リリカルクロスSEEDW_第17話

Last-modified: 2008-04-05 (土) 23:32:42

「いい加減しつこいものだね、君たちは!」
「負けるわけにはいかないからです!」
フェイトたちは気丈にも言うが、ボロボロだった。キラを助けるために戦っていたとしてもキラがいないだけで何だか弱くなった気がするのだ。
周りの皆も同じような気分なのだろうか。
「ふん、ならば君から殺してあげよう」
今まで分散して戦っていたドラグーンが一瞬にしてフェイトの周りを囲んできたのだ。
「!?」
「死ぬがいい!」
「フェイトちゃん!」
なのはが叫んだ瞬間ドラグーンの一斉掃射がフェイトへ向かって放たれ、大きな爆発が起こった。
「ハハハハハハッ!これで彼女は終わりだ」
煙が晴れていく。そこにはドラグーンの一斉掃射でフェイトが跡形もなく消えているはずだった。しかし、人影があった。
「何だと!?」
それを見て、クルーゼは驚きの声を上げる。
「もう誰も傷つけさせはしない」
「私の妹に手を出さないで」
目の前にはフェイトを守るように立っている人物が2人いた。
キラとアリシアがデバイスをクルーゼに向けながら立っている。その様子を全員が目を見開いて驚いていた。
「馬鹿な・・・・何故・・・・!?な・・・何だ、体が・・・動かないだと!?」
クルーゼはキラたちが外に出ていることに加え、自分の体が動かないことに驚愕する。
まるで何者かがコントロールを奪っているようだ。
キラはクルーゼの姿を見て、すぐにプレシアの顔が浮かんだ。横にいたアリシアもそれが分かったのかキラの顔を見て頷いた。
プレシアがクルーゼを止めているのだと。
「皆!今がチャンスだ!行くよ!!」
キラの言葉に我に返ったなのはたちはすぐに頷いた。色とりどりの魔方陣が展開される。

 

ピンク
「いくよ!レイジングハート!」
『All right. My master.』
レイジングハートはマガジン内のカートリッジ全弾を消費する。
『Starlight Breaker EX.』

 


「やれるね、バルディッシュ」
『Yes, sir.』
バルディッシュもスピードローダーのカートリッジ全弾を消費する。
『Jet Zamber.』

 


「いくで、リイン」
(はいです!)
リインⅡが魔力を調整し、拡散を押さえた貫通破壊型砲撃の用意をする。
(準備完了です!マイスターはやて)

 

青紫
「決めるよ、ハルバード」
『Yes, ma'am』
ハルバードもバルディッシュと同じようにカートリッジを全弾消費した。
『Jet Slasher.』

 

そして、銀・赤・紫・藍白・青磁・水色・緑・オレンジの魔方陣がプロヴィデンスを囲むように展開される。

 


「フリーダム、僕たちもいくよ」
『Yes, sir. Dragoon System. Standby.』
「え?フリーダム・・・・それって」
『When entering that, data was copied.』
「分かった。一気に決めるよ」
フリーダムの両翼のマガジンからカートリッジが全弾消費される。
『All right. High MAT full burst. Dragoon shift.』

 

「「「「「「「「「「「「「いけえぇぇぇぇぇぇっ!!」」」」」」」」」」」」」

 

全員の掛け声と共に巨大な魔力の激流がプロヴィデンスを飲み込んでいく。
「何故だ!何故私はまた負ける!」
「あなたが持っていないものを私たちが持っているから!」
「支えてくれる人が、言葉を伝えられる人が!」
「そんなもの私には必要など・・・・・」
「欲しかったはずだよ!苦しい時に一緒にいてくれる人が!」
その言葉にクルーゼは昔を思い出していた。自分は求めようとはしなかった。
いや、諦めていたのだろう。だが、もし求めていたら・・・・・・・。
「全く・・・・・・君たちが羨ましいものだよ」
「クルーゼ?」
「ならば君たちはその生き方を続けてみせろ!その生き方が正しいか私は見定めさせてもらおう」
「クルーゼ!!」
その瞬間、プロヴィデンスが光の粒子となり崩壊していく。
『見せてみろ!』
そして、プロヴィデンスは消えた。

 

「アリシア!キラ!」
フェイトはアリシアとキラに飛びついた。2人はフェイトを優しく抱きとめる。フェイトの目には涙があった。
「キラ、やったじゃねぇか!」
ヴィータがキラの背中をバシッと叩く。
「い゙っ~~~!?」
キラは背中のあまりの激痛に声が出ない。
「え?」
「あかんよ、ヴィータ。キラ君の傷まだしっかり治っとらんのやから」
驚いてしまうヴィータにはやては笑いながらキラのところへたちやってくる。なのはたちもキラたちの下へ集まる。
「キラ、お前!」
ヴィータがキラを怒鳴ろうとしたが、やがて溜め息を付いてしまう。どんなに怒鳴っても無駄だろうと思ったからだ。
「あはは・・・・ごめんね。でも、皆が心配だったから・・・・」
そう言ってキラが倒れこみそうになるのをフェイトとアリシアが支える。
「無理しちゃダメだって言ってるのに」
横でなのはは少し怒ったように頬を膨らませるが、その目は優しそうにキラを見ていた。
「仕方ないやん、これがキラ君なんやから」
その言葉に全員が笑って頷いていた。
長い長い戦いがやっと幕を閉じた瞬間だった。

 

ファントム事件から数日が過ぎた。
「そっか、母さんが・・・・・」
「うん」
キラの病室にお見舞いに来たフェイトはキラにクルーゼに取り込まれたときに出会ったプレシアの話を聞いていた。
最後の言葉「ごめんね」という言葉を・・・・・。
「良かった・・・・・やっぱり私は・・・母さんの・・・娘・・・だったん・・・だね」
フェイトの目からボロボロと涙が零れていく。キラは優しくそんなフェイトの頭を撫でた。
「そうだね、良かったね。フェイトちゃん」
キラがそう言った瞬間我慢できなくなったフェイトはキラに抱きついて声を上げて泣いた。
それをキラは優しく抱きとめ、フェイトが泣き止むまで優しく頭を撫で続けた。

 

「ご・・・ごめんね、キラ」
フェイトは泣き止むと顔を赤くしていた。目はまだ真っ赤のままだった。
「ううん」
キラは優しく笑いながら首を横に振った。
すると、キラの病室のドアが開いてそこには花束を持ったなのは、はやて、アリシアがいた。
「あ、フェイトちゃん先に来てたんだ」
「う、うん」
なのはの言葉にフェイトは先ほどまで泣いていたのをキラに内緒にしていてくれとアイコンタクトを送る。キラもそれに頷いた。
しかし、アリシアはフェイトの近くまで来るとフェイトの顔をじ~っと覗き込んでくる。
「な、何?アリシア」
「涙」
「え?」
「涙の跡、それに目が真っ赤」
「えっと・・・・それは・・・・その・・・・」
フェイトはどうやってごまかそうかと悩んでいるとアリシアはフェイトの口を押さえて何も言うなというように首を横に振った。
「キラに泣かされたのね」
「へ?えっと・・・・まぁ・・・・泣かせたの・・・・かな?」
キラもどう言えばいいのか困ったような顔をする。確かに泣かせたのは自分だが、それはプレシアのことを話したからだ。
しかし、キラはフェイトに口止めされているため何も言えないのだ。
「私の大事な妹を泣かせたわけね?」
「ちょ、ちょっと待って!アリシアちゃん・・・・誤解してる・・・・アリシアちゃん物凄く誤解してる!」
「キラくん、フェイトちゃん泣かせちゃダメだよ」
アリシアの横でなのはにこにこ笑いながらも目が笑っていなかった。
「なのはちゃんまで!?違う!違うから!!」
それをはやては面白そうに見ているだけでキラを助ける気は全くないようだった。
実はアリシアもなのはも違うことは分かっていた。3人ともキラがプレシアの話を始めた時には部屋の前にいたのだ。
そして、フェイトが泣き止むまで待っていたのだ。
アリシアとなのはは暗い雰囲気をごまかすためにこういう演技をすることにしたのだ。
はやてもそれに賛成し、キラを助けようとはしなかった。
「いくよ、なのは!」
「オッケーだよ、アリシアちゃん!」
「ちょっと待ってーーーーーっ!」
キラの叫び声が病室に響き渡っていった。

 

その後、散々なのはとアリシアに弄られたが、キラたちははやてが剥いたリンゴを頬張りながら話をしていた。
「キラくんはこれからどうするの?」
「う~ん、まずはこの傷を治すことが先かな?」
なのはの質問に何気なく答えたキラだが、その答えになのはは首を横に振る。どうやらそういう答えじゃないらしい。
「これからっていうのはもっと先のことだよ」
「先か・・・・・管理局の手伝いをしていくことしかまだ浮かばないかな」
キラは今までこれからどうするかなど真剣に考えることがなかった。
最初は元の世界に帰れるかもと考えていた。
しかし、よく考えればこんなにも深く関わってしまった世界だ。元の世界に帰るのを管理局が許可するだろうか?
そう考えると、もう元の世界には帰れないだろう。だが、それでもいいと今の自分は考えている。
しかし、そうなるとなのはの言うようにもっと先のことを考えなくちゃいけない。
「でも、いきなり聞かれてもすぐには出ないかな」
キラは苦笑いを浮かべながら答える。まだ時間はある、ゆっくり考えていけばいいのだ。
「じゃあ、一緒に教導隊いこうよ!」
「執務官補佐とか興味ない?」
「特別捜査官の助手に!」
3人が同時に、そしてバラバラの意見をキラに言ってきたので、キラはキョトンとした顔をしてしまう。
すると、3人はお互い顔を見合わせて頬を赤くしてしまっている。
「モテモテね、キラは」
「へ?」
アリシアの言葉にキラは首を傾げてしまう。何だか色々突拍子もないことばかりで理解出来なかった。
「「「アリシア(ちゃん)!」」」
3人が顔を真っ赤にしてアリシアを睨むが、アリシアは明後日の方向を向いてしまう。
「ならば、キラ。私たちと一緒にレティ提督の下で働くか?」
「いいな、それ!キラが来ればあたしらの仕事減るしな」
その言葉に3人はピタリと固まってしまう。恐る恐る振り返ると入り口にはリインフォースたちが笑いながら立っていた。
「あの・・・・リインフォースたち。いつから・・・そこに?」
「高町がキラにこれからのことを聞いた辺りからです」
「最初から!?」
なのはもフェイトもはやてもビックリしてしまう。全部皆に聞かれていたということだ。
「あれ?気付いてなかったの?・・・・・というか3人ともどうしたの?」
キラは3人がさっきよりも顔を真っ赤にしているのに気が付くが首を傾げてしまう。
「キラ(くん・君)ばかーーーーーっ!」
「えぇ~~~!?」
そんな様子をアリシアやリインフォースは楽しそうに見つめていた。

 

「なるほど、では正式にキラさんは局員になるのね」
「はい」
キラは病室で見舞いに来たリンディやクロノと話をしていた。
「しかし、なのはたちみたいに教導隊や執務官を目指してもキラなら合格できると思うんだがな」
クロノはキラが一般の武装局員として働くことが不思議でならなかった。
キラだったら引く手あまただろう。それに能力の持ち腐れではないだろうか。
「うん、でも僕って上に立つような人間じゃないし、みんなの手伝いが出来るのは何かなって考えるとね」
なのはたちが言っていた教導隊や執務官、特別捜査官も考えたが、まずは皆の手伝いをするなら局員の方が良いと思った。
「本当にキラさんは・・・・・・自分のことも考えないとダメですよ?」
「はい、それは分かってはいるんですけどね」
キラも苦笑いをしながら答える。しかし、それを変えるつもりはないようだった。
「分かりました。正式な手続きはまた今度説明しましょう」
「ありがとうございます」
キラはリンディに頭を下げ、リンディはそれに笑って答えた。

 

「あの、アリシアちゃんについてはどうなるんですか?」
「アリシアさんについては色々と裁判が長くなるかもしれないわ」
「フェイトと似たような事例でどうにかするつもりだが、今回の事件が大きすぎるのも事実だ」
2人の言葉にキラは悲しそうに俯いてしまう。プレシアに頼まれたのに自分にはどうしようも出来ない。
「だが、絶対に無罪にするつもりだ。彼女は人を殺していない、これは事実だ」
「襲われた被害者たちも言っていたの、甲冑の魔導師は私たちを助けてくれたって」
「だから、彼女を重い刑に罰することはさせないさ」
そう言ったクロノの言葉をキラは頷いた。

 

「キラくん、お見舞いに来たよ~」
リンディたちが帰ろうとするとなのはたちがキラのお見舞いへとやってきていた。
「トリィも連れて来たよ、キラ」
「ありがとう」
『トリィ』
トリィはフェイトの肩から飛び立つとキラの肩に止まる。
「それよりなのはちゃん、この頃無理してない?フェイトちゃんは勉強頑張ってる?はやてちゃんは・・・・もごっ」
「キラ、私たちの心配はしなくていいから怪我を治すことだけ考えて」
フェイトはキラの口を手で塞ぐと少し怒ったようにキラに言う。キラも頷いて答える。
そんな様子をなのはやはやてたちはおかしそうに笑っている。
(こんな時間が続けばいいな)
キラはそんなことを考える。そして、皆も同じ気持ちなのだろうかと。
「「「一緒だよ!」」」
その言葉にフェイトたちは笑いながら答えてくれた。キラはそんなフェイトたちに嬉しそうに笑い返した。
本当に、ずっとこんな時間が続いていきますようにと。

 

時空管理局地上本部
「君がキラ・ヤマト君か。私は時空管理局・首都防衛隊のゼスト・グランガイツだ」
キラは目の前にいる体格のいい男と握手をする。
後ろには青い髪と紫色の髪をした綺麗な女性が2人、笑顔でそれを見つめていた。
「私たちの部隊は君を歓迎しよう。君の力などはデータで見させてもらった。
 私たちは今ある事件を追っている、早速だが君の力、頼りにさせてもらうぞ」
「はい!」
その出会いは偶然だったのか、必然だったのか。
その時の僕はそんな事を考えることは出来なかった。

 

・・・・・to be continued