シロ ◆lxPQLMa/5c_番外1

Last-modified: 2009-11-28 (土) 17:20:08

                   *****

 

       第1話 みんなごめんね、魔法中年はじめましたなの

 

                   *****

 

 「唐突に始まったぞ!! いやそれより無理になのつける必要性皆無だろ!? いつも
はかわいいと思うけど今はすげえむかつくよ!」
 「でもタイトルにいかにも作者がつけたっぽい謝罪が入ってますよ!」
 「あれでも気にしてんのか!?」

 

                   *****

 

       第1話 みんなごめんね、魔法中年はじめましたモラ

 

                   *****

 

 「言い直した!!」
 「でも余計ムカつく!!」

 

 ここは人よりちょっぴりガタイのいい少女が暮らすお家。少し冷たい朝の空気の中でも
暖かな人のぬくもりを伝えてくれる素敵なお家。その中の部屋の一つからあわてたような
声が聞こえてきたよ。
 「う~ん、お鬚のセットが決まらないよ~。」
少女マンガのようなキラキラお目々のモラシムちゃん、今日も朝からお寝坊かな? 早く
しないと遅刻しちゃうぞ。

 

 「突っ込んだのに普通に始まったァ! いやそれよりそのセリフはいきなりアウトだ
ろ! 一応女の子化したんだからありえちゃいけないだろ!」
 「と言うかすげえイラつく殴っていいですか? 地の文含めて!」
 「それより黙っていようかと思ったけど結局子供化女性化全部やりやがった!! 外道
か!!」
 「しかも外見変わってねえぇぇ外道だ!!!」
 「まさにアストレイ! 王道でない物語が始まったぜ!!」
 「それすごい失礼ですよ、各方面に。」

 

 一つの出来事に何人がかりで突っ込みを入れているのか。だがそれほどの事態であった。
とても一人で突っ込み切れる事態ではない。

 

 こっちはパパの士朗さんとママの桃子さん、とっても仲がいいです。でもなぜか目を合
わせてくれません。
 そしてこっちはお兄ちゃんの恭也さんとお姉ちゃんの美由希さん。この2人も仲がいい
です。でも照れ屋さんなので目を合わせてくれません。
 う~ん、この家の中ではモラシムは浮いているかもしれません。

 

エリ 「一応モラシムさんが説明して、家族をさん付けする分には違和感無いですね。」
シン 「そんな小さな利点を得るために膨大な負を生んでしまったじゃないか!! あん
なの家の中だけじゃなくてコスプレ会場行ったって浮いてるよ!」

 

 自分にできる事、自分にしかできないこと・・・何かないかなぁ。

 

 腹から出した太い声が朝の空気の中にとけていく。
 「お父さん、お母さん行ってくる。」
モラシムちゃんがなんとも男くさい笑みを浮かべ颯爽と駆けていく。“へへっ、こいつめ。”
そう言いたくなるようなええ顔だった。
 本来カッコいい場面かもしれないが、自分より年上っぽい男くさい笑みを浮かべた娘(お
そらく)を見た両親は・・・精神崩壊していた。

 

 「ああ、なのはは・・・かわいいな」(脳内で仮想の娘を愛でている)
一片の迷いもなく現実逃避。そうです、もう現実に用などありませんでした。

 

                      ***

 

学校帰り
 みんななぜか用事があって誰も一緒に帰ってくれなかったので一人で帰る途中、林の
中に続く脇道に冒険心がムキムキと湧いてきた。

 

エリ  「その湧き方絶対おかしいですよ!」

 

    ・・・・助けないで・・・・

 

 ピン ピン  ピキーン
その時いわゆるニュータイプのような閃きがモラシムに訪れていた。

 

                    ***

 

 「う、うぅ・・・ここにいちゃ駄目だ。取り返しのつかない事になってしまう。」
そういってフェレット姿の少年は大地に倒れ伏している体を無理やりに起こそうとする。
 「絶対あれには助けられたくない。むしろジュエルシードなんてもうどうでもいいや。
一刻も早く逃げよう。」
“他人の未来より自分の未来を” 悲壮な決意を胸に少年は空へと想いを馳せる。

 

    ガサガサ・・

 

 「ん、怪我をしておるのか?」

 

 (うおおおおおおおおおおお、呼んでないのになぜぇぇぇぇ!!)
残念な事に酷使しダメージを受けている体は動いてはくれなかった。

 

 「どうしたらいい? やはり人肌か?」
 (やめろおおお!!! 怪我してる動物相手にそんな発想は生まれませんでしょ?!
服をたくしあげるのをやめてくれぇぇ!!!)
 たくましく割れた腹筋がチラリとあなたを惑わせる。

 

 (いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
誰か! 誰か助けてくださーーーーーーーーーい!!!)
 「とりあえず獣医か。」
その一言を聞いたユーノは安堵のあまり気絶した。

 

                        ***

 

アイキャッチ (少しご休憩ください。)

 

おや、いくつもの呼びかける声が聞こえてきたよ

 

 「モラシム。」
                     「モラシム。」
                                        「モラシムゥ!」

 

 「はーい今行きまっするー。」

 

                   ***

 

 ここは槙原医院。美人な女医さんがいるので有名であり、ご近所で動物を飼い始める人
口を激増させる一因となっていた。しかし一皮剥げば裏でペットショップやペット美容室
との黒いつながりも噂されるなんともグレーな病院であった。

 

 女性の獣医が運び込まれたユーノの手当てを終えモラシムに説明する。
 「簡易検査だけでもわかるくらいすごい精神ダメージだったわ。たぶんずっと一人ぼっ
ちだったんじゃないかな?」
 部分的に正解しているが大変な部分が曲解されていた。でもそれは無理からぬことであろ
う。
 「なるほど一緒にいてやらねば・・・一人にせんぞ!」
獣医の一言に決意を新たにするモラシム。
 (いらねえことをーー!!!)

 

ジーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 モラシムは目の前にいる愛らしい小動物を穴があくほどという表現がこれ以上なく似合
うくらい凝視していた。
    ビクビクッ
 (見られてる・・・怖ーー!)
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

 

止めようと思っても体の震えは決して止まることなく
 「きゃ・わ・い・い(ハート)」
モラシムの口の中で涎がクモの巣の如く糸を引く。

 

    ニチャリ・・・ユーノにはそんな擬音が聞こえていた。

 

    ダッ

 

 怪我をしているとは思えない俊敏さを見せ彼は診療台より飛び立った。それはまさに自由
への逃走だった。

 

    ムンズ

 

 だがモラシムはまるで意に介すこともなく空中にあるそれをあっさりと鷲掴みにした。
 (おわ~~いや~~!)
背中からつかまれているため短い手足がちょこまか動くだけ。そのかわいらしさ、愛らし
さがモラシムを虜にした。
 「かわいがっちゃるけんのう。」
(作者はモラシムの細かい口調ほとんど忘れてます。見た目の雰囲気だけで口調を決めて
いるので騙されないでください。モラシムファンの方許して下さい。これからも直す気は
ありません。)

 

 もうこれモラシムとも別人じゃないのかというほどの迫力に
    パタリ
ユーノの意識は絶望許容量をはるかに超えシャットダウンされた。
 「あらあら怪我してるのに動くから。」
決して怪我だけのせいでないことは明白である。

 

 「もう決めたわしが飼う。家が飲食店だという事は関係ない!」
 「あら男らしいわね・・・女の子だけど。」
気絶していたことはきっと幸いだったのだろう。
 「とりあえず隠して部屋で飼おう。」
 「あら女々しいわね。」

 

                      ***

 

 家に帰りつくとモラシムはすぐさま部屋へとユーノを隠した。

 

 ふう、今日は疲れたなあ。この疲れを落とすにはお風呂が一番なのだ。ということで
 「お姉ちゃん一緒にお風呂にはいろ。」
 「えっ!!」
 「「それは許さん!!」」
父士朗と兄恭也が待ったをかける。

 

 だが皆さん勘違いしてはいけない。モラシムちゃんの心は乙女、邪な思いはない。いや、
体も一応乙女なんですけど・・・

 

 「どうしたのパパ?」
 「貴様にパパと呼ばれる筋合いはない!!!」
娘を守るため目の前の妖怪に立ち向かい叫ぶ! 家族を守るため決死の覚悟であった。

 

 「ははーん、エッチなこと考えちゃ駄目、だぞ。」

 

    クネッ

 

 げぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお(父、兄の他に外野含む)

 

父  「なんでこんなものが我が家に・・・」
兄  「武を超えた世界がこんな身近に・・・」
外野  勝てねえ・・・・一方的にこっちが魔法使える状態でも勝てねえ・・・
    パタリ
目撃者すべてが胃の中の内容物をすべて吐き出し、力を失ったその体はキラキラてらてら
と輝くゲロの海に沈みこんだ。

 

                    ***

 

 「む~、仕方ない。」
2人を介抱するため姉と母が行ってしまったので髭面の娘は仕方なく部屋へと向かう。
 「じゃあかわいこちゃんと一緒に・・・あれ?」

 

 小動物は忽然と姿を消していた。もうストーリーなど知ったことではなかった。文句が
あるなら貴様がやれ。
 この小説内におけるユーノの初出演は類をみないほど悲惨なことになってしまった。

 

レイ  「さすがに同情する。」
ヴァ  「ああ、あのポジションは大金を積まれても嫌だ。」
 外野が自分たちの吐しゃ物を掃除しながら青い顔で会話している。その声にはまるで力
というものが感じられなかった。

 

                   ***

 

 夜の誰もいない道を薄暗い電灯だけを頼りにひたすらに走り、あの妖怪、もとい怪現象
から遠ざかる。

 

ユー  「言い直した意味がわかりません!! 妖怪だろうが怪現象だろうがどっちでも
大差ないよ! ・・・早くすずかやアリサに会いたい。この際もうクロノでもいい。」

 

 ユーノはまだシステムを、そして作者を理解していなかった。こんなオッサン少女が普
通の美少女と付き合いがあったらそれだけで犯罪的である。
 そんなうらやましいことが許されるはずなかった。(私怨ではありません)

 

 ユーノがわき目もふらずに走っていると舞台裏からなにやらがさごそと音が聞こえてき
た。
 「ふむ、私がすずか君か。ではラウ、君が・・・」
 「ああギル、君の予想通りアリサ君のようだ。む、ツンデレか難しいがやってみせるさ。
あの男(シン)にできて私にできぬ道理はない。」

 

 「うおーーーーーーーい!! もうだめだーー!!! ぼくの心が砕け散る前にこんな
話終わってくれーー。」
 その会話が聞こえてしまったユーノ。とてもフォローの言葉が見つからない。できれば
彼を慰めてやって欲しい、レスという力で。

 

 走り続けたユーノは無意識に知っている場所へ・・・つまり槙原病院へと来ていた。
だが闇夜の医院に・・・誰もがもうすでに忘れているであろうジュエルシードの影が忍び
寄っていた。