勇敢_第24話

Last-modified: 2008-08-05 (火) 19:33:32

地上に、空に、幾多にも展開してたガジェットの群れ、
一時はその特殊能力『AMF』と圧倒的な物量によって、六課メンバーや戦闘機人、
そして地上の正義を信じ、守る地上本部の武装局員達を容赦なく飲み込もうとしていた。だが、

 

『フォルファントリー!発射!!!』
『終わりだぁ!!消えろ!消えろ!!消えろぉ!!!』
『はははははは!!どうした!?それまでか!!?』
『・・・・パルスさんに似てきたな・・・・・』

 

ハイペリオンの量産型、『ハイペリオンG』を装備した陸士203部隊を筆頭とした部隊が、
ガジェットの進行と攻撃を食い止め、彼らの戦闘隊形を崩し、

 

『全員、アルミューレ・・・なんたら越しから撃ちまくれ!!!防御なんか気にすんな!!』
『了解!!!総員、魔力を全てフィールド貫通弾に当てろ、防御は気にするな!!』
『戦闘で暴れてる嬢ちゃん達には当てんなよ!!?当てた奴は総員でフルボッコだ!!!』

 

彼らが前面に展開した『アルミューレ・リュミエール』越しから、武装局員達が
対フィールド弾の雨をガジェット目掛け容赦なく降らせ

 

『はぁああああああああ!!』
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!!!!』
『・・・・・対象の破壊を続行・・・・・オットー指示を』
『・・・・ノーヴェ、突っ込みすぎないで、ディードとチンク姉様はそのまま接近戦を続けて、ヴェンディは武装局員と一緒に
砲撃を、防御は気にする必要は無いから、とにかく撃ちまくって』
『了解っス!!』

 

接近戦を主体とするナンバーズが、ギンガが、多すぎる後方支援を受けながらガジェットの中へと飛び込み、
その力を余す事無く振るう。
即席とは思えないコンビネーションでガジェットを駆逐していく。

 

残った六課メンバーもまた、彼らと共にガジェット戦を倒していく。
「でおぁあああああああ!!!」
ザフィーラの叫びが木霊するたびに、鋼の楔がガジェットを次々と串刺しにしていき
「がぁあああああああああ!!!」
大人形態に変身した久遠が、可憐な姿からは想像が出来ない叫びを放ちなから
体から溢れる電撃をガジェットに浴びせ、近づいてくるガジェットには、鋼鉄をも切り裂く爪の洗礼を与え、
「どうやら、俺の腕もさび付いちゃいないよう・・・だ!!」
ヴァイスは相棒であるストームレイダーを数年間使ったいなかったライフルに移植し、本来の得意分野である
射撃をブランクを感じさせずに見事にやってのける。

 

総員が自分のため、大切な物のため、地上の、この世界の平和の為に力を振るう。
その思いが、思いの力が、地上のガジェットの数を徐々に減らしていった。

 

一方、空では

 

「はぁああああ!!!」
ドレッドノート・イータから供給されるあふれ出る魔力を、左の腰に抱えている大砲に収束、巨大な魔力刃に変換し、
気合の声と共に横薙ぎに振るう。
その巨大な刃の直撃を受けたガジェットは爆発をする間も無く蒸発し、その近くにいたガジェットは、
高魔力の余波を受け、花火と化す。
彼が振り切った瞬間、無数の花火が青空に輝き、一種の芸術として航空魔道師の目を奪う。
だが、その光景を作り出した人物カナード・パルスは、その光景を一瞥した後
右腰に抱えている大砲をガジェットに向け放つ。
先程同様、あふれ出る魔力を惜しみなく使用し放った砲撃は、ガジェットを蒸発、もしくは花火に変えながらゆりかごに着弾、
ガジェットの射出口を吹き飛ばした。

 

「おーおーやっとるな~・・・ウチもまけてられへん!!」
回復を終え空へ上がる途中、カナードの働き振りを見たはやては、久しく忘れていた心の中の対抗心に火がついた。
上昇スピードをあげ、一瞬で目的地まで到着したはやては、夜天の書を開き、遠く離れたガジェットの群れへシュベルトクロイツを突きつけるように構える。
「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ」
呪文を唱えると同時に、足元に巨大なベルカ式の魔法陣が展開され、
同時に、彼女の前方に大小五つの魔法陣が出現する。
以前撃った時は、超長距離攻撃だったために、シャーリー達オペレーターのサポートが必要だったが、
今回は目標を肉眼で確認できるためにその必要も無い。
「周囲の安全確認・・・・・いくでぇ!!!」
彼女の言葉に反応したかのように、前面に展開されていた五つの魔法陣が光を放ち、収束音が響き渡る。そして
「フレース・ヴェルグ!!!」
放たれた5つの魔力砲は、それぞれがガジェットの密集地帯へと飛び、ガジェットには当たらずに密集地帯の中心で停止する。
その瞬間、停止した魔力砲は、それを中心とし広範囲に広がり爆散。残りの4つも同じく爆散し、ガジェットを塵へと変える。

 

カナードとはやて、この二人が空を支えていると言っても過言ではなかった。
ドレッドノートからあふれ出る魔力による高出力攻撃でガジェットを次々と破壊、そればかりでなく、
同時にゆりかごのガジェット射出口も破壊し、増援を食い止めるカナードと、
彼が戻ってきた事により気力があがったのか、より一段と技のキレとコントロールが増したはやてによる
殲滅魔法による周辺空域の完全制圧。
この二人の攻撃の嵐に触発されたのか、首都航空隊もまた活力を取り戻し、砲撃の雨をガジェットに浴びせる。
地上同様、空のガジェットも目に見えて少なくなり、彼らの中には余裕のある笑みを浮かべる者も出てきた。
数時間前とは比べ物にならない戦局、首都航空隊の攻勢や地上に比べてガジェットの数が少ないこともあるが、
カナードとはやて、この二人の働きぶりがそれを実現させたといっても過言ではなかった。

 

「あと何機だ・・・・いい加減鬱陶しくなってきたぞ・・・・」
「もう人踏ん張りや・・・休んでたぶん、きっちり働き!」
「ふっ、痛いことを言う・・・リインフォースは?」
「怪我が酷かったから治療に専念してもらってる。それでもついて行こうとしたから『主命令』ってことで大人しくさせといた
あんまり・・・こういうのは使いたくはないんやけどな」
互いに背中を合わせ、周囲を警戒しながらも普段通りにを交わす二人。
戦場にいるとは思えない笑みで会話を交わす二人は、正に異常とも思える。
だが彼らにはそれが出来る。理由は簡単、互いを信じ、互いを頼りにしているから。
はやてに関してはそれだけではなかった。彼女は純粋に嬉しかった。カナードが来てくれた事が、カナードとまた会話できる事が。

 

「ここはどうにかなりそうやな・・・・あとは中に突入したなのはちゃん達や・・・・」
「粗方片付けたら俺が突入するか?悪党の安全の保証は出来んがな」
ザスタバ・スティクマドを掲げ、獰猛に微笑むカナードに、はやては乾いた笑いで答える。
「あ~・・・カナードは手加減せぇへんからな~・・・・・美少女にも問答無用で顔面パンチかましそうやし・・・・」
「温いな・・・蹴りも忘れん・・・・男女平等・・・いい言葉だ」
しみじみと頷くカナードに、はやては先程同様乾いた笑いで答えたあと、深く溜息をつく。
そして首を動かし、彼方此方から小さな煙を吐き出して尚、以前上昇を続けているゆりかごを見据える。
「・・・・・なのはちゃんやヴィータ、それにスバルとティアナを信用してないわけやないんやけど・・・・・
やはり不安なのは確かや・・・・・それに戦闘機人の子達から聞いた話やと、未だに上昇を続けるゆりかごに暴走したガジェットの群れ
彼女達も原因がわかんないといっとる・・・・・どうもこのままで終るとは思えんのや・・・・・・頼めるか?」
「ああ、了解した・・・・と、言いたいが、どうやら直にとはいかんらしい・・・・・・」
ゆりかごを見据えながら呟くカナードに、はやても釣られる様にゆりかごを見る。すると、
此処からでも聞こえる激しい音と共に、ゆりかごの艦下部が開く。
「あ・・・あれ・・・・あれは・・・・」
ゆりかごから出てくる二つの物体を見た瞬間、今まで空でガジェットの相手をしていた一人の武装局員が頭を抱え震えだす。
いや、彼だけではなかった。空で、地上で、彼同様頭を抱え震えだす者。膝をつき茫然とする者。中には体の力が抜け、仲間に支えられる者。

 

「おっ・・おいどうした!!?」
突然震えだし、自身を抱きしめながらへたりこむ女性局員に、ノーヴェは駆け寄り、倒れそうになる彼女の体を支えながら声をかける。
だが、彼女は全く反応を示さず、ただ恐怖に満ちた表情で、上空に現われた物を見つめていた。
「・・っくそ!!ギンガ!!」
「こちらは何とも無いわ・・・・魔法や精神系の攻撃ではないみたいね。でも、彼女と同じ症状の人は他にもいるみたいなの」
「ちっ!おい、しっかりしろ!!おい!!」
ノーヴェは手荒とはわかっていても多少乱暴に体を揺すり、大声で彼女に呼びかける。だが今の彼女には聞こえなかった。

 

               彼女の瞳に移るのはノーヴェの顔ではなく、別の光景

 

          叫ぶ仲間達、吹き飛ぶ仲間達、体の一部が吹き飛び、のた打ち回る仲間達

 

              信頼していた隊長が、先輩が、仲間が、一瞬で肉片になった。

 

                記憶のすみに封印していたあの光景が、脳裏に浮かぶ。

 

そんな彼女を、いや、同じく苦しむ物達を見下すように、ゆっくりとその物はゆりかごから姿を現した。
アインへリアル防衛任務の時に現われ、虐殺の限りを尽くした機動兵器『ペルグランテ』が。

 

「なんだこれは・・・・っ!!」
突然現われたペルグランテに、カナードが疑問を投げかけた瞬間、二体のペルグランテは、結合部分であろう中枢を残し
張り付いていた突起物『ドラグーン』を分離。誘導弾の様に不規則に動いたあと、計12体のドラグーンは、地上目掛け
大口径の魔力砲を一斉に掃射した。

 

「ちっ、総員、アルミューレ・リュミエールを頭上に展開!!魔力をすべてそっちに回せ!!カバー仕切れない!!!」
頭上から迫り来る砲撃に、カナードからハイペリオンGを託された武装局員達は、即座にアルミューレ・リュミエールを傘の様に頭上に展開。
ギリギリ間に合い、どうにか砲撃を防ぐが、防がれた事を察知したペルグランテは、再び砲撃を放とうとする。
「ちっ、やらせるかよ!!」
そのことを察知した航空隊は、即座にドラグーン目掛けて砲撃を行う。だが、一つの意思を持ったかのようなドラグーンは、それらの砲撃を
難なく交わし、反撃とばかりに砲撃を連続して放つ。
連射を前提にしているためか、威力はさほど無い攻撃、だがそれでも直撃を受けた隊員は苦悶の表情を浮かべ墜落していく。
「各員!!二人一組で行動!!防御魔法を展開しながら弾幕を張り後退!!負傷者の救助を優先して!!!」
即座に指示を出しながらも、はやては簡易的な砲撃魔法をドラグーン目掛けて連続して放つ。
だが、彼女の攻撃をあざ笑うかの様に、ドラグーンは迫り来る砲撃を軽々と避け、その数倍の数の砲撃をはやて目掛け放つ。
「当たらん!?せやけど、なのはちゃんのシューターほどや無い!!」
自分目掛けて放たれる幾多の砲撃をパンツァーシルト防せぎ、同時にはやては先程のような牽制目的ではなく、
性格に狙い打つために、ドラグーンの一つに標準をあわせる。そして
「・・・・・・そこ!!」
アルミューレ・リュミエールとは違い防御越しからでは打てないため、砲撃が止んだ一瞬の隙を狙い防御を解除、
同時に、飛び回るドラグーンに向け、砲撃を放った。
先程のような牽制攻撃とは違い、性格に狙った攻撃が飛び回るドラグーンに迫り直撃。
続けて2発、3発と狙い撃ち、不規則に動き回るドラグーンに確実に当てていく。
「よっしゃ!!狙い撃ちや!!!・・・・・・っ!!?」
対象に直撃した事を確認したはやては笑顔でガッツポーズをするが、攻撃が直撃した時に発生した爆煙から、
先程と同じ数の攻撃がはやてに降り注ぐ。軽く舌打ちをした後パンツァーシルトを展開し攻撃を防ぎならも、
攻撃が放たれている方を睨み付けるように見据える。
そんなはやてに自らの健在振りを表すかのように、攻撃によって発生した爆煙の中から、ドラグーンがその姿を現した。
「っ!!?なんちゅー硬さや!!びくともしとらん」
苦虫を噛み潰したした様な顔で攻撃を防ぎながら、無駄だとはわかってはいながらも愚痴をこぼすはやて。
だが、彼女は諦める事など全く考えていない。再び攻撃を行なうため、チャンスを伺う。
その時、彼女の後ろから爆発音が響き渡った。
その音に体を一瞬体をビクつかせながらも、咄嗟に首を動かし、目線を後ろへと向ける。
其処には、今自分が相手をしているドラグーンの一つが、煙を撒き散らしながら落下、地上に落ちる前に爆散、細かな破片を撒き散らしていた。
「全方位に気を配れ!!一点攻撃だけをする生易しい物ではないぞ!!」
はやてを後方から狙っていたドラグーンを撃ち落したカナードは、簡易的に怒鳴りつける様にアドバイスをした後、
不規則に飛び回るドラグーンにザスタバ・スティクマドを放つ。
その弾丸は吸い込まれるようにドラグーンに当たるが、破壊することは出来ずに多少行動を止めただけで終わってしまう。
「ちっ!無駄に硬い!!!ザスタバでは駄目か!!なら!!」
舌打ちをした後ザスタバ・スティクマドを仕舞、代わりにドレッドノートの右の大砲を腰に抱え、ドラグーン密集地帯へと抜き打ちの要領で放つ。
だが、カナードから検出された高魔力から高出力の砲撃が来ると知ったペルグランテは、即座にドラグーンを拡散、
ドレッドノートの砲撃から逃れる。だが、
「ふっ・・・機械が・・・・避け方が単純だ!はやて!!」

 

攻撃を交わされながらも、カナードは獰猛に微笑みながらはやての名前を叫ぶ、その直後
「おっしゃ!!!」
ドレッドノートの砲撃から逃れたドラグーンに、気合の声と共に放ったはやての砲撃が次々と直撃、
先程以上に威力を増した砲撃は強固な装甲で出来たドラグーンを貫き、破壊していく。そして
「貴様も消えろ!!!」
右の腰に抱えたままの大砲に魔力を収束、巨大な魔力刃に変換し、ペルグランテのコアを縦一文字に切り裂く。
カナードの一閃を受けたペルグランテはゆっくりと左右に分裂したあと、爆散した。

 

「ナイスだ・・・さすがは機動六課設立者は伊達ではないな・・・・」
ペルグランテの爆発を確認したカナードは、大砲を戻し同じく爆破の確認をしていたはやての方へと近づく。
「何言うとる?カナードとの付き合いは短いようで長いんや、何考えてるくらいわかる。カナードもそれを分かっていてこないな事したんやろ?」
「ああ、俺もお前との付き合いは長いからな。やってくれるとは思っていた」
互いに互いを信頼している事を再確認した二人は、支援と微笑み、ハイタッチをする。
そして、残るペルグランテに攻撃を開始使用としたその時、

 

          「さて・・・ショータイムの始まりだ・・・・」

 

誰にも聞こえない呟きと共に、ペルグランテとは違う強力な魔力砲が、二人目掛けて襲い掛かった。
軸戦場にいるがジェットを破壊しながら迫り来る砲撃、あまりの魔力量に、二人は即座に気が付き避けようとするが、
「っ、アカン!!!避けたら地上に直撃する!!」
避ける事はできる。だが、もし避けたら地上にいる局員達に直撃する。
唯でさえハイペリオンGを装着してる局員達はペルグランテや空や陸にいるガジェットの防御て手一杯なのだ
この攻撃も防げるという保証は無い。
だからこそ、自分が防ごうと結論付けたはやては魔力を上乗せさせ、先程以上の強固さを兼ね備えたパンツァーシルトを
展開しようとする。だが、彼女がその作業を行おうとする前に、カナードは彼女の前へと出る。そして
『アルミューレ・リュミエール展開!!』
ηフォームにより、新たなアルミューレ・リュミエール発生装置となったプリスティスを腕に装着し、
カナードの固有スキルともいえる防御魔法『アルミューレ・リュミエール』を展開する。
無制限に供給される魔力を惜しみなく使用したアルミューレ・リュミエールは、
ただでされ高防御魔法と言われるほどの硬さを誇ったハイペリオンの時以上に、その防御力性能を上げており、
アースラのフィールドと装甲を削り、リインフォースの多重障壁を打ち破ったゆりかごの砲撃を正面から防いだ事から、その防御力の異常さを思い知らされる。
だからこそ、あの時は歯を食いしばって防いだ砲撃も、今となっては余裕で防ぐ事が出来た。

 

「・・・・・・奴か・・・・・・」
この砲撃はカナードは以前も受けたことがあった。
燃え盛る六課での戦い。自分の全てを出し切っても倒せず、玩ばれるように敗北した。
殺す事を最高の快楽と信じて疑わない、異常とも思える能力を持った狂人。
今になって思う。奴は戦っていなかった・・・・・・奴は遊んでいたのだと。
自然とカナードの表情が険しくなり、歯を噛み砕かんばかりに食いしばる。
隠す事無く殺気を放ちながら、砲撃が放たれた方へと顔を向ける。

 

隣にいるはやても、カナードから突然放たれる殺気に、攻撃を防いでくれた事へのお礼を言うのも忘れ、
同じく顔を向ける。そこには
「ほぉ・・・・・伊達に姿を変えてはいないようだな?クックックックッ」
眉の部分に瞳を模したメイクを施し、体の彼方此方には木で出来た人形を括りつけている人物
あたかも『自分は異常者』と周囲にアピールするような風貌をしたその人物『アッシュ・グレイ』は
愉快に笑いながら、二人を見下ろしていた。

 

「(この男・・・・・)」
自分達を見下ろすアッシュを、はやては自分でも気付かないうちに殺気を放ちながら睨み付ける。
本当ならこのような感情に任せた態度は控えるべきなのだが、この男に対しては正直無理だった。

 

突然地上本部の会議室に映し出された戦闘映像。カナードが重症を負ったあの戦い、
カナードが串刺しにされ、血を吐き倒れる姿が移った瞬間、後でカリムから聞いたのだが自分はかなり錯乱していたらしい。
正直、カナードが串刺しにされた瞬間の記憶は曖昧で、あの時自分が何をしていたのか未だに良く思い出せない。
シュベルトクロイツを持つ手に自然と力が加わる
もし昔の自分だったら、感情に任せラグナロクを放っていただろう。
だが、そうも行かない。この男には法で捌きを受けてもらう、どんなに憎くても。

 

自身を落ち着かせるために大きく深呼吸をした後、再びアッシュを睨みつけ、シュベルトクロイツを突きつける。
「私は機動六(消えろ!」
はやてが所属とアッシュの目的を聞こうと口を開いた瞬間、カナードは警告も無く、アッシュに向かい砲撃を放った。
非殺傷設定ではない高出力の魔力法を不意打ちの状態で受けたアッシュは、右腕を肩から吹き飛ばされ、
血を奇声を撒き散らしながら地上へと落下する。
本来なら十分な殺傷行為。だが、カナードは攻撃の手を緩めない。
自由落下するアッシュにカナードは全速力で接近、そのスピードを生かし、左の大砲の砲身を彼の胸に突刺す様にたたきつける。
砲身が叩きつけられた胸は不気味なほどに凹み、あばら骨が砕ける音が幾多にも響く。そして
「・・・・・・・消えろ・・・・・化け物」
昔の様に獰猛に微笑みながら、大砲の引き金を引く。
ゼロ距離から放たれた高魔力砲は、アッシュの上半身を一瞬で蒸発、勢いを変えずにそのまま地上へと直撃、
軸線上にあった廃ビルを蒸発させ、変わりに大きなクレーターを作り出した。
「・・・・・・化け物に言葉など不要だ・・・・・」
出来たばかりのクレーターを見下ろしながら砲身から煙を吐き出す大砲を背中に戻し、
再びザスタバ・スティクマドを持ち直しながらカナードは呟く。
「・・・・って、カナード!!!」
「安心しろ、下には人はいない。14~5機のガジェットは大気の塵と化したがな」
「ちゃうわ!!!いきなり・・・しかも殺傷設定で発砲なんて何考えとるんや!!」
平然と受け答えをするカナードにはやては怒りをあらわにした表情で詰め寄る。

 

確かにあの男『アッシュ・グレイ』は許せない存在ではある。だが、それは一人の人間として『八神はやて』としての感情である。
今の自分、管理局員である八神はやてとしては、彼の行動は許せる物ではなかった。
犯罪者とは言え警告も無しに発砲、もし昔の自分だったら笑顔でガッツポーズをしていたかもしれない。
だが、昔とは違う、今の自分は管理局員。彼の行動を見過ごせる筈が無い。

 

掴みかからん勢いで詰め寄るはやてに、カナードは小さく溜息をつく、そして突然彼女を横に押しのける様に突き飛ばした。
驚いた表情のままゆっくりと離れるはやてを見る事無く、カナードは直にアルミューレ・リュミエールを展開、その直後
「ははははははははははははははは!!!!!痛いな痛いな痛いなぁ!!!!!!!」
吹き飛んだ体の部分を再生させながら、弾丸の様なスピードでアッシュが突撃をしてくる。
再生しきれていないため、筋肉組織や骨などを露出しながらも、真っ直ぐにカナード目掛けて突っ込む。
そして、唯一損傷をしていない左腕に装着されているデバイス『テスタメント』を、アルミューレ・リュミエールに力任せに叩き付けた。
テスタメントの爪が、アルミューレ・リュミエールを砕かんとその爪を食い込ませようとする。
だが、金属と高魔力がぶつかる激しい音が響くばかりで、一向にアルミューレ・リュミエールは砕けることは無く、
直に破壊できると思っていたアッシュはその光景に、初めて眉を潜める。
「・・・・・・なるほどな・・・伊達に姿形は変わってはいないか・・・・・・・」
「ああ・・・・それに、特性もかわってはいない・・・・・身を持って知れ」
獰猛に微笑みながら、カナードはアルミューレ・リュミエール越しからザスタバ・スティクマドを連射。
ドレッドノートの効力により、威力の上昇だけではなくマガジンの交換を必要としなくなったため、
威力だけではなく、マガジン交換という隙を無くしたザスタバ・スティクマドを、ほぼゼロ距離から放つ。
弾数にしてマガジン一個半分を至近距離から喰らったアッシュは、体の彼方此方をそぎ落とされながら吹き飛ぶ。そして
「ドレッドノート、ザンバーモード」」『Zamber Mode』
肉片と血を撒き散らしながら吹き飛ぶアッシュに、カナードはトドメと言わんばかりに、左の腰に大砲を抱え魔力を収束、
巨大な魔力刃に変換し、横薙ぎにアッシュに斬りつけた。
あまりの高出力なため、『斬る』というよりは『蒸発させる』といった方が正しい斬撃を受けたアッシュは、
腰から下の下半身を丸々削ぎ取られ、上半身だけとなる。
本来なら、誰が見てもカナードの完全な勝利。だが、その考えを持つのは『アッシュ・グレイ』という人物を知らないだけ。
「ちっ、化け物が!!」
カナードの悪態を証明するように、肉片となったアッシュの体は『テスタメント』の効果により瞬く間に再生する。
千切れ飛んだ体の一部、蒸発した下半身、その全てがビデオでまき戻したかの様に復元され元通りになっていく。

 

「・・・っ」
その生々しい光景を見たはやては、こみ上げる物を抑えるために、手で口を強く抑える。
この仕事をしている以上、人の死体を見る事も珍しくは無かった。
だが、愉快に笑いながら体を、骨を神経を筋肉をむき出しにしながら再生を行うアッシュの姿は、
それらを見慣れたはやてにも、十分な不快感を与えた。

 

「おやおや?八神はやてにはキツイ光景だったかな・・・・・それとも『つわり』か?はははははははは!!」
既に全ての再生を終えたアッシュは、吐き気を必至に堪えるはやての姿を面白そうに見つめる。
はやてを小馬鹿にしながら笑い飛ばすアッシュに、カナードは再びドレッドノートの砲撃を与えるよと砲身を向ける。だが、
「傭兵、カナード・パルス!!攻撃を止め!!」
彼の行動を、はやてはシュベルトクロイツを彼の行動を阻止するように横に構え、凛とした声で一喝する。
普段の『八神はやて』としての願いではなく、機動六課を背負う『八神はやて』としての命令に、
カナードは、一瞬唖然としながらも砲身を背中に戻す。
「・・・・・無駄だとは思うが?」
「それでも、言葉が通じるのであれば、話し合う余地はある」
決意を込めたはやての言葉に、カナードは一度大きく溜息をついた後腕を組み、様子を伺う事にした。

 

「ふう、これで話し合いが出来るというものだな」
「ほぉ、貴様のような下種からそんな言葉が出るとはな・・・・・正直驚きだ」
「カナードは黙って!!・・・・・・私は、時空管理局機動六課部隊長八神はやて、貴方を六課襲撃の容疑・そして局員の殺害行為の罪で逮捕します
大人しくすれば、貴方には弁護の機会が与えられます、ですが・・・抵抗するのなら・・・・・」
夜天の書を出現させ、ページを中ほどまで開く。
足元にベルカ式の魔法陣を展開させると同時に、シュベルトクロイツをアッシュに向けて突き付け
「手加減無用で容赦なくシバき倒す!!!・・・・・正直、加減出来へんからなぁ・・・・・・・大人しゅうしてくれたら丸く収まる・・・どうや!!!」
いつでも高出力魔法を放てる準備をし、射殺さんばかりに睨みつけながら最終通告をするはやてに、
アッシュは先程同様、不適に笑うだけに終る。
「くくくっ・・・・・そう無理をするな、八神はやて。仕事や使命、局のプライドに自分ルール・・・・・そんな物に縛られずに
自分の欲望を・・・・やりたい事をさらけ出せば良い・・・・展開している魔法を俺に向かって放てば良い・・・・・」
ニヤつきながら挑発するアッシュ。だが、はやては警戒はするものの動こうとはしない、睨みつけながら彼の答えをじっと待つ。
「・・・・・ツマラン奴だ・・・・・まぁいい。お前には興味は無い・・・・・興味があるのはカナード・パルス、お前だ」
名前を呼ばれたカナードは、依然腕を組んだまま、目だけをアッシュに向ける。
「・・・俺はノーマルなんだがな・・・・・・男、しかもクレイジー野朗に好かれては迷惑だ」
「くくくっ、まぁ、そういうな。同じ世界の出身者同士なのだからな・・・・・・」

 

『同じ世界』その言葉にカナードとはやては素直に反応する。
そしてカナードは六課襲撃時にアッシュが言った言葉を自然と思い出す。

 

           『昔はザフトの軍特殊防衛部隊に所属していた』

 

           『この世界に呼んだ俺に感謝して欲しいくらいだ』

 

そもそも自分やプレアがこの世界に来た理由も未だに分からない。もし奴の言葉がハッタリでなければ無視できない内容である。
だからこそ、彼はその話しに乗る事にした。

 

「・・・・・・まぁ、ハッタリと割り切っても、貴様の内容には興味はある・・・・で、俺になんの様だ?」
「何、話しは簡単だ。カナード・パルス、俺の仲間になれ」
「・・・・・・下らん・・・・・・」
話しは終わりとばかりにカナードはザスタバ・スティクマドを向け、引き金を引こうとする。
だが、銃口を向けられても尚、アッシュは反撃ばかりか、防御をする様子も無く、
腕を組みニヤつきながら自分達を見つめるというスタイルを変えずにいた。
「(・・・・・なんだこの余裕は?リジェネイドの能力に頼っているだけとは・・・・思えんな・・・)
随分と余裕だな?俺が貴様の提案に乗るとでも?」
「ふふふふふ、まぁ待て。話しがあるのはお前だけではない。もう一人の答えを聞いてからでも遅くはあるまい?」
不意に右手を掲げ、指を鳴らす。すると、彼を中心とした空に、縦横数メートル規模の映像ウィンドウが出現、
ある映像を映し出す。
大規模、しかも無数に現われた映像に、空や地上で戦闘を行っていた者達は自然と目を向けてしまう。
空に映し出されてる映像、それはゆりかごの中で行われている戦闘の映像だった。

 

「クアットロ姉様!!」
「ディエチ姉様!!」
空に移しだされている映像に姉達の姿を見たディードとオットーは、大声を上げその名を叫ぶ。
アッシュ・グレイによって映し出された映像、其処には自分達の姉が写っていた。
クアットロは見て直に分かるほどに傷ついており、壁に背を預け力なく座っておる。
そんなクアットロを守るように、ディエチは彼女の前に立ち、襲い掛かってくるガジェットⅣ型をイノメーシスカノンで
狙い打つ。だが、物量の差で攻めて来るガジェットに、砲撃という戦闘スタイルのディエチでは限界があり
徐々に追い詰められていく。
「オットー!!」
「・・・だめだ・・・・通信が通じない・・・・・」
俯き、力の限り拳を握り締め悔しさを我慢する。
本当なら今すぐにでも助けに行きたかった。別の場所で戦っている姉妹なら当然賛同してくれる筈。
だが、今この場を離れるわけには行かない。
自分達とハイペリオンGというデバイスを装着した武装局員の参戦により、絶望的と思われた地上の戦局も落ち着きを取り戻している。
だが、今此処で自分達が抜けては、落ち着きを取り戻した戦局に穴が相手しまう。
「(いっそ分散して・・・・・だめだ!!どの道戦力の低下は起きてしまう・・・・・)」
オットーは再び顔を上げ映像を見つめる・・・だが、ガジェットの攻撃が、そんな些細な彼女の行動すら許してはくれなかった。

 

「スバルさんにティアさん!!!」
空に移しだされている映像にスバルとティアナの姿を見つけたキャロは大声でその名を叫ぶ。
アッシュ・グレイによって映し出された映像、其処には、なのは達の救助に向かったスバルとティアナが映し出されていた。
此処からはよくは見えないが、スバルの右腕は血にまみれており力なく垂れ下がっている、
だが、そんな負傷を感じさせずに、彼女は無事な左腕と、マッハキャリバーの装甲の硬さを利用した蹴りでガジェットを破壊していく。
ティアナもディエチと一緒に射撃でガジェットを破壊していく。だが、彼女は魔力弾を一発撃つたびに息を切らせていた。
「・・・・まさか・・・・AMF!?」
AMF効果内での戦闘を行ってきた彼女には原因が直にわかった。
おそらくゆりかごの中は高密度のAMFが展開されているのだろう。それならティアナの言動や、
ただ、『殴る・蹴る』という行為のみを行っているスバルの攻撃方法にも納得がいく。
AMF効果内で魔法を使う場合、魔力結合などの関係上、必要以上の魔力と体力、そして集中力を要する。
それはAMFの密度が濃ければ濃いほど必要となり、影響下にいる術者を苦しめる。
だがらこそ、自分達フォワード組は、そんなAMF効果内での戦闘を前提に訓練を行なってきた。
それこそ数機のガジェットが展開する程度のAMF空間なら、自分達は何の影響も無く戦う事ができる。
だが、映し出されている映像では、ティアナは魔力弾を一発撃つたびに息を荒げていた。
おそらくよほど高密度なAMFが展開されており、その結果、結合に必要以上の魔力と体力、そして集中力を奪われた結果なのだろうと思う。
キャロもディードたち同様、今すぐにでも助けに行きたかった。だが、今時分がいる防衛ラインは、ヴォルテールが要となっている。
自分が抜けることなど、許される筈がなかった。

 

「ヴィータちゃんになのはちゃん!!」
「ヴィヴィオ!!」
空に移しだされている映像にヴィータとなのは、ヴィヴィオの姿を見つけたシャマル達は大声でその名を叫ぶ。
アッシュ・グレイによって映し出された映像、其処には、ゆりかごに突入したなのはとヴィータ、そして誘拐されていたヴィヴィオ
の姿が映し出されていた。
ヴィヴィオを自分の後ろに下がらせ、ブラスタービットやアクセルシューターを駆使し、ディエチとティアナと共にガジェットを破壊していくなのは、だが、
ヴィヴィオとの戦闘による魔力の大幅消費と負傷、そして濃度が濃いAMF空間内での戦闘のため普段通りの力が出せずにいた。
呼吸は荒く、技の切れも無い。時たま来る激痛に集中力を乱してしまい、シューターが床に激突する。
そんななのはを援護するように、ヴィータはスバルと一緒にガジェットを破壊していく。
だが、なのはとディエチ、ティアナのサポートがあるとは言え、魔法がロクに使えない上、接近戦を主体としたⅣ型の群れに、
二人の体は徐々に傷ついていった。
シャマルはその光景を見ていても立ってもいられなくなる。映し出されている映像から皆の疲労具合、そして
どれだけマズイ状況なのかが、直にわかった。
だが、今自分が・・・自分達が抜けるわけには行かない。
唯でさえ負傷者が多い状態で、自分が抜けたら、取り返しのつかないことになる。
ザフィーラや久遠も同じ気持ちに違いない。だが防衛ラインを守るのに手一杯の状態で、この場を抜けることは
どうなるか理解している筈。そんなもどかしさを我慢できないのだろう、久遠の叫びが此処まで聞こえている。
シグナムは未だに応答が無い、リインフォースも戦闘が出来る状態ではない。
「・・・・・・どうか・・・・無事で・・・・・」
今の彼女に出来る事は一つ・・・・・だた祈る事だけだった。

 

「お~お~頑張ってる頑張ってる・・・・死にぞこ無いが、機械人形が、作り物が、そろいも揃って」
写し出されている戦闘映像を、アッシュはまるでお気に入りのアクション映画を見るような表情で、
時には『ブラボー』と喝采しながら拍手をし、楽しそうに見つめている。
そして、ヴィータとスバルが見事なコンビネーションで一斉に襲い掛かってきた7体のガジェットを
倒したシーンに、アッシュは再び拍手喝采をおくろうと手を叩こうとした瞬間、モニターと彼の頭は吹き飛んだ。
「・・・・・やはり貴様の仕業か・・・・この騒動は・・・・」
左の腰に抱えた大砲から、発射の余波から出る煙を漂わせながら、カナードは首が無いアッシュに問いかける。
そんなカナードの問いに答えるため、アッシュは即座に首を再生、何が面白いのか笑いながら話しだす。
「ああ・・・俺がやった、停止したガジェットを起動させ、ゆりかごを乗っ取り、アースラを攻撃した。
この楽しい祭をプロデュースしたのは俺さ・・・・ああ、アインへリアルでの虐殺も手懸けたな・・・俺は参加できなかったから、ツマランかったな・・・・」
「っ・・・・何故・・・こないな事をするんや・・・・・・楽しいか?・・・・・こんな事して!!!」
最初は事務的に話していたが、途中から我慢が出来ず、はやては感情をさらけ出して怒鳴りつける様に尋ねる。
彼女は許せなかった、理解できなかった。こんなことをする彼が、虐殺を『つまらない』で片付ける彼が。
「・・・はぁ?何を言っているんだお前は?楽しいに決まってるだろ?」
はやての問いに、アッシュは疑問を浮かべた表情で即答。そして、不意に両手を広げ空を見上げた後、高らかに自分の思いをぶちまけた。
はやてに、カナードに、ここで戦っている全ての者に聞こえるように大きく愉快に。
「俺はなぁ・・・楽しんだよ・・・・破壊が人殺しが・・・・俺の目的はなぁ・・・・より多くを殺す事!!!
殺戮を楽しむ事がぁ!!!俺の目的だ!!!!人を殺すたびに、俺は全ての欲求が満たされる!!!!
美味い物をたらふく食った時以上の食欲!!!泣き叫ぶ女を犯し、ぶちまけた時以上の性欲!!!頭が痛くなるほど寝たとき以上の睡眠欲!!!
その全てが満たされる、相手を切り裂いた時!!!吹き飛ばした時!!!へし折った時!!!その度に全てが満たされ!俺は最高の感覚に酔いしれる事ができる!!!」
アッシュの演説に、周囲の人々は様々な反応を示す。沈黙する物、あまりの狂気に恐怖するもの、純粋に怒りを表す者。

 

「だからさ・・・カナード・パルス。お前にもその感覚を味合わせてやろうと思ってるんだよ・・・・
知ってるぞ。お前、本当は人間を憎んでるんだろ?殺したいと思ってるんだろ!!俺と同じ様にさぁ!!!!!」
楽しそうに自分と同じ人間だと言い張るアッシュに、カナードは沈黙で答えようとするが、
近くで聞いていたはやては、アッシュの問いかけに沈黙で答える事など出来る筈がなかった。
「アホな事言うな!!!カナードが、アンタと同じなわけない!!!これ以上いい加減な事ほざく様なら・・・・今度はうちがドタマ吹き飛ばしたる!!!!」
アッシュを射殺す勢いで睨みつけ、内から出る怒りを堪えるように歯を噛み砕かん勢いで食いしばる。
はやては許せなかった・・・・カナードが、自分の大切な人が快楽に任せて殺人を行う人物を一緒にされるのが
「そうかぁ~?八神はやて、お前だってカナード・パルスからは聞いてるだろ?奴がモルモットだった事を?失敗作だったことを?
理不尽な人間に良い様に玩ばれた被害者だった事を・・・・そう・・・あいつの様にな・・・・・」
ニヤつきながら再び映像を見つめるアッシュ。その時、ある人物の叫び声が響き渡った。
その人物は床に叩きつけられ、苦しそうに顔を顰める。
そんな彼を包囲するかのように、二人のソキウスがそれざれ武器を構え、無表情に立ちつくしている。

 

「えっ・・・・・」
「馬鹿・・・・な・・・・・」

 

画面に映った人物に、カナードとはやては素直に驚きの表情を表す。

 

「何だと・・・・」
「そんな事が・・・・」

 

画面に映った人物に、ザフィーラとリインフォースは画面を食い入るように見つめる。
ただ、シャマルだけは、然程驚いた表情を表さず。画面を見つめている。

 

「・・・・・・・・・」
スカリエッティのアジトから、展開されている映像を見たフェイトは言葉を失う。
聞いてはいたが、いざその姿を見ると思考が追い付かなかった。
画面に映っている人物・・・・・彼が・・・自分達の家族であり、既に他界してる筈の彼が生きている事に。

 

「っ!!なんだ・・これは・・・・!!!」
XV級大型次元航行船クラウディアの艦長席で、映し出されている映像をみたクロノは、
自然と席を立ち叫ぶ。
驚いたオペレーター達が、クロノを一斉に見つめるが、今の彼はそんな事は眼中に無かった。
当然だった。弟の様に接していた彼、既に他界してる筈の彼がいるのだから。

 

「・・・・う・・そ・・・・・」
クロノにより、クラウディアに映し出されている映像をまわしてもらい、現状を見ていたリンディにも、
その映像は否が応でも目に入った。
自然と口元を押さえ、後ろへと下がり、力なく壁にもたれかかる。
どうにか自身を落ち着かせようとする。だが、心臓の鼓動は早いまま、正直気が狂いそうになる。
確かにあの時、自分は彼の最後を看取った。家族にならないかと誘い、自分を『お母さん』と呼んでくれた彼。
本当なら、誰にも邪魔されず、静かに眠っている筈。だが、彼は戦っている。苦しそうに顔を顰めている。
「どうして・・・・・・なんで・・・・・」
彼に対するリンディの問いかけが、静かに響き渡った。

 

そして彼らは一斉に口にする、友として彼の名を口にする。家族として彼の名を口にする。仲間として彼の名を口にする。

 

                           「プレア」と