ、はあ、荒い呼吸音が辺りに響く。そこは暗い暗い世界・・・。

 

 静かな静かな町並み・・・。だがその光景は確かに違和感を伝えてきた。誰もいなさす
ぎる。

 

 それなのにそこかしこから見られているような居心地の悪さ。背筋を悪寒が走りぬける。
思わずなのはは自分の体をかき抱く。

 

 「なに、なんなの・・。・・シン・・・。」普段聞けないような弱気な声がその唇から漏
れる。でもその声は辺りにむなしく響くだけ・・・。誰もいないことに恐怖が膨らみ彼女を
犯す。
 (誰か誰か誰か・・・誰か)
そんななのはをあざ笑うかの如く世界は静寂から急激にその姿を変えた。

 

 地面から壁から窓から触手がのびなのはの体に絡みつき彼女を拘束する。
その触手はぬらぬらとぬめり不規則に光を反射する。生理的嫌悪を喚起するためにデザイ
ンされた、そんな錯覚すら抱かせるような外見であった。

 

 さすがのなのはもそんなグロテスクなものが自分の四肢を縛っていることに顔をしかめる。
 「いいざまだな、管理局の魔導士。」
何の気配もなかったはずなのにまるで最初からそこにいたように話しかけてくる仮面の男。
 「誰?いったい何の目的なの?」不利な状況ではあるが、自分の中の恐れを振り切るよ
う、叫ぶように問いを発する。

 

 「目的・・か。あんたが泣き叫ぶ様が見たいといったら?」
そう答えると同時にあたりを不気味にうねりながら取り巻いている触手が、なのはの服の
内側に侵入しようとする。
 一部の触手がニーソックスやシャツの内側に入り込み、ぬらぬらとした粘液がなのはの
体に絡みつき汚していく。そして反応を楽しむかのようにいやらしく少しずつ衣類を破り
始める。
 その気持ちの悪い感触に背筋の悪寒が最高潮に達する。助けの見込めない状況下、自制
心は吹き飛び唇は無意識に心の内を吐露していた。
 「嫌!ダメなの。決めてるの!初めては・・・。」

 

 仮面の男は喜悦に歪んだ笑みを浮かべ、押し殺した声で笑い始めた。
その男の仮面は目の部分を覆っているため、黒髪で白い肌という身体的特徴しかわからな
い。いったい誰なんだ。

 

 そして男はゆっくりとなのはに近づきその手であごを持ち上げ頬を舐め上げる。
なすがままの・・足を這い上がってくる・・・その感触に・・・

 

 良識負けとるーーー!!いやあぶねーセーフですよね?ですよね?良識は抑えに回った
ようなんです、内容が抑えられたはずだ。そう信じている。いや本当に半分くらいカットした。

 

強制終了
 「チッ、ここからやろ。」

 

ちなみに近い将来
 かつての旅館跡地には「機動6課お断り」の看板がでかでかと掲げられることになり、
これを見たはやては果てしなくブルーに沈む。エターナルブルー海も空も及ばないがっか
りブルー。
 はやては思う。事件の原因どもにこの胃の痛みをなすりつけてやりたい。とりあえず家
に帰ってからザフィーラにサミングしよう。反則上等。

 

場面はなのはの部屋に移る

 

 大きなクッションを抱いて座っている。
 「シンが悪いんだからね・・・あぅぅぅ・・ばかぁ・」

 

 「見たの・・見られたの・・ぜんぶぅ・・ぅぅしん君のいじわるぅ」
ちょっぴり幼児退行も起こしているかもしれない。
 「シンが悪い」そう言い、自分からその名を口に出して、彼の顔が浮かんだ瞬間に硬直
する。
 そしてクッションにその真っ赤になった顔を埋める。

 

 ずっとその繰り返し 
なのはにしては珍しく他人のせいにして譲る気配はなかった。

 

 それは普段見せることのない年相応の乙女の顔。
この年で初めて経験する気持ちを持て余していた、いや振り回されていた。

 

 はやてのために言っていいか悩んだが、旅館の事などかけらも頭の中になかった。蝶ど
うでもよかった。このスイートな気持ちの前には風の前の塵に同じ。

 

 後遺症は甚大だった。回復の目途は今の状態を見れば察しが付く。家族も事情は聞かな
かったが一目見て「ああ・・・」何も言っていないのに納得の色を示した。

 

 だがここにおいても親ばか、いや馬鹿親ひとり。父親というのはこうも娘が大切だろう
か、その目は憎悪に爛々と輝いていた。「しん・あすか」そう平仮名で書かれた木人の首
がとんだ・・。 完全に狙っていた。
 首が飛んだ後も幾度となく全く同じ軌道をたどる刀。この父は首しか狙ってこない、レ
イとの分析で聞いたような違うような、そんな表現が脳裏をかすめる。

 

 ちなみにこの木人誰が用意したのか定かではないが、シンと全く同じ身長であり、本人
と対峙した時寸分の狂いもなくためらいもなく刀は首へとのびるだろう。
 さらに言うならこの木人、カセットを内蔵しており「なのはブラ外していいか?答えは
聞いてない。」と音声が出るようになっていた。極度に父士郎の憎しみを煽るように作っ
てあった。

 

 母桃子はいつまでたっても男っ気がない、周りには美女ばかり、その様子に「まさか・
・・・」という疑念を抱き始めていただけにその変化を歓迎していた。出てきた赤飯は
よほどうれしかったのだろう、どうやったのかは知らないが毒々しいと表現できるほど
真っ赤だった。

 

いったん終了

 

ちなみにハラオウン家

 

 最近フェイトの様子がおかしい。数多くの人間と接してきて洞察力に優れる母とその息
子は一目見るなり気づいた。
 もじもじ・・・もぢもぢ・・・もじもじ・・・もぢもぢ・・・はぅ・・。
気付かない方がおかしい。

 

 この時フェイトの頭の中で、温泉旅行におけるシンの自爆が思い出されていた。

 

 「お兄ちゃん、温泉すっごく気持ち良かったよー。そっちはどうだった?」
 「ああ、絶景だった。」
 「フェイトさんのおっぱい揉みしだきたかったよねお兄ちゃん?」
 「ああ、超揉みたかった。」
アスカ兄妹のやり取りが微妙に変化していたがまあ問題はないだろう。

 

 「ねえ、ちょっといいかしら」さすがに見かねたリンディさんが問いかける。「最近もじ
もじしっぱなしだけどなにかあったの?」本来こんな質問は野暮でしかないのだが、フェイ
トに関しては無垢というかなんというか、なぜかそういう方面に関して進展があったとは思
えなかったための質問であった。

 

 「え・・とね、温泉で裸見られちゃって・・。おっぱい揉みたいって・・」
ごまかす、あるいはオブラートに包んだ言い方どころか、ストレートに断片的な脳内真実
のみをつたえてしまった。まあ一部真実も混ざっていたが。

 

 母子二人の脳内でその映像が捏造される、

 

 「いいだろフェイト」フェイトの両手首を片手で持ち上げ、もう片方の手を浴衣の胸元に
伸ばすシン・アスカ。
 「だめだよ・・・恥ずかしいよ。」そう言いながら抵抗しようとするが、腕力で抑え込ま
れるフェイト。
 「俺は悪くない、お前が裸で誘惑するからいけないんだぞ。」幼子に優しく諭すように言
葉を紡ぐ。
 「違うもん、あれはシンがのぞい・・・」
吐息が触れるほどに顔を近づけ、その言葉を遮って耳元でささやく。
 「おっぱい揉ませろ。」
 「そ、そんな・・・」さっと顔色が変わるフェイト。
 「お前が揉ませないなら・・ほかの奴に・・」さらに畳掛けるようにシンが言う。
 「だめだよ!キャロはまだ子供・・」
 なぜかこの後シンが向かう人間はキャロに設定されていた。ハラオウン家のシンに対す
る認識がこの辺りにうかがえる。
 まさにフェイトの無垢な優しさに付け込んだ卑劣な悪漢。

 

 「「ぬわぁあああぁんどぅうあああとおおおおおおおお!!!!!!!」」

 

 ちなみに2人の脳内設定であるため実際の状況、口調などに若干の違いが見受けられる
かもしれません。さらに言うならなぜか犯人は最初から何の疑問も抱くことなくシンに固
定されていた。だが覗いたのは事実であったのでまあ特に問題はないだろう。

 

 母子のシンクロ率400パーセントを超えました!!!
 某人造人間同様、いやそれ以上の暴走特急状態である。この勢いならこのままフュージ
ョンしても誰も疑問を抱かないであろう。融合時の名前候補は「クロディ」「リンノ」だ
がどちらも語呂がよろしくない。「こいつがスーパーハラオウンだ」・・これだ。ところ
で男と女のフュージョンってあしゅら男爵みたいになるんですかね?

 

 2人の脳内にて聖戦の狼煙が上がる。
怨敵誅殺! これは天誅ではない、人誅である!!天が罰を下すのを待っていられよう
か!人が下す、人が裁く!!

 

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ・・・・・・・・・・。
 自分で自分を扇動し殺人衝動を際限なく高めていく、今下手に口を出そうものなら「はっ
ひふっへほ~~」すること間違いなしである。

 

 シンは近い将来、報いを受けるだろう。敵は多い。めちゃめちゃ多かった。

 

こっちも終了

 

場面は戻る
 はやては6課設立時自分がどんな苦労もしょい込むと決めたが、こんな苦労は予想の斜
め上なんてものではなく、予想範囲をはるかに飛び越えて太陽系を突破していた。前人未
到の境地。その境地もはや明鏡止水に匹敵する。

 

 部屋の中が瘴気に覆われようとしていた頃、フェイトさんは、おろおろ・・・おろおろ、
あっち行ってこっち行って小声で「ふえーん、誰か来てーー」と涙目で呟いていた。

 

 期待を裏切らない男が狙っていたとしか思えないタイミングで登場する。

 

 「失礼します、シン・アスカ到着の報告に伺いました。」
過去の回想を終え6課にたどり着いたシンが、儀礼的な挨拶をし部屋へと踏み込む。

 

 (きおったな。原因の一角!というか中心人物。)
 声に出すことなく
「女の子??!!だよな?!」って感じのもんのすごい形相で、にらむようにシンを迎え
入れる。

 

 「いらぁっしゃぁぁーーい・・。」無理をしているせいか声が歪む。常人が聞いたなら踏
み込んだ瞬間ターンをかけるほどの暗い感情のこめられた声。絶対状態異常でステータスが
変化する。
 だが予想していたのか、シンはとくに反応をみせることなくあいさつを交わす・・・フェ
イトと。

 

 フェイトは顔を輝かせた。その登場にチュウしてもいいくらいだった。
はやてが実にアレな感じである。
 この特殊状況下二人の絆は自然と深まった。アイコンタクトで長文のやり取りが可能な
ほどである。
 この2人の接近ははやてにとっては予想外ではあるが、無意識のうちになのはに対する
いやがらせになっていた。

 

 「んっ、なのははまだ謹慎か?」

 

 「残念だけどね・・。」「私はあと半年くらい謹慎でもいいかと思っとる。」

 

正反対の意見が同時にシンの耳に届く。

 

 はやてのこのセリフが“あの「あうあう」状態”を見たから彼女を慮ってのことなのか、
単純に恨み骨髄「くたばれノストラダムス」のせいなのか、やはり判断はつかない。

 

 「じゃあ後で謝りに行きます。」

 

 「「やめて!!!」」何を言い出すのかこいつは!!さすがに2人の意見がシンクロする。

 

 何のための謹慎だと思っているのか、罰という位置づけ以外に2人を離してクールダウン、
心の整理をして落ち着かせるための処置でもある。なのに今行ったらあの事件の二の舞でしょ。

 

 長年の付き合いがある2人が念話を使い瞬時にやりとりを開始した。

 

 「色気をつこうてシンを止めるんや!」

 

 「どういう発想!?」

 

 「大丈夫、フェイトちゃんはエロい!!」

 

 「全然褒めてないしどこも大丈夫じゃない!」さすがに慌てて突っ込む。何も言いかえ
さねば、おそらくはやてはシンの目の前でフェイトをひん剝くだろう。

 

 「やるんや!やらないなら・・」 尋常な目つきではなかった。どうやらいまだに先程
までの黒い思考の影響下にあるようだ。今逆らったらそれこそ本気でパンツごとスカート
をずり下ろされかねない。

 

 フェイトの直感がやばいと告げた、もう止められない。その直感と同時に自分でやるの
とここではやてにやられるのが天秤にかけられ、前者を選択した。

 

 「ね、ねえ・・シン・・」戸惑いがちに声をかける。

 

 「いかないで・・欲しい・・な」そう言ってシンにしなだれかかる。顔から火が出るか
と思うほど恥ずかしい。事実顔はゆであがり瞳は潤んでいる。

 

 さすがのシンも唐突過ぎて何が起こったか理解が追い付かない。

 

 「よしよし。」満足そうにうなずくはやて。「さあ」眼で続けるよう促す。

 

 フェイトはそのまま震える手で上着のボタンをはずし胸元をさらすと、シンの首に腕を
まわす。豊かな胸がシンの鍛えた胸板とこんにちは。お互いの心臓の鼓動がダイレクトに
伝わってくる。暖かい・・いや熱い。あまりの熱さに思考がレールから外れそうになる。
 互いに異性の匂いにどぎまぎする。ふだんはそれほど意識しないがこの状況下効果はて
きめんだった。しかもそれが気になる異性であればなおさらである。もうお互いが「あう
あう状態」だ。

 

 (理由は全くわからないけど、ここまで来たら行くしかない。)シンの中で「もっと吟味
しろよ」って突っ込みたくなるくらい高速で判断が下される。シンは段階を踏まずよくわか
らないうちにくっつくという意味不明な経験をフルに生かした(種DES本編参照)!経験
を無駄にしない男シン・アスカ。

 

 シンは温泉事件でフェイトの生まれたままの姿をガン見している。想像力と記憶力が頼
んでないのにフルドライブを始める。「リミッターを解除させてもらう」脳内会議満場一致。
 見ず知らずの女性の裸と見知っている女性の裸では重みが違う。
 この服の下は・・・。シンの脳には揉まれ変形する胸が焼き付いている。あの時シンは
どんな映像ハイテク機器も真っ青の性能を発揮していた。音、映像、雰囲気、すべてをあ
の時のまま脳内で再現できる。ちなみにマユの裏成長記録も脳内最重要箇所に保管されて
いる。あの胸は俺が育てた、そしてこれからも。
 ・・・エッチな意味じゃないよ。さりげなく牛乳を飲むよう仕掛けたりしたとかそうい
う意味ですよ。
 話はずれたがともかくその状態に肉感が加われば、その破壊力たるや表現の自由でも表
現の追いつきようがない。まさに「心でなく体で理解できた。」である。

 

 ・・・最悪だ・・そっちで理解するなよ・・某名台詞に土下座です。

 

 甘さ控えめの時代で何という暴挙か
「やはりエロいな。」 はやてはやはり自分が指揮官であると確信した。適性を見抜き適
材適所。自分の判断にほれぼれした。

 

そしてそんな混沌とした状況下、ティアナが報告に来る・・来てしまった。

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

空っはーー飛べっないけどーーー翼ならーあるのさーーーーーーー
アイキャッチ(みんなで光魔法カッコいいポーズ!!)

 

 1 何事もなかったようにリセットスタート?
 2 ティアナを巻き込んでエロスタート?
 3 超展開が起こってなぜかはやてと・・・

 

シンの目の前にいつか見たLIPSがまたしても登場する。

 1、1、1、1、1、1、1、1―――

 

 シンはシューマッハもびっくりの速度で判断を下した。そして16連射の高橋名人も真
っ青、人体の構造無視の一秒間32連射で選択肢をクリック。またカウントダウンで選択
肢に変化を起こさせるわけにはいかなかった。即断即決の体現者とはシンの事である。

 

そうすると

 

 1 何事もなかったようにリセットスタート?
 2 ティアナを巻き込んでエロスタート?
 3 超展開が起こってなぜかはやてと・・・

 

「なんでだーーーーーーーーー!!」

 

 またしても同じ選択肢が姿を現した。まるでシンをあざ笑うような、まるで20台男が
ニヤニヤしながらキーボードを打っているような、とにかく何らかの意思が働いていると
しか思えない事態だった。
 どうやら特定の選択肢を選ぶまで無限ループする仕組みのようである。この仕組みに涙
をのんだ経験はおそらくほとんどの人間が持っているだろう。ちくしょうちょっと違うけ
どストーリー分岐作れよグローランサー4!ほかの国が良かったのに・・・。いや面白かっ
たですけど。

 

 「何を選べば進むんだ?! 3はさすがに選びたくない・・。」

 

 シンがそういった理由は説明するまでもない。この部屋の出来事をシンが来る前から知っ
ている賢明な皆さんなら「ああ・・」その一言で終了である。

 

 はっきり言っておこう、作者は当初1でいこうと考えていた。書いてもあった。だがそこ
でふと―――失望しました、意気地無し、はあ、空気読めよ――― そんな言葉の乱舞が
ガラスハートに突き刺さった。
 強迫観念に突き動かされるように・・・だから・・・本当に仕方ない。

 

シンは選んだ・・2を・・。

 

 ティアナはその場でUターンして部屋の外へ早足で出ようとする。

 

 そして慌てたのはこの場にいる2人(1人は目的は達した、もうどうでもいいやって顔)

 

「待って―

 スピードを信条とする2人は素晴らしいコンビネーションを発揮し、神風万歳な勢いで
ティアナの肩に手をかけ、扉の向こうへ消えかけた彼女を相当な力で引きよせる。そんな
勢いで止まれるはずもなく3人そろってもみくちゃになって倒れる。

 

 ティアナにとって現在の状況は理解の外であった。部屋の中を見た瞬間なぜそういう状
況に至ったのか想像できない世界が広がっていた。
 そして帰ろうとしたはずなのだが、今この状況で唯一分かることは今“シンの顔が自分
の目の前にあり、指と指を絡めあって押し倒されている”この一点である。ちなみに隣に
はフェイトがいてシンのもう片方の手はフェイトの腰のあたりにある。

 

 一瞬でフリーズと再起動を何度も繰り返し、パンクしたティアナの思考は全く予想外の
連想ゲームを始めた。
 シン・・・紅い瞳・・・その瞳でのぞき・・・エッチ・・・ヴァイス・・・外道・・
・なのは・・・
なのは・・なのは・・な・の・は・・・ナ・ノ・ハ
 なのはと言えばアレしかなかった。強制的にあの時の状況が思い出される。
あの時の・・・自分にとって一番印象的な頭を冷やされた事件。

 

 動けない自分・・・向かってくる魔力弾
 だめだ、どうしようもない。 これは死んだ・・・。
 兄さんの・・証明をしたかった
 何が悪かったのかな・・・

 

 その時前方に飛び込んでくる人影!
影が叫ぶ「俺の前で誰も傷つけさせたりさせない!!」

 

 「えっ、守って・・くれ・・るの?」

 

あたり一面を大音量が支配する、それほどの大爆発がおこる。

 

 そして全身ボロボロで墜落して行く二人・・・。

 

 「守れてねえーーーー!!ダメでしょ!」

 

 ティアナの口調が変わるほどの悲しい光景。
カッコよく飛びこんできた分余計悲しかった。あんなかっこいいセリフ言わなきゃよかった。

 

 想像の中でさえなんかダメだった。彼女にとってなのはの存在はめっさ大きいようだっ
た。そしてティアナは考えるのをやめた。

 

意味不明に変貌してしまった思い出から帰還する。

 

 全員がフリーズしている中、時間の止まった世界に入門してくるつわもの一人。
なんとスバルが・・・
 だがどう見ても言い訳できない、どう贔屓目に見てもアブノーマルとしかいいようがない
状況に、彼女もまたフォローの言葉を探すが結局物理的にフリーズすることにした。

 

以下疲れてきたので繰り返し・・・

 

 みんな気まずそうに・・でもその雰囲気に気付かないふりをして、何事もなかったよう
に物語を再開する。

 

 「でも、なのはリミッターで雁字搦めだろ、なら大丈夫じゃないか?」多少楽観的な考
えをシンが伝える。

 

 場が凍った。このセリフは空気を読んだのかよまなかったのか何とも判断に迷う発言だった。
どうやら集団で地雷を踏んでしまったようである。

 

 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ。」」」」」
とても疲れた溜息だけが部屋に響いた。

 

しばらくしてなのはサイド

 

 仕事が楽しかった、教え子の成長が嬉しかった、だがそれらは恋心の前になにそれ?って
感じにランクを急降下させていた。まるで某最終話エンディングクレジットで華麗なジョブ
チェンジを遂げた彼にどこか似ている。君の姿は僕に似ている。

 

 「しんの・・いじわるぅ・・にゃああぁ・・なんで・・だっこ・・」
どうやら幼児退行はまだ続いているようである。

 

 「そこは・・・ダメなのダメなの!」
かと思いきやアダルティだった。

 

 ちなみにこの妄想はのちの話にジョグレス進化する。エピソード家族へ

 

だが次の瞬間
 このままでは何かがまずい、そんな予感が胸をざわつかせた。想像の世界に浸っている
だけでは手遅れになってしまう?
 そんな得体のしれない予感が乙女モード全力全開の状態から彼女を復帰させた。いや、
乙女モードだったからこその予感だったのかもしれない。

 

 そしてなのはが己というものを取り戻してからどういう発想のもとか寺へと向かった。

 

 「甘かったの・・。」
それは自分の未熟さを痛感して鍛えなおそうと思ってのこと。立派ではあるがあさっての
方向を見ていたとしか言いようがない。他にあるだろうもっと他に。通常その発想はあり
えない。

 

 「ふむ、己の中の迷いを消したいと・・・。」

 

 「はいっ、ぜひとも。」

 

 「ではとりあえず、普段こちらで行っている修行に参加してみる形で様子を見ましょうか。」

 

 威厳のある老人だった。背筋はビッと伸び口調はハキハキとして、長い人生を越えてき
たものだけが持ち得る風格があった。

 

 寺と言えば座禅、座禅と言えば寺。早速なのはは座禅を組み瞑想を始める。

 

 (煩悩退散煩悩退散煩悩大佐・・ん・・?全然違ってるーーーー。煩悩大佐ってますます
ダメランク上がってるみたいなのーーーー!!)

 

 始めて1分と経たないうちに上記のような状態に陥った。これは重症である。
座禅を組み 自分はこんなに弱かったのかと呆然とする。今なのはは自分のことが信じられ
なかった。

 

 「滝に打たれてみるかね?」その様子を見かねたのか、そう言って老人は薄手の着物を用
意させる。
 親身になってくれるこの老人はそう言って着物に着替えるよう指示して部屋を出て行った。 

 

ぱたん

 

 「うひょ、濡れる肌、張り付く着物、男のロ・マン!これが人の夢!!人の望み!!知れ
ばだれもが望むだろう。俺も見たいいいいいいいいいいいい!!と。だがわし一人でみる。
他の弟子は皆排除してやる。」

 

 生臭坊主だった。半端な生臭さではなかった。「今現在マニアックと言われているものこ
そ王道、仏の道」そう言ってはばからない、そんな趣味の持ち主。それをすぐ押し付けない
あたり確かに年齢を重ねた者のすごみを感じさせた。
 「せっかくのボーナスチャンス仏のご褒美じゃよう。」
天に召されろくそじじい!いや地獄に落ちろ。仏なめるにもほどがある、そんな褒美は作者
が欲しい!

 

 「そうはさせるかーーーー!!」その声と同時にふすまがピシャーーンと音を立て勢い
よく開いた。そして開いたふすまの先には幾人かの弟子の姿。
 いつもは厳しい、厳しすぎる修行!それが今日に限って「金をやろう好きに遊んで来い。」
おかしいと思って来てみれば・・・「俺たちも参加させろーーーーーー!!」それは魂の叫び。

 

 「金が欲しいか?ならくれてやる!そう言ったはずだが。足りなかったか?欲深い奴らめ。」
 「ふざけろ!こんなに修行がしたいと思ったのは人生で初めてだ!今すぐ参加させろ!!」

 

 人はこんなにも醜いのか・・・。そう思わずにはいられない吐き気のする光景。人生の
なんたるかを教える側がこれでは人間という種もたかが知れる。

 

 「ふん、師の偉大さと仏パゥワーを見せつけてやろう。」
 「公平な仏ならきっと俺たちのジャスティスを証明してくれる。」

 

こいつら内部分裂

 

 「仏の顔も3度まで、そう言うがわしは3度も許す気はない。お前らは皆殺しだ。」

 

 そう言って袈裟を脱ぎ捨てた和尚の顔は阿修羅のごとし。いや本当に別人のように変化
していた。そして投げ捨てた袈裟は衣類とは思えない音をたてて床にめり込んだ。

 

 弟子たちの間に動揺が広がる。
齢70を超えようかという老人の筋肉が膨張していく、まるで亀仙人。そんな光景を見せ
られて動揺するなという方が酷であろう。
 だが長年修行してきたごつい兄弟子たちは下の者たちを鼓舞し蘇らせる!
「きゃわいい女の子と一緒に楽しく修行したくないのか!俺たちにそんな素敵シチュエー
ションなど2度と来ないぞ!!」
 そのあまりの説得力に作者までもが共感してえこひいきしそうになる。

 

 弟子たちの成長?を微笑ましく見守りながらそれでも修行を独り占めする気満々の和尚
はそのはちきれんばかりの筋肉をついに爆発させた。

 

 瞬間移動したとしか思えないような、人とは思えない瞬発力(顔も)で弟子の1人の前に
躍り出る。

 

 「うずりゃあー喰らえーい!仏プァンチ!!」
それはありそうでありえない光景だった。人が宙を舞った。

 

 誰1人として動くことができず呆然とするしかなかった、それほどの衝撃的な光景。

 

 だが諦めているものなど1人としてこの場にいない。
「「「「お前の死は無駄にしない!俺たちは一つだーーーーーーーー!!!!」」」」(こ
の人絶対仏敬ってねえな)

 

 雪崩のように一人の老人に襲いかかる。この一文だけをみると実にアレだが、あなたは
これを見て何を連想するだろうか?過去にあった英雄譚?文章的に老人いじめ?人海戦術
の強力さ?

 

 この老人は彼らの想像力の埒外だった。「あーーーたたたたたったたたた!!」両の腕が
信じがたい速度で連打される。あたかも腕が分裂したかのように・・・。

 

 衆生すべてを救うため千の腕を持つに至った千手観音。和尚はまさに衆生すべてを地獄に
つき落とすため千の腕を持つに至った逆千手観音。長年苦楽を共にした愛弟子たちが次々に
人としての形を失っていく。

 

 後ろに控えていた弟子たちは「俺たちはあんなものになろうと日夜修行に打ち込んできた
のか・・・。」今まで過ごしてきた苦しい日々が思い浮かび、とても一言では言い表せない
複雑な感情が渦を巻いていた。

 

 「アレ無敵じゃないですか!!感じる恐怖感といい見た目的にもS級魔導士超えてるんじゃ
ないですか?!」
 「大丈夫だ、作者もメインキャラと全く関わりを持たない、おそらくこれから一切出番が
ないキャラにこれ以上文章を割くとは思えない!何らかのアクションがあるはずだ!!」

そして和尚を見ると、
 「あぁあぁぁぁん」悩ましい声をあげその肉体が徐々に縮み始めた。
 「やはりあの爆肉鋼体を見た時から必ずしぼむ時が来ると踏んでいた。下の者を捨て駒に
した甲斐があったぜ!」
 「行くぞ!四天王の力を総結集してやつを打ち倒す!俺たちは一つだーーーーーーーーー
ー!!!」
どうやら一つなのは四天王限定で下の者は勘定に入ってないようだった。

 

縮みゆく和尚とごつい自称四天王の激闘が幕を開ける!

 

バキッ・・・グチャアァ・・・ボギィ・・・ガガガガガガッ・・・ポンキッキー
とても人体が発しているとは思えない音が辺りを包む。

 

そして

 

死屍累々、全員が一切合財すべてを失い地に伏した。
仏は実に正しい判断を下したようだった・・・。

 

 そのころなのはは渡された着物に着替え寺の自慢の滝の前まで来ていた。
ちなみに着替える時、着物を着るときはパンツをはいてはいけないと注意書きが添えら
れてあった。現在その注意を守ったのかどうかはなのはさんしか知らない。

 

 そのあまりに雄大な日本の美に心を奪われていると聖闘士星矢の紫龍の必殺技蘆山昇竜
覇が思い浮かぶ。熱い男だった、クールな態度に隠した熱い心、友のためなら命をもなげ
だせる男。滝を見たなら思い出さずにはいられない。
 なぜなのはが知っているのか?それは以前シンが読んでいたのを見て、ちょっとだけ彼
に近づきたくて、2人の距離を縮めたくて、同じものを共有したくて・・・気付いたら本
屋まで足を運んで店員に問いかけていた。
 読んだけどまだそのことについて話をするには至っていない。普通女の子は読まないも
のだから、あなたのために読んだと思われたら恥ずかしくて・・・話しかけられるわけな
いよね・・・。

 

 とりあえず滝に打たれてみようとは思ったが、指導をしてくれるはずの和尚どころか弟
子の一人も見当たらない。(現在凄惨な死闘を演じているため。事態はなのはの想像の遥
か上をいっていた。)

 

 滝のふもとに座るのにちょうどよさそうな岩がある。水しぶきに濡れながら近づいてみ
ると少し高い場所になっており、下を見ると滝つぼが間近に見える。
 試しに流れ落ちてきた水に手を伸ばしてみると、すさまじい勢いで手と水がはじけた。
 「無理無理無理!!場所が違うの?!」

 

 今のちょっとした接触だけで手はヒリヒリとしびれを感じていた。
 「煩悩以外のものも消えちゃうから!」

 

 ここに来るまでに水しぶきを浴びたのと、今水が飛び散ったせいで着物は濡れて体にピッ
チリと張り付き細かな凹凸も確認できる。さらに少しばかり乱れはだけてまぶしい太ももが
着物の裾からチラチラとのぞく。和尚の目は確かであった、これはエロい。

 

 滝のあまりの勢いにひるんだなのはさんだがもって生まれた強さなのか、自分は修行する
ためにここに来たという思いを支えにもう1度立ち向かう。滝に負けたくない、そんな思い
がなのはさんに蘆山昇竜覇の構えをとらせる!

 

 いま次元を超えて受け継がれる恐るべき必殺技!!
なのはの背中に龍の代わりにあるフェレットの姿が浮かび上がる!
腰だめに構えられた腕が天高く突き上げられた。
 「蘆山昇竜覇ーーー!!」

 

そして

 

つるっ

 

そんなベタな擬音をたて落下した。

 

 「あああああああああ」(やらなきゃよかった。)

 

 今のなのはは魔法を使えない無力な女の子、落下の衝撃を予想し身をこわばらせギュッ
と目をつぶる。

 

 そしてやってきたのは強くたくましい腕に抱きとめられる感触。
叩きつけられるはずだった体は彼の腕の中に、髪をまとめていた布は一連の中で失われそ
の長い美しい髪は水を滴らせながら広がる。そして輝く紅翼をひろげた青年が乙女を抱き
かかえ滝つぼの水面の上に降り立つ。
 紅く輝く翼が水にうつり世界は紅と蒼にきらめき、正反対の色が反発せずに溶け合う不
思議な世界が生まれる。そこにまだ足りないとばかりに水しぶきがキラキラと輝いて二人
を飾った。もしタイトルをつけるなら炎の天使と水の巫女だろうか。

 

 魔法を知らぬものが見れば何とも幻想的な光景に映るだろう、いや知っていてもこれで
は見ほれる以外の選択肢が存在しない。

 

 なのはを助けた青年、シンがニヤリとして口を開く。
 「通だな、まさかそれを知ってるとは思わなかった。」
首をまわして 
 「確かにここをみたらやりたくなるよな。」

 

 「み、みてたの(///)・・ま、またのぞき?」
 「人聞き悪いな。たった今ベストなタイミングで来たところだよ。」

 

 「それよりこれから魔法使うとき“俺のコスモよ奇跡を起こせ!”って言おうかな、リ
リカルマジカルに対抗して。」普段無愛想なその顔にいつか見せていたいたずら小僧のよう
な表情が浮かぶ。
 「なんで知ってるの!!!!」
今現在の年齢ではあまり知られたくないであろう呪文を暴露されなのはの精神は均衡を失った。

 

 会話が一段落して落ち着いてくると・・気付いてしまった。なのはの現在の服装に。・・
・お互いが。

 

 身に纏っているのは薄手の着物一枚のみであり、惜しげもなく素足をさらしている。
胸元もはだけてかろうじて胸のつぼみが隠れている程度である。

 

 「あ、あ、あ、あ・・・・あああああああああああ」リミッターで雁字搦めのはずなの
に魔力が流動し始める。信じがたいほどの魔導の素質。だがこの状況では悪魔のごとき素
質でしかない。
 「あああああああああああああ」シンもまた悲鳴を上げる!レジアスに怒られたあの記
憶が蘇る。ついでに天使父のむかつく笑顔も。さすがにこの短期間でもう1度はまずい、
まずすぎる!俺だけでなくなのはにとっても致命的だ。(どっちかというとはやての方な
のだが)

 

 だがさすがにリミッターの影響は伊達ではなく、放出された魔力は旅館爆破の時と比較
すると小規模なもので、大部分はシンが抑えこむことに成功した。

 

 寺の一部が爆音をあげ吹き飛んだ。・・・まあ大部分だけど0ではないですからね。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

重い足取りで寺まで歩いてきた2人
 「ここ凄いな。武闘派の寺なのか?!どう見ても死んでる奴いるんだけど・・。」
 「えっ、そんなふうには見えなかったけど・・・・なんで?私のせいじゃないよね・・。」

 

2人が目と目を合せ同時にうなずく

 

 寺の関係者は例外なく全員がすでに気を失っていたため、事の真相はちょっとばかりこ
ちらに都合のいいように姿を変えて伝えられることとなる。

 

テレビからニュースが流れてくる。
 昨夜○○の山奥にある寺で乱闘が行われました。中には重傷を負った者もおり今は○○
病院で手当てを受けている模様。どうやら魔法も使われたようで寺の一部に損傷が見受け
られました。寺の関係者は全員口をつぐんでおりなぜ乱闘が起こったのかは判明しており
ません。

 

 なぜ乱闘が起こったかなど馬鹿馬鹿しすぎる内容を言えるわけがなかった。

 

部屋にニュースが流れる中
 どうやら2人の距離はちょっぴり縮んだようで聖闘士星矢について熱く語り合っている。
教皇はなあ・・・スペクターになってまで・・・バリアジャケットのデザインクロスにし
ないか?・・・ここはフェニックスが・・・いや姉さんだな妹ならなお良かったが・・・

 

この人たち謹慎の意味わかってる?

 

                    後日談 エピソード2     了

 

おまけ

 

 今回シンは実にタイミングよく現れた。
なぜこんなことが都合よく起きるのか、蛇足かもしれないが一応説明を入れようと思う。
 これはシンの持つ超激レアskill「ラッキースケベ」(命名者 故ヨウラン・ケン
ト)の効果である。

 

 説明しよう、このスキルは本人の意思とは無関係に常時発動し、極めて低い確率の事象
でも遭遇してしまう能力である。・・・いいこと悪いことを選ばず。
 だが今回の場合は誰もが一度は夢見たあり得ないであろう状況を引き寄せるという、か
つてラウ・ル・クルーゼも言っていた「人の夢、人の望み、人の業」それを突き詰めた能
力となっている。

 

例 かわいい妹が「お兄ちゃーん、起きてー」蒲団の上にのってパンチラ
  青少年誰もが夢見る女の子との強制的接触
  階段を見上げればミニスカの女の子
  人とぶつかったら支える瞬間気になるあの部位わしづかみ
  海なんかに来た日にはフラグ多すぎ致命的

 

 そしてノンペナルティ。ペナルティがない?それは当然。なぜならあくまで事故だから
である。そこに故意になどという単語は存在しない。だから基本的に女の子の方も感謝こ
そすれ責めるなどお門違いである。

 

 こんなスキル持ってる奴を見て頭に来ねえ奴はいねえ!
このスキルに比べたらその辺のレアスキル等鼻で笑ってポイである、天秤に乗ることすら
かないません。ちなみに幸か不幸かこのスキルは本人を含め気付いている者はいない。