あらゆる困難が科学で解決するこのCEの時代、
人々の閉ざされた心の闇に蔓延る魑魅魍魎(ホムンクルス)が存在していた。
科学の力ではどうしようも出来ないその奇怪な輩に立ち向かう、
珍妙不可思議にて、胡散臭い少女が一人…………その名は、ステラ・ルーシェ。
そう。
人は彼女を、錬金の戦士と呼ぶ!
「ちょっと」
「ぷよぷよするなー!」
「あのさ」
「じょーぶつしろよ!」
「怒られるから止めよう切実に」
「うぇーい」
閑話休題。
――保健室――
気を失ったままのルナマリアをベッドへ横たえ、シンはその隣に軽く腰掛けた。
傍では、ステラなる少女が真剣に小さな機械と向き合っていた。
どうやら電子辞書で錬金術の項目を調べているらしい。
こんな調子で本当に大丈夫なのか、シンは結構な不安を覚えた。
「あ、みつけた」
不意に少女が声を上げる。
ちょいちょい手招きしてシンを呼び、画面を展開。
所々に正六角形の意匠が刻まれた電子辞書を覗き込むと、そこには確かに錬金術に関しての説明が載っていた。
【錬金術】
紀元前のエジプトを起源とし、近代前の欧州を風靡した総合科学技術。
鉛などを始めとした卑金属から貴金属への変換や、不老不死の薬の製出などが多く試みられた。
尤も科学としては誤りが非常に多く、それらの殆どは成功していない。
しかし、行われた種々の実験は科学技術の発達を促し、近代から現代に掛けての科学における礎を築き上げた。
「長い説明、おぼえるのニガテ」
渋たげな顔をする少女。
そんな立ち振る舞いがどうも幼いもののように感じられてしまい、シンは微妙に鼻白む。
この少女が、あの化物を打倒した…………今更だが、信じ難い。
と、そこまで考えたところで、シンは先程の説明に妙な点を見咎めた。
「あれ、今『成功していない』って」
「おもて向きの常識ではそうなってるけど」
パコ、更に別のキーを押すと。
「錬金術はね、ふたっつだけ普通じゃかんがえられない成功をしたの」
電子辞書の画面が切り替わり、新たな記述を表示する。
これが、彼女の属している組織謹製、歴史や常識の“裏側”に関する事柄も記載された電子辞書込みの高性能PDAとの事。当然だが市販などされていない。
それを見ながら、少女はたどたどしく説明文を読み上げ始めた。
曰く、
ホムンクルスは人造生命の研究の産物。
武装錬金は戦術兵器の開発の成果。
その両方ともがあまりに危険すぎたため、結局これらは錬金術を識る者達の手で徹底的に秘匿/管理をされる事となった。
だが、それを逃れたモノが今日も世界中に散らばっており…………闇に紛れ、人を喰らい続けている。
「…………さっきのがなかったら、俺、眉に唾付けてるよ」
「うん、それが普通」
シンの言葉に同調し、少女はピンク色の服から核鉄を取り出した。
クロームが強い色合いのそれを左手に持ち、右手で窓に掛かったカーテンを退かす。
夜闇に隠れ、向こうには一つの廃虚。
シンが命を一度喪った場所…………ロドニア・ラボ。
不穏な存在感を放つその場所を、少女は非常に苦々しげな顔で睨む。
「あの場所、だいぶ昔もホムンクルスのアジトになってた」
「え!?」
「その時の奴らは殲滅されたみたいだけど、今度は別のが根城にしてる」
雰囲気が、変わった。
「だから…………私が、斃しに行く。武装錬金」
ルナマリアを起こさぬよう、静謐な気迫を持って咆哮。
核鉄、発動。
外殻から内殻へと鋼が展開していき、超常の変形を始める。
機械然としながらもスマートな体躯。
力強く床を踏み締める四肢。
灰の衝角が付いた顔。
背には加速器が組み込まれた翼が一対。
セルリアンの目に光が灯り、ソレは完全に姿を表した。
人が二人は乗ってしまえそうな大きさの、獣。
右の前肩にマウントされた人間用と思しき銃が、無愛想にロドニア・ラボを狙う。
ハウンド・ガイア。黒犬獣の武装錬金。
極めて戦闘に特化した様々な機能を有する、少女の相棒。
「じゃあね。ばいばい」
「あ、ちょ、待っ! 俺も一緒に、」
シンの言いかけた台詞は、
――ギン!
ガイアが五爪を眼前へ突き出した事で断絶する。
「来ちゃ、駄目」
「な…………何でだよ! 手伝える事は俺にだってある筈じゃ」
「 駄 目 」
真顔を鼻先一寸まで寄せて、拒絶。
「あなたに核鉄上げたのは、あなたを戦わすためじゃなくて、助けたいと思ったから。武装錬金とかホムンクルスの事を教えたのは、事態をちゃんと把握した上で冷静な対処して欲しいから」
静かに、何処か自分に言い聞かせているようにも思える調子で言葉を紡いで。
コチ、時計の針が規則的な音を部屋に響かせた。
「さっきはきんきゅーひなんだったから仕方ないとしても、“戦闘”は本来私の任務」
ガイアがどこにあるのか良く解らない口から唸り声を上げる。
「あーゆーアジトは多くて4~5匹単位。私とガイアなら、一晩あれば十分」
「で、でもやっぱrイテェ!」
「だから 駄 目 だってば」
今度は太股に爪ちょっと刺された。
やや涙目の少年を敢えて見ないようにしながら、少女は更に言い募る。
「よく、考えて。その人はどうするの?」
その言葉に、ハッと目を見開くシン。
視線がベッドの上のルナマリアに移り、力なく右往左往する。
「『悪い夢』で恐い思いして目を覚ましたら、夜の保健室にひとりぼっちだよ?」
「あ、…………」
「ここから先、私に一歩近付けば、そこはもう戦いの世界。でもあなたは帰る事が出来る、今なら元通りの世界に戻れる」
ぶわ、桜の花弁を孕んだ風がカーテンを大きく揺らした。
「あなたは来ないで。来ちゃ駄目」
少女の言葉を皮切りに、窓の外へ身を踊らせるガイア。
背を向けたままだった少女が、振り返る。
――――その顔に浮かんだ微笑みが、目蓋に焼き付いてしまう程寂しげで。
「その人と一緒に、帰ってね」
「んぁ、れ?」
惚けた意識が収束していく。
むくりと身を起こすルナマリア、目元がしょぼしょぼしている辺りまだ完全に覚醒しきってはいないらしい。
「…………私、何でこんなトコにいるんだろ」
「あ、ルナ」
「ぇわっ!?」
横から飛来した声に、ルナマリアは口から心臓が飛び出したかのごとく驚愕した。
慌てて首を巡らせれば、彼女自身の探し人であったシンが、水の入ったペットボトルを口に銜えて隣のベッドの端に腰掛けている。
なんだ、呟きながら安心の溜息を零す。
「あー、驚いて損した。なんか凄く酷い目見た気がするし」
「夢だろ、夢。お前が校庭でブっ倒れたの見た時は逆にこっちがビックリしたよ」
「え、嘘? なんで?」
「石に足突っ掛けたんじゃん、下見ないで走るから」
「ぁぅ」
「ったく、こっち運んでくるのが重くてしょうがなか……ハッ!」
「ピザデブと申したか」
ぐしゃ、ルナマリアの被っていたシーツが握り締められる。
とてもイイ笑顔な彼女からさっと顔を逸らすシン。ものっそ情けない。
今度は呆れの溜息を吐きつつ、ルナマリアはベッドから降りた。
ぶるり、身震い一つ。
スリッパに足を突っ込み、シンから上着を受け取って羽織る。
「やけに寒いと思ったら、窓開いてるじゃない。何時から?」
「あ、30分くらい前かな」
「やっだー、道理で寒いわけね」
窓に鍵を掛け、カーテンも閉めた。
そんなルナマリアの後姿を、シンはただ見詰める。
自分と拳ひとつ程の差がある背。
そこには、日常があった。
――――あの少女から感じた寂寥など、欠片も存在しない姿。
「シン、あんた何抱えてんの?」
「へっ」
不意の言葉につい間抜けな台詞が出る。
「な、なななな何が!?」
「判り易過ぎるのよ、隠し事してるとすぐ顔に出るんだから」
軽くでこピン一発。
狼狽しまくりなシンの横を素通りし、ルナマリアは保健室の扉へ歩き出した。
「気になることがあるんでしょ? じゃ、早く帰らないとね」
「って、聞かないのか?」
「教えてくれるんなら幾らでも聞くわよー」
「あ、いや、そういう訳には」
「でしょ?」
くるり振り向く。
「話したくなったら話してよ、今はそれで構わないわ」
「ルナ…………」
青い瞳に湛えられる静かな信頼。
シンは、腹を決めた。
頷き一つ、二人揃って廊下を走り出す。この際校則はシカトだ。
――ロドニア・ラボ――
牙が噛み砕く。
爪が引き千切る。
尾が鞭打つ。
翼が断ち斬る
そこはガイアの独壇場。
人を超えた同胞が次々と潰されていく光景に、しかし猿人類を原型としたホムンクルス共は哂い声を消さなかった。
「ひゃははぁ、獲物だ獲物!」
「女ぁぁぁぁぁ!!」
「乳! 尻ぃ!! 太腿ぉ!!!」
下卑た台詞に少女の眉根が寄る。
ハウンド・ガイアは自動人形式(オートマトン・タイプ)の武装錬金であるため、一対一にも一体多数にも十二分に適応可能な性質を有している。
しかし、それにした所で数が多い。ざっと見ただけで軽く二桁は超えていよう。
化物の額に刻まれた章印を抉り裂きながら、所々でリノリウムが剥がれたコンクリートの床を疾駆する獣。
それを、獣の主人たる少女は一歩下がったところで睨み据えていた。
荒れ狂う暴虐。
黒い檻を、一匹のホムンクルスが潜り抜ける。
少女は無手。
とかく耳障りな哄笑を上げながら化物が踊りかかり、
――ゴッ!
しかし、鋭い蹴りに叩き飛ばされた。
ノーモーションで撃ち出された脚が緩慢に引き戻されていくのと同時に、ガイアが己の方へ帰ってきたホムンクルスを噛み潰す。
自動人形式の利点は、使用者が敵にわざわざ近寄らず戦闘を行える所だ。
だが、それは裏を返せば武装錬金と引き剥がされた時、使用者の安全が保障できない事に他ならない。
――ガッシャァァァァン!
窓ガラスを突き破り、外から更に猿型のホムンクルスが急襲。
増援の数は4体程度だが、無手で一人立ち向かうのは流石に下策であろう。
なれば。
「ガイア!」
呼び声に咆哮を返し、黒獣が体ごと全身を回してホムンクルスを弾き飛ばした。
同期して少女もまた駆け出す。
すれ違い様に、ガイアの右肩で出番を待っていた銃を掌握。
躊躇せずトリガーを引くと、機械然とした長い砲身が閃光を吐き出した。
輝く光条に章印を穿たれ、鉄屑へ還る化物。
この少女は、並みのホムンクルス程度なら独力でも打倒出来る身体能力を持っているのだ。
「ほぉ、あれが昨日マーズの言ってた女か」
自分の同胞が減っていく光景を、集団のトップと思しき男は薄ら笑いなど浮かべながらただ眺める。
口に咥えたボルトが上下に動いた。
「うぇいっ!!」
――ゴシャァッ!
立っていた最後の一体に銃床を直接叩き込み、壊し伏せる少女。
凄惨な破壊音が響く。
「後はお前だけ!」
「へぇー、そうかいそうかい。おたく、【錬金の戦士】だな」
一歩踏み出し、眼鏡をくいと持ち上げる男。
「錬金術を識る者の中から選り抜かれた、武装錬金の熟練者(エキスパート)か。だが……たった一人で乗り込んで来て、勝てると思てもらっちゃあ困るぜ?」
その体が、少しずつ歪んでいく。
変化。変成。変態。
疾く変わった姿は、圧倒的な威圧感を放つ巨躯のマウンテンゴリラ。
ぐっと見せ付けるように、男が双腕を掲げた。
「私は一人じゃない。ガイアも一緒」
「あぁ、そうだったな。その犬ッコロは厄介だ」
「卑怯なんて言わないよね?」
「はっ」
警戒の篭った言葉に、大猿が口角を吊り上げる。
直後。
――ガシッ!
少女とガイアの脚を、砕かれた同胞の残骸に紛れたホムンクルスが掴み抑えた。
「やりましたよヘルベルトさん!」
「なっ!?」
「卑怯とは言うまいね! 錬金の戦士!!」
醜悪な笑みを浮かべて殴りかかってくる大猿。
それを何とか迎え撃とうと少女は銃を持ち上げかけるも、別の個体に飛び掛られ標準が逸れる。
この距離では、もう、避けられない――――
「たーだーいまー、へひー」
「あ、ルナ。お帰り」
「シンはどうした? そのためにわざわざ学校くんだりまで行ったんだろう」
「さぁね。用事があるって、私送った後どっかにすっ飛んでったわよ」
「用事ってこんな遅くに?」
「さてはアイツ外に女でも作りやがったn」
「……まぁ、シンの事だ。待っていればそのうち平気な顔で帰ってくる」
「だね」
「しゃーねーなぁ」
「それじゃ、待ちますか。冷めたご飯と一緒に」
――――それは、黒い突風。
「やめろぉぉぉぉっ!!」
後方からのシャウトに、少女は首を捻りながら目を見開く。
まさか。
なぜ。
そこには彼がいた。あの少年がいた。
胸元を掌握し、真紅の瞳に決意を秘め、咆哮を上げる、シン・アスカが!
「武装、錬金っ!!」
心臓が哭く。
超常の鋼が展開されていき、巨大な剛剣へと姿を変える。
2mを超過する、中央に分割線の通った刀身。
峰に無数携えられた加速器。
途中からナックルガードと一体になる柄。
まだ名も無い、剣!
組み上がった武装錬金を握り締め、峰のブースターを吹かし、大猿へ突っ込んでいくシン。
それを認めた方は、若干慌てつつ剣を両手で留める。
みしり、拮抗。
「なんだなんだ! 伏兵はお互い様かい!? だが、この俺と力比べとは愚策にも程があるよッ!!」
大猿の腹部で、人の上半身の形を残したヘルベルトが笑った。
みしり、少しずつ押し返され始める剣。
だがシンは、眼の奥に燃え狂う焔を決して消さない。
一瞬の間をおき。
「そぉう…………らっ!!」
遂に、剣が押し飛ばされてしまった。
にぃと笑う大猿。
その顔に、上から影が差す。
人と猿、両方の顔面を持ち上げた目に入ったものは、
「こぉれで、どうだぁっ!!」
空中に身を躍らせ、先の剛剣とは似ても似つかぬシャープな剣を振りかざした、シン。
ホムンクルスが瞠目した。
シンの武装錬金は、外殻たる大剣と芯核たる直剣の二段構造。
大猿が弾き飛ばしたのはあくまで外側のみ、それを床代わりにシンは空中へ駆け上がったのだ。
舌打ち一つ、大猿は彼を叩き落そうと腕を振るう。
否、振るい掛けて止まった。薄紅色をした諸刃の刃が烈光を放ったのだ。
反射的に腕を戻し、目の前にかざして光を避けるヘルベルト。
その向こうから、シンが爆発的に加速し章印目掛け突っ込んで来た。
気付くも時は遅し。
「衝き貫け、俺の、武装錬金!!」
守る腕ごと抉る紅刃。
バターを熱したナイフで断つより容易に、渾身の斬撃がホムンクルスを引き裂く。
あっけなくヘルベルトの頭は崩壊した。
着地に失敗したシンが床へ叩き付けられると同時に、残された巨躯も後ろへと倒れる。
ずしん、埃を巻き上げながら鋼の腸が舞った。
(撃破、2体目――――!)
リーダーを倒され気勢の削がれた雑魚共をガイアに解体させながら、少女は考える。
戦士として見るなれば、あの武装錬金は決して弱くなどない。むしろ強力な代物だ。
だが、彼女個人としては解する事など出来ない。
「来ちゃ駄目って言ったでしょ!」
ホムンクルスの残骸を思いっきり踏みつけながら、怒気を込めた声で少女はシンへ詰め寄った。
鼻先一寸の距離にうら若き少年はビビる。
「あの人はどうしたの!?」
「ちゃ、ちゃんと送ってきたって! 全力疾走しすぎて疲れたけど」
「む」
送ってきたと言われたら、その点に関しては引くしかない。
溜息を吐き、少女は静かに下を指差す。
「足元、見て」
「え?」
言われるままに視線を落とし、そして。
――!!
声にならぬ驚愕。
床上には、無数の骸骨が無為に転がされていた。
その数たるや、一人二人ではない。
「言ったでしょ。ホムンクルスは人を食べるの」
静かに、少女が呟く。
「ココ、普通のアジトじゃない。この場にいたのはみんなやっつけたけど、多分街のどこかに人喰いは隠れてる」
「そんな! また化物に襲われる人が出るかもしれないって事かよ!?」
「残念だけど、思ってたよりマズい。だから今度こそ、あなたは手を引いて」
戦闘は自分の任務、保健室で聞いたのと同じ言葉。
しかし、それを聞き分けてやれるほどシンは大人でもなければ脆弱でもなかった。
「だったら尚の事引けない。ルナやレイが危ないかもしれないなら、それを何とかできる力が俺にあるなら、尚の事!」
剣を握り締め、シンは言う。
亡、紅蓮の刀身が感情に呼応するがごとく輝きを増した。
帰り道。
「……私、一応あなたのために言ってる」
「それはわかる、ありがと」
ラボを背に、シンは少女の肩を借りながら歩いていた。
夜天に浮かぶ無数の星。
「でもごめん。どうしても俺、じっとしてはいられないんだ」
「…………」
「俺も手伝う、化物退治」
肩へ回した方の手にぐっと力を込め、そこに何か柔らかい手触りを感じつつ力強く言うシン。
少女は確信する。
昨夜の蛮勇とは違う、今度は全て知った上で飛び込んできた。
そして、これより先の更なる危険にも承知で、なお協力の意思を持っている。
シン・アスカ。
その身に、戦士の資質は十二分!
――――ただ、何かが引っかかるような気もしたが。
「駄目だって言っても、どーせもう聞かないつもりでしょ」
「……ごめん」
やっぱり、少女はすぐ脇にある少年へ聞こえるよう、これ見よがしに再度溜息を吐いた。
「しょーがない、じゃまずは戦士見習いね」
「へ?」
「私の目の前で死ぬは駄目、だから今後私の指示は絶対」
「え、あ、り、了解!」
有無を言わさぬ語気に、シンはコクコクと頷く。
しかしてその直後、何かに気づいた様子で彼が声を上げた。
「あ」
「今度はなに?」
「いや、ちゃんと自己紹介とか、してなかったかなって」
「じこ、しょーかい?」
目を瞬かせる少女。
「俺、シン。シン・アスカ。君は?」
「……そだね、自己紹介。私はステラ、ステラ・ルーシェ」
名を交わすは一つの契約。
今ここに、錬金の宿命は結ばれる――――
「ところでシン」
「え、何?」
「おっぱい、ちょっと痛い」
「OOPS!?」
ラッキースケベ、ここに極まれり。