リリカルクロスSEEDW_笑顔

Last-modified: 2008-03-16 (日) 18:59:03

「さて・・・・明日は絶対になのはちゃんを隊舎から出したらあかんで」
はやての言葉にこの場にいる全員が頷く。
「八神部隊長、訓練はどうするんですか?」
ティアナが手を挙げて質問する。
訓練は毎日行われている。それに訓練には必ずなのはがいる、その問題を解決しないといけない。
それにモニターに映っている訓練場は今回なのはを最も行かせてはいけない場所となっている。
「当日は訓練はなし、せやけどなのはちゃんには訓練の指導はヴィータたちが行うとゆーてるから大丈夫のはずや」
「僕とフェイトはなのはと一緒に仕事しながら隊舎に出ないように気をつけるよ」
はやてとキラの言葉にティアナは納得して頷いた。
「ヴィヴィオはこのことについては知ってるんですか?」
次はキャロが質問をする。その質問にはフェイトが答えた。
「ヴィヴィオには教えていないの。下手に教えちゃうとポロっと言っちゃいそうだから」
その言葉にキャロ以外のメンバーも苦笑いをしてしまう。有り得そうで怖いからだ。
「全員、隊舎の移動は正門とか裏門は使うときは注意。窓から出るのも許可」
「そ・・・そこまで・・・・・」
エリオは苦笑いを浮かべてしまう。
「それじゃあ、皆!今日の夜中から準備開始や!」
「「「「「「「「「「おおおおぉぉぉぉ~っ!」」」」」」」」」」
「でさ、はやて」
「何や、キラ君」
「何でヘリの中でこの会議しなくちゃいけないの?」

 

「よしっと!」
サイドテールのリボンを結び終わる。
なのはの朝は早い、横のベッドではヴィヴィオとフェイトがまだ眠っている。
「フェイトちゃん、昨日遅くまで仕事みたいだったから疲れてるんだね」
未だにぐっすり眠っているフェイトに笑いかけて、なのはは部屋を出た。
今日の目覚めもばっちりだし、いつもより早く起きた。
「朝の散歩でもしよっかな」
訓練場のところに行って、今日の準備をしておいてあげるのも悪くない。
今日は訓練の指導からは外れて、ヴィータやリインフォースが行うらしい。
多種多彩な相手との訓練も必要とはやてに提案されたのだ。
なのはもそれは最もだと感じ、その時は快く返事をしたのだが・・・・・・。
「癖になっちゃったかな~」
自分の足が訓練場に向かうのをなのはは笑いながら受け止めていた。
寮を出て訓練場に向かおうとしたときだった。
「なのは!」
「うわっ!?キ、キラくん!?」
横からいきなり声を掛けてきたのはキラだった。息を切らしている、走ってきたのだろうか。
「ど、どうしたの。キラくん、こんな朝早くに」
キラは良く仕事で徹夜するのが多いため、ギリギリまで寝ることが良くある。早起きをするのが珍しいのだ。
「きょ、今日は珍しく早く起きちゃってジョギングしてたんだ」
そんな質問にキラは少し焦りながらも答える。
「へぇ~、朝のジョギングっていいかもね~。私も今度一緒にやっていい?」
「へ?あ、う、うん!もちろん!」
この時、キラはその後、早朝になるとなのはに徹夜明けにジョギングに駆り出されるとは思いにも寄らなかっただろう。
「ところで、なのははこれからどこに行くの?」
「え?訓練場だよ、今日は私の当番じゃないけど準備くらいはしておいたほうがいいかなって」
「い・・・いや、ダイジョーブだよ。僕がさっきやってきたから」
キラは一瞬、訓練場と聞き焦ったが、何とかその台詞を言うことができた。
「そうなんだ」
「そ、それより先に朝食食べちゃおうよ!行こう、なのは」
「え?あ、キ、キラくん。引っ張らなくても歩けるよ」
そう言ってキラはなのはの足を訓練場の方向から隊舎へと向けて歩き出した。

 

(ごめんね、キラ。本当なら私が一緒に起きてなのはを止めるべきだったのに)
(仕方ないよ。フェイトも昨日の夜遅くまで準備してたし)
デスクワークをなのは、フェイト、キラで行う中。キラとフェイトは念話で朝のことで会話中だった。
なのはは黙々と作業を進めている。
なのはのデスクワークの仕事を多くなるようにはやてが色々と細工をしたのだ。
しかし、その仕事の数にも限りがある。
今日ある仕事はそれほど多くも少なくもなく、4時間くらい掛ければ終わってしまう。
そこでフェイトとキラの出番なのだ。
「ね、ねぇ・・・・なのは」
「どうしたの?フェイトちゃん」
なのはが自分の手を止めてフェイトのほうを見る。
「桃子さんたちは皆元気?」
「うん、元気だよ。でも、どうして?」
「この前、母さんと話したからちょっと気になっちゃって」
そう言って何気ない話題でなのはの仕事を止めようという作戦だ。
「そういえばカレルくんとリエラちゃんは?」
「うん、アルフがいつも遊び相手やってるけど素直でいい子だって」
「そうなんだ」
フェイトのほうは仕事の手を止めてなのはと喋り始めている。
さすが、女の子やっぱりお喋りが好きなんだろうと思っているとふと2人の違いにキラが気付く。
(フェイト!フェイト!)
(ど、どうしたの?キラ)
いきなり念話で話しかけられフェイトはびっくりしたようにチラリとキラのほうを見る。
(なのは喋りながら作業してる!それにフェイト、キー押しっぱなしで大変なことになってる)
「え?あぁ!?」
フェイトは自分の手元を見て整理していたデータが滅茶苦茶になっていることに驚いてしまっている。
キラはハァと溜め息を付いてしまう。
「珍しいね、フェイトちゃんがミスするなんて」
「うぅ・・・・恥ずかしい」
今回の計画に頭がイッパイでそれに重ねてなのはとお喋り、注意が散漫になっていたのだろう。
フェイトはさっきのミスを挽回するつもりが少し空回りしてさらにミスの連続だった。
しかし、フェイトのミスをなのはも手伝うこととなり、目的の時間稼ぎは成功した。
ただフェイトにはドジっ子という名の称号がなのはに与えられていた。

 

「うぅ・・・・」
「フェイトちゃん、落ち込まないで。こういう時もあるよ」
食堂に来たなのはたちは少し遅い昼食を取っていた。
フェイトはさっきのミスの続きを気にしているのか。すっかり落ち込んでいる。
仕事はまだ午後に残っている、フェイトのミスのおかげだ。
「それにしても昼食時間なのにヤケに少ないね」
なのはは辺りを見回しながら素直な感想を述べる。
いつもこの時間なら少し遅くても食堂は席がほとんど埋まっていてもおかしくないのだ。
その理由は今日はほとんどが別の場所でお昼を食べたりしているからだ。
「それに他のスタッフも少ないような・・・・・」
「き、気のせいだよ。いつもこんな感じだよね、ね?フェイト」
「うん、そうだよ。気のせいだよ」
キラとフェイトは苦笑いを流しながら答える。なのはは別段その事を気にしなかったのか食事に戻る。
そうやってキラはふと調理場のほうを見る。そこには調理場から食料を運ぶエリオの姿があった。
「ぶっ!」
キラは飲んでいたコーヒーを吹き出してしまう。
この時間は訓練が再開されている時間帯だ。しかも、エリオが調理場で食料を運んでいるところを見られるのはマズイ。
「ど、どうしたの?キラくん」
なのははキラを見るが、やがてキラが見ていた方向を見ようとする。
「な、何でもないよ?」
そうやってわざと自分の体の向きを少し変えてなのはから調理場が見えないようにする。
なのはは体を逸らして見ようとする。ここでまた同じことをすれば怪しまれる。
そう考え、別の手を考え付いたが・・・・・・実行しづらい。
だが、今エリオを見られるわけにもいかなかった。
「なのは!」
「え、何?キラくん」
視線だけこちらへと向く。用が済んだら見ようと思っているのだろう。
キラは覚悟を決めて自分のエビフライをフォークに刺してなのはに差し出す。
「なのは、エビフライ好きだよね?はい、あ・・・あーん」
今自分がやっていることがどんなに恥ずかしいことなのか良く理解している。
なのはもフェイトでさえ顔が真っ赤だ。自分も顔が真っ赤だろう。
「え・・・え?」
なのははキラの行動に驚きまじまじとキラを見ている。
そんな中、キラはフェイトに念話を送る。
(フェイト、調理場にエリオが見えてるから注意して!)
(え?わ、分かった)
フェイトの注意が聞こえたのか、エリオはこちらに気が付くと慌てて隠れた。
その様子をチラリと確認して、キラは安堵のため息を付く。
「あ、あーん・・・・・パク」
「え?」
なのはがキラが差し出したエビフライを顔を赤くしながらも食べたのだった。
その様子をキラもフェイトもポカンと見つめてしまう。
キラ自身も冗談で済ますつもりだったが、先食べられてしまい何も言えなくなってしまう。
「うん・・・・おいしいね。あ、ありがとね、キラくん」
少し照れながら言うなのはにキラは顔を赤くするしかなかった。

 

午後の仕事は比較的スムーズに終わった。
フェイトも昼食を食べた後はミスをすることがなかった。名誉挽回といった感じで頑張っていた。
なのはの分まで手伝おうとしたフェイトをキラは必死で止めていた。
(そろそろかな?)
(そうだね)
キラとフェイトはお互い頷き合うとなのはに声を掛けた。
「なのは、ちょっと一緒に来て欲しいところがあるんだけど」
「うん?いいけど・・・・どこ?」
「付いてくれば分かるよ」
そうやってキラとフェイトはなのはの手を引っ張って歩き出した。

 

「「「「「「「「「「高町なのは隊長!お誕生日おめでとうございます!!」」」」」」」」」」
そこには誕生日会に参加できる六課スタッフがほとんど集まっていた。
訓練場はパーティー会場にすっかり変化していた。
「これって・・・・・」
なのはは呆然とした様子で会場を見てしまう。
「なのはの誕生日会を開くってスタッフ皆が聞いてお祝いしたい人たちがたくさんいたんだ」
「なのはの笑顔に皆元気をもらってるんだよ。それでそのお返しがしたいんだって」
両隣のキラとフェイトが優しくなのはにそう教えていた。
「そっか・・・・だから2人とも今日はおかしかったんだね」
「「うっ」」
いつもはミスをしないフェイトがミスの連発だったり、キラがあんな行動をするわけがないのだ。
しかし、キラとフェイトは自ら行為を思い出したのか顔を赤くしてしまう。
「それより早く行こうか、皆待ってる」
「そうだよ、なのは。今日は楽しもう?」
キラとフェイトに言われ、なのはは嬉しそうに笑って頷いた。
なのはの笑顔は六課にとって明るい太陽だなとキラはそう感じた。
この笑顔がある限り六課の全員は前を向いてどんな障害でも乗り越えられるだろう。

 

彼女の笑顔が永遠に輝いていますように・・・・・・