第04話~誤解です!~

Last-modified: 2011-12-05 (月) 11:13:50

「見失ったか……まあ良いか」
崩壊に紛れアスランを見失った事を、心の何処かで安堵していた。
やはり殺したくは無いらしい。
「X-105ストライク! X-105ストライク! キラ・ヤマト! 聞こえていたら…無事なら応答しろ!」
そんな奇妙な感情を持て余してると、通信が入ってくる……そう言えばフラガの事で俺はパニックに
なってたけど、この女の顔と声は記憶にあった。
エレカのとこで会った女だ。
鋭そうな女だったし、これ以上警戒されるのは気をつけよう。
「…あ…こちらX-105ストライク…キラです。どうなってるんですか?」
「ハァ…無事か?」
安堵の溜息が聞こえる。
まあ、俺でなくストライクが心配なんだろうけど……
「はい」
「こちらの位置は分かるか?」
「ええ~と……はい」
「ならば帰投しろ…戻れるな?」
「やってみます」
そう返事すると通信を切りアークエンジェルに向かう。
それにしても結局ヘリオポリスを守れなかった。
わかってるさ。俺が油断してたって。
何しろ俺はヘリオポリスの崩壊はキラさんが何も考えずにアグニぶっ放した所為だって思ってました。
ゴメンなキラさん。
「ん? ヘリオポリスの救命ポッド?……推進器が死んでる……他は?」
基本的に救命ポッドを発見したところで、放っておくに限る。
このままでもオーブ政府が救助活動を行うだろうし、救助までの時間はかかるが、
後の事まで考えれば連合の軍艦よりマシだ。
だが……
「おい、聞こえるか! 中に居たら返事しろ!……通信機もアウトかよ。まさかな」
最悪は装置の破損で酸素の供給が止まった場合。
「仕方がない」
俺は救命ポッドをアークエンジェルまで運ぶ事にした。
……あ~怒られるだろうなぁ……

第4話~~誤解です!

正直、今の俺はブルーだった。
いや、別にフラガとどうこうしたわけじゃ無いんだ。ただね……
「サイと婚約してたなんて……」
フレイ・アルスター。俺がやるはずの15歳の美少女……
俺が拾った救命ポッドに彼女が乗っていた。もうその時は運命を感じたさ。
おそらく助けてくれた俺に感謝して、そこから恋が芽生える。
そんなことを考えていた。
多分キラさんもそうしたんだろうと。
だが、その予測はすぐに泡となって消えた。
サイが来た途端、俺を突き飛ばしてサイにベッタリ。
しかも、俺がコーディネーターだと分かったら嫌悪感まで見せてきやがった。
「じゃあ、どうやって?」
そう。フレイはキラさんと深い仲になったんだ。だが、あのキラさんが上手く口説けるとも思えないし、
フレイが急にコーディネーターの俺に好意を持つ理由が見当たらない。
ここでサイが嫌な奴で、フレイは親に無理矢理決められた婚約者だから仕方なく……なら話はわかる。
しかし、サイは良い奴で、フレイもサイに好意を抱いてる。
とても付け入る隙があるとは思えない。そもそもサイみたいな良い奴の婚約者を横取りするなんて、
そんな外道なマネが人として出来るわけが無い。
じゃあ、何故……
「……まさか!」
そうか……そうだったのか! 道理で俺、シン・アスカがサイを知らないはずだ。
きっとトール同様、彼も死んだんだな!
そして、愛するサイを失った彼女は寂しさからキラさんに……
そうか、そういうことか!
……って待て!
じゃあ、あれか? 
俺がフレイとの間にフラグを立てるにはサイに死んでもらう必要が……でも、俺は彼に死んで欲しく無い。
サイもトールも守りたいんだよ。
でも、そしたらフレイは……
「……無理だ……俺には出来ない!」
「そうか、辛かったんだな」
「え?」
俺がフレイとのフラグのためにサイを犠牲にすることを悩んでるとき、横合いから声をかけられた。
「バジルール少尉?」
「悪いとは思ったが、あまりにも辛そうなので声をかけた」
「え~と」
「実を言うとだな。私は君を信用してなかった。最初に会った時の事を憶えてるか?」
「は、はい」
「異常に勘の鋭い子供。それだけでも引っ掛かっていたのだが、次に会った時はMSに乗っていた」
 うん。それって無茶苦茶怪しいです。
「おまけに、とても素人とは思えない戦いをしてみせるし、先の戦闘も、そしてフラガ大尉に聞いたが次に出ることも承知したと言う。私は君が怖くなった。
 だから君の事を監視していたんだが……
 ……疑って、すまなかったな」
「え?」
「君は、1人で苦しんで、悩んで、そして叫んでた。俺には出来ないと……
 本当は戦いたくなかったんだな」
え~と……凄く誤解してます。はい。
「周りを不安がらせないため強がり、そして誰も居ないところで苦しむとは……うむ。素晴らしい」
なんか感動してるんだけど……まあ、この人も多分アレだ。
周りには強がって弱みを見せず、誤解されるタイプなんだろうなぁ。
「昨今は軟弱な若者が蔓延っている中で君のような若者がいるとは……キラ・ヤマト!」
「ハ、ハイ!」
「私も本当は君に戦わせたく無い! しかし遺憾ながら我々は君の力を必要としている! 
 辛いだろう! 怖いだろう! だが恐怖を外に見せるな! 胸を張って戦え!」
うわぁ~、演説かましてるんですけど……この人って本当に典型的な軍人だ。
冷静なふりして実は熱い奴……でも、このタイプは……
「少尉殿! ありがとうございました! お陰で目が覚めました!」
「うむ! 頑張りたまえ! だが、辛いときもあるだろう。誰にも言えない時は私を頼るといい」
「はい。ご配慮に感謝します!」
「よし! では急いで機体の整備に戻るが良い!」
「了解です! 少尉!」
俺は踵を返し、ストライクの方へと向かった。
ん~……予想以上に上手くいった。
なんかキラさんになって初めて上手くいったんじゃないか?
もっとも警戒すべき人が味方になってくれたのは大きい。
それに俺の素の部分、軍人らしさが出ても彼女は無理をしてると捉えてくれるだろう。
「キラー!」
ん?……って、ちょっと待てよ!
「トール! どうしたんだ!? その格好?」
彼等の説明を聞いて、俺は感動していた。
俺だけに戦わせるわけにはいかないから……
ゴメンなサイ。少しでも悩んだ俺を許してくれ。
フレイは惜しいけど、もう諦めるよ。
俺、絶対にサイやトール、みんなを守るから……

「とにかく、艦と自分を守ることだけを、考えるんだぞ」
「…了解です。大佐もお気を付けて」
「いや、俺は大尉なんだが……まあ、良い! ムウ・ラ・フラガ、出る! 戻ってくるまで沈むなよ!」
フラガが隠密先行して前の敵を討つ。
その間に俺は後方の敵から艦を守るか、悪くない作戦だな。
それにしても、アスランにイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン
……俺にとっては豪華メンバーだな。
俺のいた時代なら正直、尻尾巻いて逃げ出すメンバーだ。
だが、今はまだ尻の青い小僧でしか無い。
あの裏切り者共め……ふん、まとめて殺してやるか?
「キラ!」
「え? ミリアリア」
「以後、私がモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制となります。よろしくね」
通信機からミリアリアの元気な声と、その口調を注意する声。
フラガと話してた事で湧いてきた劣等感と過去の記憶が引き出す俺の心の闇が晴れていく。
「装備はエールストライカーを。アークエンジェルが吹かしたら、あっという間に敵が来るぞ!」
続けてバジルール少尉の勇ましい声。
「了解です!」
俺はエールパックを装備しながら微調整を開始する。
相手は4機。
しかも俺が弄ったOSより、ザフトの整備士が手を加えたOSの方が上だろう。
そんな相手を無理して落すより、この艦に乗ってる人を守る事が優先だ。
「キラ・ヤマト! ストライク発進だ!」
「了解! キラ・ヤマト、ストライク、発進する!」
俺はアスカ隊で使っていた……亡くした友が使っていた掛け声でストライクを発進させた。
レイ、今の俺を見たらお前は笑うか?
…………うん、どっちかていうと呆れるだろうな。

ストライクを発進させた俺の前に先行してきたイージス。
アスランか……やってやるさ。
ところで、このビームライフル大丈夫なのか? 
何と言っても調整したのは他でもなくこの俺。
………うん。絶対に信用は出来ない。
だが、やるしかない!
「キラ!」
ズギューン!
……やっぱり外れた。少し右か……
「やめろ! 剣を引け! キラ! 僕達は敵じゃない、そうっ…!?」
ズギューン!
……今度は左すぎる……
「何故僕達が戦わなくちゃならっ…!?」
ズギューン!
…… あれ?
「同じコーディネイターのお前が、何故俺達と戦わなくちゃっ…!?」
ズギューン!
……避けた? やるな。
「お前が何故地球軍に居る? 何故ナチュラルの味っ……って、人が話してる最中に撃つ奴がいる   か!」
いや、むしろ戦闘中に話しかける奴がいるか? ん? デュエルが来たか!
「イザークか!?」
イザーク? そうか、イザークはアレに乗ってるのか……
だが、デュエルが来たって事はだ……やはり。
残りの2機がアークエンジェルに取り付いたか!
「させるか!」
バスターを狙ってビームライフルを放つ。
距離があるから当たりはしないが牽制にはなる。
「俺達を前にして舐めたマネを!」
だったら舐められない動きをしてみせるんだな。
俺はイザークの攻撃は回避するだけにして、バスターとブリッツがアークエンジェルを攻撃
しにくいように牽制の射撃を加える……そう言えばアスランは?
「おいおい……」
なんかボーってしてやがる。
「なんだよ。昔っからこうなんだ?……ん? やったか?」
遠くでナスカ級から爆発してるのが見える。
フラガがやったんだな。
さらに陽電子砲発射の合図。
まあ、俺は避ける必要の無い位置にいるが……無理だな。
どうせなら誰かを射線上に誘導したかったが、そう上手く行く位置には誰もいなかった。
「さて……続けるバカはいるか?」
……さすがに居ないか。去って行く4機のGを見ながら、俺は息を吐いた。
イザークが最後まで未練がましく攻撃したそうにしていたが、
俺が隙を見せなかったから諦めたみたいだ。
俺としても、まだやれるし4機を相手に勝てる自信はあったが……
「まあ、アークエンジェルが無事なら、それで良いさ」

「へぇ~、これか……どんなゲームなの?」
「えっとね、ロボットが戦うの」
「対戦ゲーム?」
「それ!」
今日は休日。
僕はマユちゃんに誘われゲームを買いに街へ出ていた。
それにしても対戦ゲームか……
正直言って僕は見た目からは意外だって言われることがある。
まあ、キラ少年の頃の話しなんだけど……
それが実はゲーム。
僕はゲームをやらないんだ。
見た目は好きそうって言われるけど、実はやらない。
「ねえ、買おうよぉ!」
「う~ん……」
「お兄ちゃん、変だよ。だって最近ゲームしてないじゃない」
そう言われてもなぁ……別に嫌いってわけじゃ無いんだ。ただね、簡単すぎるんだよ。
例えばシューティングゲームなら、ゲーセンで初めて見るゲームでも、コインを入れれば1機も失わず
最後までクリアー出来る。そんな僕と対戦して楽しめると思う?
そんな訳で僕はゲームをやらない。
まあ、RPGとかシミュレーションならマユちゃんがやってるのを横で見てれば良いけど、対戦だとそうもいかない。
手加減してマユちゃんの反応を見るって手も……
「あ!」
「ん? どうしたの?」
「……マユはロボットの対戦ゲームがやりたいんだよね?」
「え? そうだけど……」
「例えば、MSが戦うのとか?」
「MS?……ジンだっけ?」
「まあ、他にも……」
……まだザフトの初期の頃のしか無いか。
でも…
「もっと格好良いのを作ってあげる」
「へ?」
「僕が作ってあげるよ。マユが楽しめそうなゲームを」
そう言いながら、僕はマユちゃんの手を握ってジャンク屋の方向へと向かった。
ゲームを、遊びを兼ねてOSでも作ろう。
出来ればコクピットを再現したいんだけどなぁ……
そうすればマユちゃんだけでなく僕も遊べ…じゃなく訓練出来るし。
安くて使えそうなパーツがあることを祈りながら、不思議そうな顔をして僕を見るマユちゃんに萌え…
じゃなく微笑みかけた。

続く

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