シンとヤマトの神隠し 二人だけの誕生日 短編

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:15:42

AM1:02機動六課隊舎、エリオ、キラ、シンの部屋。
スーッ、スーッ。
規則正しく、一定の感覚で聞こえる寝息。
カーテンの隙間からさしこむ、優しい月光がエリオの、キラの寝顔を照らし…、そして爛々と輝くシンの深紅の瞳を照らしていた。
(……眠れん…。)
何度寝返りをうち、何度トイレに行ったことだろう。
訓練で疲れているはずなのに、眠いはずなのに瞼が重くなってくれない。
「……食後のブラックコーヒーが不味かったかな…。」
小声で呟くシン。
しかし、周囲が静かな為にその呟きは予想外に大きかった。
「ん…うぅん~…フェイトさぁ…ん…。」
寝返りをうちながら寝言を言うエリオに
『起こしてしまったか?』
とドキドキする反面、やっぱりまだ子どもなんだなと鼻で笑ってしまう。
(俺も早く寝ないとな。)
シンは頭から布団をすっぽり被り、瞼を閉じた。
……………三十分後。
(眠れん…。)
やはり、眠れないシン。
はてさて、どうしたものか…、明日…というか今日も早朝訓練があると言うのにどうしたものか。
しばらく呆っと天井を眺めていたが、シンは布団を抜け出し、寝巻きのまま、部屋を出ていった。

ヒタ、ヒタ、ヒタ…。
音を立てないように静かに廊下を歩いていたシンは途中の自動販売機でミルクを買った。
確か、眠りやすくなる成分が入っているとか聞いた気がするからだ。
そしてシンは、ミルクを持ったまま部屋へは戻らず、屋上へと向かった。
屋上に続く扉を開けると、やや肌寒い空気が体を包み込む。
ホットミルクを買えばよかったか?
何て思いつつ、シンはストローを挿入口に差し込んだ。
そのまま地ベタに寝転がり、視界一杯に広がる星空を眺めていると、金色の閃光が走っていた。
最初は流れ星かと思ったが、どうやら魔力光のようだ。
誰だか想像はつく。
やがて光がこちらへと近付いてきた。
「シン…、こんな時間に、こんなところで何を…。
早く寝ないと駄目だよ?」
舞い降りたのはフェイト・T・ハラオウンだった。
「寝ようとは思ってたんですけど…眠れないんですよ…。
フェイトさんは?こんな時間まで仕事ですか?」

「うん、ちょっと緊急の仕事があってね。」
そうですかぁ~、と返事を返し、ストローをくわえ、月を眺めるシン。
「あっそうだ。」
バリアジャケットを解除し、鞄から何やら取り出すフェイト。
四角い箱だ。とってがついていて、ケーキなんか買ったときによく見る箱だとシンは思った。
「何ですか、それ?」
「これはアコース査察官がお土産にってくれたケーキ。
食べる?」
「へぇ~…、ケーキか、そういやつい最近、誕生日だったから…。」
「そうなんだ?」
シンは立ち上がって、フェイトが持っている箱の中を覗く。
イチゴのショートケーキがちゃんと切り分けられていて、一つを手で掴み、口へと運んだ。
「ん~…、うまい、甘すぎないのが俺は、好きなんだ。」
一つをパクパク警戒に頬張り、指についた生クリームを舐めると、もう一つ手にとる。
そんなシンをキョトンとした表情でみていたフェイトは何だか笑いがこみあげてきて笑ってしまった。
「ふふふ…、そんなに急いで食べなくても…ほら、座って…。」
「ん…。」
地に腰を下ろす二人。
フェイトもシンを見習ってケーキを食べる。
シンが4つ、フェイトが2つケーキを食べ、空になった箱をフェイトは小さくまげ、畳んだ。
「ケーキなんて…何年ぶりだろ…。」
指についた生クリームを舐めていくシン。
「そんなに久しぶりだったの?
あっ…シン…。」
フェイトに呼ばれ、顔をあげると、フェイトの指がシンの頬に触れた。
「何を……。」
「生クリームがついてるから…よし、取れたよ。」
そしてそのままクリームを口へと運ぶフェイト。
「うん…、ごちそうさま。
ケーキ、美味しかったね。
それから、誕生日、おめでとう」
そう言って微笑むフェイトにシンは頬を真っ赤にして答えた。
「あぁ…、ごちそうさま。」
それを聞いて立ち上がり、隊舎内へ向かおうとするフェイトを
「フェイト」
シンが呼びとめた。
立ち止まるフェイト。
「ありがとな…。」
シンはフェイトに背を向けたままそう、呟くように言った。
「どういたしまして。」
フェイトは隊舎内に姿を消す。
シンがもう一度空を見上げると雲の隙間から月が恥ずかしげに顔を覗かせていた。
~完~

オマケ
シンは目を覚ました。
太陽の光が眩しく、一瞬顔を背けてしまったが、それでもそこがどこか分かってしまった。
訓練用空間シュミレーター内だ。
太陽は自分のほぼ真上にある。
(なるほど、今は昼過ぎ…てことは早朝訓練すっぽかしたんだなぁ~俺…。)
「おはようシンくん。よく眠れた?」
「はい、とっても…。」
「もっと気持よくしてあげるからね。レイジングハート!」
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(種死&リリカルなのはさん) (神隠しへ戻る)