1
最終決戦を前に語り合う二人。
ミ「ねぇ、シン。シンはどうして頑張るの?」
シ「どうしてって……戦争の無い、平和な世界のためさ。ミーアだってそうだろ?」
さも当然のように答えるシンに、困ったような顔のミーア。
ミ「私が聞きたいのは、そういう意味じゃないんだけど……」
シ「? じゃ、ミーアは違うのか?」
ミ「それは、私だって平和のために歌ってるわよ」
ミ「……でも、本当は……」
小さく呟き、俯くミーア。
どうしたのかと思ったシンに、顔を上げたミーアがいきなり尋ねる。
ミ「ねぇ、シンは私の顔、どう思う?」
シ「え?」
ミ「私の顔、ラクス様そっくりでしょ?」
シ「あ、ああ」
頷くシンに、ミーアがぽつぽつと話し始める。
ミ「そう、今の私はラクス様として必要とされている……」
ミ「そのことに後悔はないわ……私は誰かに必要とされたかった」
ミ「だから私は『ミーア』を捨てたの。誰にも必要とされなかった『ミーア』を……」
自嘲気味に、だが寂しげに呟くミーア。
ミ『ミーア・キャンベル』は、もうどこにもいない……」
ミ「父さんや母さんにも……もう、会えないわ……」
シ「……」
ミ「私にはもう帰る場所がないの。だからここで頑張るしかない」
ミ「そう『ミーア・キャンベル』ではなく『ラクス・クライン』として……」
シ「……ミーア」
ミ「あっ! ご、ごめんね、変なこと言って」
シ「いや、ちっとも変じゃないよ」
言葉は短いが真摯なシンの返答に僅かに照れながら、
話題を変えようと努めて明るく尋ねるミーア。
ミ「シンにはあるんでしょ? 帰る場所」
シ「……」
ミ「シン?」
シ「ないよ」
ミ「え?」
シ「俺には帰る場所も……待っている人もいない」
ミ「それって……もしかして……」
シ「前の戦争で死んだんだ。父さんも母さんも……妹のマユも……」
シ「皆死んで……俺一人だけが生き残った……」
ミ「ご、ごめんなさいっ! 私、知らなかったから……」
シ「気にすることないさ。こんなこと、ベラベラ喋るモンでもないし」
ミ「でも……」
シ「いいって。それに、同情されるのは好きじゃない」
ミ「シン……」
シ「俺もミーアと一緒さ。ここで頑張るしかないんだ」
そう言ってミーアを見つめるシン。
視線を交わす二人、どちらからともなく微笑みあう。
ミ「クスッ……私たち、似たもの同士なのかな」
シ「かもな」
今度は声を出して笑う二人。
ひとしきり笑った後、先ほどよりも優しげな声音でミーアが尋ねる。
ミ「……ねぇ、シン」
シ「ん?」
ミ「この戦争が終わったら……私たちにも帰る場所ができるのかな?」
シ「きっとできる……いや、作るんだ。俺たちの手で」
ミ「私たちの手で?」
シ「ああ。そのために頑張ってるんだろ、俺たちは、さ」
ミ「そうね……そうよね」
シ「ああ、そうさ」
力強くシンが答えた後、レイが二人のもとを訪れる。
レ「シン、時間だ」
シ「ああ。じゃ、俺行くよ」
ミ「うん。頑張ってね、シン」
立ち去るシンの背中を見つめ、祈るように目を閉じるミーア。
そして、ラクスの曲ではなく自らが作った曲を口ずさむ。
それは、戦場へと旅立つ想い人が無事に帰ってこれますように
との願いをこめた、祈りの歌だった……。
2
「争いの無い平和な世界か、争うことがあろうとも自由な世界か」
「本物が正しくて、偽者が間違っているのか?」
激突するストフリとデスティニー
拮抗する二機だが、デスティニーが押し、ストフリが引くという形になっている
キ「くっ、邪魔をしないでくれっ!」
シ「邪魔をしてるのはどっちだ!」
シ「議長はこの世界から戦争を無くそうとしている!」
シ「争いの無い平和な世界、それ以上に大切なものなんてあってたまるかよぉっ!」
振り下ろされるアロンダイトを白羽取りで受け止めるストフリ
キ「でも、それは本当の平和じゃない!」
シ「なにぃっ!?」
キ「人々から自由を奪ってまで築いた平和なんて間違ってる! そんなもので人が幸せになれるはずがない!」
シ「またそれか! お前らはいつもそうだ!」
シ「『本当の平和』『自由を奪うな』、言ってることは綺麗だが、そのためにお前らが何をした!? どんな犠牲を払ったっていうんだ!!」
キ「な……っ!」
シ「戦いで失ったものの無いお前達に、戦いで全てを奪われた人間の苦しみ、悲しみがわかってたまるかぁっ!」
シンの雄叫びと共に更に振り下ろされようとするアロンダイト
かろうじてビームシールドで防ぐものの、シールドが限界を超え弾き飛ばされるストフリ
ようやく体勢を整えたキラの脳裏にエルやトール、ニコル、ウズミ、ナタル、フレイなどが浮かび上がる
キ「くっ……僕達にだって失ったものはある!」
キ「その失ったもののためにも、僕達はもう間違った道を選んではいけないんだ!」
キラの言葉に、シンの瞳が怒りに燃え上がる
シ「間違った道……間違っただとぉっ!」
シ「貴様ぁぁぁっっ!!」
キ「うぐっ!」
凄まじい勢いで繰り出されるアロンダイトの連撃に、防戦一方に追い込まれるストフリ
シ「例え偽りでも、例え一時(ひととき)でも、この世界には平和が必要なんだ!」
シ「そのために俺は戦ってる! そのためにミーアは祈ってる! それが間違いだと言うつもりかぁっ!」
キ「君は……」
シンの声に一瞬、沈鬱な表情を浮かべるキラ
距離を取ったストフリにアロンダイトを突きつけるデスティニー
シ「答えろ! 本物が正しくて、偽りが間違っているというのなら……」
シ「この俺を、このデスティニーを倒してそれを証明してみせろっ!!」
シンの声からその覚悟を感じたキラ
軽く目を閉じ、そして開かれたその瞳に決意が宿る
キ「わかった……」
キ「君がそれを望むのなら……僕は、君を倒す!!」
アロンダイトを構え直すデスティニー
ビームサーベルを抜き放つストフリ
シ「いくぞぉっ!!」
キ「うおおぉっ!!」
再び激突する二機(第三期のOPラストカット)で締め
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