伊達と酔狂_外伝3

Last-modified: 2008-05-20 (火) 11:43:23

この作品を読む上での注意
カプネタを含んでいるのでそういうものが嫌いな人は飛ばして下さい
本編とは微妙に関係ありません

 

新年になってしばらく経ったある日の朝、事件は起こった。
シン・アスカは朝の訓練に向かおうと廊下を歩いていたら向こう側からスバルがもの凄い勢いで走ってきた。
「う~っす、スバル朝から元気だ…」
「シ~~ン!ちょっと来て!」
スバルはそう言ってシンの首根っこを掴み、来た道をシンを引き摺りながら走りだした。
「ま、待てスバル!絞まってる絞まってるから!」
スバル達の部屋に着いた頃にはシンの口から魂がはみ出していた。無理やり現世に引き摺り戻されたシンが部屋の中で見たものは
ベットにブカブカな寝巻きを着ているオレンジ色の髪の毛の女の子がちょこんと座っていた。
「おいスバル…この女の子は一体?」
「多分…ティア?」
それを聞いた瞬間シンは踵を返し元来た道を帰ろうとした。
「寝ぼけてんのかお前?こんな朝早くから…ふぁぁ、俺は部屋に戻って
もう一度寝直すぞ…」
「そぉい!」
「がっ!」
欠伸をしていたシンの脇腹掛けてスバルは拳を繰り出した。
「おま…朝っぱなから俺を殺す気か!」
「え~?だって眠たそうだったし、これで目が覚めると思って」
取りあえず言いたい事は後でネチネチ言ってやるとして今は大問題が
目の前にあったのでそちら優先させた。
「で?この子誰だって?」
シンはズキズキと痛むを脇腹擦りながらもう一度聞き直した。
さっきのが聞き間違えであることを祈りつつ…
「だからティア…」
「…いやだってこの子6歳くらいだろ?ありえないって」
「だって朝起きたらその子ベットで寝てたし」
とりあえずシンは女の子に近づき
「君のお名前は何かな?」
と普段とは違う優しい感じな声で聞いた。
「…ティアナ、ティアナ・ランスター」
シンはその言葉で固まってしまった。
「ティアと同姓同名のそっくりさんか…」
「現実逃避は止めなよシン…とりあえずどうする?」
「どうするって…迷子センターか何処かに連れて行った方が…」
とんちんかんな答えで未だ混乱中のシンにスバルは
「だから落ち着きなってシン、まずはシャマル先生の所かな?」
「ん~それもそうだな、ちょっとゴメンね?」
シンは自称ティアナを背負って全速力で走り出した。
「ちょっとシン!何でそんなに急ぐのさ?」
後ろから追いかけてくるスバルにシンは
「こんなとこ他の誰かに見つかってみろ!この前みたいに良からぬ疑いをかけられる…アレだけはもう御免だ!」
シンは前回の騒ぎの際とその後にかなりの苦労をしたのであった…(外伝2参照)
(思い出すだけでも涙が…)
シンは流れる涙を拭い一気に加速した。
「待ってよシン!早過ぎだって…」
スバルを遥か後方に置き去りシンは最後の曲がり角にさしかかろうとした
(よし!ここを曲がれば…)
その瞬間我等が機動六課の誇る隊長陣が現れた。

 

(何でだよ…)
「アレ?シン、おはよう。どうし…た…の?」
シンの背中の小さな女の子、急いでるシン、何故か怯えてるシン…etc
それらからなのは達が導き出した答えは
「シン…いくら何でも誘拐は駄目だよ…」
何故だかもの凄く怖い声のなのは
「……」
もはや無言で口をパクパクさせているフェイト
「むぅ~シンはロリコンやったんか…」
さらっとおかしなことを口走るはやて
「ま、待て!落ち着いて俺の話を聞け!」
一触即発な雰囲気だったがその後駆けつけたスバルによって事情が説明されて何とか危機は回避された。
とりあえず服がブカブカのままだったのでなのははヴィヴィオの服を持ってきてティアナに着せてシャマルの所へと向かった。

 

「ん~そうね…やっぱりこの子はティアナね」
検査の結果シャマルはそう断定した。フェイトは困惑の表情で
「でも一体なんでこんな事に…スバル、昨夜ティアナはどんな感じだった?」
スバルは昨夜の記憶を頭の中から引きずり出してきた。
「え~っとまず…夜の個人練習が終わった後シャワーを浴びに行って、
帰ってきたら変な色の栄養ドリンク飲んでて、それから急に体調が悪くなったとかで
すぐ寝ちゃいました。で起きたら…」
キョトンとしている幼くなったティアナを指差した。
「何だそりゃ?」
シンとスバルの掛け合い中にある人物が
「あの~もしかしなくてもやっぱり私のせい…かな?」
シャマルが恐る恐る挙手をした。
「シャ、シャマル…一体何飲ませんたんや?」
「昨日の夜ティアナが疲れた様子だったのでお手製の栄養ドリンクを勧めたんです…でもまさかねぇ?」
「いや、おそらくそれが原因だ」
全員が一斉に声の主の方を振り向いた。
そこには犬(本人曰く狼)状態のザフィーラが入り口で仁王立ちしていた。
「知っているのかザフィーラ!」
「うむ、シャマルの作ったものなら何が起こっても不思議ではない」
普通誰もが驚くであろう発言なのに何故かその場の全員が妙に頷いた。
「皆酷いわ!」
よよよと泣き崩れるシャマルを横目に
「んん、とりあえずや」
はやては咳払いをして
「シャマルはティアナを元通りにする方法をちゃんと見つけてな」
「…ハイ」
「で、少し考えたんやけどな…」
急にはやては声のトーンを下げ真面目な表情になった。
「何かその子をティアナと呼ぶには少し抵抗があるんよ…
でな、便宜上その子の事を"てぃあにゃ"と呼ぶのはどうやろか?」
「ねぇよ!」
シンのまさかの突っ込みにはやては面食らい
「え~?何でや?むっちゃ可愛いやん…」
結局満場一致で却下された。

 

「本題に戻ってティアナなんやけど…」
「あ~じゃあ俺そろそろ行くわ」
シンがこの場から立ち去ろうとしたその時
「んん~」
幼ティアナがシンの服の裾を引っ張っていたのであった。
「いや、あのねお兄ちゃんはこれからお仕事で忙しいんだ。それでね…」
大きな瞳に涙を溜めながらシンを真っ直ぐ見つめるティアナにシンは言葉を詰まらせてしまった。
はやてはそんなティアナを見て
「ほなシンがティアナのお世話係決定な」
「なっ、ちょっと待て!俺は今日一日中ティアの面倒見ながら仕事しろって言うのかよ。
面倒見るだけならアイナさんにヴィヴィオと一緒に見てもらえばいいだろ?」
シンは珍しく正論を言ったのだが
「いやな最初はそうしようと思ったんやけどな、ティアナがシンに懐いたみたいやしその方がええかなと思って。
それに仕事の方は皆で分担すれば何とかなるやろ?」
はやてはなのはの方を見てウインクをした。
「うん。ティアナとシンの抜けた穴は皆でフォローするから大丈夫だよ」
シンはそれでも尚引き下がらず
「だったら同室のスバルでも良いじゃないか」
いきなり自分に話を振られたスバルは
「あ、あたし~?見てる方が面白そう…ほ、ほらシンそんなに嫌がっちゃティアが可哀想でしょ」
「ティアナの事嫌いなのお兄ちゃん?」
ティアナを見てみると今にも泣き出しそうだったので慌ててなだめた。
「はぁ~…分かったよ、とりあえず朝食でも食べに行くか、ほれ」
そう言ってシンはティアナと手を繋いで食堂に向かった。
食堂に向かう最中ティアナは嬉しそうにシンと繋いだ手を大きく振っていた。

 

先に食堂に来ていたキラとなのはが用事が出来た為キラに預けられているヴィヴィオが仲良く食事の準備をしていた。
ヴィヴィオはトレイを自分の席に置きキラに頭を撫でられていた。
その様子を見ていたティアナはフラフラと自分の分の朝食をトレイに乗せて席に着いた。
それを見たシンは
「ちゃんと一人で出来たな、偉い偉い」
とティアナの頭を撫でてあげティアナも嬉しそうに
「んに~」
気持ちよさそうに笑顔で頭を撫でられるのであった。
そんなシンを見てスバルはニヤニヤしながら
「ねえシン?」
「何だよ?」
「実は満更じゃないとか?」
「なっ!バカな事言ってんじゃねえよ。あっ、ティア、口の周りが…」
シンはティアナの口の周りを拭いてあげた。
(ナイスシスコン、シン…)

 

「あ、いたいた」
なのは達が遅れてシン達がいるテーブルに現れた。
「用事ってもう済んだのかよ?」
「うん、まあね…」
歯切れの悪いなのはにシンは訝しがり
「どうかしたのか?」
「ちょっとアイナさんがどうしても外せない用事があるとかで他にヴィヴィオを
預けられるような所探したんだけどタイミングが悪くて…それで今日だけヴィヴィオ
も一緒に預かってくれないかな?」
「俺は別に構わないぜ?ティアも遊び相手が増えて嬉しいだろうし」
隣で美味しそうにパンを頬張るティアナの頭を撫でながらそう答えた。
「ゴメンね、何か面倒ごと全部シンに押し付けてるみたいで…」
「確かに何か悪い気がするな…せやな、ほなザフィーラを援軍として送るわ」
「ああ、助かる」
ザフィーラは今までヴィヴィオの相手をしていたので正直シンにとっては強い味方であった。
「ん?ヴィヴィオ、ピーマン残しちゃ駄目だよ」
キラはヴィヴィオがこっそり隠していたピーマンを見つけた。
「キラ君の言うとおりだよヴィヴィオ、ちゃんと食べなきゃ」
「ん~」
渋々口にピーマンを運ぶヴィヴィオであった。
そんなヴィヴィオを微笑ましく見ていたシンは自分の隣のティアナに視線を落として見たら
ティアナもちょっと涙目でピーマンと格闘していた。
「ティア、ヴィヴィオもちゃんと食べてるんだから食べなきゃ駄目だぞ」
「ん~だって、美味しくないもん…」
皆の手前ティアナを甘やかしたくシンであったが、とうとう我慢出来ずピーマンを半分食べてあげた。
「残りはちゃんと食べるんだぞ」
「うん!ありがとうお兄ちゃん」
「今回だけだからな、次からはちゃんと食べるんだぞ」

 

取りあえず食事を済ませたシンは右側にティアナを、左側にヴィヴィオを伴ってなのは達の部屋に向かった。
シンの部屋では狭くて遊ぶのに適しておらず機動六課にそのような施設がない為とりあえずの処置であった。

 

シンはティアナとヴィヴィオに本を読み聞かせたり絵を一緒に描いたりザフィーラの背に二人を乗せたりして
穏やかな時間を共に過ごした。
それはシンにとってはもう思い出せないくらい久しぶりで好ましい時間であった。

 

「すぅ…すぅ…すぅ…」
暫くしたら遊び疲れたのかティアナとヴィヴィオは二人してベットで眠りについていた。
シンもベットに腰を掛け二人の寝顔を見て自分の口元が緩んだが特に気にしなかった。
(6歳くらいか…ティアにとっては一番幸せな時期なのかもな…)
両親とは既に死別していたが大好きな兄と一緒の生活…
もしかしたらシャマルのドリンクの効用でティアナは現実から逃避して
自分が望んだ時間まで戻ったのでは?
だとしたら今自分はティアナの兄ティーダ・ランスターの代わり?
どういう人かまではよく知らないが本人曰く「似ても似つかない」らしい

 

そんな中二人の寝息だけが規則的に聞こえる部屋に再びザフィーラが現れた。
「二人共疲れて寝たようだな」
ザフィーラは少し難しい顔をしていたシンに声を掛けた。
「ああ、気持ちよさそうに寝てるさ」
それでも尚表情が曇っていたシンにザフィーラは
「もしこのまま子供の姿のままだったらお前はどうする?」
「どうするって…とりあえずはなのは達に任せるな。俺はそこまで責任持てねえよ。
…待てよ、この時期からちゃんと育てていけば今の捻くれて素直じゃない性格にならないかも知れないな…」
真顔でそんな事を真剣に言うシンにザフィーラは相変わらずの表情で
「お前は将来親馬鹿になるかも知れないな」
そう言い放ち部屋から出て行くザフィーラであった。

 

そして夕飯は六課のフォワードメンバーと共にし、お風呂時にちょっとした問題が発生した。
ティアナがシンと一緒に入りたいと駄々を捏ねたのであった。
泣きじゃくるティアナを何とかあやし、その場を乗り切るシンであったが、
「何ならシンもあたし達と一緒に入る?」
「う、うるさい!」
ニヤニヤしているスバルの子供じみた挑発にシンは顔を真っ赤にしながら答え
足早にその場から立ち去った。

 

シンも手早く風呂に入り自室のベットで横になった。
「はぁ~、何もしていないのに今日は疲れた…」
それはいつもの疲れとは違い心地よいものですぐに眠りの世界へと誘われた。
しかしシンが気持ちの良いまどろみから現実世界へと連れ戻す使者が現れた。
「お~っす、シン」
スバルである。
「またお前かよ…そもそもブザーかせめてノックくらいしろよ」
せっかく気持ちよく眠れそうだったのを邪魔されたのでシンは些か不機嫌であったが
そんなことお構い無しにスバルはズカズカと部屋へと足を踏み入れた。
「大体ドアロックしとかないのがいけないんじゃない。それより、はい!」
そう言い枕を抱えているティアナをまだ寝ぼけているシンに此れ見よがしに見せた。
「ドアは壊れてるんだよ…それにはい、って言われても…一体何だよ?」
瞼を擦りながらシンは気だるそう声を出した。
「もちろん一緒に寝るんでしょうが」
そんなスバルを無視しティアナを見てみると期待に満ちた表情でシンを見つめるので
拒絶出来なかった。
「ホレ」
そんなわけで布団を捲り隣をポンポンと叩き、布団の中に入るように促した。
「うん!」
嬉々として布団に潜り込むティアナを見てスバルは嬉しそうに
「じゃあ明日の朝にまた来るからね~」
さっさとシンの部屋から出て行った。
シンは去り際のスバルの表情は何か良からぬ事を考えているのでは
と思ったが眠いのでこの際無視することにした。
未だにティアナを元に戻す方法は見つからないらしく、明日はどうするか考えようとしたが
ティアナの寝息がシンにとって子守唄代わりとなり瞼の重さに勝てず結局眠りについた。

 

「キラ、ちょっといいかな?」
フェイトは夜遅くにキラの部屋を訪れ早朝の訓練の事やシフトの事を相談しに来て
最終的に世間話に花を咲かした。
「ゴメンね、こんな夜遅くまで付き合ってもらっちゃって…」
「いいよ、仕事とかで忙しいからこうやって落ち着いて話す時間もあまりないから」
「最近私もなのはも忙しくヴィヴィオに構ってあげられないからキラに任せっきりで…
ヴィヴィオもキラの事お気に入りみたいだし。今度の休みは一緒に出かけるんだって?」
キラは少し恥ずかしそうに
「うん、子供には好かれるのかな?ヴィヴィオも今年からザンクト・ヒルデ魔法学院への入学も決まったから
今日のティアナと遊んだ経験が同年代の友達作りに役立てば良いけどね…それよりティアナ、大丈夫かな?
シャマルさんもまだわからないって言ってたし」
「そうだね、早く元に戻れればいいけど…あっ!そうそう、シンが部屋のドアが壊れてロック出来ないって
言ってたから修理頼めるかな?業者さん呼ぶと修理代が掛かるし」
「分かったよ、明日にでも直しておくよ」
「うん、お願いね。じゃあお休みなさい」
「お休み」

 

  ――いつだって、どんな時だってあたしに優しく微笑みかけてくれた兄さん

 

  ――大きな背中で、大きな手であたしを温かく、優しく包んでくれた兄さん

 

  ――あたしの大好きな兄さん

 

「お兄ちゃ…ん」
夢を見た、久しぶりの兄の夢。溢れる感情に一筋の涙が頬を伝った。何か違和感がある。
ティアナはまだ完全に起きていない頭と目で周りの状況を見た。
普段ならあるはずのスバルのベットがなく天井が見えた。
それによりここが自分の部屋でないことにすぐ気がついた。
そして何より自分の隣で寝ている男
「ん…マユ…」
いけ好かない男シン・アスカが間抜け面で寝ていた。
同じく自分の妹の夢でも見ているのであろうか?
そんなことよりティアナは自分の姿を見て絶句した。
ヴィヴィオサイズのパジャマを着ていたのだから元に戻ったら勿論…
見る見るうちに顔を真っ赤にしていくティアナの横でシンは寝返りを打ち手を伸ばした。
「ッ!どこ触ってんのよこのバカシン!」
「ぐおッ!」
無防備なシンの腹を思いっきり殴り、シンを現実世界へと引き摺り戻した。
「殺す気か!このやろ…う…」
最初に目に飛び込んできた一糸纏わない姿のティアナを見たシンも一気に顔を真っ赤にした。
「おおおおおま、何て格好だよ!それより元に戻ったのか!」
「戻った?何言ってんのよ!?ともかく何か着る物を!」
シンは近くにあったクリーニングに出しておいたYシャツを渡した。
男物のYシャツなのでブカブカであったがティアナもそれを手早く着込んで
しばらく互いに重苦しい沈黙の時間を過ごした。

 

その沈黙は時間にしたら数分だったであろうが二人には何時間にも感じた。
ティアナはじっくり自分の置かれている状況を考えた結果
「それよりアンタ…」
「ん?」
布団に包まりながら急に頬を紅潮させながらもじもじとしおらしく
「…あたしを連れ込んでどうしようとしたのよ…」
「…はぁ?」
どうやら昨日の記憶が一切無いらしく壮大に、しかもかなり見当違いな
勘違いをしているようだ。シンは一から事情を説明しようした瞬間
「まぁそんな事はこの際どうでもいいのよ…この事実、どうするつもり?」
「はい?」
さっきの表情とは違い鬼の形相に見る見る変わっていく。
(コロコロ表情を変えて大変だなコイツ)
等とそんな事を考えているシンであったが流石に身の危険を察知した。
「…何か言い残すことはあるかしら?」
「これには深い理由があってだな…その、どうか命だけは勘弁」

 

「突撃!…」
「お隣さんの寝顔!」
はやてとスバルの二人は朝早くから廊下で妙なハイテンションであった。
二人の目的は勿論…
「ティアナの可愛い天使のような寝顔とシンのアホ面を写真に収めようとは流石八神部隊長ですね」
「いやいや、スバルも中々良い所に目を付けたなぁ。で、手筈は?」
「バッチリです。シンの部屋は相変わらずドアがロック出来ない為進入し放題」
フフフと不気味に笑う二人はそのままシンの部屋へと向かった。

 

そしてシンの部屋の前まで来たら中から
「ぎゃぁぁぁぁ!」
シンの断末魔にも似た声が廊下に木霊した。
「「シン!」」
二人は無防備なシンの部屋のドアを開けた瞬間飛び込んできた
ティアナがシンをボッコボコにしていたのだが急にドアが開いたことに驚いたティアナは動きを止め二人共入り口を凝視した。
それは傍から見たらまるでティアナがシンを押し倒している様だった。
はやてとスバルはそんな二人の様子を写真に収め
「あ、あたし達何も見てないから…ええ、そりゃもう」
「ほな、お邪魔しました」
二人して回れ右して部屋から出て行こうとした瞬間ティアナは我に返って
「八神隊長!スバル!」
ティアナも二人を追うようにシンの部屋から出て行った。
「た、助かったのか…?」
シンはそのままベットにうつ伏せになり安堵の言葉を口にした。

 

はやてとスバルも取りあえず追いかけてきたティアナをシャマルの所へ行くことを勧め
尚且つ簡単に事情を説明した。最初はまったく信用しなかったティアナも
スバルがいつの間にか盗撮していた写真に動画を見て一応状況は理解した。
(無論それ等は全てティアナによって抹消されたが)

 

検査の結果ティアナの体に異常は見られなかったのでその日はいつも通りの生活を過ごした。
どうやら一日程度で元の姿に戻るらしい。
その日の夜…

 

シンは満身創痍であった、精神的にも身体的にも。
シンは紙コップのコーヒーを飲みながらヴァイスに今回のことを話した。
「…てな感じだったんですけど、どう思います?」
「あぁ?そんなもん役得じゃねぇかよ。このラッキースケベ」
「ぐっ…」
思い出すだけでも顔を真っ赤にするほどウブなシンであった。
「で、どうだったよ?久しぶりの兄貴気分は?」
まだ頬が熱を帯びて真っ赤なシンはコーヒーを一口含み
「兄貴って…妹がアレじゃねぇ…」
そんなシンの発言を受けヴァイスは肩を竦め残っていたコーヒーを
飲み干し、空のコップを丸めゴミ箱に投げて自室へと戻っていった。

 

「妹か…」
こっちに来てからは前ほどマユに依存していなかったシンではあったが
それでも妹という響きは心に染みた。
「でもマユの方が10倍は可愛かったな」
今日一日のティアナを思い返してみたが
「まぁ、普段もアレくらい素直で可愛げがあったら…」
シンもコーヒーを飲み干し部屋へと戻った。

 

「お兄ちゃん…か」
いつからか呼ばなくなった兄の呼び方にティアナは頬を緩ませたが
まさか幼くなった自分があのシンを兄と慕っていたと想像すると顔から火が出そうだった。
「アイツなんて兄さんの足元にも…」
「ねぇねぇティア?」
「ん?何、スバル?」
「このYシャツどうしたの?ティアのにしては大きいと思うけど」
それはシンの部屋から着て、そのまま持って来てしまったもので返すタイミングを失ってしまい今に至るのであった。
(まぁ一枚くらい貰ってもいいか…)
「別に何でも無いわよ」
その後そのYシャツはティアナの寝巻きになったとか…