舞乙337氏最終話

Last-modified: 2022-04-23 (土) 10:29:52

この世界にはいくつもの可能性を持った世界が存在する。それは人の思いによってあまたなる可能性の世界にへと広がっていく。だが二つの世界は同時に存在できない。この繋がれた橋をふさがなければ…すべては無に帰すだろう。

最終話 ユメノツヅキヘ

 巨大な竜巻が何本をでき、ヴィントの街を襲う。倒れていたナオの身体が浮きあがりその頭上にへと飛ばされそうになる。その腕をつかむ手。
「間に合いましたね」
 サラ・ギャラガーは風から身をかばうようにして頭上の巨大な雲の中心、すべてを吸い込む穴を見つめる。
「うちらの出番はまだ残ってるようどす」
 シズルの腕の中にはナツキとマーヤがいる。ガルデローベの研究所のほうではミドリとラドが救出に向かっている。世界各国のオトメが集う中、その巨大な穴は更なる広がりを見せている。
「どうして!?お姉ちゃんのローブはとまったのに」
 メイリンは頭上を見上げて叫ぶ。
 ミユとマシロが皆のものとにやってくる。
「…既にあなたの手からあの橋は離れています。もう一方の世界の橋を繋ごうとしているものの手によって今まさに開かれてしまっているのです」
「もう一方?あっちに穴を開けようとしている奴がいるのか?」
 シンはミユを見て聞く
「はい。おそらくですが…彼女たちがここに来てしまったのもこれが原因」
 ということは向こうの世界に行き、その相手を倒さなければこの穴は完全に開ききってしまう。そうなれば…。
「どうすればいいのじゃ!!」
「マシロちゃん!私いくよ!」
 アリカがマシロの前に降り立ち言う。
「じゃが…」
 あの巨大な空間に入り、無事に戻ってこれるのか?出来なければ…。
 だがアリカの瞳には迷いは無かった。
 ならば、マスターである私も信じなければ、彼女のことを…。
「ニナちゃん。留守番は任せたよ」
「…えぇ、いってらっしゃいアリカ」
 ニナもアリカを信じている。自分を救ってくれた彼女のことをニナは心のそこから信じていた。そして必ず世界が救われるということも。
「俺たちも一緒にいきます」
 降り立つMS。ディスティニーである。妹の上着を着せられたルナマリアと妹のメイリンもともにマシロ女王を見る。
「僕たちも…」
 ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスが上空から答える。
「…わかった。アリカ、そしてそなた達に任せる」
 マシロはアリカを見る。アリカは小さく頷くと上空に飛び上がる
「作戦概要は、アリカさん、キラ君、シン君、アスラン君の三人による穴に突入。その後ミネルバは穴のギリギリで制止させ、穴の吸い込みを押さえます」
 マリューはタリアが座っていた艦長席に座り、ミリアリアたちを率いて上空にへと浮上を開始する。MS部隊が穴にめがけ突入し、そこをミネルバでふさいただ。
「…アリカ」
 マシロはGEMを見つめる。
 
我がオトメに…今こそ力を

「なんで私たちはいっちゃいけないのよ!」
 後ろでは怒鳴っているハルカ、そしてをそれをなだめるユキノ。穴に突入した彼女たちを眺めるシズルはハルカの隣で
「最速を誇る蒼天の青玉やったら、もしものときこっちに戻ってこれるはずどす」
「だからって!あの子一人で」
「ひとりやおません」

 異次元の穴の中、アリカとディスティニー、そしてストライクフリーダム、インフィニットジャスティスが超えていく。
 赤黒く雷鳴がとどろく中…、光が前を照らす。

「…ここは」
 そこは宇宙…目の前には巨大な岩があり、そこには口をあけた巨大な発射口がある。周りを見渡せばシンが乗っていたような機械人形が戦っている。
「戻ってこれたのか?」
 シンは現在位置を確認する。ルナマリアとメイリンがその狭いコクピットの中、前を見つめている。現在地はザフト軍の本陣、レクイエムである。
「な、なんだお前たちは?」
 防衛にあたっていたザフト軍MSであるゲイツが突如現われたそのMSたちを見て驚いている。そして小さいものに画面をアップさせる。そこにいるのは変な格好をした女子。しかも宇宙の中、宇宙服も着ずに動いている。
「わぁあああ!ば、バケモノだ!」
「ひっどーい!私はアリカだもん」
 アリカはむっとした表情でゲイツに言う。
「メーデー、メーデー、敵の奇襲部隊です、至急、増援を!」
 そういうゲイツの頭を切り裂くストライクフリーダム。
「この感じだと、あの光の前か…」
 アスランは現在位置とそしてMSの配列を見てそう告げる。
「っていうことはここには俺たちもいるってことか」
 シンは自分たちがあの戦いのときにいた場所のほうを調べる。すると今まさにミネルバとアークエンジェルが戦闘をしているところだ。
「なんだか不思議な感覚だね…私たちここにいるのに」
 メイリンが画面を見ながらつぶやく。
「もし、向こうの私たちを説得したら戦争はやめられるのかもしれない」
 ルナマリアはポツリとつぶやく。
「気持ちはわかるけど、今は…」
 キラの声に、シンは頷き、レクイエムの頭上を見上げる。
 そこになにかがいた。

『…』

 白髪でギョロっと見開かれた赤い片方だけの目、身体の半分が黒、そしてもう半分が白というその人間でもなくMSでもないものがその画面には確かに映し出されていた。
「あれが…」
 アリカのほうを見たそのものは瞳からビームを発射する。
「危ない!!」
 アスランがアリカの前に出てそれを受ける。するとアスランのインフィニットジャスティスは見る見る石となっていく。
「アスラン!!」
 ルナマリアが叫ぶ。だがアスランからの返事はない。石化してしまったジャスティスが宙に浮いている。
 その白髪のものはアリカたちがきた穴から差し伸べられる光をさらに大きくしていく。
「こいつが…」
 シンはその得体の知れないものの前に恐怖を感じていた。

「穴がさらに巨大化!」
 ミネルバではミリアリアが画面を見ながら報告を続けていく。このままではヴィント全体を飲み込んでしまう。
「一体どうなっているのじゃ!!」
「…惑星破壊兵器ユナ」
「なに!?」
 マシロがミユの言葉に反応する。
「かつてこの惑星の住人が作り上げた最終破壊兵器。あまりの強大な力のために宇宙の放棄されたと聞いたのですが、どうやらあちらの世界にいたようです」
「それがこっちに戻ってくるというのか!?」
「はい」
 まさか…そんな恐ろしいものがこの世界のあるとは、なぜ自分の惑星までもを破壊するようなものを人はつくる?そこまでして人間は破壊や殺戮をやめられないのか。ちがう!そんなことやめなくてはいけない。わらわたちの手で。そのようなもの…我々には必要ない!!

「なんとしてでもとめてみせる!」
 キラはストライクフリーダムをつかいビームライルで攻撃をかける。だがそれもユナのビームの前には石化されてしまう。
「そんな!ビームまでも!!」
「はぁー!!」
 アリカがその中、エレメントを握り、ユナに立ち向かう。ユナはアリカの攻撃をかわして穴のほうにへと向かう。目的地は…あの向こう、惑星エアル。
「逃がすか!!」
 ディスティニーが巨大なビームサーベルをむけ、ユナの身体を貫く。
「いまだ!!アリカ!!」
「はぁー!!!」
 アリカのエレメントが輝き、ユナの身体に閃光が命中する。
 蒼天の霹靂…ユナの身体はそのまま時空の中にへと消えていく。
「これで…」
 シンは大きく息をつき、周りを見渡す。
 穴が光の粒子となって消えていく。それは戦場にいるすべて者に戦いを忘れさせた。光の粒子はレクエイムを包み込むように、高らかに天にへと飛ばされていく。宇宙でこんな幻想的な光景が見れるとは思わなかった。
 アリカ、シンやルナマリアたちはその光を眺めながら意識を失った。

 大きなドアを開ける音と、足音をたててマシロが眠っている寝癖のついたマイスターを見る。その表情はかなり怒っているようだ。
「こらー!!アリカ!いつまで寝ておるんじゃ!」
「ま、マシロちゃん?あれ、私…ニナちゃんやみんなと」
「何を寝ぼけておる!今日は民に対しての演説なんじゃ!さっさと支度をせんかー!!」
「わぁあ!!」
 アリカは慌てて起き上がり、そのままベットから落ちる。先ほどの夢のことはこの忙しい日々にはあまり心にはとまらなかったが、それでもニナに会えた事はなんとなくだが嬉しかった。

「うぅ…」
 ゆっくりと顔をあげるシン・アスカ。
「シン!大丈夫か?」
 それはレイの声。シンは周りを見渡す。そこはディスティニーのコクピットの中。シンはディスティニーから外の様子を見る。そこはミネルバの艦内である。さっきのは…夢?だがすごくリアルな夢であった。手に実感が残っている。
「どうした?シン?」
「あ、あぁ…すまない。少し考え事をしていて」
 シンは隣のレジェンドにいるレイの問いかけに答える。
「この戦いですべてに蹴りがつく。議長の理想の社会を作り上げるために」
「…あぁ」
 シンはそのレイの言葉になんだかうまくいえないが、賛同できなかった。それはあの夢の体験からか。
「シン。よろしく頼むわね!」
 もう片方の隣からインパルス…ルナマリア・ホークの声が聞こえた。なぜだろう。さっきまで一緒にいたのに、不思議な感覚だ。
「ルナ…。メイリンはたぶん生きている」
「え?」
「わかるんだ。メイリンは生きている」
 ルナの声が聞こえなくなる。少しの間があって
「…どうしちゃったのさ。急にへんなこと言わないでよ」
 そのルナの声は涙声だった。嬉しかったのだろう。たとえそれが嘘であっても…いやルルナもあの夢を見ていたのかもしれない。だったら信じてくれるはずさ。
「お前とメイリンをあわせるまで俺は死ねないから」
「…シンも…死なないでね」
 死なないさ。だって…俺は!

『カタパルトオープン。ディスティニー発進!!』

 世界はいくつも存在する。それは人の想いひとつですべてが変化する。今回の世界が夢として認識させられていたとしても、彼らには何らかの変化を起こしている。人の夢はすべてを変えることが出来る。運命さえ覆すことが出来る。それはなにもアリカやシン・アスカが特別だったわけではありません。それは誰にでも持っているもの。あなた方とて例外ではありません。あなた方の思い一つで世界は無限に広がる。幾つもの世界があなたの前には広がっているのです。
 これは私がこの数百年間の間にだした結論のひとつです。今おもえばかつての祭りというものが私にすべてを教えてくれたことだったのかもしれません。

 ですが、忘れてはいけません。想いを持つものがすべてがよい心を持つものではないということを。

惑星エアル…エアリーズ展望台
 機動が開始され一週間が過ぎ、お祭りムードがさったその場所に音が鳴り響く。眼鏡をかけた事務員たちが画面を見つめる。
「これは大変だ…」
 そこに示されるのは巨大な隕石がエアルに衝突コースで向かっているということ。事務員は慌ててエアリーズ中央政府にへと連絡する。彼が画面から目を離した一瞬、その隕石に高次物質化反応が示されたことを、そのとき誰も発見できなかったことが今回の事件の引金となるのである。

惑星エアルを目指すその隕石の中で眠るユナ。

目的地である場所を目指し…隕石は静に進んでいく。

そして物語は…ユメノツヅキに






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