リリカルクロスSEEDW_バレンタイン誘拐事件

Last-modified: 2008-02-19 (火) 01:37:29

2/13 PM11:00 機動六課
「こちらブルー、目標を確保した」
「こちらグリーン、了解。誰にも悟られないよう注意を・・・・・グリーン2が逃走路を確保している」
ブラックはグリーンとの通信を切ると後ろの二人に合図を送る。
「いくぞ、ブルーターコイズ、ホワイト」
ブルーターコイズ、ホワイトと呼ばれた2人はそれに頷くと大きな布袋を担ぎ上げるとブルーを先頭に走り出した。
夜勤のスタッフに見つからないように3人は進み、闇にまぎれていってしまった。

 

2/14 PM12:00 機動六課 寮
フェイトはキラの部屋の前に立っていた。
部屋のインターホンを鳴らしてみるが、応答がなかった。
「もう寝ちゃったのかな?」
しかし、キラには12時ごろに用事があると伝えてあるから寝ているということは考えにくかった。
何か緊急の仕事が入ったのかもしれない。そう考えていると・・・・・・。
「テスタロッサ、どうした?」
後ろから声を掛けられ振り向いてみるとそこにはリインフォースがいた。
「えっと、キラに用事があったんですけどいないみたいで・・・・」
「寝ているのではないのか?」
「12時に部屋に行くとは約束していたんです。何か緊急な仕事が入ったのかと思って」
フェイトの言葉にリインフォースは首を横に振った。
「私も今帰ってきたところだが隊舎にキラ・ヤマトはいなかったぞ」
「そうですか」
フェイトの落胆した顔を見ると何か重要な用のようだ。
ふと視線を下げるとフェイトの手に何か箱のようなものがあった。それを見てリインフォースは合点がいった。
「バレンタインか」
その言葉にフェイトはハッとした顔になり、箱を後ろに隠す。
「まぁ、今はそんなことよりキラがどこにいるかが重要ではないのか?」
「そうですね」
フェイトはキラに通信をしてみるが反応がなかった。
「「・・・・・・・・」」
こうなってくるとキラの身に何かあったのではとフェイトは思い始める。
そう思っているとフェイトに通信が入る。
『フェイト?』
キラからだった。
「キラ、どうしたの?今日、約束したんだけど・・・・・用事があったのかな?」
『ごめんね、フェイト。緊急の用事でちょっと無理そうなんだ』
「そうなんだ、それなら仕方ないよね。お仕事頑張ってね」
『うん、ありがとう』
そうして通信は切れてしまった。
「どうやら仕事だったみたいですね」
フェイトは少し安堵したようにリインフォースへと話しかけた。
「残念だったのではないか?」
「そ、それは・・・・・」
そう言って茶化すリインフォースにフェイトは顔を赤くするしかなかった。

 

2/14 AM6:00 訓練場
「「「「おはようございま~す」」」」
なのはが訓練場の前で今日の訓練メニューを見ているといつもより早くティアナ、スバル、エリオ、キャロがやってきた。
「あれ?みんないつもより早いね。どうしたの?」
なのははちょっとびっくりしたように4人に聞くとスバルはなのはに袋を差し出した。
「なのはさん、受け取ってください」
なのははそれがバレンタインチョコだと気付くと笑ってそれを受け取った。
ティアナやキャロも同じようにチョコを差し出してくる。
「ありがとう、3人とも。みんなにも私からチョコがあるから訓練が終わったら渡すね」
「ホントですか!」
スバルは目を輝かせながらなのはを見つめる。なのはも笑って頷いた。
「あの、キラさんは?」
ティアナは辺りをキョロキョロと見回している。
「キラさんにもお世話になってますからチョコを渡そうと思ったんですけど」
今日はなのはとキラが教導をする日だったはずだが、キラの姿がない。
なのはもその言葉に首を捻ってしまう。
「うん、いつもだったらもう来てる時間なんだけど・・・・・・」
どうやらなのはも知らないようだった。
なのははキラに通信してみることにしたが、反応がなかった。全員が不思議そうに頭を捻ってしまう。
するとなのはに通信が返ってきたキラからだ。
『どうしたの?なのは』
「どうしたの?じゃないよ、今日はキラくんが教える日だよ。皆待ってるんだよ?」
『え?・・・・あ、そうだったね。ごめん、急な仕事が入ってていけそうにないんだ』
「みんな、キラくんにバレンタインのチョコ持って来てるんだよ」
『・・・・・・・・・』
「キラくん?」
『あ、ううん、なんでもないよ。みんなにごめんって言っててね』
しかし、おかしいとなのはは思っていた通信が音声オンリーだった。いつもは映像で会話しているのだ。
不審に思ったなのははキラに質問をした。他にももう1つ通信の画面を開く。
『キラくん、本当に緊急のお仕事?』
「も、もちろん」
『はやて、キラくんに緊急のお仕事あった?』
『ううん、別に頼んでへんよ?』

 

ブチッ!

 

キラとの通信が切られた。
「あ、切れた!」
「どういうことでしょうか?」
キャロが心配そうな顔でなのはを見る。キラがこんな風な手で仕事をサボったりはしない。
それはここにいる全員が知っていた。
『調べてみよか?』
通信のはやても真剣な顔だ。キラに何かあったのかもしれない。なのははそれに頷くとはやてはすぐに隊長陣に連絡をする。
『え?じゃあ、あの時のキラとの通信も?』
フェイトが言うには12時頃、キラが部屋におらず通信を送って後から返ってきたようだ
その通信も音声オンリーだったようだ。ますます怪しくなってきた。
『そうなるとキラは私が来る前に何かに巻き込まれた?』
『声くらいなら魔法でどうとでもなるしな、通信も小細工してるかもしれへん』
ますますきな臭くなってきた。これではキラが誘拐されたようなものだ。
「でも、キラさんが簡単に捕まるでしょうか?」
ティアナの言うことも最もだ。いくらあのお人好しのキラでも簡単には・・・・・・・。
「すいません、今の発言下げさせてもらいます」
ティアナも全員と同じ考えに至ったのかコメカミを抑えてしまう。
有り得るからだ、あのお人好しは何かと騙されやすかったりする。
隊長としてそこを何とか直してほしいとティアナも常々思っているが直る様子もないのだ。
『とりあえずキラ君が攫われたってことで調査するよ。こっちはなのはちゃんの通信がどっから逆探知するわ』
「了解。皆、訓練は中止。キラくんを探すよ」
「「「「はい!!」」」」

 

2/14 AM6:30 とある場所
「やばい、バレたな」
「あの・・・・」
「どうする?通信の逆探知をされたらここもいずれバレる」
「あの~」
「とりあえず移動する必要はあるだろう」
「聞こえてる?」
「しかし、どこへ逃げるっていうんすか?」
「おーーい!!」
「「「「「何だ、キラ」」」」」
キラの声に今まで喋っていたクロノ、ユーノ、ザフィーラ、ヴェロッサ、ヴァイスが声を揃えて振り向いた。
「えっと、何してるの?そして、何で僕がバインド掛けられてるの?」
キラは両手両足にバインドが掛けられて動けないようになっていた。フリーダムも取り上げられている。
強固に作られたバインドなためキラでも破れなかった。
というか、知り合いがやっているため無理に解こうとも思わないわけだが・・・・・。
「何をしていると言われればキラを拘束しているとしか言えないな」
「いや、そうじゃなくて何で拘束するのか聞きたいんだよ!」
クロノの言葉にキラが叫ぶ。しかし、クロノはやれやれと首を振る。
「キラ、今日は何月何日だ?」
「2月14日だけど・・・・それが?って、待って!何でデバイス取り出すのさ!」
「今日はバレンタインという日なんだよ、キラ?」
「あ・・・・そうだね・・・・うん、分かったからデバイスしまって」
キラは冷や汗を流しながら言う。しかし、今の言葉と自分の状況にどういった関係があるのか理解できない。
「でも、それで何で僕が捕まらないといけないのさ?」
「さて、場所を移そう」
「無視ですか!?」

 

2/14 AM12:30
キラの捜索が始まってもう6時間も経つが、何も成果がなかった。
今回の問題は恐らく内部犯の犯行とみて調査が行われている。
「でも、何だってこんな日にこんな事件が起こるんだろう」
「そうだね~」
フェイトとなのはは2人とも今は司令室で情報待ちだった。
「これじゃあ、キラ君にチョコを渡す暇がないわけやしね」
そんな2人の間にはやてが顔を出して割って入ってくる。
「そ、それは・・・・・」
「ヴィヴィオも私と一緒にキラくんのチョコ作ったから・・・・ヴィ、ヴィヴィオのためだもん!」
何も言えなくなるフェイトと丁度いい言い訳をするなのは。
そんな2人にはやてはモニターを出すと軽くパネルを動かしていく。
「とりあえず、キラ君の捜索は打ち切りや」
「え?どうして?」
不思議そうにはやてを見るなのはとフェイトに対してはやてはモニターを切り替える。
そのモニターには機動六課の敷地から出て行く影が見えた。
何か大きな袋を持っている、人1人が入れるくらいの袋だ。しかも、動いている。
「これが犯人?」
「そうや・・・・それでこれや」
その映像をもっと鮮明にすると1人の影の頭に何か付いているのが分かる。
「これって・・・・・尻尾?」
「ザフィーラや」
はやては溜め息をつきながら、そして申し訳ないような顔で答える。
さらに、モニターを切り替える。
「実はな、ヴァイス君もいないみたいなんよ。それで・・・・・」
さらに色々と操作していくとクロノとユーノ、ヴェロッサの映像が出てくる。
何故か3人とも有給を取っている。
「どういうこと?」
「私の予想だとキラ君を攫ったんわ、この5人やと思うわけや」
「ど、どういうこと?」
「捕まえれば分かることや」
なのはの質問にはやては笑いながら答えた。

 

2/14 PM9:30 とある森の小屋
「魔力反応多数!見つかった!」
ユーノの言葉と同時に近くの壁が破壊される。

 

ドオオォォォォォンッ!!

 

轟音を立てて崩れた場所から入ってくるのは機動六課の面々だった。
クロノたちの向こう側には疲れたといった顔のキラがバインドで縛られて座っていた。
「くっ、まだ2時間半もあるのに!」
「ユーノくん・・・・何でこんなことするのかな」
静かな口調でユーノに聞くなのは。
「このチームでも戦えないことはないが・・・・・・」
「クロノお兄ちゃん、どうして?」
兄が犯人だったことに戸惑いを隠せないフェイト。
「ザフィーラ、面白そうなことしとるな~?」
「あ、主はやて・・・・こ、これは・・・・」
はやての笑顔に慌てるザフィーラ。
「やべぇな、隊長陣揃い踏みじゃないっすか」
「た、隊に誰か残っていないといけないのではないかな!?」
ヴェロッサとヴァイスはほとんど逃げ腰になっている。
「さて、何でキラ君を攫ったのか教えてもらえへんかな?まぁ、ある程度予想は付いてるんやけど・・・・」
そんなはやての声に全員が声を大にしていった。
「「「「「出番とチョコが欲しかった!!」」」」」
その言葉になのはたちは口をポカンと開けて固まってしまう。
「って、クロノお兄ちゃんにはエイミィお義姉ちゃんがいるでしょう!」
「それにユーノくんたちだってチョコ貰えるでしょ!」
そんなフェイトとなのはの言葉にクロノたちはやれやれと首を振る。
「確かにエイミィのチョコはもう貰っている。他にも局員たちからも貰っただが・・・・・」
「ここにその中でも選りすぐりのチョコを貰おうとする男がいる・・・・・」
「チョコをあげるのは美少女たち・・・・・」
「しかも、いつも出番があり、おいしいとこを持って行く」
「それが、この男!キラ・ヤマト!」
示し合わせたわけではないがぴったりの口上を見せる5人に全員何と言って良いか分からない。
そんな中、はやては1人ニコニコと笑いながら立っている。
「せやかて、この物語はキラ君が主人公や。これはどうあっても覆らんやろ」
「それこそ、何かの間違いだ!きっとあるはずだ、僕たちが主人公の話がきっと」
「ここじゃあ、無理や。もっと他のところやったらえぇかもしれへんけど」
「出番とか、主人公とか、何を言ってるのさ~!」
はやてとクロノたちの会話にキラがツッコミを入れた。
「チョコだったらユーノくんの分も用意してあるんだよ?」
「私もクロノお兄ちゃんの分買ってあるし・・・・」
なのはとフェイトの言葉にユーノとクロノは首を横に振る。
「なのはさん、フェイトさん。違うんですよ、俺たちが欲しいのは本命のみ」
「故にその本命を貰うであろう、キラ・ヤマトが許せなかった」
「これは局員男性陣の総意と思ってくれてもいい!」
それを聞いている六課の男性局員はウンウンと頷いていた。
スバルやエリオ、キャロはどうすればいいのか分からないといった顔。ティアナはコメカミを抑えている。
「つまり、タダの僻みね」
ティアナがボソリとそんなことを呟いていた。

 

「クロノお兄ちゃんのおかげで予定が狂っちゃったんだよ・・・・」
「私もヴィヴィオが待ってるし・・・・」
「今回は話が分からへんでもないけど、弁護する気にはなれへんよ」
そう言ってデバイスを構える3人。
「男が・・・・」
「そんなこと・・・・」
「いちいち・・・・」
「「「気にするなーーーー!!」」」
3人の巨大な魔力がユーノたちを飲み込んでいく。恐ろしいほどの威力だ。
だが・・・・・・。
そこには防御魔法を張ったユーノとザフィーラが立っていた。
あの魔力を受け切っていたのだ。
さすがにこの状況にはティアナたちは驚いてしまう。
「負けるわけにはいかない・・・・出番のない男たちのために!」
「えぇよ、だったらとことん付き合ったる!行くで、なのはちゃん、フェイトちゃん!」
「「うん!」」
5対3のバトルが始まってしまった。
そんな中、ティアナたちはキラたちのところに何の障害もなく辿り着く。
「キラさん、大丈夫ですか?」
ティアナがクロスミラージュでバインドを断ち切った。
近くでは激しい魔法戦が行われている。
「あの・・・・あれはどうしましょう?」
キャロは心配そうに空を見上げる。それに釣られて全員空を見上げる。
「私たちの作戦は終わったし、戦う必要ないでしょ」
ティアナは溜め息をついてしまう。こんなことがあっていいのかと思うと頭が痛くなる。
キラもティアナの言葉に苦笑いを浮かべ、反対はしなかった。
「あ、ヴァイス陸曹がやられた」
そんなことをスバルが呟いていた。

 

2/14 PM11:30 機動六課 寮
「ふぅ、たくさん貰ったな」
あのバトルが終わってキラは帰ってくると早速皆からチョコを貰った。
少し照れくさい気分になる。
部屋のインターホンが鳴ったためキラはドアを開けるとフェイトが立っていた。
「あれ?どうしたの、フェイト」
「えっとね、キラ、今日はごめんね。お兄ちゃんが・・・・」
「あぁ・・・・・」
キラは苦笑いを浮かべてしまう。
「それで・・・・ね、これ・・・・・・」
フェイトがおずおずと差し出したのは可愛らしくラッピングされた箱だった。
「本当は12時にキラに渡すつもりだったんだけど・・・・・」
「そうだったんだ」
「でも、キラ、たくさん貰ったし私のは後で食べてくれいていいから」
そんなフェイトの言葉にキラは首を横に振った。
「本当はフェイトに一番最初にチョコ貰うはずだった。それに理由はどうあれ僕は約束を守れなかった」
そう言うとキラはラッピングを解いて箱のふたを開け、チョコを1つ取り出す。
そのままそれを1つ口入れてゆっくり味わって食べ、笑顔で答えた。
「うん、おいしい。ありがとう、フェイト」
「キラ・・・・」
フェイトは少し顔を赤くして、でも嬉しそう笑っていた。
時間はPM11:50分だった。

 

後で聞いた話だが・・・・・・。
あの5人組は後からお説教を長時間受けたが、チョコは貰えたそうだ。
こうして長いバレンタインは終わりを告げた。