リリカルクロスSEEDW_第15話

Last-modified: 2008-03-21 (金) 17:58:12

「はぁ、はぁ・・・・・」
未だに傀儡兵が尽きる様子はない。さすがに世界を変えようとするだけのことはある。
リインフォース、ザフィーラともに疲弊している。魔力もほとんどなくなりそうだ。
2人は物陰に隠れて息を整えている。なのはたちを追わないように奥への道の入り口を崩している。しかし、これで退路がなくなったのも事実。
「「!?」」
2人はすぐに物陰から飛び出すと先ほど隠れていた場所が傀儡兵の砲撃に破壊される。
しかし、飛び出した先は数多くの傀儡兵が待ち構えていた。
(こうなったら残りの魔力を使い切ってここにいるもの達だけでも)
(あかん!)
リインフォースとザフィーラの念話に割り込む声があった。
「彼方より来たれ、宿り木の枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け」
「カートリッジロード。ハイマットフルバースト!」
『High MAT full burst. Target lock.』
「ミストルティン!」
「ハイマットフルバースト!」
キラとはやての攻撃により目の前にいた全ての傀儡兵が破壊される。
「主はやて、キラ・ヤマト」
リインフォースとザフィーラは2人の元へと飛んでくる。
「2人とも・・・・よう、頑張ったな」
そう言ってリインフォースとザフィラにはやてはやさしく笑いかけた。
リインフォースははやての後ろに隠れているリインⅡを見つけると優しそうに笑う。
「完成・・・・・されたのですね」
「うん。さぁ、リイン。お姉さんに挨拶やで」
「お姉さまですか?」
「そうや、リインはこの子はリインフォース。リインの基礎的な部分はこの子から出来てるんよ。だからお姉さんや」
まぁ、実際今の2人には構造とかそういうのはほとんど接点ないんやけどな、とはやては笑いながら言った。
「大丈夫なのか?」
ザフィーラははやての横にいるキラに話しかける。
「うん、怪我も魔力も大体は回復してる」
「そういうことでは・・・・・」
「大丈夫だよ」
そう言って笑いかけるキラを見るとリインフォースもザフィーラも黙って頷いていた。
キラたちの後から遅れて転送されたシャマルはすぐにリインフォースたちの回復を始める。
「とりあえず皆と合流しよう。多分、ファントムを倒せば傀儡兵の動きも止まるだろうし」
その言葉に全員が頷いた。
「それならキラ君、一発大きいの頼むな」
「うん、まかせて!フリーダム!」
『High MAT full burst.』
そう言うとキラは上に上がると傀儡兵が沸いてくる地面へと5つの砲門を向ける。
そのまま目を閉じ、神経を集中させる。
「っ!!・・・・・・そこだあぁぁぁぁぁぁっ!!」
『Fire.』
そうして5つの砲門から赤・蒼・黄の魔力の一閃が傀儡兵を巻き込み床を貫いていった。
「行くで、皆!」
「「「「はい!」」」」
キラに続き、はやての号令で全員が穴へと飛び込んでいった。
キラたちが穴へ飛び込んでいく後を傀儡兵が追おうとするが結界が張られた。
「ここから先へは一歩も行かせませんよ」
魔力の羽を広げたリンディが傀儡兵たちを上空から見下ろしていた。

 

「ディバインバスター!」
コピーの顔を一気に根こそぎ持っていく。しかし、すぐに再生を始めようとする。
『『Explosion.』』
「飛竜一閃!」
「シュワルベフリーゲン!」
再生しないように連続で攻撃を仕掛ける。シグナムとアルフも合流し、少しずつだがコピーが削られてきている。
ファントムはクロノとフェイトと対峙し、なのはたちへと攻撃を仕掛けられないでいた。
「忌々しい魔導師たちめ・・・・・だが・・・・」
そう言ってファントムは劣化コピーへと手をかざすとコピーの形が変化していく。
それは大きな人の姿へと変わっていった。
「巨人?」
しかし、変化はそれだけではなかった。その変化はなのはたちにとっては息を呑むものだった。
「なっ!?」
「え・・・・?」
「う・・・そ・・・・」
クロノ、なのは、フェイトはその姿に絶句する。アルフとユーノもだ。
その巨人の胸の部分に人の顔が、プレシア・テスタロッサの顔があったのだ。
「あの女は中々良い魔力の器だったのでな、使わせてもらった」
「ふ・・・・ふざけるなーーっ!!」
フェイトが怒りの形相でファントムのところへ向かおうとするが、それを巨人が邪魔をする。
その瞬間、フェイトはプレシアの顔を見てしまい、動きが止まってしまう。そして、そのまま巨人の手で叩き落される。
「う・・・あ・・・・っ」
下に叩きつけられたフェイトを巨人は足を振り下ろし、踏み潰そうとする。
「フェイトちゃん!」
なのはがフェイトのところへと向かおうとした時だった。
轟音とともに天井から強力な魔力砲撃が巨人の背中に直撃する。巨人はフェイトを潰すことはなかった。
その間にフェイトは天井から飛び込んできた人物に抱えられていた。
フェイトが目を開くとそこには蒼い翼を広げた天空の使者がいた。
「キ・・・・ラ?」
「ごめんね、フェイトちゃん、皆・・・・・遅れた」
キラはそう言うとフェイトを近くに来たなのはに預けると巨人のプレシアを見る
少し驚いた顔をするがすぐにファントムを睨む。
「増援か・・・・・・だが、我は負けるわけにはいかん!」
ファントムはそう言うと巨人の背に乗ると巨人の中へと沈み込んでいく。
「このっ!」
キラはライフルを撃つが先にファントムが中に入ってしまった。
「皆、無事か?」
「はやて!」
キラの後から続いて降りてきたはやてたちを見てヴィータやシグナムが向かう。
「皆、怪我をしてる人はシャマルやユーノに治してもらえ。奴があれを制御下におくのに少しは時間はあるはずだ」
クロノの指示でシャマルとユーノは全員の回復に努めた。
そして、全員の回復が完了したと同時に巨人の目が開いた。

 

『Load Cartridge. Baraeina. Target lock.』
フリーダムがカートリッジを一発消費する。
「いけぇ!」
赤い魔力の一閃がファントムへと直撃するが、外側を焦がすだけに終わってしまう。
それも再生機能により回復していく。
「一点集中なら!ディバインバスターー!!」
「プラズマスマッシャーー!!」
なのはとフェイトの2つの魔力の一閃がファントムの腹の一点に集中するがそれすらも回復していく。
「だったら、物理ダメージならどうだ!シグナム!」
「あぁ、分かっている!」
ヴィータとシグナムはお互い1発ずつのカートリッジをロードさせながらファントムへと突っ込んでいく。
「フランメ・シュラーク!」
「紫電一閃!」
2人の魔力付加の掛かった攻撃にファントムは炎に包まれる。
だが、その炎も直ぐに消え傷も元通りになってしまう。
『ふん、効かぬ、効かぬぞ!』
「くそっ!硬ぇし、再生するし、最悪じゃねぇか!」
ファントムの攻撃を避け、後退しながらヴィータは毒づく。
「今は脆い部分を探してそこを打つしかない!」
クロノの言葉に全員が頷き、飛び出そうとした時だった。
「嘘・・・・・」
その声はキラたちの後ろから聞こえてきた。
キラたちが振り返るとそこにはアリシアが呆然としていた。
アリシアの視線の先にあるのはファントムの胸にいるプレシアの姿だった。
「アリシア!来ちゃだめ!」
フェイトがアリシアのほうへ向かおうとするがファントムの方が早かった。
アリシアがファントムの手に捕まってしまう。
『どうやら負けたようだな、アリシア』
「ファントム!母様に・・・・母様に何をした!!」
アリシアは手から抜け出そうともがくがビクともしない。
『ククククッ、役立たずに特別に教えてやろう。この女はもう死んでいたのだよ』
「!?・・・・・う・・・・嘘よ!」
『この女は貴様を生き返らせるために我が教えた秘術を使った。
その秘術は蘇生ではなく転生なのだよ。
そして、貴様に自分の魔力と命を与えた』
全員がその言葉に固まってしまう。ファントムの声は楽しそうに声高らかに言い放つ。
『そして、その秘術を使って死んだものは同じ秘術で生き返ることもない!
つまり、この女は生き返ることはない!』
その瞬間、アリシアの目から光が消え、力なくうなだれてしまう。そして、そのままファントムに取り込まれていく。
『せめてもの情けだ。母親と共に我の糧となるがいい!』
「やめてぇ!」
叫ぶフェイトを余所にアリシアはファントムの中に取り込まれていってしまった。
それを見てフェイトは膝を付いてしまう。
「フェイトちゃん!しっかりして!」
キラはフェイトの肩を強く揺する。それを力なく見上げるフェイトにキラはしっかりと見据える。
「まだ彼女が取り込まれるまで時間はあるはずだ!だから!」
「・・・・・・うん!」
フェイトは頷くとバルディッシュを強く握ると立ち上がった。

 

「とりあえず皆、僕にやらしてくれないかな」
キラはそう言いながらゆっくりとファントムの前へと歩いていく。
そんなキラをファントムは見下ろしながら言った
『貴様だけで我を倒せるというのか』
「フリーダム。ミーティアモード、ドライブ!!」
『Ignition.』
バリアジャケットと蒼の翼の上に白の甲冑が付き、両腕に大きな篭手が付きそこから魔力刃が現れる。
「あなたは僕を本気で怒らせた」

 

キラはその瞬間、ファントムの背中に移動すると巨大な魔力刃で斬り裂いていた。
『やるな・・・・だが!』
その傷さえもみるみるうちに再生していき、すぐにファントムの手がキラを捕らえようと伸びる。
「くそっ!それなら!」
キラは目を閉じる頭にSEEDが浮かんでくる。その瞬間、キラのバリアジャケットが段々黒く染まっていく。
「あ・・・ぐっ・・・・くそ・・・・」
どうやらまだキラはSEEDを使えるほど回復してはいないようだった。キラの体が悲鳴を上げる。
「あかん!リイン、行って!」
「はいです!」
リインⅡはキラの元へと飛んでいく。
それをキラは痛む体を耐えながらリインⅡを見る、リインⅡはキラに向かって頷いた。
「私がキラさんの力をサポートします!」
「分かった、リインちゃん」
2人は蒼と白の魔方陣を展開する。
「「ユニゾン・イン!」」
キラとリインⅡを光が包んでいき、その光が雪のように溶けていくとそこには蒼天の天使がそこにいた。
髪がウッドブラウン瞳がロイヤルブルーに変わる。
バリアジャケットは白が基調となっているが黒いラインが入っているものになっている。
翼は変わらず、空のような蒼をしていた。

 

キラの中でSEEDが発動する。
しかし、痛みは何もなかった。ただ胸が温かく安心できるほど落ち着ける。
「いくよ、リインちゃん!」
「はいです!」
『ふん!そんなことをした程度で!』
そう言ってキラを叩き落そうと拳を握るが、それと同時にキラは両手を合わせる。
『Buster mode. Standby.』
二発のカートリッジを消費し、両篭手が合体して巨大な砲門と化す。
そして、その照準を迫り来る巨大な拳に向ける
「ミーティア、フルバスター!シューーット!!」
ひと際蒼く輝く光がファントムの拳を一気に消し去っていく。
『ぐおぉぉぉ・・・・ば・・・・馬鹿な・・・・』
先ほどまでなのはたちの攻撃を通さなかったはずの体がダメージを受けているのだ。
『だが・・・・腕を消し飛ばされたくらいで!』
そう言って消し飛んだ腕を再生しようとした時だった。
『うおおぉぉぉぉ!?』
逆の腕がキラの巨大な魔力刃によって斬り飛ばされていた。再生スピードがキラの攻撃に追いついていかない。
(キラさん、私ももう限界です。次の一撃で!)
今までキラのSEEDのコントロールをしていたリインⅡの言葉にキラは頷いた。
キラは巨大な蒼い魔方陣を展開する。
『何故だ!何故分からぬ!魔導は人を不幸にしかせぬ!』
「あなたの世界がそうなってしまったのは悲しいことだ、だけどこの世界はあなたの世界じゃない!違うんだ!」
『違わぬ!魔導はあってはならぬのだ!それはどこの世界も変わらぬ!』
「魔法は人を幸せにすることも出来る!あなたはそれも否定するんですか!」
『魔導による幸せなど作られたものだ!魔導がなくとも人は幸せになれる!』
「だからってあなたは殺すのか!魔法を使える人を魔法に関わる人を!」
『魔導を消すためには必要なのだ!』
「人を殺して手に入る幸せなんて誰も欲しくないはずだ!」
『ならば戦争は何だ、自国の利益、幸せのために人を殺しているではないか!』
「それがあなたが人を殺していい理由なんかじゃない!!その人たちが死なないといけない理由でもない!!」
「ハイマットフルバースト、ミーティアシフト!!」
『High MAT full burst. Meteor shift.』
全ての砲門がファントムへと向けられる。そして、巨大な魔力が集束していった。キラの周りには小さな魔方陣もいくつも現れる。
『Target lock.』
『このままでは・・・・』
ファントムが恐怖を感じた、その時だった。
『ふん、案外あなたも使えないな』
その声にキラたちは驚いてしまう。クルーゼだった。
『何のつもりだクルーゼ、何故お前が私の中にいる!』
『あなたでは彼らに勝てないと思いましてね。代わって差し上げようと言っているんですよ』
『ふざけるな、こんなやつらなど我一人で・・・・な、なんだ・・・体が動かん!』
『あなたが彼らに気を取られている間に乗っ取らせていただきました』
『お前を助けてやったのは我だぞ!』
『えぇ、そのことには感謝しています。しかし、私とあなたでは望みが違う』
『なんだと!?』
『私は魔導師だろうが関係ない。私は滅ぼす。この世界も、そしてあの忌々しい世界も、私の手で!!』
『貴様ぁ!』
『今までありがとう。感謝しているよ、マスター』
『やめ・・・・・ぐおおぉぉぉぉ・・・・・』
それ以来ファントムの声が聞こえなくなった。
『さて、次は君たちの番だ』
「クルーゼッ!!」
『Fire.』
キラの渾身の攻撃はクルーゼが乗っ取った巨人に当たり大きな爆発が起こった。
「やったか?」
爆煙で辺りが良く見えなくなっていた。
キラはSEEDをやめると、リインⅡはキラからユニゾン・アウトする。なのはたちも周りを警戒していた。
その時、キラの横の爆煙から手が飛び出してきた。
「しまった!?」
キラは避けられず、そのまま捕まってしまう。咄嗟にリインⅡを突き飛ばすことは出来た。
爆煙が晴れ、キラの目の前に現れたのは・・・・・・。
「あ・・・・・あれは・・・・・・」
キラが最後に戦ったモビルスーツ、プロヴィデンスだった。