機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第07話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:06:01

「いくぞっ!!」

俺はジンのパワーゲージを限界まで上げる為にスラスターのスロットルレバーを全開にする。
急速にスピードを上げる為にかなりのGが掛かる。しかし、

「これくらい!」

今まで音速の領域に身をおいた戦場で戦っていたのだ。これ位のスピードは何でもないはず
「Ξガンダム」で音速を超える速さの戦闘をしてきたのだ。
ガンダムは俺の世界で最高の性能MSでありそれを使いこなした自信もある。
しかし、最高の性能だからこそ頼りきっていた面もある。パイロットの負担を軽くするもの――Gの軽減など

「ジン」はこの世界では最新技術のMSのはずだが俺たちの世界に比べると格段にレベルが下だ。
この粗末なMSはGの減退がなっちゃいない、が――
「ザク」―俺たちの世界での最初のMS。
恐らくこの程度のGはかかっていたはずだ。

「赤い彗星」のあの人も最初は「ザク」に乗って「ルウム戦役」を戦い抜いたのだ――
ならば俺もやってやる!

「性能に頼らない!」

ピキィィィィィィィン

感覚を広げる。知覚を自機の周囲から360度全てに。
そして相手の意思を感じ取る!!
攻撃的プレッシャーを感じた。
次の瞬間に白いジンが突撃銃の連射をかけてくる。

「見える!!」

相手の意思が脳裏に響く。
予め台本で決められた通りのように相手の攻撃がわかるのだ。

俺は全ての攻撃を見切る。
銃弾の軌跡が全て後方へ流れていく感覚がわかる。

相手への距離が一瞬で縮まる。

「此処だぁぁ!!」

俺はジンの突撃銃を捨て即座に重斬刀に持ち替えていた。
そして勢いがついたスピードとパワーを込めた重斬刀を相手のジンに叩きこむ!!

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

最早、自分が何故今この場所で戦っているのかさえ分からない。

MSのパイロットたちはいつの時代でも自分達は「騎士」なのだという自覚がある。
一騎討ちこそ、自分達の本分であると。

そう誇りを持った戦士なのだ。
だから良い敵に出会えば心が躍るし敬意を払う。
そして敬意をもった相手を全力で潰す。

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相手のジンのモノアイが輝く。
ここで勝負というわけか!――ならば!
こちらも重斬刀に武装をチェンジする。

「力押しなら……負けはしないっ!!」

私は歓喜の叫びを上げながら迎撃する。
今まで自分を捉えていた鬱陶しい気分が完全に消えている。

目の前のジンから放たれる攻撃的プレッシャーを感じながら
私も重斬刀で大胆に斬りかかる。
まともに当たればお互いただでは済まないだろう。

ふと考える。

(死ぬかな……? フッ、それもいいさ――)

ここで敗れて死ぬのも、またいいだろう。
これ程の男と戦って死ぬのだ――そう悪い死に方ではあるまい。

――老害を晒して死ぬより遥かにな。

「ちっ!」

一瞬、忌々しげな感情が沸くがすぐに消える。
私がこの世に出でてから捕らえられ続けている感情だ。
元凶をこの手で消しておきながら、まだそれは私を苛め続ける。

だが……
――今は戦いだけが私の全てなのだ。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

一瞬で互いの剣が交錯する!!

ガガガッガガガッッ――ン

一瞬、激突し互いに剣を撥ね上げ、火花が飛び散る……お互いの重斬刀の刃が擦れ合う。
性能はハイマニューバの方が断然上だが、相手の戦闘能力と互いの位置が戦況を均衡にさせていたのだ。

こちらは相手の上方からの勢いがある一撃を両手で受け止めるのがやっとだ。

ガガガッ―ーガッ!!

斬り結ぶ、斬り上げる、振り下ろし、振り上げる。

稲妻のように互いに斬撃を繰り出していく。

また自分では気がつかない内に口元に笑みがでる。

わかるのだ。どのように攻撃してくるのかが――
心が歓喜に満ちている。

いつまでもその舞踏は続くかと思われていたが

「グッ!?腕がっ!」

ハイマニューバのマニュピレイターの間接が大きく損傷したらしい
間接部が吹き飛ぶ。

同時に相手のジンのモノアイの輝きが消え、機体が急速に傾いていく……

「なんと?」

お互いに揉み合ったまま動けなくなってしまった。

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「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

斬り結ぶ、斬り上げる、振り下ろし、振り上げる!!

ガガガッ―ーガッ!!
ビー・ビー・ビー

「ウォォォ…あ?」

警告音が激しく点滅し、機体のエラー箇所が表記される。
モニターにはジンの損傷箇所の表示が機体の全身と警告され赤く点滅し表示される。
バッテリィも残り僅か……切れた。

ギッギッ!ガクンッ!

モニターが死ぬ。動きが唐突に止まった。
……

まいったな……
完璧に壊してしまったようだ。少し熱くなり過ぎたか?と今さながらそう思ってしまう。

手はどうなったんだろうか?
手動でハッチを開放した方がいいのだろうか?それとも救助を待った方がいいのかな?

……通信はまだ生きていると思うが……
お肌の触れ合いの接触通信を試みる。

ピ・ピ・ピ・ピ

ホッとした。通信はまだ死んでないようだ。
俺は相手側のジンに通信を入れる。

「やぁ」

『礼を言いたい。楽しい一時だったよ』

「そいつはどうも」

『私はマニュピレイターが完全に破壊された。攻撃手段はもうない』

「こっちは大破した。勝負はあんたの勝ちだ」

『いや、痛みわけだろう。お互い攻撃手段が尽きているのだしな』

なんだかんだ話が弾んでいる内に救援がきたようだ。
互いのジンは回収されドックに戻された。

俺はジンから飛び出て整備主任の盛大な文句を「すまない」「反省してる」など生半可な返事をしながら
あの『白いジン』の方へ向かっていく。

パイロットがジンから降りてくる。軍服姿のままだ。
……ノーマルスーツも付けずにそのまま乗っていたのだ。余程、腕に自信がなければそのような真似はできない。
白いザフトの軍服だ。隊長クラスか?顔が髪で隠れていて良く見えない。

男が頭を軽く振り、金髪で隠された顔が露になる。

それが、これから長く付き合う事になる俺とその仮面の男、ラウ・ル・クルーゼとの初めての邂逅だった。

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