神隠し_第05話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:14:55

ズドォンッ!!!!
音がした。
耳をつんざくような轟音。フェイトは目を閉じ、障壁を展開。
なのはの砲撃を耐えきり、勝つつもりでいたが、しかし、いつまでたっても、展開した障壁に負荷がかかることはなかった。

「なのはぁ!!!!」

アスランの声が響く。
フェイトが固く閉じていた瞼を開けてみると、なのはが海へと落下して行くところだった。
何故か分からず、とりあえずフェイトはなのはを受け止め、海中への落下を阻止した。
「さぁ、フェイト…、ジュエルシードを受け取って、母さんの元へ帰ろうか。」
「えっ…でも…。」
決着は、フェイトによるものではない。
『INVOKE Set Up』
「キィィラァァ!!」
『エリケナウス』
無数の朱色の閃光が、キラとフェイトを襲う。
「フェイトは行って!ここは僕が引き受ける!!」
『サーベルモード・METEOR Shift』
片方だけのフリーダム銃口付近に環状魔法陣が発生。そこから巨大な蒼い魔力刃が発生する。
『サーベルフォーム・INVOKE Shift』
アスランも同様、連結させていたサーベルハルバート形態を解除。先端より環状魔法陣が発生、二刀の巨大な魔力刃が姿を現す。
「お前が…なのはをぉ!!!」
全力で振るう大剣は音をたてて空を斬る。キラは半身をずらして縦一閃をかわすと、横一閃を見舞おうとする。
しかし、もう片方の大剣によって防がれた。

フェイトはなのはを公園のベンチに寝かせ、キラを援護するために再び海上へと飛翔を開始する。
しかし、目の前に立ちはだかるようにして現れたクロノ・ハラオウンによりそれは阻止される。
バルディッシュを構えるフェイト。
クロノもストレージデバイスS2U、黒い杖を構える。そして打ち合い、魔力を消費していたフェイトが敗北した。
クロノがジュエルシードを回収しようとしたとき、別次元からプレシアがジュエルシードだけでも回収しようと転送魔法を使う。
なんとか食い止めようとクロノが喰らい付き、なのはとフェイト、二人が集めたジュエルシードの半分を奪うことに成功した。

アスランと戦うキラ、呼吸は荒く、肺が破裂しそうな感覚に襲われる。
それでも、攻撃をやめるわけには行かなかった。負けるわけにはいかなかった。
乱れる呼吸、痛みをます呼吸器管の感覚を意識の隅においやり、引金を引く。
『ライフルモード・METEOR Shift』
放たれる極大の奔流を、極大の魔力刃できりさき、アスランがエリケナウスを咆哮とともに放つ。
キラも同様にエリケナウスで対抗。
同時にバラエーナとクスィフィアスを放つと、アスランもそれに合わせ、ハイパーフォルティスとアムフォルタスを放つ。
どちらも一歩も引かず、両者の放った数多の奔流は全て相殺となった。
「(キラ、戻りなさい。)」
アスランと睨みあいをキラが続けているところへ入るプレシアからの念話。
「(フェイトは無事に戻れましたか?)」
「(いらないわよ、あんな失敗作。それに、あの子は管理局に捕まったわ。)」
「(じゃあ僕がフェイトを…)」
「(あなたはすぐに戻りなさい。あんな子の為に駒を犠牲にするわけにはいかないわ。)」
「(……分かりました。)」
アスランの斬撃、砲撃をかわしながら、念話を切り上げ、
『High MAT Full Burst METEOR Shift』
射出される魔力の翼、ドラグーン。キラの周囲に現れる無数の魔力弾エリケナウス。
腹部カリドゥス、両腰部クスィフィアス、両肩部バラエーナ。
そして、二つの収束砲撃魔法と、フリーダム本体から放たれる収束砲撃。
「…あれだけの数を…撃つのか?」
アスランは動きをとめた。まさか、コントロール仕切れるはずがない。
「当たれぇぇええ!!!」
しかし、そのあまりに多すぎる魔力の塊をコントロールし、アスランへ向け放った。
避けきれないと判断したアスランは転送魔法を使用。
自分をアースラへと転送した。

管理局時空間航行船アースラ医務室。
アスランは医務室でなのはとフェイトを看ていた。
「あ、アスランくん。」
「大丈夫か?なのは…。」
体を起こそうとするなのはを助け、座らせてやる。
「アスランくんは?」
自分のことよりもアスランを心配するなのは。
「…大丈夫だ。」
と言い切るアスラン。
「でも…、あの、キラくんはアスランくんの友達なんでしょ?」
「…まぁ…そうなんだが…。」
「説得しなくていいの?」
「…説得はした。…それでも…あいつは…。」
なのはから顔を背けるアスラン。悲痛な表情がなのはからも容易にみてとれた。
「諦めちゃ駄目だよ!!アスランくんはそれでいいの!?」
「いいわけないだろ!!
あいつは俺の親友だった…頼りなくて、優しくて、無器用で…。
小さい頃に離れ離れになって…次に会ったときは敵だったんだ。説得は聞かない、なら戦うしかないじゃないか!!!」
一時の沈黙が場を支配する。アスランは思い直し、
「すまない…。」
と言って医務室を出ていった。
閉まるドアを見つめながら、なのははひとり呟いた。
「そんなの…悲しすぎるよ…。」

「はぁっ…はぁっ…。」
乱れた呼吸が収まらない。お陰で喉は痛いし、肺も痛い。しまいには横っ腹も痛み出してきた。
キラは壁づたいに通路を歩き、自分の部屋へと向かって体を引きずるようにして歩いていく。
部屋へたどり着くと、粉薬を蒸せながら水で無理矢理流し込み、床に力なくへたりこむ。
十分ぐらいたつと、薬が効いてきたのか、少しだけ落ち着く。
ふとモニターが開き、プレシアの姿が映った。
『キラ、管理局の連中がもう時期、ここにやって来るわ、アルハザードへ行く準備が出来るまで時間を稼いでもらえないかしら?』
キラは平静を装って答えた。
「はい。」