勇敢_第07話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 13:38:50

機動六課隊舎食堂

 

「以上、芸能ニュースでした。続いて政治経済・・・・」
朝のニュースが流れる食堂で、なのは達は少し遅めの朝食を取っていた。
政治経済のニュースを聞き流しながら雑談し、朝食をとるなのは達、
「・・・・当日は首都防衛隊の代表、レジアス・ゲイズ中将による管理局防衛思想・・・」
その名前が出た途端、カナードと久遠以外の全員がモニターを見る。
カナードも釣られて、手にマグカップを持ちながらモニターを見ると、
丁度レジアス・ゲイズ中将の演説映像が移しだされた。
「・・・このオッサンはまだこんな事言ってるのな」
既にモニターを見るのを止め、シャマルとツヴァイと一緒に食事を再開しているヴィータが呟く
「・・・・だれだ、こいつは?」
モニターを見ながらもコーヒーを飲む事を止めないカナードが尋ねる
「レジアス・ゲイズ中将、先ほども紹介していたが、地上本部首都防衛隊の代表だ。
演説していた通り、地上本部の武力強化を訴え続けている。あっ、ツヴァイ、口についてるぞ」
カナードに説明しながらもツヴァイの口元を拭くリインフォース。
「そして、古くからの武道派だ。豪快な政治手腕や、黒い噂から非難する者もいる。だが結果を残しているのも
事実で、最高評議会からの信頼も厚い。テスタロッサ、パンを取ってくれ」
シグナムが補足をし、フェイトからパンを受け取る。
「あっ、ミゼット提督」
パンを食べながらも映像を見続けたなのはが呟く
「ミゼットばあちゃん?」
その名前に反応し、先ほどとは違い、嬉しそうにモニターを見るヴィータ。
「ああ、キール元帥とフィルス相談役も一緒なんだ」
「伝説の三提督そろい踏みやね」
なのは同様、モニターを見続けていたフェイトとはやてが呟く
「伝説の三提督か・・・・・ふっ、どこにでもいる老人にしか見えんな」
そう呟き、コーヒーを啜るカナード
「だよな~、いつ見ても普通の老人会だ」
ヴィータもその考えに同意する。
「だめだよ、二人とも、偉大な方達なんだから」
軽く注意をしながら、パンが入ったバスケットをなのはに渡すフェイト
「うん、管理局の黎明期から今の形まで整えた功労者さん達だもんね」
「ほう、それでは見方を改めなければならんな」
なのはの説明を受け、納得するカナード。
「だっけど、新人達はこの後遊びに出かけるんだよな~。それに比べてアタシは108部隊の魔道師の詮議指導、
教官資格なんて取るもんじゃねぇな~」
ため息をつきながら机に突っ伏すヴィータ。

 

「そう愚痴るな。私とリインフォースは外回りで聖王教会に行くが、ナカジマ三佐が合同捜査本部を作ってくれる関係で
108部隊にも寄る。駄々をこねるお前を引っ張って行ってやるから安心しろ」
「だっ、駄々なんかこねちゃいねぇ~!!」
シグナムに向って叫ぶヴィータ。
「シグナム、だったら私も行った方が、捜査周りのことなら(準備はこちらの仕事だ」
フェイトが同行を求めるが、言い切る前にシグナムは断りをいれる。
「お前は指揮官で、私はお前の副官なのだぞ」
悪戯っぽく笑いながらフェイトを見据え言うシグナム
「あ・・・ありがとうございます・・・で、いいんでしょうか・・・」
少し困った顔をするフェイトに
「『その程度の事は同然だ!さっさと行かんか!!』・・・位言っても罰は当たらんぞ」
カナードも悪戯っぽく笑い、アドバイスをする。
「そ・・・・それは・・・・無理」
カナードのアドバイスにさらに困った顔をするフェイト
「カナード、フェイトちゃん困らせたらアカンで。そういえばカナードは今日はどうするん?」
子狐形態の久遠に、ちぎったパンを与えながら尋ねるはやて。
「ああ、以前依頼された仕事の報告書を、依頼主に渡さなければならんのでな、そちらに行く」
「ん?カナード、ここ以外にも仕事を引き受けてるんか?」
カナードに尋ねるヴィータに
「当たり前だ、俺は傭兵だからな。まぁ、客は今のところ顔見知りだけだがな」
カナードは笑いなら答える。ちなみに今回の依頼主は、この世界に帰って来て最初の事件で出会ったあの青年である。
「安心しいや、カナードが飢えないように契約解除はせぇへんから」
「安心するですよ~」
はやてとツヴァイの言葉に笑うなのは達。今日も機動六課の朝は平和だった。

 
 

数分後

 

:機動六課隊舎玄関前

 

カナードが出かけるため玄関から出ると、バイクに二人乗りしたスバルとティアナと
それを見送るなのはの姿を見つけた。
「あっ、カナードと久遠もお出かけ?だったら乗ってく?」
バイクの後部座席に座るスバルが笑顔で尋ねる
「いや、遠慮しておく。それにバイクで三人乗りは無理だろう」
カナードは尤もなことを言うが
「大丈夫大丈夫!ティアだったらその位へっちゃ(ドゴ)ぐえ」
ティアナの肘打ちがヒットし、蛙の様な声を出し俯くスバル
「馬鹿言ってるんじゃないの、まったく」
そう言いながらも笑いながら答えるティアナ
「も~・・ティアったら~・・・・。あっ、お土産買ってきますね、クッキーとか」
スバルの申し出をやんわり断るなのは、だが
「・・・・クッキー・・・・」
クッキーと聞き、久遠(人型)が物欲しそうにスバルを見据える

 

「ふふっ、じゃあお願いしようかな。くーちゃんが食べたそうだし」
久遠の表情を見て、改めてお願いするなのはに
「わっかりました、美味しいの買ってきま~す!」
元気よく返事をするスバル。
「ああ、すまないが頼む。二人とも、気をつけて行ってこい」
「ええ、カナードも仕事頑張ってね」
「いってきま~す!!」
走り去るバイクを見送るなのは達
「さて、俺も行くか。だが久遠、一緒に行ってもツマランぞ?」
カナードは久遠に尋ねるが
「久遠も・・・いっしょに・・・・いく・・・」
そう言い、カナードの服を掴む久遠。その姿に多少困った顔をするカナードと
微笑ましく見つめるなのは。
「・・・・・わかった。高町、それでは行ってくる。お前も今日位ゆっくりしろ」
「うん、そうするよ。雑用もカナードが片付けちゃったしね。二人とも気をつけてね」
なのはに見送られ、カナードと久遠も目的地に向った。

 
 

数時間後

 

:部隊長オフィス

 

昼下がりの部隊長オフィスにキーボードを打つ音が響く。
音を出している張本人、八神はやては特に急ぐ事もなくキーボードを打ち、時折コーヒーを口にする。
コーヒーが入ったマグカップを置いた瞬簡に扉が開き
「はやてちゃ~ん、ただいまです~」
メンテナンスチェックを終えたツヴァイが入ってきた。
「おかえり。メンテナンスチェックとかしてた?」
「はいです!私と蒼天の書のフルチェック」
はやての質問に答えながら自分のデスクの端末を操作するツヴァイ、
はやてのデバイスもメンテナンスのため、、後でシャーリーが受け取りに来ると伝える。
「うん、了解や」
そう言い、デスクの引き出しから待機状態のシュベルトクロイツを取り出す。
「今日は一日のんびりすごせるとええんやけどな」
はやての言葉に、ツヴァイは素直に頷く。
そんな時、はやての端末に通信が入る
「ん?」
疑問に思いながらも通信回線を開くはやて、モニターに移ったのはカナードだった。
「カナード?どうしたん?」
「スマンな、俺の端末の調子が悪いので仕事先の端末を借りている。仕事は完了したが、
済ませたい用がある。それ程時間はかからんのだが、その間通信が出来ないのでな、一度帰ったほうがいいか?」
「そっか、確かハイペリオンには通信機能がないんやっけ?う~ん、別にええよ。一度帰って来て、また行くんじゃ二度手間になってまうやろ?」
少し考えたが、現状が現状なので許可を出すはやて。

 

「すまんな」
そう言い、通信を切るカナード。
どんな用事か聞いとけばよかったな~と、今更ながら思いつつコーヒーを飲むはやて。

 

キャロから非常通信が入ったのはそれから数分後の事であった。

 

二人が休みを楽しんでいたサードアベニューF23の路地裏で、レリックが入ったケースと
そのケースを持っていた意識不明の少女を発見、機動六課隊舎は騒然となった。
「全員待機態勢!席を外している子は配置に戻ってな」
上着を着ながら指示を出すはやて
「安全確実に保護するよ、レリックもその女の子もや!」
「「了解!」」
シャーリーとツヴァイが同時に返事をする。
「(うかつやったな・・・・・カナードには帰って来てもらった方がよかった・・・)」
キャロの通信が入って直に、はやてはカナードが通信を送った所に連絡を入れたが、既に発った後であった。
「(後悔してもしゃあない、今は女の子の安全とレリックの確保を考えなあかん!)」
自分に気合を入れ、はやては作戦司令室に向った。

 

その後、スバルとティアナはエリオ達と合流、そして直になのは達もやってきた。
女の子に関してはバイタルも安定しており、危険な反応も無いため、レリックと一緒に
ストームレイーダーで搬送する事となり、スバル達フォワード組は現場調査を行う事となった。
そんな時に現れたガジェット反応、地下水路にⅠ型、海上にⅡ型が出現。
地下水路のガジェットはフォワード組と別件捜査で活動していたギンガ・ナカジマが、
上空のガジェットは、演習中だったがナカジマ三佐の許可で現場に向かう事となったヴィータとツヴァイが南西方向
なのはとフェイトは北西部のガジェットを叩くこととなった。
なのは達は勿論、訓練の成果が出ているのか、フォワード組も問題なくガジェットを撃破していく。
だが、突如空に現れた増援のガジェットⅡ型、だがその数が
「な・・・なんだ・・これは・・・」
グリフィスが驚くのも当然である。ガジェットⅡ型の数がいきなり数十倍に増加したのだから。
シャーリー達も必死にチェックするが問題は無く、なのは達も目視で確認できていると報告する。その時
「グリフィス君」
機動六課部隊長・八神はやてが椅子から立ち上がった。

 

空のガジェットを撃退してるなのは達に、はやては通信を入れる。
フェイト達同様、はやてもいやな予感がするが、フェイトの提案と限定解除申請を部隊長権限で却下。
自分が限定解除をし空の敵を、なのはとフェイトはヘリの護衛を、ヴィータとツヴァイはフォワード組の手伝い、
それぞれに指示を出すはやて。そして
「リミット・・・・リリース!」
クロノの承認を得て、完全ではないが限定解除をするはやて。
騎士杖・シュベルトクロイツの持ち、空高く上る。
「・・・・よし、久しぶりの遠距離広域魔法・・・・いってみようか!」

 

一方、地下水路でもフォワード組たちがガジェットを撃退していた。
訓練の成果もあってか、今まで以上に手際よくガジェットを破壊するスバル達。
「(ホント・・・馬鹿だった・・・・自分で勝手に考えて、勝手に決め付けて・・・・・)」
数週間前の出来事を思い出し、自嘲気味に小さく笑うティアナ。
なのはの考えを理解し、カナードによって心に引っかかっていたシコリが取れたティアナは、成長スピードが一段と伸び
今のティアナの前では、ガジェットⅠ型がいくら来ようと取るに足らない相手となっていた。
「だけど・・・油断をせずに、素早く、確実に!」
自分に言い聞かせながら、迫ってきた5体のガジェットⅠ型を一気に破壊する。
そんな時に現れたギンガ・ナカジマ。その姿に喜ぶスバルとティアナ、
初対面なので律義に敬礼をするエリオとキャロ。一気に士気が上がったスバル達は
今まで以上にガジェットを破壊して行った。
ガジェットを破壊しつくし、落ちたであろうレリックを探す一同。
「あっ・・・・ありました!」
それ程時間をおかずに、キャロがレリックの入ったケースを発見する。
その時、何かを叩く音と共に現れた謎の召喚獣・ガリュウと、落ちたケースを持ち去ろうとする少女・ルーテシア。
ティアナが少女を拘束するが、少女を助けるように派手に現れたツヴァイのような妖精の少女・アギト
地下では新たな戦いが始まろうとしてした。そして

 

「とうちゃ~く」
「・・・・ここでいいんだね」
「ああ、私は監視をしている、セインは持ち場に急げ」
「りょ~か~い」

 

はやて達も、スバル達も、ルーテシア達も、新たに現れた4人の存在には気がつかないでいた。

 

その頃、カナードは

 
 

墓地群

 

「こんな物で良いだろう」
そう言い、額の汗を拭くカナード。
皆が戦っている最中、戦闘中とは知らないカナードは、久遠と一緒にプレアのお墓の掃除をしていた。
「カナード・・・この人・・・カナードの・・大切な人・・」
タオルをカナードに渡しながら久遠は尋ねる。
「すまんな。ああ、今の俺がいるのも、こいつのおかげだ」
そう言い、買っておいた新しい花を備える。その時
「カナード・・・・」
服を引っぱりながらカナードを呼ぶ久遠
「どうした、くお・・・・・ん・・・・」
後ろを向いていたので、久遠の方を向くカナード、すると、そこには・・・・・・

 
 

廃棄都市

 

「ディエチちゃん、ちゃんと見えてる?」
「ああ・・・遮蔽物も無いし、空気も澄んでる。よく見える」
クアットロの質問に答え、目のセンサーで狙うべき標的を定めるディエッチ。
「でも、いいのかクアットロ、撃っちゃって?ケースは残せるだろうけど、マテリアルの方は破壊しちゃう事になる」
「フフッ、ドクターとウーノ姉さま曰く、『あのマテリアルが当たりなら、本当に聖王の器なら、
砲撃位では死んだりしないから大丈夫』だそうよ。」
クアットロの回答に軽く返事をした後、ディエッチは自身と大砲(イノーメスカノン)にかかっていた布を剥ぎ取り、
静かに構えた。
その直後、クアットロにウーノから通信が入ったが、ディエチは気にせずに、砲撃のチャージを始めた。
「・・・・・インヒューレントスキル・・・・・ヘビーバレル・・・発動」

 

空のガジェットをはやてに任せたなのはとフェイトは、ストームレイダーの護衛に向っていた。
「見えた!」
「よかった、ヘリは無事」
ストームレイダーの安全を確認し、ほっとするなのは達。だが、

 

機動六課作戦司令室に突如鳴り響く警報
「市街地にエネルギー反応!」
「大きい・・・・」
「そんな・・・まさか!!」
突如発生した高エネルギー反応に驚くロングアーチの面々
「砲撃のチャージ確認・・・物理破壊型・・・推定Sランク!!」
叫ぶように報告するシャーリー

 

地下でルーテシア達と戦闘になったスバル達、途中からヴィータとツヴァイが加わり、撃退に成功。
地上へ逃げたルーテシア達を追い、捕らえる事に成功した。だが
「逮捕はいいけど・・・」
突然喋り始めたルーテシアに驚くヴィータ達
「大事なヘリは・・・放って置いていいの・・・・」
その言葉にハッとする。

 

「あと12秒・・・11・・・10・・・9」
機械的にカウントをするディエチ
「そ・れ・と、これで仕上げ」
そう言い、クアットロは遠隔総裁で数機のガジェットⅡ型をストームレイダーに向っているなのは達に差し向ける。
「邪魔を」
「するなぁ!!」
なのはとフェイトは正確に突っ込んでくるガジェットⅡ型を瞬時に破壊するが
「お見事~。だ・け・ど、出端は挫いたから成功ね」
クアットロの言う通り、ガジェットⅡ型を破壊するため時間を多少ロスしてしまったなのは達

 

ルーテシアは今度はヴィータを見据え、クアットロの言葉を代弁する
「あなたは・・・また・・・守れないかもね・・・」

 

「発射!」
ストームレイダーに向って放たれる砲撃
「ああ!!」
叫ぶやはてと、ロングアーチの面々
「くっ!」
「間に・・・・合わない」
必死にストームレイーダーに向うなのはとフェイト、だが

 

       ドゴォォォォォォォ!!!!

 

着弾時の爆音が辺りに響き渡った。

 

「・・・・・砲撃・・・ヘリに直撃・・・・」
「そんな筈無い!状況確認!!」
「ジャミングが酷い!データ来ません!!」
ロングアーチから流れる音声にただ耳を傾ける六課メンバー
「ヴァイス陸送と・・・シャマル先生が・・・・」
力なく呟くティアナ
ヴィータは感情に任せ、拘束されているルーテシアに掴みかかろうとするが、
「くっ・・・・そぉ!!!」
地面に向って拳を一発叩き込み、どうにか抑えた。
「ロングアーチ・・ヘリは無事か・・・あいつら・・おちてねぇよな!!」
シャマル達の無事を願うように、ヴィータは叫んだ。

 

「うっふふのふ~、どう?この完璧な計画」
「黙って・・・・いま命中確認中・・・あれ・・まだ飛んでる・・それに・・・逆三角形の光?」
ディエチが倍率を上げて確認すると

 

「・・・どうやら・・・間に合ったようだな・・・・」
アルミューレ・リュミエールを展開し、ディエッチの砲撃を防ぎきったカナードが爆煙の中から現れた。
「ストームレイダーは無事です!パルス隊員が防ぎました!!」
シャーリーは現状を皆に報告する。
「はぁ・・・・助かったわ~」
心からホットするはやて
「よっしゃ~!!!!」
力強くガッツポーズをするヴィータと
はやて同様ほっとするスバル達、その時
「エリオ君!足元に何か!!」
ギンガがエリオに近づく不審な物に気づき、警告した時
地面の中からセインが現れ、
「いただき」
エリオが持っているケースを奪い、また地面の中へと潜って行く。
ティアナが反撃するが、既に地面の中に潜りこんでしまい、魔力弾はただ地面に当たるだけであった。
セインが潜り込んだ所に集まるティアナ達、だがヴィータは途中で足を止める。
「(まてよ・・・・あいつは・・・置いてきぼりか・・・・まさか・・・)」
ストームレイダーが無事だった事か分かり、冷静さを取り戻したヴィータは考える。
数秒考えた後、ヴィータはグラーフアイゼンを構える。すると
ヴィータの考え通り、ルーテシアを連れ去ろうとするセインが、地面から現れた。
「思った・・通り!!」
ニヤリと笑いながら、ヴィータはセイン目掛けてグラーフアイゼンを振り被った。
「えっ、うそ」
自分目掛けて迫るグラーフアイゼンを、レリックが入っていると思われるケースでどうにか防ぐが
衝撃で道路脇の壁に激突してしまう。
「いった~・・・・、だけど、さすがはレリックを入れるケース、頑丈だ・・な・・・」
気配を感じ、顔を上げると、グラーフアイゼンを突きつけてるヴィータと、
それぞれ戦闘態勢に入っているフォワード組に囲まれていた。

 

上空から妹達の行動を見て、ため息をつくトーレ
「(なにをやっている・・・・・だが、相手が相手か・・・・仕方が無い)」
そう納得し、行動可能なナンバーズに救援を求めようとした時
「苦戦しているようだね、トーレ」
スカリエッティから突如通信が入った。
「ドクター、申し訳ありません」
「なに、君達はよくやっている。今回は相手が相手だ、仕方が無いよ」
笑いながら答えるスカリエッティ。
「援軍に関してはチンクを送りましょう。トーレ、貴方はクアットロ達の援護を」
今はスカリエッティの側にいるウーノの指示に、頷こうとしたトーレ。だが
「援軍なら既に送ったよ。ヴェイアをね」

 

「援軍なら既に送ったよ。ヴェイアをね」
その名を聞き、驚きの表情を見せるウーノとトーレ
「ドクター、彼では逆に足手まといになる」
「トーレの言う通りですよ、ドクター。ヴェイアは戦闘向きではありません」
ウーノとトーレはヴェイアの参戦に反対する。
実際ヴェイアは戦闘向きではなかった。身体能力は人並み以上にあり、魔法も多少使えるが、
そこらの戦闘局員と実力は大して変化が無かった。
トーレは一度、ヴェイアと模擬戦を行った経験があり、ヴェイアの実力を良く知っていた。(開始18秒でヴェイアの負け)
二人の最もな意見に満足したのか、微笑みながらスカリエッティは話す。
「二人の意見は最もだよ。確かにヴェイアは戦闘向きではない。ただ、『表』の方はね」
スカリエッテイの言葉に疑問を顔に出す二人
「ふふっ、確か君達は知らない筈だ、『裏』のヴェイアのことを」

 

「(あ~困った・・・・)」
ルーテシア達と一緒に捕まり、ヴィータ達に包囲されているセインは呟く。
「(向こうは隙無く構えてるからな~、こう拘束されてちゃ、ディープダイバーは使えないし)」
ヴィータの質問を無視し、考え込む。
「(とりあえず、トーレ姉が気づいてる筈だから援軍が来るのを待つしかないか~)」
セインがそう思った時
「(ルーテシアにアギトにセイン、3秒数えたら目を閉じて、あの人たちを怯ませる)」
その声に聞き覚えがあるセインは驚くが、直に目をつぶる。すると
『スターレンゲホイル!!』
上空から赤い光の弾が数個落ち、あたりを強烈な光が支配する。
その隙にヴェイアは二人を抱え(アギトは軽く握り締める)、ヴィータ達から離れた位置に移動した。
光が消えた後、突然現れ、二人の前に立つ少年を睨みつけるヴィータ
「てめぇも、あいつらの仲間か!」
ヴィータの問いに
「はい、そうです」
素直に即答するヴェイア。そんなヴェイアを驚きながら見据える三人
「ヴェイア!助けてくれたのは嬉しいけど、なんで来たんだ!正直・・・・」
『足手まといにしかならない』という言葉を飲み込むセイン。
「そうだぜ!元々戦闘はてんで駄目じゃんか、ヴェイアは!無茶すんな!」
アギトもセインの意見に同意する。
そんなセインとアギトの気持ちを知ったのか
「うん、足手まといにしかならない事は知ってるよ。だけど皆を逃がす事はできる」
そう言い、ルーテシアとアギトの体に巻かれたバンドをナイフで切り裂く。
「ルーテシア、セインのバインド解除をお願い。アギト、セイン、ルーテシアを頼むよ・・・僕なら・・大丈夫だから」
そう言い、首にかかっているヘッドフォンに触れるヴェイア。
その言葉にいぶかしむアギトとセイン、だが、ルーテシアだけは普段見せない驚きの表情を見せる。
「・・・・・わかった」

 

そう言い、瞬時にセインのバインドを解除し
「セイン・・・お願い・・アギトも捕まって」
セインにしがみつくルーテシア
「やらせねぇ!!」
逃走を阻止しようとヴィータが突っ込んでくるが、
「早くいって!!」
叫びながらマシンガン型のデバイスで突っ込んで来るヴィータに攻撃を開始するヴェイア
「・・・・わかった・・・すぐに助けに来るからな!」
そう言い、ディープダイバーを使い地面にもぐるセイン達
「いかせるかぁ!!」
セイン達を行かせまいと、スバル達も突撃を開始するが、
「通さないよ!」
マシンガンでヴィータを牽制しながら、突撃してくるスバル達にスターレンゲホイルを放つ。
スターレンゲホイルの発光により動きを止めるスバル達、だが
「このやろぉ!!」
マシンガンの魔力弾を避けきり、ヴェイアの近くまで来たヴィータはグラーフアイゼンを振り被った。
ヴェイアも所持していた実体盾で防御しようとするが
「そんなもんで!!」
ヴィータの一撃は、実体盾もろともヴェイアを吹き飛ばし、壁にたたきつける。
「くっ・・・・」
どうにか立ち上がるヴェイア、だが既にヴィータ達に包囲されていた。
「抵抗すんな、もうにげらんねぇぞ」
睨みながらグラーフアイゼンを突きつけるヴィータ。
そんなヴィータの表情を見たヴェイアは、持っていたマシンガン型のデバイスを地面に落す。
突然の行動にヴィータ達が警戒する中、ヴェイアは首に下げていたヘッドフォンを耳に装着し、

 

              スイッチを入れた。

 

「ヴェイアの奴・・大丈夫かな・・・」
不安げな顔で呟くアギト。
ヴィータ達から逃れ、今はトーレが指定した合流場所に向っているセイン達
だが、アギト同様、セインも心配で仕方が無かった。
「(ここまでくれば、ルーお嬢様達だけでも合流場所に行ける。今なら)」
セインがルーテシアを置いて、ヴェイアの救出に向おうとしたその時。
「・・・・大丈夫」
今まで黙っていたルーテシアが話し出した。
「ルールー、何いてるんだよ!大丈夫なわけ無いじゃんか!」
アギトの意見にセインも同意するが
「ヴェイアより・・・あの人たちのほうが心配・・・それに」
ルーテシアは少し間を置いた後、
「あんなヴェイアは・・・・・・見たくない・・・」
俯きながら呟いた。

 

「ここまで来れば、大丈夫だろう」
ディエッチの砲撃を防いだカナードはその後、安全圏までストームレイダーの護衛をしていた。
周りに敵がいないことを確認し、ストームレイダーの中に入る。
「カナード、ありがとう、助かったわ」
「たすかったぜ!!」
笑顔でカナードを迎えるシャマルとヴァイス。
「ああ、間に合ってよかった。だが、久遠には悪い事をしたな」
そう言い、抱えていた久遠を下ろすと
「くう~~~~ん」
ふらふらしながら、床に倒れた。
「久遠には許可を取ったのだがな。このスピードでは、やはり無茶だったか・・・回復を頼む」
久遠に近づき、微笑みながら回復魔法をかけるシャマル。
「だけど、どうして分かったの?私達が戦闘をしてるって?通信端末は壊れてた筈だし
長距離念話を使おうにもカナードの場所は分からなかったから無理だったし」
久遠に回復魔法をかけ終え、カナードを見据えて尋ねるシャマル。
「ああ・・・・それについてなんだが・・・・」
カナードが理由を話そうとしたが、
「シャマル先生にカナード!ちょっといいか!」
ヴァイスの声に振り向く二人
「さっき急に、ヴィータ副隊長と新人達の反応が消えた!ちょっと見てくれ!」
ヴァイスの言葉に反応し、端末を開くが
「ちっ、ジャミングが酷いな・・・・ロングアーチ!何か分かるか!」
苦々しく呟きながらもロングアーチに尋ねるカナード
「待って・・・・結界のような物が張られてる・・・・反応が急にロストしたのはこれが原因みたい」
シャーリーの報告を聞き、カナードは直に行動に出る。
「ヴァイス!ハッチを開けろ、すぐそこに向う。ロングアーチ、高町達には引き続きヘリを撃った連中の
追跡を続けるように伝えとけ。久遠はそこで待ってろ!シャマルは一緒に来てくれ!」